私ってほんとにさやか?
皆はジャ〇プ好きかい?
そう、大人も子供も関係なくどの世代にも夢と希望を与えてくれるあの週刊少年漫画雑誌だ。
友情・努力・勝利の方程式に憧れたことがない奴はいないだろう。俺も大好きである。
将来の夢の欄には海賊だの忍者だのって書いたし、覇気が使えると思い込んでいた中学時代は不良に「失せろ...!!」とかやってしまってボコボコにされた経験がある程にな!
おっと自己紹介が遅れたな。俺はどこにでもいる男子高校生。愛読書は当然ジャン〇だ!
そんな俺は今「いっけなーい!遅刻遅刻ぅ!」とばかりに全速力で通学路を走っている。
いや別に漫画のような出会いを期待して毎朝そうしている狂人というわけではなく、普通に寝坊して遅れそうなだけだ。心のどこかで少し期待してるのは否定しないが。
このままのペースで行ければなんとか間に合いそうだと、スマホで時間を確認しながら曲がり角から飛び出た俺は―――その瞬間強い衝撃を受けて吹っ飛んだ。
何が起こったのかわからなかった。
ゴロゴロ転がった体がようやく止まると、霞む視界の中でトラックから降りる運転手が見えた。
どうやら曲がり角でぶつかったのは転校生じゃなくて鉄の塊だったようだ。
こんなのってないよ...あんまりだよ...
最後まで読んでない漫画、いっぱいあるのになぁ。
そんな思考を最後に俺の短い人生は幕を閉じた。
目が覚めると白い天井が俺を迎えた。
幕閉じたーとか言っちゃったけど、どうやら助かったらしい。やったぜ。でも視界もぼやぼやしてるし音も聞こえ難い。事故の後遺症かもしれない。
まぁ生きてるだけ儲け物である。贅沢は言わないでおこう。感謝します神よ。
そう、思っていたのだが。
どうやら助かったわけではないらしい。
じゃあ当然、今これを語ってる奴は誰なのかって話になる。
改めて自己紹介しよう。
私の名前は美樹さやか。見滝原中学の二年生だ。
◆◆◆
生まれ変わってから数年は半分寝てるような感覚で、意識が浮かび上がったり沈んだり不安定だった。後から聞いた話だがよく寝てる子で今生の親も心配したらしい。
4才ほどでやっと安定して思考が出来るようになった。
自分の意思の通り動く小さな手。未だに現実味がないけど本当に生まれ変わったらしい。
転生トラックは実在したのだ...!
しかしあんなあっけない死に方するとは思わなかったな。育ててくれた前世の両親には本当に申し訳ねぇ。天に向かって土下座して謝った。
よし、懺悔終わり!何の因果かもう一回チャンスが貰えたんだ楽しく生きよう!
そうと決まれば生まれ変わった自分の容姿確認である。人は中身だ、なんて言葉もあるが外身は大事だ。持論だが、第一印象は結局見た目からだしそれを覆すほどの中身がある人なんて滅多にいない。
今生の親がけっこう美形なので正直イケメンを期待してる。
特徴的な水色の髪。ふむ。悪くない。きっと外人さんなのだろう。親が喋ってんの普通に日本語だった気がするけど移住してきたに違いない。
透き通るような青い眼にくりっとした可愛い目元。きっと将来美人さんになるだろうと容易に想像できる。うーん100点。こりゃ人生イージーモードですわ。ガハハ、勝ったな風呂入ってくる。
いや待てよ。なんでこんな可愛いんだこいつ。
慌ててパンツの中を覗けばなんとマイ☆サンが消滅していた。オーマイガー。そういやなんか股がすっきりしてんなと思ってた。永遠の童貞が確定した瞬間である。
「さやかー早く来なさーい?今日から幼稚園よー」
世界に打ちのめされていたその時、声をかけてきたのは今生の母上。
「いまいきまする~」
そう、さやかというのは俺の新しい名前。美樹家のさやかちゃんである。
「はいみんな~これから一年間、よろしくね~」
「「「「はーい!!」」」」
自分の周りに響くクソデカボイス。耳が死ぬかと思った。
いや高校生にもなって園児やんの辛すぎるわ。正直転生舐めてた。初日でこの調子とかやっていけるのかこれから...?
あからさまに元気がないと親に心配をかける。だから無理くり調子を合わせたせいで心の底から疲れた...明日からは親同伴じゃないし、静かに本でも読んで過ごそう。
二日目。登園した俺は自己紹介やらオリエンテーションやらを無心で済ませるとさっさと園内の探索を始めた。園児用スペースには絵本しかないのだ。園児の筋力でも持ち歩けるサイズの本がないか、教員に見つからないよう隠れながら探す。なんだかどこぞの蛇みたいで楽しい。
そしてしばらくして教員用の休憩スペースに忍びこんだ俺は――ジャ〇プを見つけた。この世界にもあったのか!神よ!重ね重ね感謝いたしますぅ...!!
ちなみに騒いだせいで一瞬で見つかってしまった。くっダンボールさえあれば...
次の日、俺は意気揚々と登園した。なにせジ〇ンプがあるのだ、バラ色園児生活は約束されたも同然である。フフフハハ...フハハハハ!!
「おっご機嫌だな~さやか」
「そんなに幼稚園気に入ったのかしら...?」
いつになくハイテンションの俺は両親に生温かい視線を向けられていたことには気づかなかった。
「おはよーござーやーす」
「はーい、おはようさやかちゃ...ってどこに行くの!?」
挨拶もそこそこに男性教員の机からブツを強奪し人気のない場所へ走る。前世よりかなり古い週の物だがまぁこれも味があると言うものよ...うへへへ...
「なにみてるのー?」
む...夢中になってて気付かなかった。いつの間にそこにいたのか、ピンク髪の幼女が話しかけてきた。
「ジャ〇プだ。しらんか?」
「ごほんー?」
「まぁ...そうだな」
「ひとりでよめるの?すごいね~!」
なんだかほんわかした雰囲気の奴だな...なんで俺なんかに構ってきたのかわからんけど折角だ、ここは一つ布教でもするか!
「よめんのならおれがよみきかせてやろーか?」
「うん!」
「すなおなやつはすきだぞ!こころしてきくがいい!とみめいせいちから、かつてこのよのすべてを...」
ピンク髪は終始楽しそうに俺の音読を聞いていた。たぶん内容はよくわかってないだろうが。...そういやこいつの名前知らないな。布教を受け入れてくれたこいつはもうダチ公だし、名前くらい知りたい。
「おまえさー」
「なぁにー?」
「なまえなんてーの?」
「まどか!です!てぃひひ」
「まどかか!いいなまえだな!おれはさやかだ!よろしくなまどか!」
「さやかちゃん...うん!よろしくね!」
これが俺とまどかの出会いだった。その後仁美や上条といった奴らとも仲良くなるんだがそれは割愛。ともあれ最初はどうなることかと思った園児生活が楽しく過ごせたのは俺の今生最初の友達、まどかのおかげだろう。
問題は幼稚園を卒業し皆と一緒に小学校の入学式を迎えた時に起こった。
二年間も幼稚園児やってた俺は肉体の影響もあってかすっかりちびっこ気分で、友達100人できるかなー!レベルのルンルンステップを踏みながら入学式へ向かった。
入口に刻まれた名前は見滝原小学校。
見滝原?その特徴的な名前はなんだかとてつもなく見覚えがある。
そう引っかかりを覚えた瞬間、今更脳裏で単語が繋がっていった。
見滝原。美樹さやか。鹿目まどか。志筑仁美。上条恭介。
いや嘘だろお前。まどマギじゃねぇかこの世界。
続くかは...ナオキです...