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旧校舎での一件後、松戸さんの事務所に行って報告したが、正直わからないとの事になった。
頭に何かを埋め込んで傀儡にする能力ってのは聞いていたが、なぜ、この地球にいるセドカンが暴走したのかの理由はわからない。
楽観的に考えれば、ばら撒いてた傀儡を適当に間引いただけで、たまたまそれがセドカンだった場合と、セドカン自体になんらかの原因があった場合。ただ、これは可能性が低い。セドカン自体の理由の有無は無いとも言い切れないが、幹部を倒したこのタイミングで、偶然暴走する事の確率の方が著しく低いと思うのが自然。
可能性が高いのは、地球が狙いの場合。
幹部を倒した可能性があるから傀儡で様子見…程度であればマシだが、傀儡を地球に集めてる可能性すらある。もっと最悪なのは本陣すらもここに来ている場合。
その場合、どうするのが最善か……
答えは、俺の中では今のところ出ていなかった。
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「ただいまー」
「…おかえりなさい」
ヤミが、出迎えてくれた。
表情は、うーん。思った通り、暗いな。
あーぁ。いっときの感情でヤミに話すのを後回しにしたのが不味かったなぁと、後悔した。ヤミは家族、というか兵器じゃなく、人としての生き方を理解しようと、近づこうとしている。それを俺が距離を置く事でまやかしの家族ごっこと思わせた可能性が高い。
でも、あの時はベンドットもいたから、できればあれ以上セドカンの話はしたくはなかったしなぁ。
自分より二回りは小さな少女になんて話しだそうかを迷っている自分を客観視するとめちゃくちゃダサいな。
よしっ!普通に話そう!
「ヤミ、今日さ…」
「聞きました」
「え?」
「ベンドットという宇宙人が、何があったのかを全て話してくれたので、すでに知ってます」
あの野郎……余計なことしやがって……俺のさっきのしょうもない葛藤を返せ。
「そ、そうか。ごめんな。初めてでさ、仲間って言えるヤツを消すのって。なんて言えばいいか、迷ってたんだ」
「…あなたは、なぜ
……あぁ、そこまでも、話したのか。しかも、ヤミはカグロの事を知ってるのか…
「ヤミは、知ってたのか?」
「……私を作り出した組織を壊滅させた後に、会ったのが最後ですね。かなり、強いですよ…」
そりゃそうだよな。俺でもまだ、勝てないと思う。それ程にあの時の衝撃が強く、俺の中での殺されたというイメージが拭えない。
「強いのは、わかってる。あとは、なぜ…か。まぁ自己満足だな」
「自己満足…?」
「あぁ。間接的だけど、七瀬悠梨と両親を殺されたんだ。理由はそれで十分だろ?」
「…復讐、ですか」
「いや、はじめましてが死体だったからな。別に復讐…って程ではないけど、流石にこの肉体の仇は取りたいかな。あと、俺自身も殺されたようなもんだ。ミカド先生とモモのお陰でなんとか生き延びただけ。だから、リベンジも理由の一つかな」
ヤミは何か考えるそぶりをして、その言葉を飲み込んだように思えた。
「…そうですか」
「そうだよ。ーーーそろそろ、夕飯にしよっか」
そう言って、夕飯の準備に取り掛かる事にした。
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ユウリと夕食を食べて、いつものように過ごして部屋に戻る。
ミカンの選んでくれたベッドに座り、ミカンとユウリにもらった多くの本の一つを手に取り、読もうとしたのだが、今日の事を思い出していた。
「ユウリさんを、助けてやってください!!」
そう言ってきたあの宇宙人、ユウリにすごく感謝をしていた。
それに、あのお静という幽霊も…
私があの旧校舎に案内された時、廊下で話していたのがお静だったようだ。
静かにしてあげてくれ……
というのは、どちらにも向けてのお願いだったんだな。
不思議な男。
こうして一緒に住んでいても、知らない事ばかりだ。
プリンセスの言う、全部自分でやろうとすると言うのもわかる。私も、そうだから…
ユウリを助ける……依頼以外で動く事は、基本はないのですが、仕方ないですね。
それに、まさかクロが仇とは……彼がどこかの組織に属するとは思えないし、地球人を殺すような依頼を受けることもないとは思う。
でも、今よりは弱かったとはいえユウリを一方的に倒せるような者など宇宙でも少ない。
殺し屋クロ、あなたも変わったんでしょうか……
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「……大きな宇宙船の反応があるね」
今日も事務所の三人で修行中、松戸さんがモニターのようなものを見て言った。
「ただ、近くで停まっているようだ。まだ地球には入ってきていないな」
という事は暴走傀儡ではないって事なのかな?
チラリと横目で加賀見さんを見るが、俺の視線に気づき首を横に振った。
まだ、見えないって事か。
「とりあえず、ほっておこう。入ってくるようなら相手をすればいい」
「まぁ、そうですね。加賀見さん、また教えてください」
「わかりました。七瀬さん」
そう言って頷いてくれる加賀見さん。
二人の能力は知った。あとはそれを伸ばしていくことだが…
この二人の能力は、ここぞという場面以外では使わない方がいい。
「じゃ、模擬戦でもしますか」
「君と、僕らでかい?」
「そーですね、一回、念能力者同士の戦いの勘も取り戻しときたいですし。お二人も俺のオーラの動き見ててもらえたら、刺激になるかもしれませんよ?」
「いいだろう」
「但し、二人の能力は使うのは無しで、オーラ操作のみにしましょう。俺ももちろん結界は使わないんで」
「えぇ、わかりました」
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「まぁ、こんなもんでしょうね」
「クッ。老体を労ろうとは思わないのかい?」
「…やはり、お強いですね、七瀬さん」
ものの数分で二人に膝をつかせた。
加賀見さんがマジになったらどうなるのかとも思ったが、通常の状態だと、そこまで力を出すと肉体が耐えられないそうだった。
「いや、二人のオーラのおかげですよ」
「オーラの?」
そう、流れが、ぎこちない。意識しているところも、これからなにをしようとしているかも手に取るようにわかる。
「相手にオーラが見えなきゃいいですけど、オーラの流れのぎこちなさからやりたい事全部わかるんで、守るのも楽だし、攻めるときは打撃ポイントずらせば、結果こうなりますね」
「それは、つまり……」
「オーラを視認できて、戦闘経験のあるやつ相手だと、同じことになりますね」
「それは…そうだな。だがこれを直すには…」
「経験と実戦あるのみです。なんで、今後は【練】を限界まで行なった後に、俺と模擬戦しましょう。枯渇寸前の方が少ないオーラを意識して使えるでしょうから」
そう、この世界は正直なんでもありだ。いろんな事を想定しておかなくちゃならない。
別に、念を使える奴がいても全然驚きはしない。
松戸さん自身、生命エネルギーを発する宇宙生物を解剖し、調べあげて、喰う事によって念を開花させた。
そもそも、オーラを纏う生物がいる時点で、どこかにそんな人間がいてもおかしくないからだ。
「松戸さんは、【練】を5,6時間くらいは行けるようにならなきゃ、格上や同レベルの相手との戦闘は安心はできないですね」
「私は、どうしたらいいでしょうか?」
「正直、加賀見さんの潜在オーラ量を増やす事は望み薄なんで、操作性の向上と、その能力の精度上げるしかないですね…」
「その修行で扱うオーラが無いのですが……あ、七瀬さんのオーラを貰えませんか?」
「あぁそうですね。吸収型宇宙人って偽ってたのもそういえば伊達じゃなかったですね」
「ふふ、嘘をつく時は真実も混ぜ合わせると効果的ですからね。吸収といった行為は右の肺にいるシェリーがもともとそう言う子だったんですよ」
すごい綺麗な笑顔で、ブラックな事と常人では意味不明な事を言ってるな。
元々の設定の通り、加賀見さんの能力で確かに吸収はできるそうだが、実際は吸収といっても能力を吸い取るようなものではなく、ゲームで言うと食事でHPとMPが回復するようなもの。つまり、俺のオーラを呼吸するように吸って、そのオーラで修行するという感じ。
確かにその方が効率はいいし、俺も【練】でオーラの総量を増やす修行にもなるし、悪くはないな。
「そうですね。いーっすよ」
この後で、ちゃんともっと考えて返事をすればよかったと後悔した。
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「あと、これと、これもいりますね」
「はぁ。そーすか」
なんでこんな事になっているのか……
今は加賀見さんとデパートに買い物に来ていた。
修行中にそろそろ買い物に行く時間になったのでついてきて欲しいとなり、コーヒー豆などの消耗品から日用品の買い出しと、予約していた物?を取りに行くとの事だったのだが、コーヒーは普段俺もかなり飲んでるし、断れなかったのだ。
「七瀬さん、あとはあそこにも寄りたいのですが?」
「はぁ。いーすよ」
加賀見さんに手を引かれ、なんだかすごく高そうなアンティーク調の綺麗なお店に入る。
そう、手を引かれて……事務所を出てからは、ずっと手を繋いで二人で歩いていた。なぜかと言うと…
結局、加賀見さんのオーラ量の無さから普段は満足にオーラを扱う修行をできていなかったそうで、最初は俺の【堅】のオーラを呼吸のように吸っていたのだが、今は手から直接オーラを吸われている。
これが呼吸よりも断然多く吸い取られるのだが、潜在オーラ量には自信があるのでまだまだ大丈夫だけど、高校卒業したての若造な俺と、美人で大人っぽいが年齢不詳に見える、いわゆる良い女な加賀見さんとが手を繋いで歩いている方が、周りの目が凄いので大丈夫じゃなかった。
と、俺の羞恥心はお構いなしにお店を出て歩きながらも修行は続く。
『あそこのマスコットです』
『変化のスピードが遅いですね。あとは、輪郭部分がぼやけてるので、細部にもオーラを行き渡らせるようにしないと』
今のはオーラで文字を作り筆談で話している。加賀見さんはデパートの壁に貼ってあるポスターのキャラクターにオーラを変化させて絵を描いていた。
今は買い物で歩き回りながら、目についたものにオーラを変化させ形作る修行を行なっているのだが、加賀見さんは変化系だけあってかなり筋がいい。めちゃくちゃ複雑なものでもほぼできているが、オーラを均一に変化させるのがまだ甘いのと、速度が遅い。
これはイメージしたものに変化させるので確かに難しいのだが、少し考えすぎな気がした。
『少し考えすぎじゃないですか?イメージした物をぱんって感じでいいんですよ?』
『これでどうでしょうか?』
おぉ。普通に上手い。さっきより単純な物ではあったが、スピードは少しだけ早くなったくらいだが、何よりも細部が綺麗だった。
「いいですね。すごく(細部まで)綺麗ですよ」
「ありがとうございます。七瀬さん」
あとはオーラの流れ、【流】をごく自然に、そして早くしていくのが大事なので、【纏】【練】【絶】【凝】【円】【硬】の順に高速でオーラを操作し続けてもらう。
オーラの消費が早いな。
潜在オーラは少ないのに、顕在オーラは多い。
もったいないなぁと思いながらもそのまま二人で歩いていた。
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「あら?…七瀬先輩と……え?彼女さん…かな?」
七瀬先輩が、誰が見ても美人な黒髪ロングの大人な女性と手をつないで歩いてる。
「ハルナーなにしてんの?」
「え?うんん!なんでもないよ!」
なんとなく、隠した方がいいと思ったんだけど……
この友達二人には気づかれちゃったみたいだ。
「……すごく綺麗ですよ」
「ありがとうございます。七瀬さん」
あ……
「え、お兄さんじゃん」
「彼女なのかな?すっごい綺麗な人に綺麗ですよって言ってる!!」
「ちょっと話しかけにいこーよ!」
「ダメだよ。邪魔しちゃ悪いよ」
私は止めたのだが、
「おにいさ〜ん♡」
「凄い綺麗な人ですね。彼女さんなんですか?」
あ、七瀬先輩すごく嫌そうな顔してる。
「おぉ。リオミサだっけ?彼女じゃねーよ」
「ちょっと!私は籾岡里紗!」
「私は沢田未央です。手まで繋いで、本当に彼女さんじゃないんですか〜?」
あ、もっとすごい嫌な顔してる。
「ほら、二人とも!邪魔しちゃ悪いよ。七瀬先輩と、あの…」
「もー卒業してるし、元先輩だよ。あと、加賀見さんだよ。俺の仕事の上司で、事務所の備品の買い出し中だ。手を繋いでたのは、まぁいろいろあるんだよ!」
『加賀見さん一旦修行は中止!!』
『もしかして照れてるんですか?』
二人は見つめあってるようにも見えたけど、目を見てると言うよりかは、どこを見てるんだろう?でも、ぱっと手を離しちゃった。
「加賀見リイサです。七瀬さんのお友達さん、ですかね。確かに、七瀬さんと私は
優しそうな笑顔でそう言った加賀見さんは、凄く綺麗だった。
ん?……まだ?
「変な含みでからかわないでくださいよ。ま、お前らが思ってるような関係じゃないって事だ。じゃあな学生ども。せいぜい勉強に追われてろ」
そう言って二人は歩いて行ったけど、最後に会釈をしてくれた加賀見さんは、とても上品で、素敵な振る舞いだった。
「んー、お兄さん、遊ばれてんのかな?」
「でも、素敵な人だったね」
リサは相変わらずだけど、ミオも私と同じ事を思ったみたい。
翌日、リサがみんなに言いふらしてるのを見て、七瀬、さんに少しだけ申し訳ない気持ちになった。
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「ユウリさん…」
「お兄様…」
「…なんだよ?」
加賀見さんとの買い物をした日の翌日、家に帰るとヤミと、なぜかミカンとモモがいた。
「仕事場の人と、付き合ってるんですか!?」
「私をほっておいて、どういう事なんですか?お兄様♫」
「ヤミ…なにこれ?どういう状況?」
「………」
ーーーぷいっ
あ、顔を逸らした。ちょっと怒ってるみたいだし、なんだこれ。
「ヤミさんに助けを求めないでください!本当に恋人なんですか?というかモモさんはなんで?」
ミカンもそう思ったようだ。モモがなんでそんな事気にするんだ?
「私は、お姉様のお兄様であるユウリさんが変な女に弄ばれてると聞いてですね…」
あの加賀見さんのからかいのせいか…それを面白おかしく誇張したのはリサミオのどちらかだな。あの時の会話の態度的にはリサのほうか…
この後、二人と、聞き耳を立てているのかずっと近くにいたヤミに向けて説明して、信じてもらうまで修行より疲れた。
買い物、了承するんじゃなかったな……
それにしても、女の子の考えてる事は、いまだによくわからない……
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地球近辺の宇宙船内で、複数の宇宙人が会話をしていた。モニターに映し出されている地球の様子を見ながら……
その中でも、リーダー格の男が呟く。
「これで、ある程度把握できたな」
「それでは、どうしますか?」
「明日、予定通り、コトをすすめる。お前ら、しくじるなよ」
「待っていろ…………」