Troubる   作:eeeeeeeei

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十五話 王×娘

ーーーーーー

 

 

「これで、全部かな」

 

「じゃあ、これでユウリさんはもう、うちに来る事も……無くなるんですね……」

 

「だから無くならないって。仕事が落ち着いてたらだけど、呼ばれたら全然行くし、ミカンもたまにうちに来てるんだからいいだろ?」

 

「はい!また行きますね!」

 

「ん。了解」

 

 ようやく結城家の荷物を全部運び出す事ができた。

 とはいえ大して物は無かったし、メインは使わせてもらっていた部屋を元通りに戻した、という作業だったが。

 ちなみにベッドなどの家具類は全て置いていっている。これはもともと結城家にあった物なので、俺は置いていく事に決めていた。

 

 今は残っていた荷物を鞄に詰めたところだ。

 あとは最後に部屋の掃除をしたら、本当に終わり。

 

「でも、ユウリさんがうちに来たら、また使う部屋ですよね?」

 

「いや、俺は使う気はないよ。お客さん用の部屋とかでいいんじゃないか?」

 

「私は嫌ですよ。……ここは、ユウリさんの部屋なんですから」

 

 約四年間過ごした部屋。今はベッドとシンプルな机と空の本棚が一つあるだけの部屋。こんなにも長く同じ家で過ごしたことなどなかったから感慨深いものがある。

 ミカンはそう言うが、俺はこの部屋を使う気は、まったくなかった。

 

 掃除も終えたところでミカンがコーヒーでもというので、今はリビングのソファーに座って入れてもらったコーヒーを飲んだいたのだが、ミカンが雑誌を片手にすぐ横にちょこんと座ってきた。

 

「ユウリさん、キッチンの物ってまだでしたよね?私はこれなんてどうかなって思うんですけど、どうですか?」

 

 引越しをはじめた時からそうだったのだが、俺の新居の物をミカンは自分の好みで固めようとしている節がある。

 

「んーそうだな。まぁ、おいおい集めていくよ」

 

「もー。またそう言ってなかなか買わないじゃないですか。キッチンの物がもっとちゃんとあれば私がご飯作りにいきますよ?」

 

「こらこら、そこまでやらせられんよ。簡単なものはもうあるんだし、また買いに行く時は言うから、そん時一緒に見てくれたらいいよ」

 

「もちろんです。任せてくださいよ。私達の(・・・)家ですもんね」

 

「…まぁもう突っ込まないけど。リトもララも料理できないからそうなるのが不安なんだよ」

 

「そうですよねぇ…料理は私とユウリさんに任せっぱなしでしたからね。ララさんはそもそもキッチンに立たせるべきではないですし……」

 

 俺はうんうんと頷く。

 一度ララが料理を振る舞ってくれた事があるが、あれは拷問に近かった。ミカンは一口で脱落し、リトはゆっくりとだが気合で完食。俺は速攻で全てを口に放り込み水で流し込んだためミカンの物も食べる羽目になったのだ。あの時はかなりの絶望感を味わったものだ。

 ミカンも同じ事を思い出していたのか、俺にあの時はすみませんでしたというジェスチャーをしている。

 

「もしララが料理に興味を持ったら、リトは、この先もたないかもしれないぞ」

 

 容易に想像がつくので、ミカンには俺の家に住み着くのは禁止。来るならみんなで、もしくは二人に食事の提供がある日と取り決めた。

 

 

ーーーーーー

 

 

 ミカンと別れ新居へと帰ってきた。

 荷物の整理も終えて、ベランダの一角を占める観葉植物に水をやっていると、急にポケットから電子音が流れ俺は携帯を取り電話に出た。

 

『七瀬くん、どうやらデビルーク王が来ているようでね。自分の娘がいるから大丈夫とは思うが、正直どう動くのかはわからない。今は、彩南高校にいるようだ』

 

「なるほど、ララの父親、ですか…しかも学校って、暴れてるんですか?」

 

『今のところは、女子高生を追いかけ回してテニスコートを破壊したくらいだね』

 

「え、なんすかそれ?本当にデビルーク王、なんですか?」

 

 なんだそのエロガキみたいな行動は。テニスコートを破壊ってのも、なんでそんな小規模な暴れ方なんだ?目的がわからん。

 

『……あぁ。相手は宇宙の王で間違いはない。君の弟妹に聞いた方が早いと思うが、何が起きるかわからないのでね』

 

「了解です。一旦見に行きます。情報も引き出せそうだったらなんとかしますね」

 

『それは、可能ならでいい』

 

 俺は電話を切り黒コート姿に変わる。

 

 宇宙の支配者であり、ララの父親。

 ヤバイとは思うが正直見てみたい好奇心の方が勝っていた。

 果たしてどんなやつか、どんな次元の強さを有しているのかを想像しながら空へと飛び出す。

 

 この時は、まさか戦闘になるとは思っていなかった。

 

 

ーーー

 

 

「いたいた」

 

 いつも通り大空を結界を使って飛び跳ねて学校の遥か上空へとついた。

 学校の屋上で、ララとリトとザスティンと、なぜか西蓮寺。それともう一人、ララと同じような尻尾を生やした子供がいる。ザスティンが跪いてるって事は、あれがデビルーク王か。

 ララは母親似なんだろうな。

 

 すかさず凝で確認したが、

 あぁ、ありゃバケモンだな。

 念では無いが、身体エネルギーがもの凄い。ただ随分と弱々しい感じだった。これならやりようはあるかもしれないが……

 

「!!!!」

 

「…………れば……地球をツブす」

 

 会話はよく聞こえないが、最後は聞こえた。

 

 異常な力の高まり。大気が震えている。

 街でも吹き飛ばす気か、いきなりこんな事になるとは思っていなかったが、やるしかない!

 

「フッ!!」

 

 顔程もある念弾を指先から放つ。数は五つ。全て【隠】も使い感知される可能性も下げる。五方向から同時に迫る念弾だ、さぁどう捌く?

 

ーーードドドドドォォォン!ーーー

 

「…………」

 

 全て直撃するも、無傷。それは予想していたのでいい。微動だにすらしないのは軽くショックだぞ……

 

「……どうやら、ハエが飛んでるみてぇだなぁ」

 

「パパ!!?」

 

 一直線。瞬間両手にトンファーを生成。

 

「なんだぁテメェは?」

 

「地球を破壊しにきたのか?」

 

 質問に質問で返すが答えない。繰り出される拳の先端にトンファーを回し当て、軌道をずらす、ずらす、ずらす!短い手足から繰り出されているとは思えないほどに早く、重い!ただ、リーチが短いのが幸いしトンファーによって間合いには入れさせない。

 

「なんだあの黒コート!?」

 

「ララさん、知ってる人…?」

 

「私も知らないよ!ザスティン!あれは誰なの!?」

 

「わ、わかりません!ですが王の敵は!!」

 

 ち、リト達にまで姿は見られたか。だがそれよりも、ここでザスティンも混ざる状況は避けたい。

 

「余所見とは、随分と余裕だな」

 

 やっぱ、そう思うよな!

 屋上を見下ろす形で視線を向けたためにできた俺の頭上の死角。そこにくる攻撃は予測済み。誘いに乗っかり俺を叩き落とすべく放たれるかかと落とし。身長のせいでもはや体全体だが。

 相手の動きの軌道上、攻撃の起点、関節をいくつもの小さな結界で固定する。

 

「こんなもんでッ!」

 

 一瞬で破壊される結界群だが、動きはほんのわずかに止まった。

 俺を見下ろす位置に飛んでいるデビルーク王に向かい両手のトンファーに【周】で更に念を込め、地面に向かって全力で振り下ろす。

 

「落ちろッ!!」

 

ーーーズド…ン!!ー

 

 逆に俺が叩き落としてやった。

 グラウンドに落としたので砂埃がひどく姿は見えないが、

 

「貴様、何者だ!?」

 

 ザスティンも屋上から飛び上がり目前に迫るが、お前が死角からの攻撃にめっぽう弱いのは知ってるんだよ。

 トンファーを消すと同時に乗っていた結界の粘度を高めトランポリンの要領で更に空へ向かって飛び、新たにザスティンの背後に結界を生成して強襲。

 

「な、なんだとーーー」

 

 足場の結界を生成して着地、案の定直撃し落ちていくザスティンを意識から外し、再度デビルーク王に…!!

 

「ーーッ!!」

 

 勘で蹲み込んだことで頭上を拳が通り抜けた。

 

「いい勘してるな。マジでなんなんだテメーは?」

 

「ハンターと、名乗ってはいるよ。地球をツブされるのは困るんだが……ッ!」

 

 話しかけてきておいて会話をするつもりはないのか、デビルーク王はなおも攻めてくる。

 デビルーク王の拳が弾幕のように襲いかかってくるが、こちらも負けじと両拳のオーラを40%ずつにして迎撃。武器を作る暇もない。かと言ってこれ以上オーラを弱めるとヤバイ。相手の拳が俺の拳以外に当たれば俺は即死だが、そうも言ってられないジリ貧な状況。

 俺とデビルーク王の起こす余波だけで屋上に立つリトと西蓮寺は倒れ込んでいた。

 

「ハッ!まさか地球にお前みてーなヤツがいるとはなぁ!!」

 

 会話の隙に足場の結界を解除。重力により落下をしながら尚も拳をぶつけ合う。

 

 拳の弾幕の間、息を吐く要領で口から小さな念弾を放ち眼球を狙う。

 

「ちっ!さっきからなんだそりゃあ!?」

 

 今!!!

 

「疾ッ!!」

 

 ダメージなどは皆無だが不可視の念弾が当たり瞬きをした一瞬の間に右足に【硬】を、かけてデビルーク王の左側頭部を蹴り抜くも、咄嗟に腕でガードされる。しかしこちらも拳の時とは違い100%のオーラを込めた【硬】による蹴り。カウンターをもらうわけにはいかないため、ガードの上から無理やり振り抜く。

 

「オッッッラァ!!」

 

 吹き飛ぶデビルーク王を視界の端に収めつつも、グラウンドに激突する寸前にオーラを体全体を均一に覆う【堅】の状態に戻して前まわり受け身の要領で着地。そして【円】を、展開、相手の位置を把握。即座に目の前に大中小の結界を生成するも、速いな。三個が限界だ。

 

「今のは痛かったぞ!!コラァァァァア!!」

 

 拳を突き出しての突進。明らかに、今までで一番力が込められてる。

 だが、それはこっちも同じ。俺のも今までのとは桁が違うぞ!!

 

暴王の咆哮(タイラント・ブラスト)ォォォオ!!!!」

 

 【硬】によって全てのオーラを込めた右拳を結界に撃ち込む。即座に三つ並んだ結界を破壊し尽くし、増幅された衝撃波とデビルーク王の拳が交わる。

 

ーーーカッ!!!ーーーー

 

 力の奔流の衝突の中で、デビルーク王は確かに力を抜き、そして微笑を浮かべたように見えた。

 

 再度吹き飛んでいくデビルーク王。

 なぜ、力を抜いた…?

 

「王!!ーーー貴様ァ!!」

 

 ザスティンが復活したようだ。

 不味いな、デビルーク王も今のじゃ当然致命傷にはなってはいないだろう。

 勝つにはアレを使うしかないが、デビルーク王の隙を突く事すら厳しいのに、二対一ではもはや隙などできないだろう。

 ひとまずザスティンの意識を狩り取る事に専念するが、デビルーク王にそこを狙われ横槍が当たれば、俺は死ねるな。

 

「ザス、やめろ。」

 

「は、お、王!無事でしたか!」

 

「当たり前だろ。俺が地球なんぞでやられるかよ。オイ、ハンターとか言ったな。テメーは一体なんなんだ?」

 

 今度こそ話し合う気になったらしい。正直助かった。さっきの状態は恐らく詰んでいた。ーーただ、なんて言おう?後でリトたちと話してややこしくならなそうな物は……あれしかない!!

 

「ーーー地球防衛軍!……みたいなもんだ」

 

 妙案だとは思ったが、自分で言ってて途中でなんだそれ?と恥ずかしくなったので声がだんだんと小さくなってしまった。だが今はしょうがない。これでデビルーク王に今後地球を監視されたとしても、正にそんな事をしてるのであながち間違いでは無いはず。変に探偵って言っても絶対伝わらないし、それこそリトに気づかれる。

 

「なんだそりゃ?」

 

「言葉の通りだ。悪意ある宇宙人の来訪は歓迎していない。そうじゃないなら俺はもう消える。その前に、俺からもひとつ質問だ。ーーーを知ってるか?」

 

「ふーん。……テメェじゃ勝てねぇぞ?」

 

「そうか。……居場所はわかるのか?」

 

「居場所は知らねー」

 

「そうか。あんたらが地球に危害を加えないのなら、俺もこれ以上プリンセスの父親と殺り合う気はない」

 

「俺もはなから娘の恩人と殺り合う気はねーよ」

 

「………」

 

「三年、いや四年前か?あの時の死にかけてたガキだろ、お前は?」

 

 俺の事に気付いていたか。というか、そもそもあの日デビルーク王なんていたっけ?

 あ、俺が殺されかけて気絶した後の話か。

 

「………さぁ?」

 

「けっ、とぼけんなよめんどくせー。今だにモモは……」

 

 モモって、確かララの妹か。あの時の意識のあった方の子の事だとは思う。まだデビルーク王が話している最中だったのだが、

 

「パパッ!!!」

 

 ララの声に遮られ、他のみんなも集まってきた。視線の感じから、俺は完全に敵キャラみたいになってるんだけど……

 やっぱり俺の早とちりだったのか?

 

「私、リトとは結婚しない!!」

 

「あぁ、かまわねーよ」

 

「「「「え?」」」」

 

 デビルーク王以外の元々屋上にいた四人の声が揃った。

 

「こいつをモモと結婚させて、こいつに俺の後を継がせる。戦闘力も、まあ及第点だしな」

 

 デビルーク王はそう言いながら俺を指差しており、全員の視線も再度こちらへと向く。

 いやいや、何この状況。完全に逃げるタイミングを間違えた。最悪だ、もう一言も発したくない。

 

「王、では、ララ様は……」

 

「あぁ、俺もすまなかったな、ララは結城リトと結婚する気になったらしたらいい。その時は結城リトが後継者だが、モモはこいつに惚れてんだし、そっちの方が早いかもしれないだろ」

 

「パパ!!ありがとう!!」

 

 デビルーク王に抱きつくララを見ながら、今がチャンスとこの場を見ているはずの加賀見さんに転送するように合図を送る。

 即座に足元に黒渦が出現した。

 

ーーーとぷんーーー

 

「の、飲み込まれてる?なんだ!?助けないと!!」

 

「近づくな。俺以外が触れれば死ぬ。さっきから話はわからんが、地球に手を出さないのなら俺は消えるよーーー」

 

「おい、テメーが俺の後継者候補第一位だ」

 

 リトが助けてくれようと手を伸ばすが、ハッタリと勢いだけで動きを止める。この得体の知れない俺を助けようとするか普通?まぁそこがリトの良いところであり悪いところなんだが…

 俺は黒渦に完全に飲み込まれて、最後に不穏な言葉が聞こえながらもその場から見事に逃げ出した。

 

 

ーーーーーー

 

 

「アイツ、あんな事もできんのか……!」

 

「パパ、あの人は誰なの?」

 

「あ?覚えてないのか?お前もモモと一緒にあいつに助けられたんじゃないのか?」

 

「……え?」

 

 私とモモが?誘拐された時?あの時のことは、正直ほとんど覚えていない。

 けど、あの人が……?あれ、あの時、モモが泣いていて、私を連れて、あのボロボロの………

 

「ーーあ。」

 

 思い出した。あの時の光景を。

 どうしてお兄ちゃんを見て、お兄ちゃんの傷跡を見て、あんな気持ちになったのか。お兄ちゃんが、助けてくれてたんだ。でも、あの人がそう?じゃあ、あの人はお兄ちゃんなの?

 

 頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。

 

「まぁ、俺はもうデビルーク星に戻る。ザス、お前は引き続きここに残れ」

 

「パパ、モモが、結婚するの…?」

 

「…あいつはずっと地球に来たがってたからな。確実にハンターが目当てだろう。俺が言えば、すぐにでも結婚するはずだ」

 

 モモと、お兄ちゃんと、ハンターが結婚??

 ダメだ。頭が全然うまく働かない。

 

「じゃあな」

 

 そんな今も混乱中の私を置いて、パパは帰っていった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「はぁーーーしんど!」

 

「七瀬さん、お疲れ様でした」

 

 戻ってきて早々大の字で寝転がる七瀬くん。

 

「まぁ、この星をめちゃくちゃにする気は無いそうですよ。あと、アレの存在は認識してましたね」

 

「デビルーク王も知っていたか」

 

「そうですね。ーーー俺じゃ勝てないらしいんで、殺るならやり方考えた方が……」

 

「それはいい。アレは僕の獲物だ。君とて手を出すことは許さん」

 

「わかってますよ。でも手伝いはしますよ。標的には手は出しませんし、給料もらってるんで周りの片付けくらいしますよ。まぁ居場所は知らないそうなんで動きようは無いですけどね」

 

 そうか、今の七瀬くんでは勝てないか。

 それは果たして、何に対して言っているのか……

 だが、【念】とは非常に面白い。やりようなど、いくらでもある。

 

「あぁ。それがわかっているなら構わない。今はまだ、その時ではないからね」

 

「えぇ。じゃあ俺はこの辺で」

 

「送りますよ七瀬さん」

 

 七瀬くんは加賀見くんのゲートへと沈んでいった。

 

「加賀見くん、じゃあ今日も始めようか」

 

「えぇ、先生。私の方は、かなり形になってきましたよ」

 

「そうだな。僕の方も、ね」

 

 

 【念】は奥が深い。正にその通りだ。

 

 僕は別に戦闘狂ではない。

 勝つなどと、勝負事のような事を言う気もない。

 どんな形であれ、ヤツを殺せれば、それだけでいい。

 

 




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