Troubる   作:eeeeeeeei

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十七話 平穏×不穏

ーーーーーー

 

 

「ほら、遅刻するぞ、ララ」

 

「ん、んん……」

 

「ララー起きろー!」

 

「あ、うんー。あーお兄ちゃん。おはよう」

 

 お兄ちゃんが起こしてくれたんだ。でも、あれ、ここどこだろう?

 ひとまず身を起こして被っていた布団から出て、周りを見てみると、ここには、ベッドしかない、他は何もない部屋。引越しを手伝った日から何も変わってない、お兄ちゃんちの寝室。あ、私、昨日……

「あぁ、おはよう。って!うぉ!ペケ、起きろ!仕事してくれ!」

 

 なんでかお兄ちゃんが少し焦ってる。あ、私裸だ。お兄ちゃんが布団を私の頭から被せる。むぅ。これじゃ前が見えないよ。

 

「おはようございます。ユウリ殿」

 

「おはようペケ。早いとこララに着られてくれ。ララも朝飯つくったから、顔洗ったらこいよ。歯磨きも新品出してるからそれ使って」

 

「え、あ、うん」

 

 お兄ちゃんは部屋から出て行き、ペケがパジャマフォームになってくれた。

 

「ねぇペケ。私昨日って………」

 

 ペケと昨日の事を話して、顔を洗ってリビングに行くと、お兄ちゃんはちょうどキッチンに立っており、焼けたトーストをお皿に乗せていた。

 焼きたてのトーストのいい匂いがする。

 

「簡単なものしかできなくて悪いな」

 

「うんん。おいしそー!ありがとうお兄ちゃん」

 

 トーストと目玉焼きとサラダ。

 トーストも目玉焼きも焼きたてであったかそうな湯気が出てる。

 地球でのご飯は温かいし、味も美味しい。

 

「いただきまーす」

 

 二人で朝ごはんを食べながら、昨日の事を思い出す。私、昨日あのまま眠っちゃったのか、あんなに泣いた後で…。ペケが言うにはお兄ちゃんがベッドまで運んでくれたみたい。じゃあお兄ちゃんは、どこで寝たんだろう?

 

「ごちそうさま!」

 

「美味かった?」

 

「うん。おいしかったよ。ありがとう」

 

「ならよかった」

 

「あのね、昨日はありがとう、あと…お兄ちゃんはどこで寝たの?」

 

「いや、いいんだ。俺の方こそ、ありがとな。俺はソファーで寝たよ。疲れた時たまにソファーで寝ちゃうから気にしなくていいぞ」

 

 お兄ちゃんは、優しい笑顔でそう言った。

 ご飯を食べ終えて洗面所に向かおうと思ったら声をかけられた。

 

「ララ、制服は…そう言えばペケがいるから大丈夫か。じゃあ、俺は先行くから、鍵渡すからかけたらポストに入れといてくれ。ララも遅刻しないように出ろよ」

 

「あ、お兄ちゃん……!」

 

「いってきまーす」

 

 そう言って、お家の鍵を渡して出ていっちゃった……

 でも、時計を見たら確かにそろそろ出ないとな時間。

 

 昨日、結局聞けなかったな。

 あの黒コートの人、お兄ちゃんじゃなかったとしても、きっと無関係じゃないと思う。

 でも、お兄ちゃんから言わないのなら、聞かないでほしい事なのかな。

 なら、私は待ってるね。お兄ちゃんが打ち明けてくれるまで。

 

 いつも聞いてくれるばかりだから、次は私が聞いてあげるね。

 

 

ーーーーーー

 

 

「ユウ兄!!」

 

「おーリト。おはよう」

 

「昨日はララが、ごめん!ちょっといろいろあってさ…」

 

 学校の校門に着いたあたりでリトに話しかけられる。

 いろいろ、ね。まぁそうだろうな。

 

「ララから聞いたよ。大変だったみたいだなー」

 

「あれっ?ララは一緒じゃないの?」

 

「あぁ、起きるのが遅かったからな。先に出てきたんだ」

 

「そうなんだ。でも大変でさ、いきなり後継者とか言われてもだし、その後黒いコート姿の人が割り込んできてさ…」

 

 リトは、気付いてなさそうだ。靴も履き替え廊下を歩きながら昨日の俺について語っている。かく言う俺は、へぇーとかほぉーとか相槌だけで答えていた。

 

「結城ーーーーッ!!」

 

「ん?」

 

 なんだか叫びながら水色の髪をした奴が廊下を走ってくる。

 なんだあいつはと思ったが、そう言えば、宇宙人のレンってやつか。ララがどーだとリトに噛みついてるが、本当にリトの周りはやかましいのが多いな。

 

「ちょっと、廊下で喧嘩は……」

 

 ゲッ!俺の苦手な女、古手川唯だ……

 取っ組み合う二人を止めようとしている。

 

「ま、まずい……ふぇっ…ふぇっ」

 

 でも、レンってのは、くしゃみを堪えているような、まずいって言ったけど、何がまずいんだろう?

 

「へっきし!!」

 

ーーーボンッーーー

 

「きゃ!」

 

 突然の煙幕。

 後ろに倒れ込む古手川を抱えて飛び退く。

 なんだ、攻撃されたのか?こいつも確か宇宙人だったよな?

 煙もはれてきてその中には、

 

「………リトくん!」

 

 男子の制服を着た水色の髪をした女の子がいた。

 

「きゃはっ♡」

 

「うわっ!ルン!!」

 

 何がどうなってるんだ…全くわからん。

 ひとまず腕の中の古手川を見ると

 

「な…ななな……」

 

「なんなんだろうな?性別変わってるし。本当変な奴だなぁ」

 

 古手川は真面目な奴だし、今回は『ハ』じゃなく『な』って言ってるし俺と同じ感想なんだろう。

 支えていた手を離して俺は話しかけたのだが、なんだかワナワナと震えている。

 

「なんて、ハレンチな!!」

 

ーーーバシンッーーー

 

「…………なんで?」

 

 なんて、が付くのかよ。またも俺にビンタを喰らわし、俺の質問すらも無視して廊下をズンズンと歩き去っていく古手川の背を呆然と見送っていたら、水色髪の女の子に言われる。

 

「あれ。リトくん!この人がお兄さんのユウリさん?ーーーハレンチな人なの?」

 

 ……一体なんなんだこいつらは……!

 行き場のない怒りが溢れ出る。

 

「……おい、リト。お前のせいだぞ」

 

「え!?今のは俺は悪くないじゃん!!」

 

 リトへの八つ当たりをした後、レンって奴の女版、ルンにジト目で見られる。

 

 朝から憂鬱な気持ちで俺は教室へ向かった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「ユウリ、ここの本を借りたいのですが、どうしたらいいですか?」

 

「………」

 

「……ユウリ、聞こえないんですか?」

 

 ざわざわとし始める教室。

 

 そりゃあそうだ。今は授業中。なのに俺の横には金髪の美少女が立っており、話しかけてきている謎の状況。

 

「聞こえてるけど、一応今授業中だから……」

 

「授業?と言うのはわかりませんが、ダメなんですか?」

 

 また、美少女召喚してるぜあいつ

 なんなんだあいつばっか

 髪色戻して調子乗ってんじゃねぇぞ

 なんか朝も一年の女子にビンタされたらしいよ

 七瀬くん、ロリコンなの?

 俺にも召喚してくれよー!!

 ダメなわけないだろ!よし!俺が案内するよ!

 金髪美少女、はぁはぁ……

 

「よし、行こう!」

 

 周りの好奇な目と、勝手な発言にうんざりする。

 最後の方のヤツはいったい誰なんだ!?

 

 前もこんな事あったなと、授業中にも関わらず教室を出た。

 

「……迷惑、でしたか?」

 

「いや、大丈夫だ。どうせ卒業だし、問題ないよ」

 

 ヤミと図書室に行き、貸し出しカードを取る。

 

「ほら、コレが俺の貸し出しカード。コレを受付に借りたい本と一緒に渡せばいいよ」

 

 俺も本を読みあさっているので慣れ親しんだ図書室で、もう何枚目かもわからないカードをヤミに渡した。

 

「……ありがとうございます」

 

「あ、あとさ、旧校舎があるんだけど、そこにも図書室があって結構本が残ってんだよ」

 

「……そんなところもあるんですか?」

 

「おう、場所教えるし、行ってみるか?」

 

「……はい」

 

 

ーーーーーー

 

 

「この、建物ですか?」

 

「そうそう中はかなり痛んでるから気をつけてな」

 

 そのままユウリに案内され旧校舎へとたどり着いた。

 木造建ての建物で、確かに中の床板や壁板は腐敗しており、簡単に抜けそうな箇所が多い。

 3階まで上がり廊下を二人で歩き、不意にユウリが立ち止まった。

 入口の上には図書室と書かれたボロボロの札がついていた。

 

「ここここ。ちょっと埃っぽいけど、結構あるだろ」

 

「……そうですね」

 

「あと、一個注意事項があって、ヤミは問題ないと思うけど、静かにしてあげてくれよな」

 

 そう言ってユウリはどこかを見つめている。

 ?ーー何もないが、何か思い入れでもあるのだろうか?

 不思議に思ったが特に何も聞かなかった。

 

「ユウリは、ここへはよく来るのですか?」

 

「まぁまぁだな。ガッコサボってる時は大概ここに来てたな」

 

「……そうですか」

 

「ーーーなんか、変わったな。ヤミ」

 

「……私が、変わった…?」

 

「あぁ。ミカン以外とも話したりしてるの見るし、もう寂しくはなさそうだ」

 

 寂しい?私が?そんな事は……ない。

 

「寂しくなど…ありません…」

 

「感じ方は人それぞれだけどな。ーーー知ってたか?俺とミカンなんか初めて会ってから一年くらい口聞かなかったんだぞ」

 

「え?ユウリと、ミカンが、ですか……?」

 

 思わず聞き返す。

 誰が見ても、ユウリとミカンは仲が良い。それは本当の兄妹と言っても過言ではないほどに。

 初めて出会った時も二人でいて、その後も、二人はいつも仲良さそうにしているのに…?

 

「あの時は、俺も人ってのがよくわかんなくてさ。たぶん、俺も変わったんだと思う……良い方向に。ヤミも、きっとそうだと思うよ」

 

「……そうですか」

 

 ユウリは変わった、私も変わる?

 カラの言葉が頭の中に甦る。私も、もうからっぽではなくなってきているのだろうか?

 

「俺も、あいつらといて一人じゃなくなったんだ。ヤミもあいつらはお構いなしに巻き込んでくるから、覚悟しておいた方がいいぞ」

 

 そう言って、悪戯っぽく笑うユウリ。

 記憶喪失と言うものは私にはわからないが、きっとユウリもからっぽだったのだろう。

 私も巻き込まれて、変わる、か。

 

「じゃあ、俺仕事あるから、そろそろ帰るな。ーーじゃあな」

 

 カラと同じような別れの言葉、なぜか、一瞬姿も重なって見えた……

 ユウリは出ていったのだが、微かに、誰かと話しているような声が聞こえた。

 

 

「俺はもう卒業だから、ここに来る機会はかなり減ると思う。ーーあの子は大丈夫だよ」

 

 

 内容は聞こえないが、誰と話していたんだろう?

 

 相変わらず不思議な男だ。

 

 でも、ここは確かに埃っぽい。いつものビルの屋上で読もう。

 良さそうな本と、本校舎の図書室で借りた本を持って、私も窓から飛び立った。

 

 

ーーーーーー

 

 

 ヤミと別れ、旧校舎の地下奥にて、はぐれ宇宙人と話していた。

 【円】で確認したが、ヤミはもう出て行ったようだし、こいつらがバレる事はないだろう。

 

 こいつらは元々は故郷の星や、所属していた組織をリストラされた宇宙人達。その後、あてもなく宇宙を放浪し地球に流れ着いた連中。

 俺がここで本を読んでいると襲ってきたのだが、純粋に地球人と同じような、もしくはそれ以下の弱小宇宙人たちで、一度ボコボコにしたら大人しくなり、いつしか仲良くなった。その後は食料の提供の代わりに情報をもらっている。

 

「静かにしておくように言ったし、大丈夫だって」

 

「ほんとっすか?まぁ、ユウリさんが言うなら信じるっすけど……」

 

「不気味な見た目して何小さいこと言ってんだよ」

 

 三つ目で、肌はピンク色。頭には鬼のようなツノが二本生えており、身長は2m近くもある中級悪魔みたいな見た目のやつに向かって言う。一応ここで一番の古株らしく、基本はこいつと話をしてる。

 

「不気味ってひどいっすよ。これでも地元じゃモテたんっすよ。」

 

「悪い悪い。でも、本当に大丈夫だって。お前らも地下にいりゃ良いし、あの子も静かにしてるから問題はないだろ。あと………なんか情報は入ったか?」

 

「………最近来た新入りがいるんすけど、もともと下っ端やってたみたいっす」

 

「へぇ……ちょっと話聞かせてよ」

 

 新入りだそうで、筋肉質で赤い一つ目で一本ツノの生えた、サイクロプスみたいなやつに話しかける。

 

「はい、俺も入ってた、というか入る直前で逃げたんですけど、何かを頭に入れられそうになって、俺は逃げ出したんです。ソレを入れられたやつを見たんですけど、完全に人形みたいな、抜け殻みたいになっててーーー」

 

 色々と話してくれたが、有力な情報はない。松戸さんが調べ上げている情報と似たり寄ったりだった。なので、俺がずっと気になっている質問をぶつけてみる事にする。松戸さんは知らないらしいが、あの時の言動を思い出すと、いるはずなんだ。

 

「ふーん。………ちなみにさ、地球人の俺と似たような見た目で、黒白の斑模様みたいなパーカー着てる奴っていた?」

 

「ーーー服装は、違いますが、たぶん、言ってる、奴は、いました……」

 

 歯がガチガチと震えている。恐怖が蘇っているのか、途切れ途切れで聞き取りづらい。

 

「…俺の、仲間達を、気持ち、悪いなって、笑いながら、そいつが、みんなを……殺して…俺だけ、離れたところにいたから……」

 

 歯を震わせながらボソリボソリと喋るが、俺が欲しかった情報は得られた。

 そうか、いるのか。松戸さん、やっぱり俺の狙いもいるみたいですよ。

 

ーーーこっちは、俺の獲物だ。

 

 少しだけ、殺気とオーラが漏れた。

 

ーーーゾクッーーー

 

 全員が目を見開き俺を見る。その全員が、震えていた。

 

「ゆ、ユウリさん?」

 

 すっと漏れ出たオーラと殺気をおさめて笑顔で答える。

 

「あー悪い!!別に脅したわけじゃないんだ。つい、な。サイクロくんも、思い出したくない事話させちゃってごめんな。良い情報だったし、次は多めに食料持ってくるな」

 

「………俺らは、ユウリさんが探り入れてんの誰にも言わないんで大丈夫っすよ。こうしてよくしてもらえるのもユウリさんだけなんすから…死なんでくださいね……」

 

「そうか。……ありがとな。お前らも、新しい仕事見つかると良いな。じゃあな」

 

 何だか妙な関係になってしまったな。ただ、悪い奴らではなく、俺も純粋に付き合いやすく、良い奴らだった。

 そう思いながら、俺は旧校舎を後にした。

 

 

ーーー

 

 

「ーーー?」

 

 

 旧校舎を出た後、事務所に向かって歩いていたのだが、不意に妙な視線を感じた。

 

 なんだ?殺気は感じないが……

 【円】の範囲にも入っていない。遠隔で監視されているような気配……

 

 ただ、ここで気付かれる時点で加賀見さん以下だし、気にはなるが手を出してこない限りは無視を決め込む事にした。

 

 

ーーーーーー

 

 

「お姉様の周りの人間関係は、なんとなく見えてきましたね」

 

「なーモモ。どーすんだよ?」

 

「ふふふ。結城リトさんの、お姉様への愛を確認するんですよ」

 

「まーそーだよなーなんか弱そうだし、あんなので本当に姉上を幸せにできるのかなぁ」

 

 ナナが何か言っているが、お姉様が結城リトさんを好きなのは確実。

 あとは、結城リトさんの方だけ。

 

 舞台は、お姉様のラボで見つけたモノが使えそうですね。

 これで、確認ではなく証明をしてしまえば。

 

 待っててください、もう少しです。今、私たちは同じ星の空の下、こんなにも近くにいるんですよ。ハンターさん♡

 

 

 

 でも、あの七瀬 悠梨さんの顔は……でも、髪色が全然違う。

 もしかしてハンターさんの偽者?あの方を騙る偽者だとしたら、それは……

 

 オシオキをしなくてはいけませんね♫

 

 

ーーーーーー

 

 

「はぁはぁ……」

 

 翌日になり、今日は朝から修行に来ていた。

 顕在オーラ量も少しは増えたが、練り込むのに時間がかかりすぎる。

 新技を試しているのだが、上手くいかない。もう少し、もう少しのはずなんだけどな……

 

 いつもの修行場である山中で、両膝に手を付き、荒くなった呼吸を整える。

 

「七瀬さん、もう一度やって見せましょうか?」

 

「いや、一回イメージ練り直します。ちなみに、加賀見さんは転送の時って手順的なものあるんですか?」

 

「私の場合は、右眼で見た座標と、左眼(・・)で見た座標を繋ぎ合わせる流れで行っていますよ」

 

「座標か、じゃあ、座標を設定しなければ繋げられないんですか?」

 

「そうですね、この能力は出口が必要なので、入口のみ作って、と言うことはできないですね」

 

「……入口と、出口……作る………!!!」

 

 俺は作る事に拘ってたんだ。俺は加賀見さんのように見えない場所に何かをしたいわけじゃない。だから、作るんじゃなく、こじ開ける要領で………!!!オーラをこれでもかと練り込み、イメージを現実に映す。

 何かを掴むように指を軽く曲げた状態で右手と左手の甲を合わせ前へと突き出し、鍵のかかった引き戸をこじ開けるように両手を開いていく。

 

「………できた…」

 

 思っていたものよりも随分と小さいが、できた!後は修行と慣れだ。一度できたものはイメージを膨らますだけ。

 

「これは……やりましたね。七瀬さん」

 

「いや、加賀見さんのおかげですよ。ありがとうございます。

 これは、『堕天堕悪の閨(ベリアル・ゲート)』って名前にしようかな」

 

「名前、ですか?」

 

 加賀見さんが何言ってんのみたいな目で見てる。違うんです。中二病っぽいけど、理由があるんです。俺は至極当然の事を語るように答えた。

 

「えぇ。【念】はフィーリングとイメージって言ったじゃないですか。それの延長線です。技にも名前をつけて、別に声に出しても出さなくてもいいんですけど、名前でイメージを引き出すって感じですね」

 

「では、私も能力に名前をつけた方が強力な技になる可能性があるんですか?」

 

「可能性ですけどね。でも名前があるとイメージしやすいのは確実ですよ」

 

「そうですか。先生にも、話してみますね」

 

 ぐぅ〜〜

 

 俺の腹が鳴った。

 時刻は既に午後一時。朝からずっと加賀見さんと修行していたので流石に腹が空いた。

 

「あ、すみません……」

 

「ふふ。お腹空きましたね。一度戻りましょうか」

 

 そう言って、俺と加賀見さんは黒渦に飲まれていった。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「デビルーク王が地球に行ったらしーね」

 

「あぁ。理由はわからんが、俺たちの狙いとは関係ないだろう」

 

「ふーん。でもさ、その理由興味あるなー」

 

『オレが見てこようか?』

 

「いーの?じゃーさ、面白い能力使う奴いたら教えてよ」

 

『面白い能力?』

 

「そ!身体エネルギーをオーラにして体にまとわりつかせてた、かな。会ってすぐに俺が殺したんだけど、なーんでか生きてるっぽいんだよねー。強くなってたら遊びたいなって」

 

「………地球には、あまり長居はするな」

 

『なんで?』

 

「今の奴とは別に、厄介になりかねない奴がいる」

 

『オレが、様子見でしくじるとでも?』

 

「…いや、大丈夫だ。だが、長居は無用だろう。あそこは大した惑星じゃない」

 

『デビルーク王が行っていたって事は、何かがあったか、今もあるかだろ』

 

「そーそー。じゃーいってらっしゃーい」

 

 

 適当な惑星経由して行っても、オレなら一日ありゃ到着できる。

 地球ねェ。面白そうなヤツと、厄介そうなヤツって言ったか。

 見物ついでに、ちょっと遊んでやろうかな。

 

 


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