Troubる   作:eeeeeeeei

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三十一話 誕生×命喰

ーーーーーー

 

 

「………」

「…リト……ごめんな。全然気づいてやれなくて…で、誰との子なんだ?」

 

 無言のヤミと、自分でも何を口走ったか覚えてないがとりあえず声をかける俺。

 現実逃避と状況の再認識も含めて、結城家に入る前の事を振り返る。

 

ーーー

 

 ルナティーク号で三時間かけて、危険度Sランクの惑星ミストアから、地球の彩南町の結城家の上空まで帰ってきた。

 俺とヤミ以外はララの発明品のワープ装置ですぐに地球に戻っていたので、三時間遅れで俺たち二人は戻ってきたのだが……

 

──庭に行き、呆然とした。

 

 治してやるはずだった、結城家の番植物、セリーヌの大きな顔ともいえる花の部分は卵の殻のようにボロボロに崩れて地面に散らばっており、体ともいえる、大きく大地に根を張っていた茎と根の部分は全ての養分を失ったように、シナシナとしており、自立する力も無くなったためだと思うが、無残にも地面に横たわっていた。

 普段セリーヌが持っていた生命エネルギーは、今はカケラも感じ取れなくなっていた。

 

 

「…間に合わなかった、か……」

 

「……ユウリ」

 

 心配そうな顔で俺を見つめるヤミ。

 俺は今、どんな顔をしてるんだろう?

 少なくとも心配され、気遣われるような顔をしてしまってるのだろうか。

 

「俺は、大丈夫だよ。ありがとな、ヤミ。──みんな落ち込んでるだろうし、家に入ろうか…」

 

 

 自分よりも若く、小さい子たちを慰めなきゃなと思い、結城家に入ると、みんなリビングにおり、悲しそうな雰囲気は一切無かった。

 

「あ、ユウ兄、ヤミ!おかえり!」

「まうー♫」

 

 リトが裸の女の子の赤ん坊?を抱っこしたまま笑顔でおかえりと言ってくれたのだが、俺とヤミは、ただただ呆然とリトと赤ん坊を眺めていた。

 

 そうして、今に至る。

 

 

ーーー

 

 

「こ、子供って…な、何言ってんだよ!?この子はセリーヌだよ!」

 

「……は?」

 

 怒ったように言うリトだが……セリーヌ?その子が?

 地球に残り、セリーヌを見てくれていたミカンを見ると…

 

「ユウリさん、ヤミさん。ホントなの。あれから、セリーヌの花がツボミみたいになって、その中からこの子が出てきたんだよ」

 

 ミカンも苦笑いを浮かべて教えてくれた。

 よく見ると、頭の上にはピンク色の花が付いており、緑色の長い髪は今までの茎を現しているのだろうか…頭の花とかからしても、そうなんだろうな。宇宙って本当になんでもありだな……

 

「モモも、こうなる事はわかんなかったのか?」

 

「お兄様。そうですね……セリーヌさんは凄く希少な種ですので…」

 

 

 モモがいろいろと説明してくれて、わかったようなわからないようなだった。

 結果として、セリーヌはカレカレ病ではなかったようだ。全ての生命力をツボミに集めた為に枯れたよう見えて、そうして時間経過と共に擬人化して産まれてきた。と言う事はわかった。

 だから庭の、元々のセリーヌの花びらは誕生した後だったから、卵の殻のようにパラパラと落ちていたのか。

 その他に関しては、セリーヌは超希少種のため謎が多く、詳しくはわからないと言う事。

 

「まうまうーーーっ!!」

 

 嬉しそうにリトに抱きついてるセリーヌ。

 

 まだまだわからない事だらけだけど、また結城家が一段と騒がしくなる事だけは確かだな。

 

 

ーーーーーー

 

 

 結城家にまた一人家族が増えた日の翌日。

 

「これと、───あとこれだと、どうですか?」

 

 ユウリは松戸と加賀見に相談事を持ちかけに来ていた。

 そこは松戸探偵事務所の地下深く、主に(まじな)いに関しての研究であったり、宇宙生物などが隔離されている研究部屋の隣にある部屋で、用途は書斎。そこには向かい合うように置かれたソファーのそれぞれに、松戸とユウリが座っており、松戸のソファーの後ろに、加賀見は立っている。

 

 ユウリは多くの書物の中にあった、『空間支配術─壱の書─』と『呪刻術─呪具の書─』と書かれたボロボロの本を二つ開き、ページを指差して松戸へと尋ねた。

 

「恐らく、できない事も無いとは思うが……呪刻は僕がやるとして、実際は誰がやるんだい?」

 

「ここは、危険は少ないので…俺の方で探してみます」

 

「後は、待つだけだが、場の準備はどうするんだ?」

 

 開かれた本の一つを、トントンと左手の人差し指の爪で叩きながら松戸はユウリへと質問を投げかける。

 

「それにはアテがあるんで」

 

「ふむ。あまり多くを関わらせるのは……」

 

 人差し指をの動きを止め、ページへと落としていた目線を上げる。ユウリを見据えて話をするが、その言葉を遮るようにユウリは話し出した。

 

「大丈夫ですよ。松戸さんたちは松戸さんたちの、俺は俺の目的の元に動く。──お互い不可侵、でしょ?」

 

「クッ!今更だったか……だが、時は近いかもしれないからね。加賀見くん、七瀬くん。──準備を急ぐとしようか…」

 

「そっすね」

 

「はい、先生」

 

 そうして、薄暗い部屋の中で、年齢も何かもがバラバラな三人は、それぞれ笑顔を浮かべていた。

 

 体のほとんどが未だ地球人の老人はニヤリと口角を上げて笑い、

 体は地球人で精神は異世界人の者は薄く笑い、

 体も心も、地球人、宇宙人、悪魔で混合されたモノはにこりと微笑んだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「あなた達!そこは通行のジャマよ!道を開けなさい!!」

 

 朝からお兄ちゃんはハレンチな格好で家をウロウロしているし、イライラして外に出てみれば、周りにも人目も気にせずイチャイチャとハレンチなカップルばかり。

 そして極め付けにガラの悪い男三人が路上に座り込んでたむろしていた。迷惑という言葉を知らないのか、私は大声でその人たちを注意したのだったが、その後、注意した私を羽交い締めにしてきた。

 

「はっ離しなさいよ!

 

 三人のうち、スキンヘッドでサングラスをかけた男に背中から体を押さえられ、金髪を逆立てた眉なしの男が私のスカートをつまみ、持ち上げながらきみの悪い声をあげる。

 

「キレーな足〜〜」

 

「!!」

 

 男って、どうしてこうなの…誰かなんとか言ってよ!!

 明らかにこの人たち間違ってるじゃない。

 どうして、見ないフリするの……

 

 誰か──…

 

 

「ゔっ!!」

 

 あれ?私を後ろから羽交い締めにしていた男の手が緩み、膝をつき倒れた。

 

「道の真ん中で迷惑なんだよ。世紀末みたいなカッコーしやがって。その子、オレの連れなんで放してくんない?」

 

「な、なんだテメーこらぁ!」

 

「あ…」

 

 七瀬さんは私の手を取って、私を自身の背中へと回した。そのため、私は今七瀬さんの背に隠れるような格好になっている。

 

「なんだって言われてもな、人を注意できる常識人的な?非常識なやつはこれでわからせてやろう…」

 

 左手を右の肩に乗せ、右腕をぐるぐると回している七瀬さん。確実に、殴るつもりだろう。こんな人たちに、そんな事しなくていい。

 

「七瀬さん!暴力は良くありません!」

 

 腕を回すのを辞め、やり場のなくなった左手で頬をポリポリと掻く七瀬さん。

 突如くるりと私の方を向いた。そして、七瀬さんはにこりと笑って、

 

「じゃー。……逃げ!」

 

「キャ!────な…七瀬…さん」

 

─── ドキ… ───

 

 私の足を払って、抱っこされてしまった。少しドキッとしてしまった……

 そしてそのままとんでもない速度で走り出した。とてもじゃないが人一人抱えて走れる速度ではないけど、結城くんの周りの人はみんな常識は通じないんだった……

 

 

ーーーーーー

 

 

「もう、振り切ったかな?」

 

「そう、みたいですね…」

 

 まさか3m近くある柵を飛び越えて反対車線の道路のトンネルにいるなんて、普通の人間じゃ無理だから、完全に振り切っただろう。

 七瀬さんは答えた私を降ろし、何故か腕で頬をガードしている。

 

「なに、してるんですか…?」

 

「いや、ビンタ飛んで来ないかなって…」

 

 まったく、私のことをなんだと……

 じ〜っと怪訝な表情を七瀬さんへと向ける私。

 でも、なんで私こんなにドキドキしてるんだろう…

 

「悪かったよ。ま、女の子があんま無茶すんなよ」

 

「…それは、見すごせって事…ですか?」

 

 私だってわかってるけど…間違った事は、許せない。

 

「理想を語るなら、それに見合った力が必要だろ?」

 

 なんだか大人な雰囲気と小難しい感じに言われた気がするが、結局は暴力には、より強い暴力でと言う事だろうか……私は弱いから、理想を語るなと……

 そんな私を見透かしたかのように言葉を続ける。

 

「少なくとも、自衛くらいできるようになれって事だよ。どんなに正しい事を言おうが、すぐにやられてちゃ、……ガキの癇癪と変わらないだろ」

 

 そう言って私の頭を撫でる。

 その顔は、少し悲しそうに見えた。

 その表情の理由が知りたいと思ったところで、頭を撫でられている事を思い出す。

 

「……な、撫でなくて良いですから!」

 

「悪い悪い、周りには妹みたいな子ばかりだから、ついな。俺もいつでもこうして来れるわけじゃないし、無茶すんなってのは本音だよ。じゃあ、気をつけてな」

 

「あ、ちょっと…」

 

 そう言って、何処かへ行ってしまった。

 まだ、お礼も言えてなかったのに……

 

 最初の印象は、風紀委員で、正義感が強くてカッコいい人。

 初めて話した後の印象は、ハレンチな人。

 少し前は、みんなが言うような、良い人。

 今は、ドキドキしていて、わからない……

 

 異世界人の七瀬さん。

 あの表情の理由…もしかしてだけど、理想云々って言うのは、自分の小さい頃にでも重ねてたのかな……

 

 

ーーーーーー

 

 

 日も暮れ始め、あたりは少し薄暗くなり始めた時間。

 人気の無い路地裏で、奇抜な格好をした三人組はタバコを吸い、酒を飲んでいた。

 そこに現れる、黒髪に灰色の眼をした男。

 

「よっ。探し人見つかりました?」

 

 ガラの悪い三人組の男の背後から、ヘラヘラと笑いながら声をかけたユウリ。

 

「あ!テメェ!よくも俺らの前に……」

 

 三人組は振り返り、何かを話している途中で、一人目の頬を裏拳で殴りとばし、壁へと叩きつけ、

「グベ! 」

 

 二人目のこめかみを掴んで、壁に後頭部をぶつけて地面へと転がす。

「アガァ!!」

 

 最後に三人目の腹に右足のつま先をねじ込み、思わず膝は折れて前屈みになった所で、ねじ込んだ後引き抜いた右足を今度は振り上げて足の裏を頭に乗せると、力を込めて無理矢理踏みつける。

 膝は完全に折れ、前屈みになっていたので両の手は地面に付き、自らの顔面がアスファルトに押しつけられないように相手に力が入っている事がわかる。

 頭に乗せられた足は変わらず力を込めてはいるが、顔がアスファルトへと密着するスレスレで止まる位置でわざと力を抜いていた。

 

「ムカつくんだよ。クソ雑魚クズヤローの癖に、女子供に偉そうな奴って。グチャグチャにしてやりたくなる。──お前も、そう思わないか?」

 

 強制的に土下座の形にさせて、頭を踏みつけたまま凄むユウリ。

 

「お、思います!俺もそう思います!!」

 

 ガタガタと、土下座のままに震えながらも叫ぶように答えるスキンヘッドの男。

 

「だよなー。──でも、お前らの事だよ?」

 

─── グチャ ───

 

 足にこめていた力を強め、頭を地面へと押し付けた。

 完全に顔面がアスファルトに密着しているので、ブブブと空気と鼻血かなにかが洩れる音だけが聞こえていた。

 

「これに懲りたら、せいぜい真面目に生きろ」

 

 そう言って、ユウリは消えていった。

 

 

ーーーーーー

 

 

 漆黒に覆われた世界の、地球の日本にあるような見た目の黒い和風な城。

 その城の天守閣近くの大きな部屋の中央に、八角形の大きな机がある。

 そこには今、地球人やデビルーク星人のような人間型(ヒューマンタイプ)の者たちが六人座っていた。最も上座にある豪華な椅子と、【黄】と書かれた椅子が空席となっていた。

 

 

「また、失敗デスネ。ボクの部下も、お借りした白羽吾(しらはご)も戻っては来まセンヨ」

 

 【碧】と書かれた椅子に座る者が報告をする。

 その者は、頭には白いターバンを巻いており、口元から下は緑色のローブで完全に覆われており、顔の部分は暗闇で何も見えない。そのため、見た目では男性か女性かもわからないものが話す。声色からすると、どうやら男性のようだ。

 

「地球か……聞く話では、デビルークの王女も今は地球にいるらしいな。碧暗(へきあん)、お前の部下程度ではやられるだろうな」

 

 【銀】の椅子に座る者は、銀色の軽鎧を着ており、同じく銀色の髪をライオンの様に逆立てた筋肉質で目つきの鋭い大男が話す。もみあげが特徴的で、目の下と口の横で二度程顔の中央部に向けて三角形に生えており、全体的にも濃い。

 

我銀(がぎん)の言うデビルークの話は置いておいて、地球に神はいない筈……わざわざ向かう理由は?」

 

 【朱】の椅子に座る者は七三分けの黒髪に眼鏡をかけている、紅色と黄色の袈裟を着た小柄な男性が話す。

 

孔朱(こうしゅ)、神って?」

 

 【藍】の椅子に腰掛けた、肩まで伸ばした黒髪に白衣のようなコートを羽織った女性が、先程の言葉の内、理解できない単語を聞く。

 

「力の強い星にいる、管理者の様なものだ。その星にいるのは確かだが、その中でもここなように異次元にいる事が多い」

 

 孔朱と呼ばれた小柄な男性ではなく、【白】の椅子に座る、白髪で顔に大きな傷痕のある男が答えた。

 

「なぁ(はく)、神ってどーやってなんの?」

 

 【紫】の椅子に気怠そうに座る女性は、頭の上で髪を団子にし、前髪は眉の上で一直線に揃えられている。衣服は胸部のみを隠すように黒いヘソ上までしか無いノンスリーブを着ており、左胸だけ白い布が肩口から掛かっている。背中部分には蜘蛛の巣が描かれている白い着物を肩から羽織っているだけの格好で、目つきは鋭い。そして、やる気なさそうに左手で頬杖をついて白へと尋ねた。

 

「確か、長い間その星に住み続けないといけないはずだが、どうだろうな……うちの姫さまも長い事ここに住んでいるうちに、気づいたら神になってたと言っていたが…」

 

「…ふーん。で、神が居ないとなんなの?」

 

「姫さまは、言い伝えられた御伽話のように星を喰うと言うよりかは、その星の生命力を、即ちその源である神を喰らう」

 

「ここが黒蟒楼と呼ばれる前は、姫さまは『命喰(みょうばみ)』と呼ばれる魔物だった。命を喰らう事で大きくなり、やがて星を、神を喰らうようになった。そうしてここは大きくなっていったのだ」

 

 孔朱は、この中で一番の古株。遥か昔から姫と共にいる。御伽話になる前から、この蟒蛇の住まう異次元の城の管理をしているのだ。

 

「じゃあ尚更行く必要ないじゃん」

 

 説明を受けてもなお、やる気なさそうに頬杖をついたままの女性。

 

「…神とはその星の(ぬし)の事だったか。であれば可能性はあるな。地球は一度神が入れ替わった事がある。今いたとしても、おかしくは無い」

 

「言う通りだ。現に黄透(きすく)は地球に行ってから帰ってこない。大きくなり過ぎた姫さまには、より強い神、より強い生命力が必要だ。最近はロクな食事を取れていないからな。可能性があるなら向かう」

 

 そう言うと白は立ち上がった。

 

「話は以上だ。地球到着まではもう暫く掛かる。探りたい者はそれぞれ好きに任せる。──ただし、攻撃を仕掛ける時は許可を取るように」

 

 

 

 そうして、次々と席を立って部屋を出て行き、最後に【藍】と【白】に座る者だけが残っていた。

 

藍碑(あいひ)、君は─────────

 

「ああ」

 

 藍碑の言葉を最後に、部屋には誰も居なくなった。

 

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