聖遺物【月光】(仮)   作:Haganed

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( っ◜ω◝ )╮ =͟͟͞͞ (次話)

φ(・ω・`)<ジュンビダァ

(:з )≡:・*・。


標的

 初めてその男を目にした時、私の中で今までに無かった恐れを抱いたことを今でも覚えている。私と奏のようにシンフォギアを纏わず生身でノイズを殲滅する圧倒的な力量、触れられれば炭化するハズのノイズに真っ向から挑む胆力、そして何より、あの深淵で黒く塗り潰された瞳で機敏に戦場を駆ける異常性。もはやアレを人と呼んでいいのかさえ判断しかねる。

 

 男が櫻井女史に向かって得物を向け、上位者は狩らねばならない等と世迷言を口にしたと叔父様から聞き及び、その実力があるのか確かめようとしたところ、シンフォギアを纏う前に殺されかけた。

 

 

『貴公らは兵器として我が障害となったのだろう? ならば遠慮なぞ要らん。狩りに遠慮なぞ持っては此方が狩られるのだから、壊すしかあるまい』

 

 

 その非情さ、無慈悲さ、そして何より殺人に一切の躊躇いが無いあの男に危機感を持った。幸いその場は何を思ったかはあずかり知らぬけれど、男がすぐに監禁場所へと戻ったおかげで大事は無かった。私は軽症で済んだものの、奏の方は右腕に弾が当たって全治1週間の通告を受けた。

 

 あのような危険思想を持った奴に、ノイズ退治を任せる訳にはいかないと奏も思っていたらしく。私はすぐさま、一週間遅れて奏も訓練に励むことを決めた。歌もシンフォギアを扱う上で必要ではあるけれど、それ以上に自分たちの実力不足を補うために。

 

 ただ、一度だけあの男の目を見たことがある。盲目であることを自称しながら、叔父様や御祖父様に匹敵しうるほどの運動能力を見せつけている。本当に盲目であるのか聞いた途端、男は両目を覆っていた包帯を外してその目を見せた。どこまでも黒く、闇よりも深い深淵のような色をした目を。

 

 

『私の目にはもう何も映らん。ただ唯一、導きの光だけが私を誘う』

 

 

 そう言ったあと、男は慣れた手つきで包帯を巻き直し監禁部屋で1人眠りに着いた。あの瞳がふとした時にチラつく事がある。見えていないはずだが、あの目に()()()()()()という不可思議な感覚を思い出すのだ。誰の言葉だったろうか、「深淵を覗く時、深淵もまた此方を覗いているのだ」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翼、前!」

 

「っ!」

 

 

 男のことについて考え耽っていた風鳴翼は、目の前に迫るノイズに対する反応が遅れていた。咄嗟に防御して拮抗状態にさせると、天羽奏のフォローによって事なきことを得る。先の1体でノイズは掃討し、あとはその場から離れるだけ。男に関しては特に問題なく、自身らの帰還を優先させる必要性が二人にはあった。

 

 そもこの2人とて未だ学生の身、そして人気ユニット【ツヴァイウィング】とアイドルとしての側面がある。現段階では公に情報開示をしては不味いと判断され、ノイズ関連の情報では彼女らについての規制が行われているのだから。

 

 

「大丈夫?」

 

「えぇ。ごめんなさい、少し」

 

「……あの野郎のこと、か」

 

 

 首肯する。突如として二課への所属となった奇妙な男、他国では月明かりの英雄として持て囃されている男が、どういった目的で、どういった考えで来たのかさえ明白になっていない。訊ねても()()としか答えないのだから、余計に混乱する。まるでその導きとやらが、ここに来た理由ただ1つのように思えて。

 

 

「───といっても、考えたら余計に嵌るんだよねぇ」

 

「……うん」

 

「悩んだってしょうがないとはよく言ったもんだ。というか弦十郎のダンナや了子さんも分かってないし、アタシらが考えてもね」

 

「分かっては、いる。けど「なら」」

 

「ならアタシらは、あの野郎に勝るぐらい強くなってノイズから皆を守る。それだけを考えてれば良いのかも」

 

 

 意表を突かれたのか少しだけハッとして、長く息を吐く。隣にいる片翼(相棒)の言葉に、翼の心境は少しだけ楽になった。と、そんな最中に二課からの通信が入る。

 

 

『すまない二人とも、緊急事態だ! 【月光】の反応が途絶えた!』

 

「月光……あぁ、アイツ! って、何で名前知ってるのさ」

 

『一向に名前を口に出さないからなあの男は! なのでこちらで呼び名を勝手に決めた!』

 

「それより叔父様、途絶えたとは」

 

『二課の追跡システムに妨害が入った、おそらく狙いは月光の可能性が高い! こちらも人員を派遣するが、二人に状況確認を先行してもらいたい!』

 

 

 

 

 

■■■■■■■■●

 

 

 

 

 

 銃声。

 

 破壊音。

 

 破裂音。

 

 打撃音。

 

 破砕音。

 

 射出音。

 

 揺らぎ音。

 

 共鳴音。

 

 

ハーハッハッハッハッハア゙ッ!」

 

 

 歓喜の声か。はたまた落胆の叫びか。いずれにせよ男は狩らねばならない。かつて相見え、しかして狩り損なった上位者を狩らねばならないのだ。相手が腕の一本を失っていようが、怒りと殺意を兼ねて攻撃してこようが、それはもう関係ない。これは狩りなのだから。

 

 

「グッ!」

 

「どうした上位者ども、死なぬのか?」

 

「ほざけ、イカレ野郎!」

 

「しゃがめ!」

 

 

 巨大な球体が男の右側から迫る。が、男は剣を収納し石鎚とすることで跳ね返す。懐に潜り込んだ女の拳がエネルギーを収束させつつ殴りにかかったが、まるで幻であったかのように消え、杭を叩き込む。避けられはしたが、その威力はコンクリートに杭部分が収まる穴と、数メートルまで続く亀裂を発生させた。

 

 お互いに決定打を掴めず、戦闘そのものは硬直状態であったが、優勢であるのは男の方。目の前に上位者が存在しているのであれば、この男は何の容赦もなく理不尽なまでに殺し続けられる。その執念は男にとっての意思となり、血となる。故にこそ──

 

 

「っ!」

 

「ほう」

 

 

 男は左手装備を変え、霧を噴射させることも躊躇わない。その霧が危険であることを直感した女は、挙動の一切を見せずにその場から消え失せた。上空から迫る球体は大剣を装備し無理矢理と言って良いほどの姿勢から跳ね返す。大剣が消え失せ球と棒を取り付けたような奇っ怪な装備へと変え、黒き獣の雷を再現した一撃を腹部へと叩き込ませた。

 

 

「むっ」

 

「カリオストロ、今!」

 

「応!」

 

 

 捨て身でその武器の一撃を耐え、かつ男の右手を抑えると背後から()()の女の一撃が襲いかかり、その一撃は確かにダメージを与えたと実感できた。現に、男の口から血が吹き出たのだ。これでまだ動けるというのならば、それは人間では

 

 

「ガアッ!」

 

「ごべっ!」

 

「嘘ダr」

 

「死ね」

 

 

 男の左手には特殊な意匠を凝らしたであろう大砲があり、未だに右手を掴んでいる女の顔面に向けて撃った。もちろんこれでは男諸共吹き飛び、ダメージは大きいはず。だがすぐに立ち上がった男は太ももに何かを刺した途端、何事も無かったかのように煙の先に居るであろう標的に向けて、大剣を突き刺す。

 

 が、そこには誰一人として居らず。片腕の女、『カリオストロ』と呼ばれた者も居なくなっており、辺りには凄惨な現場とその光景を見ていた月夜だけが静観していた。

 

 怒り任せに吠える獣が、夜に一匹。

 

 

 

 

 

 




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