Troubる   作:eeeeeeeei

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四十五話 続・百鬼夜行×雨

ーーーーーー

 

 

「へへへ。まずは動けなくしてやるっ!!」

 

 ナナはライゾーに跨り、辺りに電撃を撒き散らしながら高速で疾走する。

 そのため、近くを通っただけでも異形は痺れてその動きを止め、更にライゾーの能力で発生させた小さな雷雲を飛行機雲の様に切りながら走るために、その場に残る雷雲で多くの化物はその場に拘束されるように止まったままとなっていた。

 

 辺りの化物を全て電気で拘束し終えるとナナが指示を出す。

 

「よしっ!こんなもんか。マジロー、ドラ助に!!」

 

「わかった」

 

 返事をしたのは、ナナの胸元からひょっこりと顔を出した、三つ目の小さなコウモリのような生き物。頭の三本のツノのように伸びた毛がピンと逆立つと、マジローは念波を飛ばし、ライゾーは空へと飛び立つ。

 ナナとライゾーと入れ替わるように、夜の月明かりに照らされた雲を裂き、上空から紅い鱗を煌めかせて、巨大なドラゴンが舞い降りて来た。

 

──ゴアァァァァァァァア!!!!

 

 咆哮と共に口から火炎を放つ。

 その火炎で、ナナがわざと直線上に固定していた生物たちを燃やし、黒焦げにして再起不能にさせた。

 

「どーだっ!ワルイやつらには容赦しないぜ!」

 

 辺りの雑魚を完全に排除したので、ライゾーから降りてドラ助の巨体へと寄り添うと鱗を撫でる。

 

「ありがとな!ドラ助!!また呼ぶかもしれないから、その時は頼むな!」

 

 ブレスの反動か心なしかつかれた顔に見えるドラゴンへとお礼を言うと、ドラ助はナナのデダイヤルで電脳世界へと戻っていった。

 

「残りあとちょっと、頼むぜライゾー!!」

 

 

ーーー

 

 

「さ、これで、全員ですかね…」

 

 催眠効果のある花粉により意識も朦朧したまま蔓に拘束されている宇宙人たち。

 

「ザスティンさん、あとはお願いしますね」

 

「モモ!こっちは終わったぞ!!」

 

 ザスティンに拘束した宇宙人たちの連行をお願いしたところで、

 ライゾーもデダイヤルでサファリパークに戻したのか、ナナだけで現れた。

 

「こちらも終わっています。それよりも、他の方達が心配です……ナナ、行きましょう」

 

「わかった!マジロー探れるか?」

 

「大丈夫。騒ぎは、あっちだ」

 

 マジローのアンテナのような毛が指し示す方向へと二人は向かった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「なんだ、この小娘……さっきまでとまるで動きガ……!!」

 

 セリフを言い終えることなく、意識を刈り取られた異形の者。

 

「この状態なら、私は負けない」

 

 両手にトンファーを持ったミカンが敵を軒並み殴り倒している。

 

 迫りくる攻撃の全てを躱し、いなし、トンファーでカウンターを合わせていく。

 蝶のように舞い、蜂のように刺す。

 

「クソ!地球人はザコのはずじゃ……」

 

「今の私は七瀬美柑!あなた達ごときじゃ相手にもならない!さっさと帰ってよっ!!」

 

 『小悪魔の再体験(ワンダーリライブ)

 自身の体験を再現する能力。

 操作系である松戸の能力と組み合わせ、ユウリに操作されている状態を再現しているミカンの動きは完全に戦闘時のユウリと同様の動きをしていたために、宇宙人達を圧倒している。

 

 だが、内心ミカンは焦っていた。

 この状態は今のオーラ量では15分持ったら良い方。

 カウンターを合わせる事でオーラを少しでも節約してはいるが、戦闘によってオーラを使用すればその分早く能力は解除されてしまう。

 

 一際巨大な化物がこれまた軽自動車くらいはありそうなハンマーをミカン目掛けて振り下ろす。

 それを紙一重で躱し、地面にめり込むハンマーを小さな身体で駆け上がる。

 

「やぁーっ!!」

 

 両のトンファーを振り回し、側頭部へと叩きつけた。

 

──ドガンッ!!

 

 4mはある巨体はぐらりと体制を崩し、地面へと倒れ、これ以上動くことは無かった。

 

「まだ、やる?」

 

 空元気で余裕な表情を無理やり作るが、内心は逃げたい気持ちでいっぱいだった。

 が、敵はそれを許してくれそうにない。

 

 あと1分もつかどうか……

 でもあとはこの足の早そうな4匹……やつらを倒すか、誰かと合流しないと本当にマズイ。

 

「グルルルルルッ!!」

 

 予想より、速いっ!!

 残っている4匹の狼のような宇宙人が一斉に四足歩行でミカンへと迫る。

 

「くっ!!逃げてくれたらいいのにっ!!」

 

 思わず願望を口からこぼす。

 左からの爪をトンファーで回し受けて流す。

 正面から来る狼には左手のトンファーを投げつけると同時にしゃがみ、背後からの攻撃も躱した。

 最後に、頭上から迫る狼、既に対抗する術はなく、屈んだ体勢で打つ手がないようにも思えたが、ミカンはトンファーを投げつけた際に空になった左手にデダイヤルを握っていた。

 ミカンは操作されたとはいえ、それは体の動きだけ。

 オーラを具現化したり、精密にオーラを操る技術はまだ無いため、デダイヤルで実物の武器を取り出して使用していた。

 

「コレでもくらいなさいっ!!」

 

 しゃがんだミカンの身長よりも高い棍が現れ、落下してくる狼の顔面に当たりミカンへ攻撃することはできず横へと転がった。

 

「疾っ!!」

 

 しゃがんだ体勢のままトンファーを捨て棍を両手で握り込むと回転させながら近くに転がる四匹を寄せ付けないように振り回す。

 ひとまず四匹ともを視界に収められるように位置取るミカンだが。

 

『まずい、もう、オーラが保たない……』

 

──ドンッ!!!

 

 限界を迎える直前に、何かを押し潰す音と同時に、目の前の狼の内、一体が金色の拳に潰され地面へと頭が減り込んでいた。

 

「……ミカン、強くなりましたね」

 

 助けに来てくれた親友。

 ヤミは白い翼を収めながらミカンの前へと降り立った。

 

「ヤミさんっ!!ありがとう!──実は、もう限界なの…任せてもいいかな?」

 

「…はい、後は任せてください」

 

 ヤミの返事を聞き、ミカンは能力を解除する。

 ドッと疲れが押し寄せるがなんとか耐える。

 

「はぁはぁ……私、やれたよ。ユウリさん…」

 

 疲労もあるが、それよりも初の戦闘による緊張が解けた方が大きい。

 ぺたん、とその場に座り込む。

 

「……」

 

 ヤミとミカンを中心に、取り囲むように押し寄せる3匹の狼を次々となぎ倒すヤミ。

 宇宙一の肩書きを持つ親友。その戦闘を見ながら、これほど便りになるものはないとミカンは安堵した。

 

 

ーーーーーー

 

 

『………』

 

 相変わらず動かない地蔵。

 だが、唐突に無表情だった地蔵が口元に笑みを浮かべた。

 

──ポツポツ

 

 すると、雨も降ってきた。

 こいつの目的は何だ?

 

『……』

 

「何の用か知らんが、お引き取り頂きたいんだけど」

 

 雨……夜の暗さでわかりづらいが、黒いような。

 これがあいつの能力なのか?

 結界を空に薄く、屋根のように生成して雨避けにするも特に異変は感じない。

 なんなんだこれ。あいつ自身がパワーアップでもするのか?

 

「……血を纏いし災いの神、この地に、舞い降りん…」

 

「お静ちゃん?」

 

「昔、まだ私が生きている頃に、国一番の予言者と呼ばれてた人が言っていたのを今思い出しました……この雨も、暗くてわかりづらいですが、赤黒くないですか…?」

 

「その予言者ってのの言葉は、血の雨を降らす、このお地蔵様の事を指してるって言うの!?」

 

 震えながら語るお静ちゃんに古手川が叫ぶ。

 確かに、赤黒く見えなくもない…

 

「わわ、わかりませんけど、そうとしか思えないですよー!!」

 

「災いの神……アレが?」

 

 結界を支えながらも再度地蔵を見据える。

 こちらを見たままピクリとも動かないが、完全にイッてる目といい、振り撒く邪気と言い、確かに災いの神ってのはピッタリな呼び名。

 

「どっちにしたって、まともじゃねーよ!!俺が…!!」

 

 リトが腰の銃を抜き放ち撃とうとするが、

 

──ギュッ!

 

「だ、ダメだよリトくんっ!神様にそんな事したら、リトくんが呪われちゃうよ!」

 

「で、でもこのままじゃみんな…!」

 

 ルンに抱きつかれてリトは何もできなくなった。

 

「ばかっ。先走んなよ。俺がやる」

 

「それだと七瀬さんが呪いに!!」

 

 そう言って俺の腕を掴む。こういった話の苦手な西蓮寺が、体も声も震わせながらも俺を案じてくれている。

 俺の渡した黒コート姿になって、怖いからだろう…フードまで被っている。

 暗闇に覆われて見えないフードの奥の表情は、おそらく恐怖に染まっている。

 そんな奴らだから、だからこそ……俺がやらなきゃな。

 

「呪いね、──上等だ!!」

 

 西蓮寺の腕を振り解き、突撃。

 両手から念弾を放ち、なんなく着弾するも身じろぎもしない。

 結界で棍を生成して刺突。

 付いてはいないが喉の辺りを狙い、命中し吹き飛ぶ地蔵。

 それと同時に感じる違和感。

 

「なんだ……今確かに……」

 

 棍の先が重くなったような気がした。

 

 倒れる事なく、傘を差したままの地蔵。ダメージが入ってるのかもわからない。

 わからないなら、確かめるしかない!

 

 念弾を放つも、念弾の軌道には変化無し。命中するが相手は無傷。

 

 次は地蔵を取り囲むように小さな結界をいくつか生成。

 地蔵に向けて右手を開いたまま向ける。

 

「喰らえ」

 

 手を握り込むと、一斉に結界が地蔵へと襲いかかる。

 だが、地蔵に触れる直前で次々と軌道を変え、地面へと減り込む結界。

 

「──ッ!?」

 

 重力の操作?地蔵の周りだけに作用するのかはまだわからない。

 知らず知らず、自分の口角が上がっていた事に気づいた。

 

 念能力者同士の戦闘と同じ。

 互いの能力の探り合い。

 相手の能力を察知し、考察し、攻略する。

 それを先に行えた方が、勝者。

 相手の能力によっては必殺の条件を満たしてしまえば瞬殺される可能性すらある。

 そんなピリピリとひりつく得も言われぬスリルを思い出していた。

 

 そんなニヤける口元を隠すように左手で顔の下を覆う。

 

「試させてもらうか、神とやらの実力を」

 

 まずは、相手の能力の特定をしなくちゃな。

 結界群を地蔵の上空に生成。

 操作はせず、浮かせているだけだがそれぞれ高さと大きさも違うもの。

 

 次々と、自分の意思とは関係なく落ちていく結界だが、落ちたのは地蔵の立っている部分のみ。落ちた結界は地蔵を直撃するが、唐傘に触れると同時に全て消滅した。

 範囲は把握。上空に制限は無い。というより、あの唐傘が思った以上にヤバイな。

 

『………』

 

 ニタリとした不気味な笑みから一転、怒り顔に変わっている地蔵。

 

──ゾワァ

 

 地蔵の周りの木々やガラクタがズブズブと地面へ沈んで行く。

 先程把握したつもりの範囲よりも明らかに広がっている。

 

「お兄ちゃん!上に、何かある!!」

 

「な、なんなんですの!?アレは!?」

 

 ララに言われて上空を見ると、地蔵の持っている唐傘の傘の部分に似た物が浮かんでいた。

 

「なんだ……?」

 

──ギュンッ!!

 

 急に、上空の傘が一気に大きくなり、地蔵の周りの木々やガラクタもどんどんと沈んでいっている。

 

「みんなとにかく逃げろ!あのでかい傘の範囲はコイツの領域だ!」

 

 自分へとかかる普段ではありえないほどの重量を感じ、能力の現状の範囲は理解した。

 

「沙姫様!綾は私が!!はやく行きましょう!!」

 

「ミオ、しっかりしてっ!」

 

「わ、私が念力で皆さんを!!」

 

 藤崎を九条が背負い、沢田に籾岡が肩を貸していたが、お静ちゃんの念力によって全員が一斉に遠くへと離れていった。

 

 この一幕で、相手の能力はなんとなく分かった。

 夜の森という事もあり、見えていなかったが、注意して見ると地蔵の周りの足元は血の雨によってか、黒く変わっている。

 

 つまり、恐らくではあるが上の傘から雨を降らし、下の黒い陣地を広げる。

 その陣地内は生物も無生物も関係なく重量を上げる事ができる。もしくは重力を膨らましていく。

 雨除けに上空に薄く張っていた結界がどんどんと重くなっている事から、恐らく雨によってか、もしくは時間経過で増していくようだ。

 後は、見た目からして上の傘と下の傘、連動してる可能性も有る。

 

 まずは、それを探るか……

 

「疾ッ!!」

 

 唐傘の持ち手の部分を念弾で撃ち抜くも、瞬時に再生。

 だが、一瞬上の大きな傘の動きも止まった。

 

「なるほど。やっぱりあの傘が能力の肝だな」

 

 持ち手の部分には対照を消滅させる力は無いようだ。

 ということは一度アイツの手から離してみたいが、問題はどうやってあれを奪うか、と思っていたのだが……

 

「やぁーーーーっ!!」

 

──くるくるロープくん!!

 

 発明品により傘を奪い取ったララ。

 全員が逃げる中、ただ一人だけ戻ってきたのだ。

 【円】で確認しても、沢田と藤崎を抱えて走るリトと、他のみんなが逃げていることはわかった。

 

「もーこんなことやめて、自分のお家に帰ったら返してあげるっ!」

 

「ララ…」

 

 キレイな笑顔で言い放ったララとは対照的に怒りの形相からさらに憤怒へと変わる地蔵。

 

『…カエ…、セ!!!」

 

 激昂する災いの神。

 唐傘を失い自身も血の雨に晒されている。

 その血の雨が、地蔵の目からも溢れており、血の涙を流しているように見えた。

 

「アレ……?」

 

「ララっ!!」

 

 思っていた展開と違ったのか思わず止まるララを担ぎ、唐傘を失ってもなお広がる黒い陣地から飛び出す。

 

「ありがとうお兄ちゃん」

 

「バカ、戻ってこなくてよかったのに」

 

「うぅぅ、だって……でも、どうしよう…?」」

 

 シュンとするララだが、今のこの状況をどうするべきかは考えているようだ。

 

「……じゃあ手伝ってくれ。俺持って飛べるか?」

 

 小脇に抱えられた、ララはユウリの目を見ると、綺麗な目を強く輝かせてうなづいた。

 

「うんっ!任せて!!」

 

 ララに両脇から抱えられて空を飛ぶ。

 

──ヒューーーン!!

 

 流石はデビルーク星人の王女。

 とてつもない速度で空を飛び、瞬く間に上空に浮かぶ巨大な傘の上まで飛び出した。

 

「ここで、どうしたらいいの?」

 

「あの傘の中心目掛けて、真上から思いっきり俺をぶん投げてくれ。ララのおかげでアイツの防御の要でもある唐傘はないからな」

 

「わかった、あそこだね……じゃあ、いくよっ!お兄ちゃん!!」

 

「おう。いつでもいいぞ」

 

 グルグルと俺を振り回し、遠心力とデビルーク星人の怪力が相まってヒュンヒュンと空気を裂く音が、自分からしてるのがわかる。

 

「いっ、けーーーっ!!!」

 

──キィィィィィィン……

 

 

 はっやいな!

 弾丸のように放たれる自身の身体。

 猛スピードで垂直落下しながらも、ララに振り回されている時から練っていたオーラを放出する。

 

 具現化した刀を両手に持ち、クロスさせた両腕を広げるように左右に振り抜く。

 

──ザンッ

 

 簡単に裂ける巨大な傘。

 振り抜くと同時に刀にもオーラを込めてその刀身を伸ばしていた。

 そしてすぐに災いの神を視界に捉える。

 傘の中心の真下にいるのは今までの戦闘から既にわかっていた。

 

 先程の一撃で左右いっぱいに広がった刀に力とオーラを込め直す。

 自身の背には更にいくつもの刀が新たに具現化されていた。

 

 掌から、全身からオーラが次々と刀へと伝わり、より貫通力のあるオーラが刀の数だけ一直線に伸びる。

 

 血の涙を流し、尚もカエセと叫ぶ災いの神。

 返せと言うのは傘の事か、はたまた何のことかは、わからない。だが、地球に、自身の周りに危害を加えるのなら、ヤツは悪。

 

「悪いな神様。呪うなら俺を呪え──

熾獣王の鬣(アスタロト・ファランクス)』!!」

 

 ユウリは叫び、広げた両腕と、後光の様に纏う刀の全てを災いの神へと振り下ろした。

 その攻撃力と切れ味の高さから、災いの神は全身を切り裂かれ、魂蔵に宿るいくつもの命を一瞬で散らした。

 

「……消えたか」

 

 もはや多すぎて光輪を背負っているようになっていた刀を全て消す。

 上空の巨大な傘も消滅し、黒い陣地も無くなっていた。

 放っていた邪気は既に感じない。

 

「お兄ちゃん!倒したの?──あの、持ってた方の傘はまだあるんだけど…」

 

 ララも降りてきて、アイツが持っていた唐傘を俺へと見せる。

 

 そうか。消えないんだ。

 この傘は能力じゃなくて、アイツの持ち物だったんだな。

 

「あぁ。倒したよ。一旦、みんなのところに帰ろっか」

 

「うん……本当に、神様だったのかな……カエセって言ってたのは、もしかしてコレじゃなくて…」

 

 ララも、俺と同じことを思ったようだ。

 

「ララ、大丈夫。俺が(・・)倒したんだ。手伝ってくれて、ありがとな」

 

「うん……ありがとうお兄ちゃん」

 

 ララはうなづいてくれ、唐傘をデダイヤルへと納めていた。

 

 そこで、気付く。

 さっきまでの災いの神など比ではない程の圧倒的な力を感じる。

 オーラではない。本能で感じ取った。

 

 ユウリは冷や汗を垂らして呟いた。

 

 

ーーー

 

 

「………まさか…」

 

「え?」

 

 お兄ちゃんの呟きに思わず声をあげる。

 

「ララ、今すぐ逃げろ!!」

 

 たまに感じる、オーラというものだと思うけど、それが今までに感じた事ないほどに鋭い。

 肌がチリチリする。嫌な予感がこみ上げてくる。

 

「な、なんで!?ならお兄ちゃんも一緒に……!!」

 

「いいから、ここから離れ、──ろ……」

 

 最後の一言だけ、遅れて聞こえた。

 なんでだろうと思ったけど、たぶん私が高速で離れているからだと思う事にした。

 最後にお兄ちゃんに、オーラというもので突き飛ばされて、その場から離れていっているからだ。

 

 でも、心臓が鳴り響いている。不安や恐れがごちゃまぜになり、いろいろなものに押しつぶされそうになる。

 

 大丈夫だと自分に言い聞かせていると、地面に付いた。突き飛ばされた私は今、地面に投げ出されている事を理解するのにすら時間がかかる。

 

 顔を上げた視線の先にはお兄ちゃんは既にいないけど、きっと大丈夫だよね。

 なぜか急に地面が抉れたから見えないだけで、なんとも無いはず。

 だって、お兄ちゃんは強いから。

 

「お…兄ちゃん…?」

 

 私の呟きと同時に、かすかに聞いたことのない人の声が聞こえた。

 

「あれ?こんくらいかわすと思ったんだけどな。期待しすぎだったかな?」

 

 お兄ちゃんがさっきまでいた場所。今は巨大な穴となったその中心に立っている黒髪の人を見ると、今までの恐怖と言う感情はなんだったのかと言うくらい、心の底から怖いと感じた。

 

 

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