展開に迷って遅くなった、ごめそ!
UA一万お気に入り500件!?そんなに読んでくれてる人いるの!?
ありがとう...亀更新だけどこれからもよろしくな!!
絵の具をぶち撒けたような気味の悪い色をした空間。
およそ生物とは言えない様な異形の怪物に正面から立ち向かう少女がいた。
そのサイズ差は歴然で、少女に勝ち目はないかに思えたが――彼女は一歩も引かない。
怪物の繰り出す攻撃を俊敏な動きで避け、同時に左手の指に挟んだお札のような物を操り貼り付けていく。
攻撃が当たらないことに業を煮やしたのか激しい攻勢に出た怪物に防戦一方に見える少女。
あわやここまでかと思われた瞬間、
「そろそろいいかな」
そう呟くと指を二本立て独特な構えをとった。
「滅ッ!!」
少女が叫ぶと、怪物に貼り付けられた札が輝き爆発を起こす。連鎖するようにいくつもの札が起爆し、最後に一際大きな大爆発を起こし怪物が弾け飛んだ。
「ふぃ~楽勝楽勝!」
「流石だねさやか。魔法少女になってひと月とは思えない戦いぶりだよ」
「ま、このさやかちゃんにお任せあれってね」
魔法少女デビューしたあの夜から一ヶ月が経った。
え?お前魔法少女じゃなくて忍者か陰陽師だろって?
...いやそれは俺も正直思ってたけど言わない約束だろ。
最初の魔女戦で普通に死にかけたので、もっと余裕を持って戦えるように新しい攻撃方法を考えたのだ。そのうちの一つがこれ。
原作の美樹さやかの剣には本編未使用ギミックが色々あり、その中に射出した刀身を爆破するという物がある。
それを思い出した俺は早速とばかりに試した。
刀を投げた後に念じると内包された魔力が爆発し、内側から破裂した刀が
ただこれ威力は申し分ないんだが使う度に新しい刀を生成しなきゃいけないうえに、その数秒間は一時的に武器を失う。練度が上がってもっと早く武器が生成できるようになれば問題じゃなくなるかもしれないけど、今の俺じゃ僅かな時間であってもそれは致命的な隙になりかねない。
だったら予め手軽に使い捨てられる形で作っておこうという発想で生まれたのがこのお札だ。破片による攻撃がない分威力は多少下がるが攻撃の隙が極めて小さい。
うん、お気づきの人もいるだろう。NARUT○の起爆札である。
作り方としては使いやすいサイズにカットした紙に魔力を染み込ませるだけ。すると真ん中に爆と書かれた和風でオサレな紋様が滲み出てきて完成である。お手軽ぅ。
ある程度自由に動かせるし回避しながら繰り出したり出来て中々使い勝手がいい。誤爆対策に印とキーワードの発言を同時に行わないと爆発しないようセーフティもかけてある。
...本家の忍術みたいに複雑な印にしたら戦闘中に使うのに手間取るので簡易化してあるが。悔しい。
あと実戦で使ってみて初めてわかったんだが、単一対象に複数枚貼ってから起爆すると魔力が共鳴して威力が上がる。使い魔に貼りまくって敵陣に投げ込んで起爆、みたいな戦法が有効かもしれない。
卑劣な術だ...夢が広がる。我ながら結構いい出来じゃないか?
二戦目の魔女はそんな新戦法を引っ提げ、かなり覚悟して行ったのに割と楽勝で肩透かしを食らった。
この一ヶ月でも特に苦戦してないしやっぱ最初がおかしかっただけらしい。
いや悪いことじゃないんだけど微妙に納得いかない。
「でも油断は禁物だよさやか。予想出来ないような攻撃をしてくる魔女もいる」
「忠告ありがとうべぇさん。肝に銘じるよ」
まぁ慣れた頃が危険ってそれ一番言われてるから。足元を掬われないように気をつけよう。
それにこの程度じゃ全然安心できない。素質に恵まれてるし順調に経験を積めている実感はあるが、まだまだ初心者に毛が生えたレベルだし、ラスボスたるワルプルギスには手も足も出ずに殺されるだろう。
6000億枚の起爆札用意したらオ○トは倒せなくてもワルプルギスならワンチャンあるかな。無理か。そもそも魔力足りないし6000億枚の紙が用意できねぇわ。あれどうやってあんなに調達したんだろうな。永遠の謎。一応ちまちまと起爆札の貯蓄してるけど使っちゃうから全然貯まらん。
それに実際に用意出来ても倒せるかは未知数なのがあれの怖い所だ。
原作において暁美ほむらがどれほどの時間を繰り返しても決して倒すこと叶わなかった、最悪の魔女。魔法少女の間で何百年も語り継がれる魔女の集合体。多少強くなった所で一人じゃどれほど抵抗できるかなど高が知れている。
これ絶望しかねぇな?
でもそれは一人で戦うならの話だ。
一人で無理なら複数人で殴れ。
囲んで棒で叩くのは古代から続く由緒正しい必勝戦法だ、戦隊ヒーローの常套手段とも言う。
魔女よ、卑怯とは言うまいな...誉は投げ捨てる物!
というわけで仲間になってくれそうな人を探したいんだけど、小学生の身上じゃ遠出は出来ないし今はただ闇雲に鍛えるしかねぇか。
◆◆◆
そんなわけでやってまいりました初日の準備運動にも使った裏山。
「
そこには刀を口に咥えた剣士が!
「なにやってるんだいさやか」
キュゥべぇが心底不思議そうに尋ねてきた。口が塞がってるのでテレパシーで答える。
なんだ見てわからんか。男の夢、三刀流の練習だ。
「そんな剣技非効率だよ?見たことがない」
はぁ...?非効率?取り消せよ...今の言葉...!!
「断じて取り消すつもりはないよ」
ノってきた!?いや偶然か...偶然だよね?
「何のことだい?まったくわけがわからないよ」
意外とノリがいいのかと思ったがそんなことはなかったぜ。
気を取り直して、両手にも刀を持って腕を交差させた構えをとる。繰り出すのは某海賊狩りの技。
「
空中を三条の光が煌めいた。
木を斬り倒すことには成功したが命中した瞬間、ぼぎっ...と鈍い音が鳴って口の中に鉄の味が広がった。
これ歯欠けたな。いたひ。
「うぐぐぐぐ...」
「ほら言った通りじゃないか」
うるせぇやい。
何遊んでんだよと言わんばかりの目で見られているがこれは遊んでいるわけじゃなくて、起爆札が予想以上に強かったので他の技も実は強いのでは?と思って検証しているのだ。
なんで三刀流なの?と聞かれると好きだからとしか答えようがないけど。
ロマンを求めてなにが悪いんじゃい。
その後もなんとか使えるようにならないかと試したが、歯や顎を魔力で強化して折れないように出来ただけで実用レベルには至らなかった。
俺は諦めんからな...!
◆◆◆
ある日の昼休み。
「うりうり~まどかぁ~」
「さやかちゃ~ん、てぃひひ...くすぐったいよぉ」
椅子に座った俺は膝の上にまどかを乗せて愛でていた。
疲れた時はまどかに癒して貰うに限るぜ!理由も聞かずに甘えさせてくれるまどかマジ天使。
中身男が何やってんだ通報すんぞと思ったそこのアナタ、ちょっと待って欲しい。
乗って来たのはまどかからだし同意の上だぞこれは。
それに守りたい物を確認するための行為であって下心はない。...なんかいい匂いすんなーこいつ。おっと話が逸れた。ほら何も疑わしい所などないだろ?
最近のまどかはスキンシップに遠慮がなくなってきてて、俺も拒まないので距離感がすげぇ近い。
周りにはやっとくっついたかだの遂にデキたかとか好き放題言われてるけど面白がって揶揄ってるだけだと思う。
「あはは、さやかと鹿目さんは相変わらず仲いいね」
「えぇ...本当に素晴らしいことですわ...」
だからその、少し離れた所から目ん玉かっぴらいてこっちを見つめる仁美もその類いだ。たぶん。いい加減に俺も察してるが触れたら負けだ。
「それでねその時仁美ちゃんが...ってさやかちゃん聞いてる?」
「ん~聞いてる聞いてる」
「もぉー!さやかちゃんてばー!」
あぁ~~かわいい...まどか成分がチャージされていくぅ~⤴
これがあれば俺はあと10年は戦えるぜ!!
◆◆◆
四ヶ月が経った。
もう俺は魔法少女として一人前と呼んでいいらしい。
キュゥべぇが言うには一人前になれるのは全体の約半数なんだってさ。殉職率五割とか高すぎ...高すぎない?そんだけ少女減りまくってて人口とか大丈夫なのこの世界。
原作でインキュベーターは有史以前から人類に関わって来たってドヤってたし、そうなっても問題ないようにされてるんだろうか。怖すぎない?収穫を待つ家畜の気分。小さい女の子を家畜扱いとかやはり畜生か...
なんでそんな益体もないことを考えているのかと言うと現実逃避だ。
今は
「ちょっとさぁアンタ話聞いてんの!?」
ご同業、魔法少女だ。
一人前と言っても俺のナリは小学生だし侮って勝負を吹っかけてくる奴は実は結構いる。
そういう子は大体中高生辺りのお年頃で、高圧的に縄張りを明け渡せだの部下になれだの好き勝手言ってくる。
「はいはい、聞いてますよ?」
「ここらはアンタみたいなちんちくりんが独占していい狩場じゃないの。わかる?」
「わかりますわかります。」
攻撃的なJKとかどう対応したらいいのかわかんなくて取り敢えず話合わせとくのが常なんだけど、その態度が気に障るのか大体キレる。
「...ナメてる?死にたいらしいね」
でもそれで武器向けてくるか普通?最近の若者怖い。
「言ってもわからないなら力づくでわからせるしかないよねぇ!」
「ヴェっ!?」
わからせる!?年上のメスガキにわからされちゃう...!?
「チッちょこまか避けるのだけは上手いなぁ!」
まぁそんな攻撃当たらないんですけどね、初見さん。
魔女とはそこそこ戦い慣れてるのかもしれないが対人戦の経験値が圧倒的に足りてない動きゾ。
苛立ちは動きを鈍らせ隙を生む。
そこを突いてスルリと攻撃を避け肉薄し首筋に刃を突きつければ――
「なっ...!」
「なにか事情があるなら聞きますけど、無いなら帰って貰えます?」
「クッ...ソ...!!」
大体は大人しく帰ってくれる。首なんて刺された所で魔法少女は死なないのにね。
「気をつけて帰れよー」
「覚えてやがれクソガキ...」
そんなテンプレセリフ吐く人おる?おったわ。ちょっと感動した。
こんな感じの襲撃がたまにある。
人気のないとこで魔力を放出して呼び出したかと思えば決闘まがいのことしたがる奴とか、魔女との戦闘に割り込んできて横取りしようとしたりする奴だとかまぁー色々いる。
これらの経験からわかるのはソウルジェムの秘密を、魔法少女の真実を知らない人がほとんどだってことだ。
だって知ってて魔法少女同士の戦いなんて不毛なことしたがる奴とか、例え殺してでも通したい意思がある覚悟ガンギマリか、危険性が分からないアホか、故意に殺すつもりがあるヤベェ奴かの三択だもの。
仲間は増やしたいけどそんな奴を仲間にしても背中預けられないよ...。
真相を話して錯乱されても困るし、今の俺がそれ知ってたらキュゥべぇに違和感持たれるだろうしでどうしようもない。
あーあ、どっかに才能あって人格もしっかりしてる魔法少女落ちてねーかなー!
◆◆◆
求めた仲間は、存外あっさりと手に入った。
魔法少女になって半年ほど経ち冬休みに入った頃。
縄張りを防衛し続けた結果か、最近はめっきり襲撃してくる奴もいなくなった。
魔女狩りにもすっかり慣れて最近いい調子だ。
少し余裕が出てきたから起爆札の在庫を増やしたり新技の開発に勤しんだり、まどか達と遊びに出掛けたりと日々を満喫していた。
だからこれは、怠慢だったのだろう。
「さやか、紹介しよう。ついこの間契約した新しい魔法少女だ」
「...巴マミです!よろしくお願いしますね」
毛先が痛んで枝分かれした黄色い髪。原作の記憶より若干幼い印象を受ける顔は、無理に笑っているみたいにぎこちない。
「彼女は君の一つ年上だが、魔法少女としては新人だ。先輩として色々教えてあげてくれないかい?」
原作の巴マミは幼い頃に交通事故に遭いそれがきっかけで魔法少女になる。
つまりもう――両親を喪ったってことだ。それも、つい最近。それが起こるって知ってたのに。
時期を知らなかった、忘れていたで済まされる話じゃない。見殺しにしたのだ、俺がこの子の両親を。
「君は仲間を欲しがっていただろう?丁度いいと思ってね。...さやか?」
反応を返さない俺に首を傾げるキュゥべぇ。マミさんも隣で困惑気味だったので慌てて右手を差し出した。
「ごめんごめん!私は美樹さやかだ。こちらこそよろしく!」
もう起こってしまったことだ。過去は変えられない。例え奇跡を体現する魔法少女であろうとも。
はにかんで手を握るこの儚げな少女も――俺が、守らないと。