長き旅路にて臨むもの   作:【風車之愚者】

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解決編 犯人はこの中にいる

 □タカクラ邸・二階東 書斎 【高位従魔師】サラ

 

「謎はすべて解けた!」

「それは名探偵の、私の台詞ではないかね!」

「一回言ってみたかったので!」

 

 わたしはみんなの前で胸を張る。えへん。

 みんなといっても、書斎に集まったのは八人だ。

 わたしとアリアリアちゃん、ユウコさんにメイさん、ムカダテさん、赤井ドイルさん、ブランさんとノワルさん。

 最初にいたのが十二人だから、欠けているのは四人。

 被害者のゲンジさんとポラリスさん。

 爆発に巻き込まれて姿を消したカフカさん。

 そして、

 

「ネイサンさんは倒しちゃったから、お話は聞けないけどしょうがないよね」

「悪いとは思っていないわ。やらなきゃやられるもの」

「……反省している」

 

 ネイサンさんは狼だった。

 どんな事情があったのか、なんとなく想像はつく。

 でも、それはそんなに重要じゃない。

 次に会えたら本人から直接聞きたいと思う。

 

 大事なのは、ネイサンさん=犯人だと説明のつかない部分があるってことだ。

 

「今から話すのはわたしの推理です。それは違うと思ったら、違うって言ってください」

 

 全員がうなずいたのを確認して、話を続ける。

 

「ポイントは誰がゲンジさんたちを殺したか……じゃありません。どうして事件が起きたのか、です」

 

 個性的な参加者。ご褒美付きのゲーム。出入りできないお屋敷。じつにおあつらえむきだ。

 殺人事件が起きても不思議じゃない。まるで最初から、そのために作られた舞台みたいだとは思わない?

 

「どうしても何も、実際に人が殺されているのだよ。犯人がネイサン・ハンターであれ他の何者かであれ、PKするメリットがあったということだろう」

「そうです。犯人は目的があってこの事件を計画しました。でも……もしもですけど、誰も殺されてなかった(・・・・・・・・・・)としたら? 事件が事件じゃなくなりますよね」

「ふむ? 続けたまえ」

「考えてみてください。二人がデスペナになったところを、わたしたちは見ましたか?」

「直接は目にしていないわね」

 

 そうなんだよ。

 ゲンジさんは鍵のかかった部屋で。

 ポラリスさんは暗闇で。

 どっちも、二人が光の塵になったところを見たわけじゃない。襲われたメイさんとか、落ちていたアイテムがあって、デスペナルティになったと思っただけ。

 そう思うように、みんなは誘導されたんだ。

 

「アリバイについて話したとき、みんなが『殺していない』って言いました。その言葉は本当でした。《真偽判定》をごまかすしゃべり方って考えるより、みんな誰も殺していないって考えたほうがすっきりします」

「なら被害者は」「どこに消えたの?」

「……屋敷内はログアウト不可、外には出られない。隠れ潜むには限界がある」

「いかにも。この名探偵の目は誤魔化せないぞ。違和感があればたちまち看破してみせたからな」

「あら、それにしては双子の入れ替わりと潜伏に気づいていなかったようだけれど。どうなの名探偵さん?」

「ぬ……あれは前二回の事件による先入観だ! 他の見落としはない!」

 

 赤井ドイルさんが気づかないのは当たり前。

 だって、本当に見落としはないんだから。

 隠れていたわけじゃない。偽装されていたのでもない。

 わたしたちの目の前に、ずっと答えはあった。

 

「ここにいます。ですよね、メイさん」

 

 黙ってうつむいていたメイさんはハッとする。

 わたしはビシッと人差し指でメイさんのお腹を示す。

 

「『失われた者』……ゲンジさん、みーつけた」

 

 わたしの宣言で、メイさんはあきらめたようにメイド服のスカートをたくし上げる。すると、

 

「――御見事」

 

 中から、ゲンジさんとポラリスさんが姿を現した。

 

「ちょっと待ってどういうこと」

「? だから、全部ゲームだったんだよ」

「いい歳した男性がメイド服の中に隠れるってそれどんなゲームよ! Ms.タカクラはそれでよろしいの!?」

「あらあら、見つかっちゃったわね」

「寛容! 夫婦円満の秘訣だとでも言うのかしら!?」

 

 アリアリアちゃんは頭を抱えている。

 見た目のインパクトで混乱しているようだ。

 でも冷静になったらすぐにわかるよ。アリアリアちゃんはわたしより頭いいもん。

 

「……ああ、そういうこと? <エンブリオ>としてのスキルか。物理的に成人男性二人は入らない。つまり、ドラゴンメイドの能力は空間収納……アイテムボックスと【ジュエル】の複合版ね」

「ご推察の通りでございます。ご主人様はセーフティハウスと呼んでおられます」

 

 思えば手がかりはいくつもあった。

 手品みたいに、何もないところからティーセットやお掃除道具を取り出したり。

 飛んできたルゥからユウコさんを守ったときも、一度セーフティハウスにしまってから取り出したんだろう。

 

「ということは、一連の事件は自演? 死んだふりをしてドラゴンメイドの中に避難してたってわけ? 謎解きゲームの舞台装置になるために」

「正解だ。年端もいかぬというのに聡明な娘子だな」

「『失われたもの』の条件は満たしているけれど……不公平じゃない。誰が分かるってのよ」

「ううん、そんなことないよ」

 

 ちゃんとみんなにわかる形でヒントは出ていた。

 

「一つ目のヒントは<エンブリオ>。わたし、メイさんのマスターはユウコさんだと思ってたんです。ずっと一緒にいたから。でも、それだとおかしい」

「……何がだ?」

「だって、<エンブリオ>は一人に一つですよ。メイさんがいるなら、お屋敷から出られない<エンブリオ>は誰のになるんだろうって」

 

 ゲームの会場に効果があるから、ふつうに考えたら主催者のゲンジさんかユウコさんのだ。

 でも、そうなるとゲンジさんがデスペナルティになったあとも二つの<エンブリオ>が残っていたことになる。これはおかしい。

 

「だから、ゲンジさんはデスペナになってないのかなって思いました」

「良い着眼点だ。他には?」

「えっと、二つ目はユウコさんの話です」

 

 ユウコさんはお屋敷の出入り不可を自分が解除できると言っていた。

 これはゲンジさんの<エンブリオ>をユウコさんも操作できる、と考えるより、自分の<エンブリオ>だから解除できるって考えるのが自然だよね。

 

「あとメイさんの呼び方も。ユウコさんのことは『奥方様』で、ゲンジさんのことは『ご主人様』って呼んでますよね」

「Ms.タカクラがマスターなら『ご主人様』と『旦那様』、あるいは『奥方様』と『旦那様』になる……そう言いたいのね?」

「そうかなぁと思って。これはカンだよ」

 

 メイさんがいつもとしゃべり方を変えていたらわからないからね。これはそこまで重要じゃない。

 

「最後のヒントはこの場所です」

「この場所?」「この部屋」

「「書斎ということ?」」

「はい。たぶん、ゲーム前に説明があったと思います。ユウコさんは客間、ゲンジさんは書斎で待機するって」

「ああ、確かにそのようなことを言われたな」

「最初の事件からメイさんはずっと書斎にいました。答えを知っている二人は、ちゃんと場所を教えてくれていたってことです。……ユウコさんは客間から移動しましたけど、それでも書斎にいましたし」

 

 つけ加えると、事件が起きたのはどちらも書斎だ。

 死んだふりをするタイミングでメイさんのセーフティハウスに入ったと考えたら納得できる。

 逆に言えば、書斎以外で事件が起きる予定はなかった。だからブランさんが死んだふりをした三回目の事件でユウコさんはとってもびっくりしたに違いない。

 

「……ではネイサンは? 奴は自分が犯人であるかのように振る舞っていた。そしてポラリス、お前は何だ」

「私が語るよりも、ここは小さな探偵さんの推理をお聞きしましょう」

 

 ポラリスさんは眼帯越しにわたしを見る。

 うーん、ここからは思いつきと想像になるけど。

 

「ポラリスさんとネイサンさん。二人はゲンジさんたちの仲間だったのかなーって。ネイサンさんは悪い狼役。ポラリスさんは……たぶん、『夜』を用意するお仕事があったんじゃないですか?」

「素晴らしい。ええ、ですから私は早めに退場する必要がありました。<エンブリオ>を追求されると、ご夫婦との関係を疑われてしまいますからね。戦闘中にネイサンの合図で光源を消したのも私です」

 

 物置にあった《鑑定眼》が効かないプラネタリウム。

 あれがポラリスさんの<エンブリオ>だ。

 決められた範囲を夜にする、それか光を吸収するスキルがあるんだと思う。占星術師らしさがあるよね。

 鍵のかかった物置に隠してあったのは……かさばって大変だからかな。キャッスルっぽいし。

 やけに一日が短いと感じたのはポラリスさんが明るさを操作していたからだ。

 

「ゲンジ氏の依頼を受けたときは驚きました。まさか、『人狼ゲームをやりたいから手伝ってくれ』とは」

「儂は雰囲気の例を示したまでだぞ。これは謎解きだ。報酬も前払いで渡しただろう」

「本当に迷惑をおかけしてごめんなさいね? この人、凝り性なものだから。ログアウトできないのに昼夜を表現したいだとか、襲われるフリだけじゃ臨場感に欠けるとか、悪役には絶対に勝てない狼を起用したいとか言い出すんですもの。ネイサンさんには悪いことをしたわ」

「それを言うのなら、お前も探偵と双子を参加者に入れろとうるさかったではないか」

「いいじゃありませんか。前回も今回も、あなたがゲームの内容を決めたんですから」

「お二人とも似たり寄ったり、でございます」

 

 事件とゲーム、そして参加者の顔ぶれまでゲンジさんとユウコさんが決めたことらしい。

 計画を立てた側の会話に混ざれないから、わたしたち参加者はポカーンとして置いてけぼりになっている。

 

「ご歓談を遮って申し訳ないのだけれど。結局、どうしてMr.タカクラはこのような狂言を企てたのかしら?」

 

 がまんできなくなったアリアリアちゃんが質問する。

 たしかに、これだけの準備をしたんだ。なんとなくでやったと言うには大掛かりだよね。

 ゲンジさんは理由を話そうとして、でも言いよどむ。

 

「それは……」

「隠しても意味はないでしょう。サラちゃんは薄々気づいているわ」

 

 ユウコさんに言われて、ゲンジさんはようやく話してくれる気になったみたいだ。

 

「サラ、アリアリア。お前たちだ」

「え?」

「正確には、その依頼主だがな」

 

 つまり、グリオマンPさんが理由だということだ。

 

「お前たちは煌玉獣を求めて来たのだろう?」

「はい! ……途中からそれどころじゃなかったけど」

「それこそが儂の狙いよ。グリオマンPの手の者が意識を逸らし、あわよくば煌玉獣について失念するようにな」

 

 そうだね。本来の目的は煌玉獣探しだった。

 わたしはまんまと忘れていたから、ゲンジさんの目的は半分くらい達成されていたことになる。

 

「催促されないようにってことね。でも売却には前向きだと伺ったわよ?」

「何を吹き込まれたかは知らんが……あの小僧はどこからともなく嗅ぎつけて、厚かましく要求を突きつけてきたのだぞ。日頃の付き合いがなければ跳ね除けておるわ」

 

 ……なんだか話が違う。もしかしてグリオマンPさん、わざと説明しなかった?

 

「突っぱねればいいじゃないの。隠すなり、他の人に売るなり、やりようはあるでしょうに」

「それがねえ。少し面倒なことになったのよ」

「煌玉獣は今、儂の手元にない」

「なん」「ですって?」

 

 おなじく煌玉獣が目的だった双子がショックを受ける。

 わたしは、ああやっぱりって感じ。

 物置のプラネタリウムがあった場所。

 周りは物がいっぱい並んでいるのに、あそこだけぽっかりとスペースが空いていた。

 たぶん煌玉獣が飾ってあったんだろう。

 

「あれは前回の茶会の折だった。参加者の一人が賊でな、不覚にも盗まれてしまったのだ。気がついた時には跡形もなく消え失せておったわ」

「正直に説明したらわかってくれたんじゃ」

「盗まれたから売ることはできぬと? あの小僧が文面をそのまま信じる訳がなかろう。一計を案じたと疑われるに決まっている。無いものを無いと証明するのは不可能だ」

 

 反対の意味でグリオマンPさんへの信頼が厚い。

 商人は取引相手とのかけ引きがある。ときには嘘を吐くことだってあるだろうけど、話したらわかってくれると思うよ。きっと、たぶん。

 

「とはいえだ。こちらの都合で皆には迷惑をかけた。大変申し訳ない」

「お詫びと言ってはなんだけど、ご褒美は参加者全員に差し上げます。それと、今日一日は我が家でゆっくり疲れを癒やしてちょうだい」

 

 ゲンジさんとユウコさんが頭を下げる。

 思うところがある人もいるようだけど、損はさせないというゲンジさんの一言で最後には納得したのだった。

 

 

 ◇

 

 

 それから、わたしたちは豪華なお風呂とおいしいごちそうを楽しんだ。

 なんとバイキングだよ、バイキング! しかもパーティみたいに立って食べるタイプ!

 アリアリアちゃんは「単純すぎない?」と呆れ顔だけど、そう言いながらハンバーグとから揚げと海老フライを山盛りにしてカレーをかけていたの知ってるからね?

 

 食事中はみんなに話しかけられた。

 

 ムカダテさんの「……どうして計画に参加させてもらえなかった」というグチを聞いてなぐさめて。

 

 ブランさんとノワルさんからのお誘いをお断りして(わたしなら誰だってだませると言われても)。

 

 赤井ドイルさんにはライバル認定された。次はどっちがより名探偵にふさわしいか勝負することになったよ。

 

 ポラリスさんとは今度一緒に星を見る約束をした。穴場のスポットをいろいろと知っているらしい。

 

「楽しんでいるようだな」

 

 ワイングラスを片手にゲンジさんがやってくる。

 

「改めて、ゲームクリアを祝おう。見事な謎解きだった」

「ありがとうございます!」

「皆に欲しいものを聞いて回っているのだが、お前は何を望む? できる限りの要望は飲もう」

 

 他の人たちはレアアイテムにお金、超級職の転職条件、<UBM>の居場所とかを希望したらしい。

 わたしはお金には困ってない。超級職や特典武具はまだまだ遠い世界のお話だ。

 やっぱり、ここはジェイドのお母さんについてだろう。

 

「この子のお母さんについて、知ってますか?」

Rrrrr(ぺこり)

「風竜か……少し時間をもらう。可能な限り手を尽くして情報を集めよう」

 

 調査が進んだらゲンジさんのお店で情報を受け取れるように手配してくれるらしい。

 王都かギデオンに行けばオッケーだね。

 

「それと、手ぶらであの小僧のところに帰す訳にはいかん。持っていきなさい」

 

 ゲンジさんがパンパンと手を叩くと、どこからともなくメイさんが封筒を持ってきて、わたしに差し出す。

 

「煌玉獣を盗んだ者の情報だ。欲しければ先に見つけ出してみろ、と伝えておけ」

「いいんですか? それにわたしだけ二つも」

「儂を探し当てた特別賞として貰っておけ。これならばグリオマンPも納得しよう。……忠言だが、あまりあの小僧と関わらん方が良い。あれはろくでなしだからな」

「悪い人じゃないですよ?」

「あれはタチが悪いというのだ」

 

 ゲンジさんは困り果てて、ため息を吐いた。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ■某所

 

 紙に出力された二つのレポートを読み終えて、男は凝り固まった肩をほぐす。

 現実の疲労はポーションで癒せない。代わりに市販の栄養剤とサプリメントを摂取する。常飲し続けた結果、もはや気休めにもならない代物だ。

 

「いやあ、なかなか集まらないねえ煌玉獣。所在が明確なのはひよ蒟蒻くんの二機と【鳥兜】だけか。あとはカルディナに流れた【櫟】と今回の【蒲桃】……はぁ」

 

 男が求めている煌玉獣は二十一機。

 煌玉馬や煌玉蟲とは異なる劣化海賊版であり、しかし真作となんら引けを取らない性能を発揮する贋作だ。

 ちなみに全機を集めることで何かが起こったりはしない。男がつぶさに調べた結果、ただ『超級職の奥義を再現する』というコンセプトで制作された機体に大アルカナの銘が付けられているというだけの話だった。

 

「ジョブと重なる部分があるかと思えば、ヘイゼルは【魔術師】なのに魔法使わないし。適当すぎない?」

 

 クラークの三法則じゃあるまいし、とぼやく。

 

「まあコレクションはしたいよねえ。先人の作品を知ることで、僕の最高傑作は完成に近づく。設計と動力炉と人工知能は参考にできるからなー、一回バラしたいなー」

 

 歴史に学び、利点は取り入れて改善する。

 煌玉獣を集めて研究するのも。

 先々期文明の遺産……先人の工房を独占するのも。

 すべては男の理想を体現するためだ。

 

「泥棒くんには覚悟してもらうぜ。なんだっけ? たしか名前は……そうそう、カルマだ」

 

 サラから受け取った盗人の情報は確認済み。

 既に七大国家全域に配置した人形に顔写真とプロフィールは送信してある。網にかかるまで待つのみだ。

 

「まあ手がかりゼロの状態よりはマシかねえ。もう一つの目的も達成できた」

 

 タイミング良く、男の電話が鳴り響いた。

 表示される名前はハンドルネーム。

 ちょうど男が顛末を気にしていた人物からの着信だ。

 

「はあい。こちらグリオマンP」

『おい聞いてないぜチーフ。ありゃ何だ?』

 

 相手は流暢なフランス語だ。

 普段ならば英語を用いる場面ではあるが、どうやら疲れ果てて母国語が飛び出したらしい。

 ならばと男もフランス語で返す。

 

「おいおい忘れたのかい? 言っただろう、あの子たちはうちの新人だよ。デンドロ始めて二週間のルーキー」

『うはははは! ……どんな冗談だ。ボーナスを弾んでくれないと割に合わないぞ。あんたの仕事を受けたせいで、こっちは“監獄”行きだ!』

「だから言ったのに。セーブポイントに触れとあれほど」

『その隙も与えず仕事を割り振ったのは誰だ!?』

 

 亡命目的で王国に向かったというのに、相手はセーブポイントを設定していなかったらしい。

 レジェンダリアのセーブポイントが使えない状態では、デスペナルティ明けは“監獄”からのスタートになる。

 

「じゃあ今後は“監獄”で情報を集めてよ。ちょうど戦力になる駒がいなかったんだよねえ。凖<超級>の君なら危ない橋も渡れるだろ、ネイサン」

『俺にも目的があるんだぞ』

「人権運動のこと? そっちは僕が上手いことやるさ。あの国ってば議会が腐敗してるから火種には事欠かないしねえ。それよりも副業が大事だと思うけど。奥さんと娘さんに美味しいもの食べさせたいでしょ」

『チッ……悪魔かお前は』

 

 ネイサンは男に逆らえない。

 なぜなら雇用関係にあるからだ。雇う側と雇われる側、いつだって立場が弱いのは労働者である。

 RMT(リアルマネートレード)は法律で禁止されているが、仕事としてゲームをプレイするのであれば問題ない。

 つけ加えると、ゲームで見聞きした体験談(・・・)に対して心づけ(・・・)を贈るのは黒に近いグレーである。

 

「君の所感を聞かせておくれよ。どうだい、ルーキーは使いものになりそうかな?」

『――合格だよ。頭の回転は悪くない。あれだけ動けたら十分だ。なにせ俺を一度は殺してみせたんだからな』

「重畳。いくらスキルが便利でも、ずっとお守りをするのは大変だからねえ。最低限の実力はないと」

 

 男が【狼王】ネイサンに依頼したもう一つの仕事。

 それは試金石。サラ(おまけにアリアリア)が<仮面兵団>でやっていけるかどうかを確かめる試験官として、ネイサンには強敵を演じてもらった。

 タカクラ夫妻の仕事のついで、という条件ではあるが。亡命を希望するネイサンとタカクラ夫妻を引き合わせたのも、裏でグリオマンPが手を回したからだ。

 

『あまりいじめてやるなよ。今時珍しいぞ、あんな子供』

「はいー? 僕は親切にしてますけどぉー? まるで悪者みたいに言うのやめてほしいねえ! やだやだ、どうしてうちのクランはロリコンが多いんだか」

『子供相手にここまでするお前が非人間なだけだ』

 

 サラと接触した人間は大なり小なり彼女に対して好意的な反応を示すようになる。

 よほどの人間嫌いか、周囲を見ようとせずに苛立ちをぶつけるだけの子供でもなければ。

 懐に入り込む性質、もはや固有能力と称していいかもしれないと男は考察する。

 無意識でありハイエンドともまた異なるが。

 

(無条件で他者に好かれる、だなんて。そっちの方が非人間的(・・・・)じゃあないのかねえ)

 

「あ、そうだ。子供といえば。娘さん元気? デンドロ始めたんでしょ、紹介してよ」

『誰がお前に引き渡すか』

「そんなこと言ってー。『お父さんと一緒は嫌!』とか言われて会えてないんじゃないのー?」

『……』

「図星かー」

『……違う。リアは恥ずかしがっているだけだ。その証拠に、メールで起こった出来事を教えてくれるからな。同年代の友達ができたと書いてあった。あの【超闘士】を目標にしているとも』

「友達ってボーイフレンド? それに王国の決闘一位ってイケメンだったような」

『…………』

「どっちにせよ、“監獄”にいたら会えないけどねえ!」

『殺すぞ』

 

 Episode End




余談というか今回の蛇足。

(U・ω・U)<犯人はこの中にいる(一人とは言ってない)

(U・ω・U)<解決編で急にIQが爆上がりする主人公

(U・ω・U)<《真偽判定》に対する雑な扱いと上下する信頼

(U・ω・U)<……等々ありましたが、ミステリーとして読まなければ悪くないのでは?

Ψ(▽W▽)Ψ<そこが大事なとこドラ


タカクラ夫妻
(U・ω・U)<本編で言及できなかったけど

(U・ω・U)<ユウコの<エンブリオ>は【エリコ】

(U・ω・U)<自分が内部にいる建物を不壊化・戸締まりして外敵から身を守る特殊なTYPE:キャッスル

Ψ(▽W▽)Ψ<名前ややこしいドラ

(U・ω・U)<モチーフはヘブライ聖書にある“エリコの壁”です

(U・ω・U)<TYPE別性格診断と能力などで察する方もいるかと思いますが

(U・ω・U)<怖そうに見えるゲンジの方が実は弱くて

(U・ω・U)<ユウコは一人でも生きていけるだけの強さがある


P
Ψ(▽W▽)Ψ<元凶じゃねえか

(U・ω・U)<五割くらいね


煌玉獣
(U・ω・U)<現在判明してる三つはレジェンダリアにある

(Є・◇・)<あれを回収しろとか勘弁なんだが

(U・ω・U)<そして本編でもう一つ出た

謎解きについて感想ください。あなたは次のうちどれに当てはまる?

  • ぜんぶ分かった(楽勝っすわ)
  • だいたい分かった(ええんでね?)
  • 分からなかった(騙された!)
  • こんなん分かるか(描写不足やで)
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