目が覚めると何度も見た事がある天井が目に入った。蝶屋敷だ。そっか、気絶して宇髄さんに運ばれたのか。怪我も治してもらった事だし帰ろう。
「どこに行くんですか?秋月さん」
「あ、カナエさん。このたびはお世話になりました!怪我も治りましたのでそろそろ帰ろうかと」
「でもそっちは窓よ?出口はこっちだけど」
「そんなの分かってますよ。ただこっちから出たほうが自分の隊服を早く取れると思ったので」
「隊服なら洗濯中よ」
「あ、そうですか。じゃあまた後日届けてください。それじゃあ」
カナエさんに挨拶をしてそのまま窓から出ていこうとするがそこには妹のしのぶと継子のカナヲがいた。後ろのドアはカナエさんが守っている。
「逃げようとしても無駄ですよ」
「…準備が良すぎないですか」
「逃げようとするからです。それと秋月さんにはやってもらいたい事があるので」
「荷物持ちですか?それともお使いですか?」
「ううん。そこの二人を鍛えて欲しいの」
「しのぶとカナヲですか?でもなんで俺が?」
「あなたは私より強いでしょ?だからいい機会になると思って」
「別に強さとか関係ないと思うのですが…。それに自分教えるの下手ですよ?」
「あなたは何も教えなくていいわ。ただ模擬戦をやって貰えればそれで十分よ。そうしたらあの子たちの進むべき道がわかるはずだから」
「そういう事ならまぁいいですけど…」
「良かった!あ、このあと薬と注射だからちゃんと来てね。来なかったら悲鳴嶼さんに修行をするよう伝えるからね」
さらっと言って出て行くカナエさん。注射はもちろん薬も嫌だ。うん、帰ろう。そう思い窓から出るとしのぶとカナヲに捕まった。二人がいる事すっかり忘れていた。
「えっと、とりあえず打ち合い稽古するか」
「なんで私があなたなんかと…。私は姉さんと稽古したいのに」
「柱の貴重な時間を割いて稽古してやるんだ。ありがたく思え」
「柱なりたての人に言われたくないです。て言うか階級が私より上だからって気軽に話さないでください」
「いいだろ?階級も歳も上なんだから」
「私は嫌なんです!」
「難しいお年頃だな…」
「あなたと変わらないでしょ?!」
「はいはい。それより早速始めるぞ。ほら、かかってきなさい」
軽く挑発するとしのぶは勢いよく飛び込んでくる。鬼の首を斬れないくらい弱い力でも、早さは俺と同等くらいだ。それに体が柔らかく突きの早さなら柱とそう変わらない。お互いに技を使わないという縛りがあるからこちらも手が抜けない。
「随分と本気になって私の攻撃を捌いてますね。余裕がないんですか?」
「余裕はあるけど怪我したくないからな。注射と薬は嫌いだ」
「男で柱なのに何情けないこと言ってるんですか。よく仕事できますね」
「怪我する時は大怪我で気絶してること多いからな。その時は痛みが感じないから全然大丈夫だ」
「なら私が気絶させてあげますよ」
俺が挑発に乗らなかったのが不満なのか突きの早さがさらに上がる。だがそれと同時に雑になっている。落ち着いて一つ一つ捌き少し早さが遅くなったところでしのぶの木刀を破壊し、そのまま顔の近くで寸止めする。これにて試合終了。
「挑発するのもいいがそこで攻撃が雑になったらダメだ。隙が大きくなりやすいからこうやって反撃されるぞ」
悪いところを指摘するとしのぶは唇を噛み悔しそうにしてるが、何も反論せず大人しく道場を出て行った。そんなにきついことは言ってないはずなのに。嫌われたかな。後で菓子でも買って慰めに行こう。それより次はカナヲだ。反応なさすぎて忘れていた。
「それじゃあカナヲもやろうか。とりあえずしのぶみたいに打ち込んできて」
「……」
「打ち込みが嫌なら機能回復訓練でもする?」
「……」
「えっと…聞いてる?」
「……」
相変わらずずっとニコニコしてるカナヲ。ちゃんと聞いてるのか不安になる。なんて声をかけようか考えているとカナヲはコインを取り出して親指で弾く。クルクルと宙を舞うコインを手の甲で止めて表か裏の確認をする。
「結果はどうだった?」
「私は師範と修行したいので師範のとこにい行きます」
「そ、そうなの?でも現役の柱と稽古するのは貴重なことだよ?」
「私は師範と修行したいので師範のとこに行きます」
「そ、そうか…。頑張ってね」
「はい」
頭を下げて少し早足で出て行くカナヲ。何か嫌われることでもしたかな?しのぶと言いカナヲと言い女の子は何考えてるかわからない。機嫌直してもらうために何か菓子でも買いに行こうとすると烏丸が飛んできた。
「伝令!伝令!蝶屋敷付近ニ上弦ノニノ目撃情報アリ!胡蝶カナエ、鳴海秋月ノ二名ハ上弦ノニノ調査、及ビ討伐セヨ!」