第六天魔王の死神生活   作:七瀬一五

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【天井の穴】
 遊びに来た浮竹が見かねて3人で修理した。
 ただし雨漏りはする。


第7話 ノッブファイヤー!

 家の天井に穴が空いてから数日後。

 信長は鬼道の授業を受けていた。

 

「鬼道とは、自身の霊力を使い、様々な事象を起こす術である」

 

 場所は鬼道訓練場。

 入って右にある黒板、そこの前で、信長たちは鬼道の説明を受けていた。

 

「まぁ、実際に見た方が早かろう」

 

 この訓練場は横に長く、生徒から見て左側。そこから数メートル先には、的が置いてある。

 山本はそこに向けて指先を向け、生徒たちにも分かりやすいように、ゆっくりと鬼道の詠唱を始めた。

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏(はばた)き・ヒトの名を冠す者よ。焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ」

 

 指先に集める霊力は最小限。

 そうしなければ、ほとんどの生徒たちは余波でこの世から消えてしまうだろう。

 

「【破道の三十一・赤火砲(しゃっかほう)】」

 

 指先から力強い炎が生まれ、矢のごとく的に突き進む。的に当たった瞬間に爆発。

 粉々に砕け散り、黒い残骸しか残らなかった。

 

「これが、破道じゃ」

 

 その光景を見た生徒たちはざわめき、驚嘆した。信長も京楽たちと鬼道について話している。

 

「霊力とはこういう使い方をするものじゃったのか。いやーすごいのう」

「だね。僕も初めて見たよ。的があんなになるなんてビックリだね」

「俺も初めてだ。だがしかし、ノッブたちも気づいていると思うが、山本先生はほとんど霊力を込めていなかった。あの精密な霊力の操作、流石だ」

「いやーやっぱり山じいは凄いね」

 

 初めて見た鬼道で大盛り上がりな三人組。

 

「そこ!静かにせい!」

 

 山本先生に怒られてしまい、それを見た他の生徒たちは、いつもの光景のように笑いをこぼしている。

 ここ数日で、特進クラスの人間の中の信長に対する恐怖はかなり下がっていた。

 理由としては、浮竹や京楽といった人望の厚い人間と関わっている点。また、京楽と一緒になって源柳斎に叱られている光景をよく見かけているからである。

 とはいっても、特進以外では普通に怖がられてるし、尾ひれもつきまくっている。

 

「うむ」

「はいはい」

「すいません…」

 

 山本としても、手のかかる孫が増えたようで嬉しいのだが、たまに浮竹も暴走するようになってしまった。

 

「全く……。まぁ良い、これから鬼道を実際に撃ってもらうわけじゃが、儂からひとつ、コツを教えておこう」

 

 鬼道を実際に撃つ。

 この言葉を聞き、生徒たちは姿勢を正し、耳を傾けた。

 

「心の中に、己の霊力の形を映し出せ。

 そこに、自分自身を重ね合わせよ。

 それが、全ての鬼道を使う上でのコツじゃ」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 破道を使う。

 それ自体は、信長にとって非常に喜ばしいことである。戦略の幅が広がるというのもあるが、なんとなく心が踊る。

 

 だがしかし信長は、自分が鬼道を使うことに警戒していた。いや、正確には霊力を使うことを。

 

 確かに、烈さんからは大丈夫だと言われている。だが、死後の世界で生死をさまようとかいう、頭痛が痛いレベルのおかしな経験を信長はしている。

 そのためか、中々やる気が出ない。

 

「これが破道を使うということか。あまり上手くはいかないな……」

「いやいや、初めてで僕より手慣れていたじゃないか。謙遜が過ぎるぞ浮竹」

 

 浮竹の破道はお手本通りと言った感じで綺麗なものであった。さすがは主席と言ったところか。

 

「そうじゃぞ。自信を持て浮竹」

「む、そうか?そう言われると嬉しいものだな。そういえば、次はノッブだったな。頑張れよ」

「ふっ、任せよ。わしにかかれば簡単なものじゃよ」

 

 実際はかなり心配じゃがな。

 

「そう言っておいて、この前の花札で僕にぼろ負けだったじゃないか」

「あれはお主がイカサマをしたからじゃろ」

「えー、そんな証拠あるのかなー?」

「厄介な……まぁ良い、放課後また勝負じゃ!」

「はーい」

 

 覚悟は決めた。

 多少の痛みならば我慢はできる。

 

 (心の中に己の霊力の形を映し出す、か。なんとも抽象的なアドバイスじゃな)

 

 ゆっくりと息を吐き、自身の内側に意識を向ける。

 浮かび上がってきたのは鎖。

 肉体に繋がれている、十三の咎。

 

 意識を向けたことで理解した。

 この鎖は、自身を業を封じるための楔であると同時に、力を繋げるための道であると。

 

 霊力は形を成し、炎となった。

 それに重ね合わせるように心を沈める。

 やがて、心は炎と化した。

 

 (そうか。これが霊力を扱うという感覚か)

 

 準備は整った。

 指先を的に向け、詠唱を始める。

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ」

 

 高まる霊圧。

 それに、驚愕の心をあらわにする浮竹や京楽などの才能ある者たち。

 

「焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ!」

 

 信長は気付いていない。

 山本元柳斎がにわかに殺気立っていることに。

 

「【破道の三十一・赤火砲(しゃっかほう)】!」

 

 燃え盛る紅蓮の炎が指先から発射され、的に一直線に命中。爆発音とともに木っ端微塵に砕け散った。

 そして、源柳斎のものとは違い、残骸は灰となっていた。

 

「イエーイ!見たか京楽!これがわしの力じゃ!どうじゃ?見直したじゃろ?」

 

 ちゃんと成功したことに喜んでいる信長とは対照的に、浮竹たちは反応を返せなかった。

 

 (今のは、なんだ?)

 

 一見、京楽たちの破道と同じに見えた。だが、込められた霊力、そして密度が桁違いだった。

 彼らの鬼道の密度を十とするならば、彼女のものは百以上、あるいはもっと上であった。なおかつ、完璧に制御されていた。

 

 そして、驚くべきことに彼女の霊力は全く減っているようには感じられなかった。

 

「京楽?どうした?顔色が悪いが、烈さんのところに行くか?」

 

 よほど酷い顔していたのだろう。信長が心配そうに京楽の顔を覗いていた。

 

「…いや、なんでもない」

「それなら良いが…無理するでないぞ」

「ああ、そうだね。ところで、さっきから浮竹がいないんだけど…どうしたの?」

「ん?浮竹なら、いきなり血を吐いたから医務室に運ばれていったぞ」

「そっか。…まぁ、こんなの見たら驚いて吐血するだろうね」

 

 京楽は、浮竹の心情が自分と同じようになっているとわかり、少し安心した。

 

「…あとで医務室に行かないとな」

「そうじゃな」

 

 とは言っても、信長は京楽にとって大切な友人であることに変わりはない。それは、浮竹にとってもだ。

 彼らは、そんなことでは彼女とは距離は取らない。

 

 楽しげに浮竹への見舞いについての話をしている二人。

 それを見ている元柳斎は、隠密機動衆への監視を命じることを取り消した。

 今はまだ、その時ではないと。

 

 ちなみに、放課後の京楽と信長の花札の戦いは京楽の勝利で終わった。

 




【信長の鎖の情報】
 彼女を地獄に縛り付けているというより、繋げているという役割の方が強い。
 
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