レ(・ω´・)ヘ三
|ω・`)
ある曇天の広がる日に物騒なサイレンが鳴り響いた。災害が起きた時に鳴り響くこの音を聞き、誰も彼もが慌てふためきその場から立ち去ろうと走る。他者の安全など知ったことかと本能的危機感のまま逃げる民衆を、一切合切の区別なく無慈悲で平等にノイズは襲いかかる。人間を標的とし抹殺プログラムを大昔に埋め込まれた兵器は、全てを炭素へと還す力を当たり前の如くふるう。
一喜一憂することもなく、悲痛な叫びを聞いて喜びも苦しみもせず、単純作業を行う機械のように命令を遂行していることを人々は認知することはない。彼らは理不尽に襲いかかる
増えすぎたバッタが食料を求めて大陸を横断し、不毛の大地へと変貌させる蝗害は、食うことを目的として動いている。生きるための行動が災害として知られていった一つの例がある。旧約聖書に最古の記述が残されているのが、その証拠だ。バッタは生きるために人々が災害として恐れるほどの食事をするのだ。
ノイズは殺すという1つの確定された行動そのものが災害へと認知された。ここで着目してほしいのが、生物は無駄に他の生物を殺すことは無い。あくまでも必要分だけを、自分らが生きるために殺す。では有象無象の区別なく人間を殺し続けるノイズを、果たして生物の引き起こした災害と呼べるのだろうか。
無差別に襲いかかり片端から炭素へと変えていくノイズを、もはや生物とは言えない。埋め込まれた殺意でもって人間を殺すものを、兵器以外に何と呼べばよいのだろう。
だからこそ、私はあの時の光景が忘れられない。ただの人間が、古めかしい武器だけでノイズを殺して壊していたあの光景を、絶対に忘れることは無い。男の身の丈ほどある大剣と、あの機械仕掛けの長銃だけでノイズを殲滅させた者のことを私は一生涯忘れられない。人に伝えれば有り得ないと嘲笑するだろう、あの男のした行いを日記に綴るしか無かった。淡々と作業のようにノイズを倒していったその偉業は、所謂【英雄】と呼ぶに相応しいのだろう。
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それは【月明かりの英雄】が何の意図をもってして、特異災害対策機動部二課、我々の組織に自ら乗り込んだのか不明であった頃。司令や自分の怪我が治りかけ、二課の面々と対談させようとした時だった。乾いた声がした途端、即座に自分と司令の二人で
『ッ……どういうつもりだ』
『どういう、とは?』
『なぜ了子に剣を向けた!?』
『……はて、どういう意味だ?』
この異常事態に二課全員がこの男に敵意を向けた。その敵意を無視しているであろう男は、左手に持った長銃を自分たちに向けて放った。了子さんを庇うために身を呈して盾になったが、前の傷が完全に回復していないせいで血が出始めた。その時になって初めて理解したのは、この男は容赦がない。何の法則に基づいてこの人を殺そうとしたのかは分からないが、とにかく一挙一動に殺意が込められている。
他のメンバーが止めようとしたけれど、その長銃を後ろに向けて遠慮なく撃ったことで被害が増えてしまった。『狩りの邪魔をするな』と一言だけ呟き、一旦下がったかと思いきや大剣に切り替えてまた斬りかかった。そのさいは司令が了子さんを保護し軌道上から避け、自分は影縫いを使って動きを封じたが無理矢理に拘束を外すぐらいの膂力に耐えきれるか不安だった。
『なぜ了子に剣を向けた!? なぜ殺そうとした!? 答えろ!』
『上位者を狩るのは、至極当たり前のことではないのか?』
何の気なしに男の口から出た言葉は、理解が及ばなかった。
『なに……?』
『寧ろ邪魔なのは貴公らだ。何故その上位者を庇う?』
『その上位者とやらは分からんが、絶対に違うと断言しよう。了子君は上位者とやらではない!』
『いいや、上位者だともゲンジュウロウ。その女は理外の力によって生き長らえた紛れもない上位者だ。隠していたようだが、私には無意味だ』
男の言う
剣を支えにしながら俯いた状態でいた男は、突如何事も無かったかのように立ち上がり、影縫いを自力で突破した。そして武器が霧のように消えたあと息を吐いた。
『────気が変わった。今は狩るのは止めよう』
『なに?』
『だがその上位者が本性を顕した時は、真っ先に狩らせてもらおう。その時まで待たせてもらうとしよう』
そう言って男は部屋を出て行った。捕らえる前に全員治療を受けるはめになってしまったが、どうやら男は自らの意思で檻の中へと入ったようで。その後、ノイズを倒すために出したこともあったが櫻井女史への攻撃をすることは無かった。
次なんて無い。