【朗報】人類、アンドロイドに勝利【やったぜ】   作:とっとと

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【戦線報告版】地上防衛戦

369:司令部

イ番隊より各隊に通達。南部防壁に負傷者多数。ドローン及び近接戦仕様アンドロイドが多数確認。ゴ番、ロ番隊は速やかに援護及び救出に向かって下さい。

 

370:南部戦線

こちら防壁南部。負傷者は十余名。戦線維持は三時間ほどが限界と思われるため、重装備による集団戦力が必須。ロ番隊複数名による救援求む

 

371:ロ番隊

ロ番隊向かいました。持ちこたえてください

 

372:ゴ番隊

ゴ番隊準備整いました。カタパルトにより医療用品を投下支援します。本体到着にさほど時間はかかりません。

 

373:北部戦線

北部のアンドロイド、一時的掃討完了しました。防壁構築のため、ト番隊隊員ナベシマがシェルピンスキーのカーペットの裁断添付を使用したいとのことです。

 

374:シ番隊

北部制圧の補助完了致しました、次いで南部の助力に向かいます

 

375:司令部

>>373

申請を拒否します。「シェルピンスキーのカーペットの裁断添付」は空間位相にダメージを与える可能性が考えられ、そこから戦線が崩壊する可能性があります。

代用案として「アキレスと亀の競争舞台」を勧めます。限界範囲・制限時間はナベシマ隊員が熟知しておりますので、彼の指示に従って下さい。

ナベシマ隊員は司令部と直接回線で展開指揮の協力をお願いします。

 

376:地下司令部

こちら地下司令部。トより司令へ通達。間も無くマックスウェルの悪魔の実在証明が起動前点検に入ります。それに伴い、兵器開発室がドームシールドver’9th起動準備に入ります。展開予測地域を添付致しました、各隊はこの地域を避けるように留意してください。巻き込まれて死亡する恐れがあります。

 

[画像]

 

 

 


 

 端末から得た情報に思わず破顔する。ジープに揺られながらも、俺はしっかりと隣に座る隊長に抱き付いた。相変わらず程よい体温と柔らかさ、これ以上の癒しなど、きっとこの世に存在しないだろう。

 

「…あの、クアン…? どうしたの…?」

 

 俺の不意な行動のせいで、疲労気味だったのか隊長は座席シートに倒れ込んでしまう。必然的に俺はその上から覆いかぶさる形になる。そのせいで顔が真っ赤になったかわいい隊長を見られて満足だ。

 俺は抱きつく力を強くして、堪えきれない笑みを満面に広げながら隊長に自分の端末画面を見せる。

 

()隊長〜トがやってくれましたよ〜! マックスウェルが動くのも間近です!!」

「まだ四日しか経ってないのに!?」

 

 驚く隊長の顔もありだ。

 俺は自分より幼い少年の持つ、長い銀の髪を撫でる。髪型は相変わらずポニーテール。代わり映えはないが、隊長に一番似合う髪型なので特に文句はない。

 

「…って、それと僕に抱きつくことは話が別!! 今は任務中だよ!!」

 

 ありゃまぁ、気付かれてしまった。半ば無理やり引き剥がされた俺は座席の背もたれに寄りかかる。隊長はご立腹のご様子で、何度かシ番隊の制服である黒色の外套についたシワを軽く伸ばしている。サイズが微妙にあってないから、それがむしろ可愛さを助長させる。

 そう思いながら眺めていると、李隊長は機嫌が極めて悪そうなジト目を俺に向けてきた。

 

「失敬。でも女の子に抱きつかれて役得でしょ?」

「うるさい!! もうっ…」

 

 拗ねた顔で目を逸らされる。中々にクる動作だ、いやーほんと候補とは言え副隊長になれて良かったぁと満足していたところ、唐突に俺の右頬を何かが掠めた。

 冷たい感触。おそらく頬はわずかに切れているが、大事には至らない。右耳からはばちばちと火花が散る音が響き出した。

 

 右に目をやる。俺の頬を掠めたのは一振りの合金製ブレード。ホウオウとやらの鳥の装飾があしらわれたそれは、間違いなく李隊長のものだ。

 そのブレードの先端…つまり、俺の背後には見えない何かがあって、切っ先はそれを突き刺している。

 

 火花が散ると同時、電子音とともに見えない何かは姿を現す。恐らくはステルスで潜伏していた戦闘仕様アンドロイドだろう。

 どうやら俺は隊長に借りを一つ作ってしまったようだ。

 

「…要る?」

「片側をお願い」

 

 俺は腰元に収めてあるブレードの柄に手を添え、隊長と顔を見合わせる。お互いにしっかりとうなずいてから、目ぼしい箇所へとブレードを振るう。

 

「───…ッ!」

 

 そうして俺と隊長は、全く同じタイミングでお互いの背後に潜んでいた複数台のアンドロイドを、一瞬で切り壊した。

 配置的に俺と隊長のみを正確に狙っていたらしい。

 

 多分だが、こうやって撃破されることもあの人形達にとっては織り込み済みだったのだろう。

 いつのまにか、俺達シ番隊を運ぶ3台のジープを前に、アンドロイドの小規模な軍勢が現れている。

 

 それを見て、隊長は特に慌てもせず指示を出す。

 

「シ番隊総員、───第二種戦闘配置」

 

 李隊長が白金色の柄を手にする。

 展開されるのは大振りのレーザーブレード。使用者の身の丈を遥かに超えるそれは、不思議と隊長と釣り合ってるように見えた。

 

「この群れを突破次第、迅速で南部に向かいます。戦力の低下は避けて下さい」

 

 言外に死ぬなと言いながら、彼は刃を振るった。

 

 


 

 

540:シ番隊

南部戦線への移動中、アンドロイドの群生と会敵。これより戦闘に入ります。援軍の必要はありません。

 

541:ロ番隊

南部戦線到着!!現時刻より支援攻撃を開始!!

 

542:南部戦線

ゴ、ロの支援感謝します。混合部隊による防衛戦を再開。

 

543:司令部

各隊に通達。現在持ち場の無い隊員は即刻南部防壁へと向かって下さい。他戦線にいる隊員は拮抗の維持或いはアンドロイドの殲滅をお願いします。

 

544:ト番隊

マックスウェルの点検終了。システムオールグリーン。これより再起動シークエンスに入ります。我々の勝利まであと少しです。各隊員は今しばらく持ちこたえて下さい。このメッセージは三分毎に繰り返します。

 

545:ゴ番隊

これより散開し、各戦線の医療支援に入ります。

 

546:司令部

兵器開発室がドームシールドver’9th起動準備に入ります。展開予測地域を添付致しました、各隊はこの地域を避けるように留意してください。巻き込まれて死亡する恐れがあります。

 

[画像]

 

547:ク番隊

これより展開予測地域内にいる隊員の避難誘導を開始します。舌を噛まないように落ち着いて下さい。大人しく我々に運ばれて下さい。

 

548:兵器開発室

ドームシールドの動力炉とマックスウェルの連結かんりょー。ほらほら急いで急いでー、早くしないともろともに死んじゃうよー、骨も残らないよー

 

549:ト番隊

マックスウェルの動作に現在異常点なし。この調子ならもうすぐで稼働するね。

 

550:北部戦線

拮抗維持態勢の構築に成功。これより防衛のみに専念するため、こちらからの連絡はこれ以降なしとする。

それでは各々の健闘を祈る

 

551:シ番隊

南部戦線に到着しました、援護に入ります

 

552:ト番隊

マックスウェルの点検終了。システムオールグリーン。これより再起動シークエンスに入ります。我々の勝利まであと少しです。各隊員は今しばらく持ちこたえて下さい。このメッセージは三分毎に繰り返します。

 

553:司令部

兵器開発室がドームシールドver’9th起動準備に入ります。展開予測地域を添付致しました、各隊はこの地域を避けるように留意してください。巻き込まれて死亡する恐れがあります。

 

[画像]

 

554:ク番隊

ロ番隊隊員数名確保、南部戦線へ誘導します。

 

 

 


 

 

 曇天の中、悲鳴と怒号が響き渡る。

 全身を覆う黒い外骨格を纏う者達は、その身をもって人を真似た者達へと突撃し粉砕し、踏み砕く。

 灰色の外套を纏った者達は、瓦礫や空に紛れアンドロイド達を狙撃し、撃ち抜いていく。

 

 だがアンドロイド達も負けじと物量で押し、時にはステルスで溶け込み奇襲し、時には壊れながらも前に進み、一人でも多くの人を殺そうとしてくる。

 

 正しくここは戦場だ。救いなんてあったもんじゃない。

 人が死ぬ。機械が壊れる。

 どうしてこうなったのか───その問いに答えられるものは、今この場には存在しない。

 

「下がれ下がれ下がれ!! これ以上死ぬな!!」

「狙撃班は退路を確保! シ番隊が来たぞ! 全力でサポートに回れ!!」

 

 目まぐるしく回る戦場。積み上げられる死体。飛び交う斬撃と銃弾。人間達の誰もが生きようともがき続けている。

 彼らは自らの命を投げ出す事になるとしても、青空を求めたのだ。そのために今こうやって、無数のアンドロイド達と戦いを繰り広げている。

 そこに一つの猜疑心などなく、むしろある方がおかしい。いつ死ぬかわからない状況の中で、戦いに疑問を持つことなど不可能なのだから。

 

 時間が経てども悲鳴、爆発、戦闘音は止むことを知らない。

 だが戦場に動きがあった。人間達が、少しずつ後退し始めたのだ。これを好機と算出したのか、どんどんとアンドロイド達は進軍する。大量の機械が人を押しつぶそうと闊歩する。

 

 だがそれこそが狙いであり、しかし同時に人間が抱く疑問の始まりだった。

 

 アンドロイド達が進軍した瞬間、人間側の陣地の中央から無色の光が立ち上った。

 それは天に届き得る程の長さだ。

 光は高高度に到達した瞬間、爆ぜた。

 爆ぜた光は、幕のように広がり、人間側の陣地をドーム状に覆っていく。

 これが「ドームシールド」アンドロイドの侵入を阻むバリアの完成だ。

 その構築の最中に進軍していたアンドロイドの大群の大半が、バリアに押し潰され、焼き切られ、機能を停止していく。

 何とかバリアの内側に入ることが出来たアンドロイド達も、即座に人間に取り押さえられ、無力化された。

 

 バリアの外にいるアンドロイド達は進軍しようとバリアに触れるが、尽くが弾かれ、焼かれ、ダメージを負う。何度も侵入を試みても、完全に無意味または現在の装備で突破は不可能と判断したのか、アンドロイド達は退却した。

 

 それを見届けて、人間達は歓喜の声を上げる。

 守りきったのだと、やりきったのだと。

 そうして───家族達に、岩の空ではなく本当の空を見せることができるのだと、大いに歓喜の声を上げて笑った。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

793:司令部

我々の勝利です。皆様、お疲れ様でした。

これより負傷者の確認・治療を開始します。

 

 

 

 















はじめまして、とっととです。
一区切りがついたのでここで色々と語ろうかと思います。
四話連続して前書き・後書きが無かったのは物語に没入して欲しいのと、スレッドに後書は無いもんなぁ…無い方が日常を覗き見してる感あるかなって言う独自の考えからです。
今回は物語の一区切りなため、スレッドオンリーだけではない形式にし、後書きも挟まさせて頂きました。

正直な話、ここまで伸びると思っていなくて滅茶苦茶びびっています。ええのんか?ええのんか?稚作が☆10~7なんて頂いてええですのん?(震え声)おかげさまでランキングにも躍り出ることも出来、皆様には感謝をしてもし切れません。

次回からはもちろん今まで通りのスレッド方式で。とは言え、他に書きたい物語もあるので遅れるかもしれませんが(同サイトに投稿するつもりなのでもしかしたら出会うかも?)
それでは今回はこの辺りで、また次の章の終盤で会いましょう。
皆さま、良き読書時間を。


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