「うぉぉおおお!てめぇら絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!“シャドーボールからのサイコキネシス”!“リフレクターとはかいこうせん”!!」
「「「「「ぎぃやぁぁぁああ!??」」」」」
その映像はまさに無双シリーズの如し。
放たれた複数のシャドーボールを維持しながら、サイコキネシスで強引に方向転換させる。一歩進めば敵は吹っ飛び、攻撃技は悉く周囲を高速回転するシャドーボールに防がれてポケモン達もダウンする。
圧倒的な力を有したサーナイトの後ろ姿はまさに六道仙人(違います)。
対するエーフィはもっとえげつない。
この世界において“リフレクター”という技は予想を遥かに超える万能技だ。
そんな使い方を考えたことが今までなかっただけなのだろうが、敵の後ろと左右にバリアの如く展開をすることで移動場所を限定させてそのまま前方からはかいこうせんで押しつぶす。
おもちゃ箱の容量を超えて物質を詰め込み、サイコパワーで強引に潰して箱詰めしているようなもの。ミンチよりひでぇや。
もっとも指示したのはタツミなので今更だった。
前回までエリカに会って色々とお世話になっていたのだが、今彼等がロケット団を千切っては投げているのには理由があった。
わかりやすく言えば襲撃されたのである。
「はい。これでタツミさんのトレーナー登録は完了です。お疲れさまでした」
「いえいえ。突然の連絡だったのにも関わらず、対応してくださってありがとうございました」
ジムリーダーが使用する部屋、一般の個室よりも大きいとは言えどもエリカ嬢と二人きり…何も起きないはずもなく…
なんてことはなかった。当然である。
いくら大好きなエリカ嬢が眼前に居て二人きり(ポケモン達は見なかったことにする)であったとしても、公共の場で盛るほどタツミは獣ではない。
というよりも相手からしたら初対面であるのにそんな甘々なムードを出す程、この作品の展開は早くなかった。
『サナー?(マスター?)』
いや出したかったのだが、サーナイトがそのような不埒なことを許すはずもなく、テレパシーで事前に釘を刺していたことが大きいだろう。
サーナイト特有の大きな瞳から光が消えていれば誰だって従う。仕方ないね。
(流石に初対面の相手に告白するほど理性を失うようなことは無いと思うんだけど…無いよね?)
『フィ(知らんな)』
他の女性ならいざ知らず、
(セシリアはここで突撃するよりも、冷静に相手を観察してポイントを抑えることが大事だと言っているのか…?確かに一理ある。戦闘と恋は同じようなもの…。であれば彼女の一挙手一投足から感情を読み取ってからうまく距離を詰めるべきだと、そう伝えているのか(※違います))
違います。
彼女からしたらタツミが他の女勢に色目を使わないでほしいという気持ちを抑えきれていないだけである。
そんなエリカを睨みつけるサーナイトの視線には気づかずにタツミとエリカの会話は終わる。
ジムリーダーであるエリカ自身が自分達の見送りをするということで、周囲のジムや移動の際の注意事項などを確認している時だった。
タマムシジムの扉が破壊され、多数のロケット団が突入してきたのだ。
「は?」
「な…突然なんですか貴女達は!?」
「やれ、マタドガス!“スモッグ”!!」
『フィフィ!(危ないわ)』
反応に遅れた二人を護るように“ひかりのかべ”を張ったことで直撃は防げたが、近くで作業していた女性スタッフやジムトレーナーが被害にあってしまう。
スモッグは大気汚染された煙を吐き出す技であり、ゲーム内では確率で毒にする効果を持つ。
外で使用する分には大した脅威にはならないものの、洞窟などの換気がしにくい場所での使用は大変脅威だ。
幸い太陽光を入れるために天井の一部を開放しているため中毒症状にまで発展することはないだろうが、完全に不意を突かれたトレーナー達はその場で気を失った。
その隙を使ってしたっぱ団員らがズバットやアーボを使って他のトレーナーへと攻撃を敢行していく。
「ラフレシア、お願いします!…突然ジムに襲撃を行うなど、何を考えているのですか!?」
「黙ってろジムリーダー。まさかアンタがアタシ等を裏切るなんて考えたことはなかったぜ」
「裏切る…まさか!そんなこと!」
「…は?どういうことですかエリカさん…?」
マタドガスを連れたロケット団の団員、おそらく幹部クラスなのだろうその女はジム襲撃の
タマムシジムのジムリーダーを務めるエリカさんが、ロケット団を裏切った?
理解が追いつかない。
「報告通りのポケモン…はんっ!アンタがウチの部下を
「タツミさんがそのようなことを…?完全な誤解です!
「アンタが指示を出した出してないは大した問題じゃぁない。アンタを負かすほど実力者をウチラに報告することを怠ったのは紛れもない事実なんだよ!つまりこれは落とし前だ!マタドガス!“やきつくす”!!」
「イゾルデ!“ひかりのかべ”」
『フィ!(合点承知!)』
タツミが指示したいことをテレパシーで瞬時に把握したエーフィはひかりのかべを筒状にして開放された天井へとつなげた。
エリカのラフレシアだけでなくジムを破壊する意思を持って放たれた剛炎は、誘導路に沿って天井から噴出していく。
ある程度の高さまで伸ばしていたので、周囲の木々に燃え移るようなことにはならないはずだ。
「な、ひかりのかべを使って防いだだと!?」
「セシリア!」
『サナ!(委細承知!)』
「マダ!??」
「マダドガス!?」
どくタイプはエスパータイプが弱点である。
ある程度のトレーナーであれば至極当然の法則だが、この法則は圧倒的なレベル差があっても適応される。
マタドガスになっている以上はレベルや戦闘経験値も多少なり稼いでいるのだろうが、2匹を相手取るには到底及ばない。
ここでサイコキネシスをきゅうしょにぶち込んでしまえば即死だろうと判断したタツミの意向に乗っ取ってねんりきレベルの出力で地面へと叩きつけた。その上で全方位から攻撃を受けたマタドガスは何をされたのかもわからないままきぜつしていく。
「バカな…サカキ様が育て上げたマタドガスが一瞬で…」
「サナ…」
「――っっ!ほんとに
流石は幹部というべきか。
サカキが鍛え上げたらしいマタドガスを一瞬で倒したことで呆気にとられたもののすぐに持ち直して腰につけたボールに手を伸ばしていた。
それよりも早くサーナイトが頸動脈に手刀を押し付けたことでボールを投げる事は叶わなかったのだが、それでもしたっぱとは比べ物にならないほどの戦闘経験があったのだろう。
ためらいもなく命を狙いにいったサーナイトとそのトレーナーであるタツミに信じられないといった視線を送る。
「タマムシシティに来るまでは自然と共に暮らしていたんでね。命のやり取りなんてしょっちゅうだよ」
「…へっ。まさかウチがこんなヘマをするとは…」
「殺しはしない。ただ殺してほしいと思うぐらいの事をしてでも情報を吐かせるけど、念の為に聞いておく。素直に話す気は?」
「……」
それに気づいたトレーナー達は煙を吸い込んだ負傷者を救助しつつ、動揺するしたっぱ達に反撃を開始していた。
突然の襲撃に対して被害は少ない。
実は外で火を放った者達もいたようだが、覗き見していたおじさんの手持ちであったゴルダックの“みずでっぽう”によって既に消火されていた。
ただの覗き魔ではなく、実力のある覗き魔だったようだ。質が悪い。
そのおかげもあってかロケット団が想定していた影響は与えられず、10名ほどの怪我人が出ただけだ。
作戦は失敗したと言ってもいいだろうが、幹部の女の目は折れていなかった。
「タツミさん…」
「話す気は?」
「…ないね」
カチッ
「!?フィィィイ!!」
「サナァ!!」
周囲は喧噪で慌ただしい。
そのなかで確かにタツミ達は聞いた。
女幹部の口から、スイッチの音を。
そしてその結果はタマムシシティ全員が聞いた。
ジムから爆発音が響き、天井と壁が吹き飛んだのだ。
唖然とするタマムシシティの住民たちは、只々その光景を眺めているしかなかった。
『フィフィ!?(無事でしょうね!?)』
『サナァ!(マスター!!)』
「問題ない。多少のかすり傷程度だ」
「うっ…」
「大丈夫ですかエリカさん」
来たばかりに視界に収めた華やかな庭園の光景は3割ほど消滅した。
一体何が起こったのかとは問わない。
女幹部の自爆テロ。
それがタマムシジムを襲った衝撃の正体だった。
ここで捕まる想定はしていなかったのだろうが、捕まった場合は初めから自爆するつもりだったのだろう。
ロケット団の情報を警察やポケモンリーグの本部に渡さないために。
己の全ては総帥であるサカキのためにあるという狂気を孕んだ忠誠心が自分の体内に爆弾を仕込むという発想に至ったのだ。
そこまでさせるほどのカリスマ性を有した男 サカキ。
表の顔はトキワジムのジムリーダー。
裏の顔は暗躍するロケット団のボス。
アニメにおいては全世界で暗躍して表の幅広い分野で手を引いていた組織だが、この世界ではどうなのかはわからない。
タツミ自身そこまで関わるつもりもなく、ぶらりと旅をするだけで終わらせるはずだったからだ。
だがそれはここまで。
両腕の中には爆風によって気を失ったエリカが抱かれている。
それも防ぎきれなかった飛来物によってエリカの頬や腹部に傷が見受けられた。
「セシリア、イゾルデ」
一先ず無事だったことに安堵し、爆風から逃れて無事だったジムトレーナーにエリカを預けてタツミは相棒の名を呼ぶ。
「ロケット団を、潰しにいくぞ」
『『((御意!))』』
そうして冒頭に戻るのだった。
「オラオラオラオラァ!どこに居やがるロケット団!」
「ひっ」
「ロケット団だ!!ロケット団だろう!?なあロケット団だろおまえ」
「うわあぁああ!アーボ!“どくづき”!」
「しゃらくせぇ!!」
尻尾の先端に毒を纏わせて腹部を突いてくる攻撃を躱し、腹部を逆に掴み取って振り回す。
頭を振り回されてアーボの反応が鈍ったところで増援にきたロケット団目掛けて投擲した。
「うわ!?」
「邪魔だ」
そのまましたっぱの腹を蹴り飛ばして意識を飛ばす。
自分の背後には通路に破壊工作を行なったり、瞬時に背後へ移動してぶん殴って吹き飛ばす自分のポケモンの姿がある。
今彼等がいるのはロケット団の資金調達のアジトになっていたゲームセンター…ではなく、緊急用に作られているのであろう通路から侵入していた。
素直にゲームセンターから入ろうとおもったのだが、向かう最中に
もし仮にアジトごと爆破されようものなら瞬時に“テレポート”を使用して離脱出来るタツミ達はなんの心配もせずに突撃を敢行していた。
緊急事態で撤退中なのか非常口へと向かってくるロケット団員は多く、そのすべてを撃ち漏らしなく意識を飛ばしていた。
あとで警察へ突き出すのと情報を吐かせるために、数は多いほど良いとの判断で意識を飛ばしたものは一室にまとめて放り込みながら進んでいく。
「ここにも侵入者か!ヘルガー“かえんほうしゃ”!」
「時間がねぇってのに!ゴルバット“エアスラッシュ”!!」
「セシリア、“10まんボルト”」
位が高めの者達は抵抗するべくポケモンを出してくるがその全てを瞬く間に沈黙させながら走り続ける。
そして眼前の扉を蹴破った先には広い空間と、ロケット団幹部と赤い帽子の少年が戦っていた。
「ぐぁ!?」
のだが蹴破ったことで吹き飛んだ扉が幹部に被弾。
トレーナーの指示を待っていた幹部の手持ちであるサイドンは、突然の妨害に反応できずに少年のリザードの“きりさく”でダウンするのであった。
……少年、なんかごめん。
・ロケット団幹部
心臓に爆弾を仕込んでジムへと突撃をかました女幹部。
爆心地に居たので即死である。
幼い頃にロケット団とは別の非行集団に拘束され、襲われそうになった直前に通りかかったサカキに救われたことでロケット団に入った経歴を持つ。
使用ポケモンはサカキが育てた“マタドガス”
そして幼いころから共に育ってきた“サンドパン”がいた。
姉御肌でしたっぱからの信頼も厚かった模様。
・ミラーコート
1話のあとがきに記載していたミラーコートを修正。
ひかりのかべと勘違いして書いていたので、ミラーコートが撃てるエーフィが出来てた。本当に申し訳ない(博士並感)
・エリカ様
かわいい。
贅沢は言わないからエリカみたいに着物が似合う黒髪美少女と結婚したい。