YOKOSUKA Rider`s Guild   作:灯火011

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Type-akatuki(no Bike)

 横須賀、駆逐艦寮。第六駆逐隊にあてがわれた部屋に、2人の艦娘の影があった。

 

「最近どうなのよ。響」

 

 そういうのは、布団から頭を出している暁だ。響に諭されていらい、趣味に余念がない。

 

「ん?何がどうなんだい」

 

 そう返すのは、同じように布団にくるまり、頭を出している響だ。響としては明日、早番なので早く寝たいのだが、姉に話しかけられれば寝るわけにもいかない。 

 

「バイクよバイク。夜も乗りにいってるでしょう?」

 

 何がどうなのか、と響が思っていると、そう答えが返ってきた。そう、暁は響のバイクがどうなのか、それこそ乗っていて楽しいのか、そう聞いているのだ。意図を理解した響は、暁の顔を見ながら口角を上げる。 

 

「あぁ、うん。最高だよ。こう、思い通りに走れる足っていうだけでも最高だし、しかも自分のお気に入りのバイクときてる。言うこと無しだよ」

 

 そう響が答えれば、暁はむすっと頬を膨らませた。

 

「いいわねぇ。私もあれから趣味を色々探してみているんだけど…なかなか無くて」

「そうなの?姉さんだったらお菓子とか作るイメージを勝手にもっていたけど」

 

 意外といったふうに響は言葉を返した。実際、暁はよくお菓子を食べる艦娘である。提督である高浦にからかわれるたびにもうお菓子を食べない!とかいうのだが、翌日にはまた懲りずにお菓子を食べるあたり、相当なもの好きである。

 

「私は食べる方専門なの。私が作るよりもその道のプロが作ったほうがおいしいにきまってるでしょ?」

「それはそうだけどね。でも、姉さんのお菓子も食べてみたいね」

「むー。ま、気が乗ったらね」

 

 取り留めなく続く会話。ふと、響は暁を見ながら上半身を起こした。暁も何事かとつられて上半身を起こす。 

 

「ねぇ。街中で何か気になったものとかはないのかい?」

「特に無いわね。なんで?」

 

 暁は首を傾げた。それを見た響は、苦笑しながら言葉を続ける。

 

「私の趣味のバイクはさ。街中で気に入った奴がバイクだったから趣味になったんだよ。気にって、手に入れたくて免許取って、手に入れたからさ。何かこう、気になったものがあればそれを趣味にすればいいんじゃないかーって思っただけだけさ」

 

 なるほど、といったふうに暁は手を合わせる。だが、思い返してみても。

 

「気になった物、やっぱり無いわね…」

 

 それが暁の答えであった。響は口に手を当てて苦笑する。 

 

「ま、仕方ないんじゃないかな。今まで趣味なんて気にしてなかったんでしょう?」

「ええ」

「気長に探せばいいと思うよ。趣味は逃げるもんじゃないし」

 

 その言葉に暁は少し安心する。

 

「確かにそうね。趣味は逃げないわよね!」

 

 暁がそういったと当時に、夜の12時を意味する鐘が鳴り始める。

 

「いけない。じゃあ、姉さん。あした早番だからそろそろ寝るね」

「あ、うん。おやすみ」

「おやすみなさい。姉さん」

 

 そういって布団に入った響を、暁はぼんやりと見つめていた。そして翌日、のそりと暁が起床したとき、その背中に、小さく声がかかる。

 

「響のバイク、大きいのです。暁、知ってましたか?」

 

 艦娘の電だ。夜間の哨戒から戻ってきて、今から寝るのであろう。制服ではなく、緩やかな私服に着替え、髪を解いている。見た目では髪の色が違うものの、なるほど暁の妹かと思うぐらいに瓜二つだ。

 

「知っているわ。まったくもう。まったくもう!私はまだ趣味を見つけていないのに、響ったら楽しんでいるんだもの。嫉妬しちゃうわ」

 

 むすっと顔を膨らませる暁を見て、電はどこかのバイク乗りの艦娘と同じような苦笑を顔に浮かべていた。

 

「お姉ちゃんはまだ目覚めてから1か月とたっていないからしょうがないのです」

「それもそうよね。響からも同じような事を言われたわ」

 

 ふふ、と同じような笑みを浮かべ。笑い合う。

 

「そういえば、電も休みは何かしてたわよね?」

「お酒の勉強とお料理の勉強なのです。オフの日は適当に作って楽しんでいるのですよ」

 

 電はそう言いながら、レシピブックを自分の机から取り出していた。そこには多数の付箋とコメントがかかれていて、本当に好きでやっているんだなと感心させられるものであった。

 

「ふぅん…ねぇ、今度、お相伴に与ってもいいかしら」

「大丈夫なのです。お姉ちゃんなら、今度と言わず、今晩からでも」

「ありがとう、楽しみにしているわ」

 

 暁はそう言いながら、布団から体を完全に出し、背伸びをする。その姿を見た電は逆に、自らの布団へと体を沈めていた。

 

「それじゃあ一旦仮眠を取るのです」

「ん。お休み、電」

「おやすみなさい。お姉ちゃん」


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