長き旅路にて臨むもの   作:【風車之愚者】

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Death Parade ⑩

【朗報】<UBM>と遭遇することすらできない君たちへ

 

1:名無しのP

今なら誰でも特典武具ゲットのチャンス!

 

手順は簡単です!

まずログインしたらレジェンダリアのプリコットに行く。

他の街にいるなら頑張って移動してください。

自害コマンドを使う。

本当に死ぬことはないので安心してください!

注:セーブポイントを登録していないと最初からやり直しになります! プリコットのセーブポイントに触れておきましょう

 

街の東門まで歩く。

<UBM>のネーム表示を視認したら、空きのあるアイテムボックスを持ったまま、その場で三回回ってワンと鳴いた後にログアウトします。

 

次にログインしたとき、アイテムボックスを確認すると特典武具が入っています!!!!

 

 

2:名無しのマスター

これ本当ですか? 試そう

 

 

3:名無しのマスター

漂う罠ップ臭

 

 

4:名無しのマスター

<UBM>……特典武具……ウッ、アタマガ

 

 

5:名無しのマスター

>>2

おいおい死ぬわあいつ

 

 

6:名無しのマスター

自害したら問答無用でデスペナなんよ

ためそうじゃないの、ダメそうなの

 

 

7:名無しのマスター

今どきここまであからさまなガセネタも珍しい

 

 

8:名無しのマスター

布理骨兎……? てき……どこ……?

 

 

9:名無しのマスター

ほら、修羅は蠱毒(天地)に帰って

 

 

10:名無しのマスター

孤独に還って

一人リビングで見たくもないバラエティ見ながら安酒でも飲んでなさい

 

 

11:名無しのマスター

>>10

やめるんだそれは俺に効く

 

 

12:名無しのマスター

>>10

ヤメロォッ!

 

 

13:名無しのマスター

自害したらログインできなくなったのですが?????

 

 

14:名無しのマスター

 

 

15:名無しのマスター

 

 

16:名無しのマスター

残当

 

 

17:名無しのマスター

笑い事じゃありませんよ!!わざわざ黄河から必殺スキル使ってまで飛んできたというのにっ!

 

>>1

覚悟を決めてください。

あなたのことは地の果てまで追い詰めて報復します!

虚偽の情報で私を騙して、私の尊厳を粉々に破壊した罪は許されるものではないからです!裁判など必要ありません。あなたは極悪覇道の犯罪者です!監獄に叩き込まれる用意はできていますか!?

 

 

 

18:名無しのマスター

この短時間で国家間移動ってめちゃくちゃ速いな

クールタイムかコスト激重と見た

 

 

19:名無しのマスター

全財産を投入しました

くそ……戻ったら狩りで取り返さないと

 

 

20:名無しのマスター

一ついい? 杞憂ならいいんだけど

もし>>19が1の手順通りやってたら……次のログイン地点プリコットになってるんじゃない?

 

 

21:名無しのマスター

あっ

 

 

22:名無しのマスター

あっ

 

 

23:名無しのマスター

んっ?

 

 

24:名無しのマスター

つまり……?

 

 

25:名無しのマスター

えっと、黄河に戻るのにもう一回必殺スキル使わないといけないのでは?

 

 

26:名無しのマスター

うわあああああああああああくぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?!!?

 

 

27:名無しのマスター

いや草

 

 

28:名無しのマスター

見事な二段オチ

 

 

29:名無しのマスター

これは笑うしかない

 

 

30:名無しのマスター

いい夢見ろよ

 

 

31:名無しのマスター

ネットリテラシーは大事ってことだ

いい教訓になったな、授業料は高くついたが

 

 

32:名無しのマスター

以上の功績を以って汝の名は定められた

 

無一文で異国に到達した者

 

仙郷より来たりし放浪者

 

彼こそが後の世に語られる罠ップ破産迷子ニキである

 

 

33:罠ップ破産迷子ニキ

マジでどうしましょう

レジェンダリアって変態の魔窟なんですよね?

 

 

34:名無しのマスター

いやコテハン付けるんかい

 

 

35:名無しのマスター

>>33

とりあえずクエストしてお金稼ぎな

コストを貯めて必殺使うなり、カルディナのキャラバンとかに乗せていってもらうなりできるから

 

 

36:罠ップ破産迷子ニキ

>>35

ありがとう親切な人

 

とりあえずデスペナルティ明けたら<UBM>の討伐狙います。懸賞金とかあるかもしれないので

それまで倒されるんじゃありませんよ……

 

 

37:名無しのマスター

まあ一件落着やな

久しぶりに腹抱えて笑わせてもろたわ

 

 

38:名無しのマスター

よかったよかった(面白くて)

 

 

39:名無しのマスター

ちょい待て。流しそうになったが

 

 

40:名無しのマスター

もしかしなくても、<UBM>がいるのはガチ?

 

 

41:名無しのマスター

ガタッ

 

 

42:名無しのマスター

ふうん……なるほど?

俺じゃなかったら見逃してたね

 

 

43:罠ップ破産迷子ニキ

まっtやめてくださいあれはぼくの

 

 

44:名無しのマスター

もう遅い! こういうのは速い者勝ちじゃあ!

 

 

45:名無しのマスター

人を集めろ! いや、やっぱ来るな!

特典武具は私がいただく!

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 □■プリコット・東門

 

 絶え間ない砲火でゴブリンは数を減らしていく。

 ヘイゼルにとっては都合が良いことに、戦いは兵器対軍隊という構図になっていた。

 盾を掲げて愚直に前進するゴブリンを吹き飛ばし。

 弓と魔法による攻撃は防壁で防ぐ。

 無意味に命を散らしていく様子に、敵の狙いは別にあるとヘイゼルは察した。

 

(時間稼ぎですか)

 

 その理由はすぐ明らかになる。

 

『ッ!』

 

 突如、飛来する弾頭が城壁に設置された砲塔の一つを破壊する。

 

 敵陣から引き摺り出されるのは攻城兵器。

 魔力を物理的な破壊力に転換する十の槍。

 ゴブリンが作り上げられるような代物ではないが、何事にも例外はある。

 

 気がつけば【エフティアノス】は前線から姿を消しており、後方で作業するゴブリンに指示を飛ばしていた。

 遠目にも、ヘイゼルが用いる兵器とよく似た武装が次々と造られては戦線に投入されているのが見える。

 

(私の武装を見て、即興で組み上げたと……贋作とは良い度胸ですね。ですが)

 

 ヘイゼルは左腕に収納された短杖を取り出す。

 

『それは私の十八番なんですよ。【ツール・コンダクター】、起動』

 

 指揮棒のようにそれを振るうと、壊れた砲塔が分解、部品が剥離して組み変わる。

 ある部品は新しい銃座や装甲に。

 またある部品は彼女の手足となる小型機械に。

 

 砲撃を継続しつつ、ヘイゼルは次々と武装を製造する。

 破損した兵器を再利用して、小型機械をアシスタントに、元の二倍の設備を構築する。

 集中砲火で相手の兵器を粉砕する。

 

 そもそも【榛之魔術師】は機械の生産と運用をコンセプトに製造された煌玉人。

 同じ土俵に立つのなら、ゴブリンの付け焼き刃に勝るのは当然のこと。

 どうあがいても勝負はヘイゼルに軍配が上がる。

 

 ――物量戦ならば、という話ではあるが。

 

 

 ◇◆

 

 

 兵器をいくら模倣したところで勝ち目がないことは理解していた。

 だが耐える。

 

 配下が削られたことは遺憾であり、痛手である。

 だが耐える。

 

 すべては勝利のため。

 ここで負けたら後はない。

 だからこそ、己が抱える制約に追い詰められながらも今は耐える。

 

 もうしばらくの辛抱だ。

 じきに、機は熟す。

 

 

 ◇◆

 

 

『……おや?』

 

 ヘイゼルは眼下にゴブリン以外の人影を捉えて首を傾げた。

 

 ティアンではない。騎士団は門の内側に下がらせた。市民が迷い込むわけもない。

 ぽつぽつと、徐々に数を増やす人間。彼らは掲示板の書き込みを見て駆けつけた<マスター>たちだ。

 純粋に街を守ろうとする者、特典武具を狙う者、理由は様々だが戦力となることは間違いない。

 

 しかし、全員が足並みを揃えることができるかというとまた別の話で。

 

「行け行け、とにかくぶちかませ!」

「やめろお前ら! 味方に攻撃が当たってるじゃないか!」

 

 MVPになろうと周りを鑑みずに突撃する(じぶんのためにたたかう)遊戯派と、街を守ることを第一と考える(たにんのためにたたかう)世界派では噛み合うどころかお互いに足を引っ張り合う。

 たいていの者はここまで極端ではないが、数名が突出するだけで途端に協調は困難になる。

 

 即座に切り捨てるほど無能ではなく、さりとてヘイゼルがフレンドリーファイアに配慮するほど目覚ましい活躍はしていない。

 ヘイゼルはしばし悩んで……砲撃を続けた。

 

(私は特別な演算処理を組まずとも精密な狙いを付けられますからね。それに、凄腕なら自分で避けるでしょう)

 

 それでも、ほんのわずかに攻勢が緩む。

 

 その隙を【エフティアノス】は見逃さなかった。

 

 後方に下がっていた【エフティアノス】が前に出る。

 敵将の単騎駆けに銃砲は集中砲火を浴びせるが、鬼人は拳を大地に叩きつけて岩壁を作りこれを受ける。

 地属性魔法で固められた障害物を盾に<マスター>へ接近した【エフティアノス】はマントを脱ぎ捨て、無数の武器武装を背負うと。

 

『余の首を欲する者は来るがよい! 何人であろうと蹴散らしてくれるわ!』

 

 咆哮で挑発した。

 

「よし、一斉に行くぞ!」

 

 応えるのは遊戯派の<マスター>。

 はたから見れば無謀な突撃でも、彼らにとっては千載一遇のチャンスである。

 

 超級職や<超級>でない彼らにとって、特典武具は喉から手が出るくらいに欲しいコンテンツ。

 この状況も、獲物が向こうから倒されに来た状態だ。

 

「《流堰ノ射(スーファラル)》」

「《舞い踊る不敗の剣(フレイ)》!」

「《蜂毒崩壊(アリスタイオス)》ッ」

 

 鏃が、剣が、毒手が。

 各々が発動した必殺スキルが迫る。

 鬼人はそれらすべてを視認した上で、

 

『こうか? 《流堰ノ射(・・・・)》、《舞い踊る不敗の剣(・・・・・・・・)》、《 蜂毒崩壊(・・・・)》』

 

 ――同じスキルで迎撃した。

 

 一連の動作を見切れた者は何人いただろうか。

 瞬時にスキルを見て、理解し、武器を持ちかえ、<エンブリオ>のスキルすら己のものとして行使する。

 それを成し得るのは超音速機動と《技巧修集》の賜物であり、

 

『《戦技連結》』

 

 目にも止まらぬ速度で白刃が走る。

 それは停止であり、毒であり、剣舞。

 直後、三人の<マスター>は首を斬り飛ばされてデスペナルティになった。

 

『名付けるのであれば……《フェイタル・オーヴァーラッシュ》か』

 

 剣を片手に鬼人は思案する。

 スキルを繋ぎ、剪定し、新たなスキルを創造する。

 本来ならば【神】シリーズに届く技量の持ち主にしか認められない御技。

 【エフティアノス】第三のスキル《戦技連結》の効果によるものである。

 

 《技巧修集》のラーニングと《戦技連結》によるスキル編纂、配下にスキルを与える《啓蒙専政》。

 戦えば戦うほど、未知のスキルを見れば見るだけ、【エフティアノス】の軍勢は強化されていく。

 【エフティアノス】からすれば、<マスター>の方が珍しいスキルを披露してくれる獲物(・・)なのだった。

 

 自らが人に狙われる<UBM>であり、必ず新手がやってくると理解していたからこその時間稼ぎ。

 既に複数のスキルを見て取った【エフティアノス】は、万全の状態で反撃に移った。

 

(このままでは少し分が悪いですか)

 

 先ほどまでは配下のゴブリンが攻めてくるだけだった。

 ヘイゼルは広域殲滅攻撃で波を押し返せば良かった。

 しかし【エフティアノス】が参戦するとなると戦い方を見直す必要が出てくる。

 

 面を制する砲撃は【エフティアノス】の防御……岩壁や盾、耐性スキルなどに阻まれるか、超音速機動で見てから回避される。

 今の【エフティアノス】のスタイルは個人戦闘型。砲撃をすり抜けて接近された場合、兵器を各個撃破されるか、ヘイゼル本体が狙われる。

 そして、ヘイゼル単体の戦闘力はそれほど高くない。

 

(最初から戦闘に参加しなかった点は気になりますが。スキルを見るだけなら戦いながらできるはず。他に理由がある? 要警戒ですね)

 

『ともあれ、近づかせなければ良い話』

 

 空中機雷、迷宮防壁、局所空間歪曲。

 コストが嵩む兵器を惜しみなく積み重ねて【エフティアノス】を足止めし、その間にゴブリンを殲滅していく。

 もとより配下を先に倒さなければ鬼人にダメージは通らない。ヘイゼルは最善手で敵戦力を削る。

 

『ええい、小賢しい真似を』

『自分の行いを顧みてはいかがですか。鏡がご入り用ならお貸ししますよ』

『貴殿の方が余程口が回るではないか! だが、余にも都合があるゆえな。玩具遊びはここまでとしよう』

 

 巻き込まれた<マスター>ごと障害物を薙ぎ払った【エフティアノス】は槍を構え、

 

『――《ディストーション・パイルⅡ》』

 ――ヘイゼルを貫いた。

 

 本来は【衝神】の奥義、されどこの技は模倣に過ぎず。

 空間系スキルを組み合わせて作り上げた技に、文献で目にしたスキルの名を借り受けたというだけのもの。

 それでも前方の空間に射程を伸ばす刺突は離れたヘイゼルの胸部を穿ち、彼女を機能停止に追い込む。

 

『っ……』

 

 同時にヘイゼルが操作していた兵器群は制御を離れ、正確無比な迎撃は散発的な抵抗に成り下がった。

 後は一つずつ破壊してしまえば兵器の修復はなされず、ゴブリンを殲滅する手段は失われる。

 

『生き残ったのは一千と五百か……まあよい。敵方の将は討ち取った! 我らの勝利は目前である! 皆のもの、余に続け! このまま街を攻め落とす!』

 

 高揚したゴブリンが門に押し寄せた、その時。

 

「ええい離しなさいカヅキ! 騎士として、ここで名乗りを上げずにどうするというのですか!」

「本音は?」

「ゴブリンですよゴブリン、しかも皇帝! 負けたらどんな辱めを受けてしまうのか想像に難くありません! 後生ですから行かせてくださいお願いします!」

「今そういう空気じゃないんだよ! てか味方が瞬殺されたの見えてなかったのか!? おいエクス、トルテ、手伝ってくれ! こいつ力強い!」

 

 騒ぐ少年を振りほどき、一歩を踏み出す者がいた。

 黄金色の髪をシニョンにしてまとめた美女だ。

 華美な鎧に羽兜をかぶり、両手剣を構える。

 門を背に、ゴブリンと対峙する。

 

「私は【聖騎士】クッコロ! ゴブリンの皇帝よ、お前の好きにはさせません! 我が剣の錆となりなさい!」

 

 鼻息荒く、一人のゆうしゃは猛進した。

 

To be continued

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