聖遺物【月光】(仮)   作:Haganed

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今になって書いてみた。疲れた(´鋼`)

駄文だろうね。






聖遺物【月光】(仮)

 それはただ、私の寄る辺だった。嘲りと罵倒の中で私のなすべきことは正しいことなのだと言い聞かせ、それを証明するための力であった。静かに、されどその在り方はどのように筆舌して良いのかさえ私にはわからなかった。ただ一つ、それは私にとっての導きであること以外。

 

 我が師の導き、とても儚く今にも()()と途切れそうなほど細い私のよすがだったのだ。それの正体が、私が信じていたものが何であったかなど、知りたくはなかった。たとえこの身が醜く変わろうとも、その導きだけが私の信じていた真実であったから。けれど、けれど……あの時私の目に映った光は、眩しかった。

 

 

 

 

■■■■■■■■◐

 

 

 

 

 “カチャリ”──下げてある首飾りが鳴った。また寝ていた、夢を見ていたのだろう。それが何だったのかは忘れてしまうのだから、特に意味をなさないのだろう。少なくともそう結論づけた。ただ不思議と、必ず目覚める時は首飾りに起こされているようで、慣れてはいるがふと思うのだ。しかし首飾りのことも、この後のことを考えればすぐには思い出せなくなる。

 

 脳そのものに直接知啓を突き刺される感覚は未だに慣れはしない、だが()()によって獲物を知覚できるのは有難かった。もはや右目は何も映さなず、左目も僅かに見えるばかりで使い物にならない。だからこそこの目には導きが見えるのだろう。か細く今にも消えそうな光を、()だけの導きとして。

 

 人の身に有り余るこの膂力は獣みたく、されど動きの一つ一つに人間性を見いだせる洗練された確実な手段を。右手に握りしめた身の丈ほどもある古い剣を自身の肉体のように扱い、敵を葬り去る。左手に構えた重く長い砲身を備えた長銃を向け怯ませ──あぁ、運良く殺せたようだ。そして、終わったようだ。

 

 耳障りな音が聴こえなくなった今、戦う理由は見いだせず。夢の中にしまい込み首飾りを握りしめて、夜空に浮かぶ月を見上げた。星もまた──あぁ、星の娘よ。貴女はなぜ泣いているのだろうか。

 

 

「……イカンな。」

 

 

 ふと、脳裏に過ぎるこの言葉の意味は私にさえも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おおよそ10年以上前だったろうか。今でこそ『ノイズ』という名称を付けられた特異災害、あれを私は剣を手にした途端に古き時代に造られた兵器であることを理解した。そしてこの剣は、それより後に造られた()()()()()()兵器であることも理解した。

 

 何故この兵器が造られたのかは理解できず、この剣が生まれた意味もまた私には知る由もなく。ただ私が知るのは、この剣の真の姿。私だけが知ってよい秘すべき力の有り様のみ。家に伝わっていたあの長銃と仕掛け武器、夢に収める術を啓蒙して私はあの兵器(ノイズ)を壊して回っていた。ただ導きのままに。それが何を意味するのかは、私も理解していない。そも意味さえあるのかと考える。

 

 兵器を壊しているのだ、情も湧かん。それを壊して感謝される意味は分からぬし、礼を受ける理由はてんで計り知れん。ただ導かれるままに歩みを続けた。目指した先にノイズが蔓延っていようが人間が蔓延っていようが、何の情さえも湧かぬ。

 

 ゆえに人間が私の前に立ち、そして戦いを続けていることもまた何とも思わぬ。当たり前のように立ち塞がる障害は全て消すまで、人の血を浴びることも極々当たり前となったのだから。

 

 けれど機械仕掛けの()()の方を使い続けた結果なのだろうか、切れ味が鈍くなり上手く殺せなくなっていた。さらに相手はこちらの動きを若干読んでいるのか、回避能力が上がっていた。ここまでの泥仕合を体験したのは硝煙の匂いが蔓延る狩り場以来だったか。

 

 

「ハアッ!」

「……!」

 

 

 しかし此奴、顔を狙わんのはなぜだ。的確な急所が密集する場所であるにも関わらず、意図的に顔や頭を狙おうとしていない。前の狩り場の方が余程殺意が……いや、そうか。なるほど。殺意そのものを此奴は持っていなかったのか。だがそれで顔を狙わん理由にはなっていない。そしてそれは我らのような狩人にとって──最大の侮蔑に値する。

 

 細身の剣を鞘に入れ、1つの大剣とし振り下ろす。長銃は夢の中に、両手で大剣を操り相手を確実に仕留めようとして遺骨を使おうとした瞬間だった。首筋に何か刺さり一瞬だけ動きが鈍ってしまい、先程まで相対していた相手に鳩尾を殴られ呆気なく意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある人間はこう言った

 名も無き夜に現れた美しきもの、と。

 

 ある人間はこう言った

 もう1つの月が我々をお救いくださったのだ、と。

 

 一人の軍人はこう言った

 あの月明かりは、敵も味方も区別なく襲った、と。

 

 一人の傭兵はこう言った

 現代兵器の何もかもが通じない怪物だ、と。

 

 妄信的な信者の一人が語った。

 

 

 

あれは正しく、この世の不浄を滅するために神が仰せつかった化身である! 今まさにノイズによって人類の危機が迫っているこの時、神は英雄を、我らが崇めるべき救世主を遣わしたのだ!

 

 

 熱狂的な信者達(聖歌隊)の皆が一様に肯定した。人間を救うために送られてきた英雄だと信じて疑わず、それがさも真実であるかのように謳った。そうして生まれた英雄の名こそ【月明かりの英雄】であり。

 

 紛争地帯の1つであったバルベルデ共和国では、民衆は一様に【バルベルデの英雄】と奉り、戦争をしていた兵士等からは【月光の悪魔】と名が広まった。両陣営に多大な損失を残し、その戦争が休戦という形で治まったことによって。

 

 一度だけ、信者が月明かりの英雄をこの目で見た話を聞いた。常人では扱えもしない、身の丈もある大きな剣を振りかざし、刀身が青く光った時にその姿を見たようだった。包帯で視界を覆い、嘗ては白くあったであろう草臥れた装束を身にまとった男であったと。その者は今、聖歌隊でこの話を語り継ぐ使命を誓った長となっている。

 

 そうして今、目の前で眠って倒れた男こそが()()なのだと理解した。その強さは身をもって味わった結果、息を整えようとすることも厳しい怪我を負ってしまった。三日三晩の末に幾度となく死にそうになりながらも、今やっと無力化できた。

 

 

「救護班急げ! 収容班はターゲットを可及的速やかに回収、司令と緒川が掴んだ今を無駄にするな!」

 

 

 今回ばかりは緒川にも苦労させてしまったことを気に悔やんでいる。危篤状態という形で偽装させるために手酷い怪我をさせてしまったが、それで油断したターゲットを眠らせることに成功した。正直な話、苦肉の策であった。万が一、億が一にでも緒川の偽装がバレてしまったら成り立たなかったのだから。

 

 今回の目的は英雄と呼ばれたこの男の捕獲、ひいてはノイズに対する戦力の強化。日本で発生するノイズ災害が多いことから、我々としても必要性のある任務であったことに違いない。ここまで無理をし続けたかいがあっ────

 

 

 

 

 

「見事哉、強き者。」

 

「!?」

 

 

 馬鹿な……、最低でも一時間は眠らせる麻酔薬だぞ!? 人間が耐えられる量ギリギリを撃ち込んだにも関わらず!

 

 

「ハハハ……なに、最早私に戦う考えは無いとも。ゲンジュウロウとやら。」

 

「! なぜ俺の名を……」

 

「その問いには後ほど答えるとしよう。なに、時間はあるのだ。ニホンに着き、私を貴公らの組織に監禁されるまでな。」

 

 

 ……何処でその情報を。だが、この男がその提案を持ちかけてきたということは。いや、それよりも何故今になって。

 

 

「なにゆえ、貴公らの元に向かうのか。と考えているだろう、ゲンジュウロウ。」

 

「……あぁ」

 

「私はただ導きのままに行くだけ。今までも、これからも。私の導かれる先が貴公らの思惑と一致したまで。それ以上でもそれ以下でもなく、ただそうあるだけだとも」

 

 

 視界を覆う包帯から僅かに覗き見える白い目が、何も映さないことを知っているはずなのに。今にも姿を覗かれているような、まるで深淵のような目でこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 




続き? 無いよそんなもの
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