ガンダムビルドファイターズ - Lost Remember   作:杉村 祐介

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 この作品は以下の作品の続編に位置します。
【ガンダムビルドファイターズ - ロスト】
https://syosetu.org/novel/86320/

 この作品は以下の作品のキャラクターをゲスト出演させて頂いております。
【ガンダムビルドファイターS(シャドウ)】
https://syosetu.org/novel/184000


第零話 接点

Side:コウイチ

 

 まだ四月だというのに、すでに初夏の気配が差し込んできた。エアコンの故障しているこの部屋は、かろうじて首振りの扇風機が生ぬるい空気の流れを作っているに過ぎなかった。そんな部屋に男と少年の姿がぽつり。なにやら険しい表情で、ただただキーボードを叩いている音が響く。

 

「あったぞ!」

 

 パソコンの画面に喰い付いていたヒカワが、やっと目的のデータを見つけ出して声を上げた。横に居たアシハラがそれを覗き込む。

 

「遅い」

「これでも頑張ったほうだ。相手は変幻自在、神出鬼没の幽霊だ……証拠の画像すら破損させていく徹底っぷりには僕も関心するね」

「はいはい」

 

 相棒の愚痴を軽く流してから、アシハラはその画面をじっと見ていた。映し出されているのはガンプラバトルのワンシーン。たった数十秒の動画だったが、荒野の上でバルバトスを踏みつけ、腕を引きちぎっている……その姿は漆黒を主に、朱い八枚羽と金色の関節装甲がギラつく。まるで悪魔を狩る死神のようだ。

 

「これが問題の?」

「ああ。最初はパーツハンターの類いかと思ってたが、どうも違うらしい」

 

 戦いの様子をループ再生させているが、ヒカワにとってはそれがどうも出会った当時のアシハラを連想させてしまう。いや、それ以上に嫌悪感の出る戦いだった。戦意の喪失した相手をわざと殺さず、手足をちぎり、頭部を執拗に殴る。そして最後は胴体を踏み潰していた。あまりにも酷いガンプラバトルだ。一刻も早く止めなければ。

 部屋の暑さで汗が止まらないヒカワをよそに、アシハラは冷静に、パソコンの主導権を奪ってモニターを見た。

 

「ええと、機体名は――」

 

 画面を一時停止させてからズームイン。その禍々しいガンプラの上にマウスをホバーさせると、詳細情報がポップアウトする。とはいえそのデータの多くは文字化けしており人間には解読不能だった。唯一読めたのは1byte文字列で表示されていた型式番号と、ファイターネームだけ。

 

「ロストフリーダム・ディープエス、パイロットはユウ・ハセガワ」

「……それで、ユウ・ハセガワに合致するIDを照合してみたんだけど、バトル履歴は三年前の八月に数回あっただけだ」

「三年前って、PPSE社の運営時代だろ。よく見つけたな」

「まぁ、元ワークスチームのコネクションもあったから、なんとかね」

 

 アシハラは「バカとハサミは使いよう」という言葉を飲み込んで、重たい専用ジャケットを羽織った。データとして回収できたのはたった数十秒の動画だけ。ならばそれ以上は、実直に足で探すしかない。

 ヒカワも同じように考えたのだろう。服装を改めて整えて出発の準備をする。

 

 

 

「お、出発か?『二、審判員は迅速であれ』、ユウジちゃんも分かってきたじゃない~」

 

 入れ違いに入ってきたアロハシャツの男が茶化して言った。アシハラは彼を軽く睨んで横を素通りする。その後ろをついていくヒカワに、彼が先程まで調査してきたメモを手渡して。

 

「そんじゃ、俺ちゃんは874ちゃんと一緒にお留守番してっから。お巡りワンワンよろしく~」

 

 今回の一件に関しては874の力を借りなければ解決不能という見解がヒカワにはあったが、『あまり接点を持つべきではない』という理由でこのアロハシャツの彼がそれを許可しなかった。874との接点か、はたまたロストフリーダムとの接点かは定かではない。

 だが一つ言えるのは、ロストフリーダムという存在はおおよそ普通のガンプラ警察には追えない代物なのだろう。でなければ彼ら『特務』にこんなイレギュラーな調査依頼が舞い込んでくるはずがなかった。

 

 これは非常にディープな案件だ、などと考えていたら、ヒカワは横っ腹を軽くどつかれた。

 

「なにぼーっとしてんだ。行くぞ」

 

 この生意気な少年だけが今回の頼みの綱だ。ヒカワは彼の態度を不満に思いつつも、その芯では信頼を置いていた。

 

「ああ、そうだな」

 

 彼ならあの悪魔のようなガンプラを前にしても、僕のように怖気づくことなく、また頭に血が上ることもなく、冷静に対処してくれるだろう。あのガンプラを見た限りでは、ビルダーとしてもファイターとしてもそこまでの腕ではないとも感じた。出会えさえすれば、なんとかなるだろう。

 だがヒカワの直感は何かを警告していた。それは洞察力の鋭いアシハラでは分からない、むしろシステム開発に携わった者にのみ理解できる領分の警告だ。黄色いアラートならばまだしも、それは朱いDangerを指し示していた。

 

 朱い粒子を纏った未知のガンプラを調査せよ。上層部の命令を改めて考えても、やはりこの事件は、普段とは異質なものになるに違いない。イレギュラー。本流とは違う流れ。まるで自分が別人で、ここが夢の中だと錯覚するような違和感につつまれながらも、横にいるバディだけは本物だ。

 

「まずは出現回数の一番多いB地区のゲームセンターへ」

「分かった」

 

 ヒカワとアシハラ、二人の公式審判員は部屋の扉を開けた。

 

 

 

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>>>第零話 / 接点

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