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「加賀見さん、もー他のやつの前でからかうのやめてもらっていーすか?あの後だいぶ面倒だったんすから…」
事務所に出勤して開口一番、文句を言った。
「ふふふっ。あれくらい別にいいじゃないですか。それとも、今までそう言った方はいなかったんですか?」
こういうところは誰の人格が影響してるのかわからないが、たまに少女のような事をする加賀見さん。普段なら気にしないが今回は被害者なので文句の一つも言いたかったのだが、まさかのカウンターを喰らった。
そう言った方ね…
前の世界じゃ、恋人、彼女、嫁、そんな相手などいようはずもなかった。女であろうと殺してきたし、周りにいた女性とも、そんな関係になどなる事はなかった。何度か殺されかけたことすらある。つまり、性別など意識した事が無かった。
では、今の自分の周りの女性関係について考えてみるが、
まず、ララはリトが好き。俺の事は、相談相手的な意味でのお兄ちゃん呼びだと思う。
ヤミは俺と一緒で恋愛経験など無いだろうし、そう言った感情を理解できないと思う。全く持って俺と一緒だ。ヤミは可愛いし、一緒に住んでいて、良い子だとも理解しているが、ヤミとどうこうなりたいというのは今のところは、わからない。
西蓮寺は良いやつだ。リトが好意を抱くのもわかるし、ララの事もあるが、好きなもの同士応援してやりたい気持ちは強い。間違いなく俺には恋愛的な好意などないだろう。
古手川は……苦手。アイツもきっと俺の事は嫌いだと思う。というか、コイツもリトを好き、もしくは気になってるような気がする。ただの勘だけど。
モモは、好意なのか憧れなのかはわからないが、少なくとも嫌われてはいないはず。昨日の一件で、もしかしたらなんていう思いもあったが、自惚れは良くない。
ナナもララと一緒で、お兄ちゃん的な扱いだし、こちらも俺には恋愛的な好意はないだろう。
こう思うと、周りはみんな魅力的で可愛い子ばかりだ。そんな目で女の子を見ることがくるなんて、前の世界じゃ考えられないな。
最後に、意図的に考えないようにしてたミカンとの事。自惚れじゃないが確実に好意を持ってくれている。チョコの件もあるし、事故だったがキスすらしたことあるし……
俺自身、ミカンの事は好きだ。でも、妹、なんだよな…俺は、どうしたいんだろう?
「──七瀬さん?」
「あーすみません。いないっすよ。経験もないっす」
ちょっと考えすぎた。でも、好きになった後って、漫画とか小説だとすぐ結婚したり、それがゴールでその後は描かれてない事の方が多かった。だからこそ、もしも今後、俺がミカンか、他の誰かと付き合ったとして、結局何をどうするのかがわからない。
「そうなんですか。七瀬さんも、
「なんすかその他はダメみたいな言い方…」
「一昨日、一方的に私を殴った事お忘れですか?──ミンメイは怒ってましたよ」
ミンメイって、たしか髪の毛の人格の人だったかな…まー髪は女の命ってゆうから、そういう事なのかな?
「いや、あれは組み手みたいなもんじゃないですか…」
なんか、真弓さんの一部を入れてからの加賀見さんの対応が随分と変わった気がするな…
その後、今日も松戸さんと組み手をして、加賀見さんにオーラを吸わせていると……
──ッ!!──
突然、加賀見さんが反応したようだ。
「───来ましたね。全員お揃いの格好…何かしらの組織でしょうか?」
「衣服の統一か。組織だろうね。見たところ見た目が全員一緒というわけではなさそうだしね」
加賀見さんと視界共有をした松戸さんも組織だという事を肯定する。
一昨日の宇宙船がようやく動き出したらしいが、様子見がこれだけ長かったって事は、何かしらを調べてたって事だよな。
加賀見さんクラスの遠視であればここも見られてる可能性があるが……
「ここには来ていませんね。ただ、この街には降りました」
目的は、俺たちではないか。
「まぁ、適当に一匹狩って来ます。離れてるやつがいればそこに飛ばしてもらえると」
「わかりました」
さて、やるか。
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──と、言うことで、早速一匹狩ってきて松戸さんに引き渡す。
その後、何をしたかは聞かないが、相手の目的なんかを洗い出したようで話を聞くと、どうやらミカド先生が狙いの宇宙でのマフィア組織【ソルゲム】という集団らしい。リーダー格はケイズというもので、こいつらは黒蟒楼とは関係ないと。
「まぁ、潰しちゃいましょうか?」
「いえ、人質を取られているようですね。倉庫でしょうか?この間お会いした、七瀬さんの学友さんと、もう一人いますね」
なるほど、ミカド先生の周りを調べてたってことか……
それにしても、もしかしなくてもまた西蓮寺かな?
義弟の思い人であり良い奴だもんな、急いで行くか。
「すぐ、飛ばしてもらっていいすか?」
「えぇ、行きますよ。」
そう言って、黒渦に再度飲み込まれた。
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「ふひひひ、いい眺めだなァ」
「ん…はぁ……」
「あっあっ」
スライムに拘束され、苦悶の声を洩らしている、西蓮寺と古手川。
手足を拘束され、恥部の方にまでスライムの触手が伸びていた。
「この娘達、本当にミカドを説得できたら解放するのか?」
「まさか!どっちも上玉だ。いくらでも商品価値はあるだろ……」
「ふざけんなぁーーーっ!!!」
リトは叫びながら手に持った角材を振りかぶり、話し合う宇宙人二人目掛けて振り回した。
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到着したが、【円】で確認したところ、リトとヤミが既にいた。
人質であったであろう西蓮寺と古手川の二人の拘束は解かれているし、四人いる宇宙人達のうち二人は既に転がっていた。問題ないだろうと去ろうとしたところで、【円】の範囲に何かが入り込んできた。
「鳥、いや、馬鹿でかい梟か!?」
メンフクロウのような、能面のような顔をした、翼を広げると2メートル以上あろうかという梟が飛んできた。
突如、俺目掛けて羽が飛んでくる。結界で防いでみるが、散弾銃のように撃ち込まれる一発一発が、わりと重い。普通の人間なら貫けるな。
「ユウリ!」
ヤミがこちらに気づいたようだ。
「ヤミ、コイツは俺がやるから、三人連れてミカド先生んとこ行け!」
また羽が飛んでくる。交わしても良いが、万が一みんなに当たるのは避けたい。結界で全て防ぐが、防戦一方は、柄じゃないな。
「鬱陶しいな。叩き落として、その羽毟り取ってやるよ!」
結界で梟の前に壁を作り、その上に飛ぶ。
念弾で叩き落とそうとした瞬間。
───キィィィィィーーーン!!!───
「ぐっ!!」
耳がイカれた。血も出てるが、鼓膜は無事か。それにしても超音波か?頭の中まで掻き回されたように気持ち悪い。
「ユウ兄!」「七瀬さん!?」「七瀬先輩!!」
下で三人が何か叫んでいるが、今は良く聞きとれない。
気持ち悪さを飲み込み、念弾を放ち梟を狙うも躱された。
梟は視力よりも聴力に依るところが大きいと本で見た。コイツはメンフクロウにも似てるし、左右の耳の大きさも位置も違うのだろう。左右から音を時間差で捉える事によって、立体的に音を聞き音源の場所を探る事ができる。
それによって、風を切る念弾の位置を把握されたのか…
突っ込んで、翼をもぎ取るか──
「…これが、鬱陶しいですね」
こちらが突撃したタイミングで、梟の両翼が切断された。
背後にヤミが現れて、刃に変えた髪の毛で切り裂いたのだ。
こちらが仕掛ける前の、絶妙なタイミング。
「消えろ」
そのまま結界を生成するつもりで溜めていたオーラを絶界として生成。梟の体を削り取るように操作する。
「ギィィィィイ!!」
断末魔をあげながら失った羽を動かそうとジタバタと踠いている。そのまま体の三分の二も削ったところで声は聞こえなくなり、最後には全てを消し去った。
その頃には、俺の聴力もだいぶ回復していた。
「ヤミ、ナイスタイミング!ありがとな!」
「…これは、同じ組織のもの、ですか?」
戦闘が終わり、索敵の為に展開していた【円】の範囲に加賀見さんと松戸さんが入った。手には頭部のない、人のようなものを掴んでいる。
「いや、こっちはミカド先生とは関係ないな。俺の方だ。少し、様子を見たい場所ができた。────リト!ミカド先生に二人は無事って伝えてやりな」
「ユウリ、私も…」
「ヤミにはリトたちを任せたい。お願いできないか?」
「……わかりました」
ヤミが付いてくれるなら、安心できる。ひとまずあの二人と合流しよう。
結界で跳び、空へと駆けた。
ーーーーーー
松戸と加賀見がユウリの【円】に触れる少し前。
「妙な者がいますね」
「うん。人の、これは皮のようなものか…監視者とでも言おうか。七瀬くんに興味津々のようだね」
「そうですね」
「これは、持って帰ろうか。──アイツへの報告もさせてはやらん」
松戸と加賀見はそのまま人皮を被った人間ではないもののところへと向かう。
ーーー
「あれは、なんだ……?削り取っているのか?でも、削れたものはいったいどこへ消えている…?あの黒ずくめの男と、金色の闇…二人掛かりとはいえ
「──やあ」
「……ッ!!」
な、なんだコイツは!?いつ、現れた!?
クソッ!ここは、引かなければ…!
「簡単に逃すつもりなら、わざわざ話しかけなどしないよ」
黒髪の女が俺の背後に立っている。挟まれたか……ッ!!
「……ぐぅぅぅ!!」
「おや、君も捨て駒みたいだね。その頭の中の物、取ってやろうか?」
この老人は、何を言っている!?何!?なんだ!?頭が、割れる…!!
「取ってやろうとも思ったが、出てくるか。──加賀見くん」
「──はい、先生」
黒髪の女の左腕が伸び、俺の頭を掴む。
その後は、何も分からなくなった。
ーーー
「──来たか」
「えぇ。加賀見さんが持ってたの、何だったんすか?」
俺の【円】にわざと触れたのはわかっていた。気になっていた事を伝えると、松戸さんは手に持った何かの皮のような物を俺へと投げ渡す。
「どうやら、人の皮だね。これで地球に潜り込んでいた。頭には蟲も埋められていたし、どうやらこの蟲が傀儡の条件だ」
なるほど。蟲を埋め込んで操ってんのか。人の皮というのは…
「もしかして、これだと…」
「えぇ。私でも、妙な行動を取らないかぎりはわかりません」
なるほどな。地球に入れ込んで暴走させる魂胆ってことか。
と思ったが、その考えを読み取ったのか、松戸さんに言われる。
「コイツの場合は、君の戦闘を監視していた。どうやら報告でもするつもりだったようだね」
「蟲から、情報も吸い出せるって事ですか……」
そうなると、埋め込まれてる可能性がある奴は逃すわけには行かないな。全部消し去るか、頭を潰して出てくる蟲をも殺す必要がある。
人皮に関して、監視者を送り込んできた敵の意図に関しての意見交換を一通り終える。
わざわざこんなことまでするってことは、やっぱり地球が気になっているんだよな。ここが決戦の地になる可能性があるなら、色々と考えなきゃいけないが、まずは…
「松戸さん、作って欲しいものがあるんですけど─────」
松戸さんに頼み事をして、家へと帰った。
ーーー
家に帰り、ヤミにあの後の話を聞いた。
結局人質を失ったリーダー格のケイズもララにやられ、ミカド先生からもお仕置きを受けて、ザスティンに引き渡したらしい。
「そうか。でも、今日は助かったよ。ありがとうな」
ヤミが翼をもいでくれたので、かなり楽に倒せた。何かを守りながらってのは色々と制約が生まれるから、今回ヤミのおかげで瞬殺できたのは助かった。
「ユウリの方は、様子というのはどうだったんですか?」
「……ちょっと、いや、だいぶ面倒な事になってる。地球人の皮を被った、黒蟒楼の奴らが紛れ込んでる可能性がある」
「…つまり、見分けは…つかない」
「その通り。もちろん俺もやれる限りの方はするんだけど、もしもの時は、ミカンたち地球人を守ってやってくれないか?」
「…それは、依頼ですか?」
「違うよ。俺からヤミへのお願い。嫌ならいいんだ。ヤミにも危険なことをしてほしい訳じゃない」
「……そうですか。構いません。何かあれば、私はミカンは助けますから」
依頼じゃなくて、お願い。
ミカンは、か。やっぱりヤミの中でミカンはかなり大きな存在なんだな。まぁ、それは俺にとってもだけど……
ーーーーーー
翌日、事務所に着くと昨日頼んだものができていたので受け取る。本当に仕事がはえーな。その後、念の修行中にリトから電話がかかってきた。
珍しいな。何のようだろう。
「すみません。ちょっと電話出ますね。
──もしもし、どした?
いや、抜けれる事は抜けれるけど……
今すぐ学校に?
まぁ、渡したいものもあったし、すぐ行くよ。
じゃあ、またー」
なんのようかは結局わからなかったが、ひとまず行くか。
松戸さんと加賀見さんから了承をもらって、久しぶりに学校へと向かった。
ーーー
「──で、リトはいないと。何がしたいんだあいつは……」
学校の中庭に来て欲しいと言われて、来たはいいもののリトがいない。
呼び出しといていないのはどうかと思うが。
「キャ」
「ん?」
女性の悲鳴が小さく聞こえたので振り返ると、天条院がいた。
「あ…あの」
モジモジとしており、視線も左右に泳いでいる。
「て…天条院沙姫ですわ」
「うん。俺は七瀬ユウリ。リトやララががいつも世話になってるみたいだね。ありがとな。──それで、俺になにか用だったか?」
「あの…っ。私、その……」
「ギャーーーーーッ!!!み、水〜〜〜〜!!」
「ん?」
リトが全速力で走ってくる。天条院目掛けて。
「キャーーー!」
はぁ。リトと天条院との間に入りリトを受け止める。
が、リトの力が想像よりも遥かに強い。コイツ…舐めすぎた、押し負けるっ!
「ぐ…っ!」
倒されるも、顔がものすごく柔らかい物に包まれた。良い匂いもする。
「………」
「あ、わわ、悪い!!」
気付いたら、天条院の胸に顔をうずめていたため飛び起きて謝る。
「………」
ずっと、黙ったままの天条院。俺は起きたが向こうは倒れたまま。膝を立てているため、スカートはめくれ、薄紫色の下着が見えていた。
「み、見てないから!」
即座に天条院に背を向ける。
「……よ、よくもユウリ様の前で……今日という今日は許しませんわーーーッ!!」
そのまま、天条院と取り巻き三人はリトを追いかけてどこかへ行ってしまった。
結局、なんのようだったんだあいつは。
渡したいものもあったのだが、冷静になって怒りが込み上げてきたし、もう、どうでも良くなってきた。
ひとまず、俺の用事はまたの機会にするか。
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ようやく、下校の時間になった。
今日は、最低な日だ。
憧れのあの人に、あんな姿を見られるなんて…
結城リト…絶対に許さないですわ。
今日は、早く帰って休みたい気分。校外に停まっているリムジンに向かおうと、校門を出ると…
「──あっ。天条院、さっきはごめん」
ユウリ様が、いた。
私と目が合うなり、謝罪をしてくださり、頭を下げる。
「コレ、口に合うかはわからないけど…本当にごめん」
そう言って、私に綺麗に梱包された包みを渡してくださった。
「ユウリ様…ありがとうございます。でも私はこの学校の
キョトンした顔をされている。綺麗な灰色の瞳に私を映して。
「それと…私の事は沙姫とお呼びください…!」
「あぁ。サキ、ありがとな。リトとララには、ちゃんと聞くかはわからないが良く言っておくから。──じゃあ、またな」
そう言って、去っていかれるユウリ様。
あぁ。やっぱり、私の思っていた通り、優しい方だった。
「──沙姫様、ユウリ様は素敵な方でしたね」
「えぇ。そうですわね」
「でも、あのお方が、あのララと結城リトのお兄様だなんて、考えられませんが…」
凛の言う通り素敵な方。でも、綾の言うことも一理あるとは、先程までは思っていましたが、
「いいえ、綾。な・な・せ、ユウリ様ですわ。お優しいあの方の事ですから、きっとおバカなお二人の面倒を見てあげているだけに決まっていますわ!!ホホホホホ!!!」
小鳥が青空へとはばたくようなこの想いは、やっぱり本物の恋!
先程まで最低な日だと思っていましたが、最高の日になりましたわ!!