Troubる   作:eeeeeeeei

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四十七話 二度目×情報

ーーーーーー

 

 

「こ、こないでっ!!!」

 

 ララの叫び声がすると同時にユウリが跳ね起きて結界の刀を神黒の喉に突き立てる。

 アッサリと喉を貫き、首を切断せんと捻ろうとするが、神黒の腕に刀を掴まれピクリとも動かさないでいた。

 そして、そのまま神黒は言葉を続ける。

 

「お前、もしかして俺と同じ能力だとでも思ってる?俺とお前のは違うよ。使ってるだけのお前とは全然違う」

 

 結界の刀をへし折ると刺さっている部分を引き抜き握り潰す。

 喉に空いた穴は塞がり、千切れかけていた足はくっついていき、もげた左腕と顔半分はグジュグジュと音を立てながら再生されていく。

 失った部分を完全に再生した神黒は、さっきまでなかったはずの左腕でユウリの頭を掴もうと手を伸ばす。

 

「このっ!!」

 

 ユウリに手が届く前に、ララは神黒の側面から両の拳によるラッシュを仕掛けるが、

 

「ん?やんのか?確かに、速いし強いんだけどさぁ……」

 

「な、なんであたらないのっ!」

 

 全てを躱される。

 残像を残す程に強力なララの拳の弾幕を両手をぶらぶらとさせたまま全て避け続けていた。

 

「単純なんだよなぁー。戦闘経験が無いのか、ままごとくらいで殺しはしたことないって感じか?」

 

 やるきのない態度で口を開く。

 

「3秒後に、右ストレートでぶっ飛ばすぞ。はい、さーーん」

 

「くっ…」

 

 神黒のカウントダウンが始まってもなおララは拳を突き出すが、神黒とユウリからすれば全てがテレフォンパンチ。

 ユウリのように体勢を崩すための小技やフェイントは一切ない。

 純粋すぎる、直線すぎる攻撃動作。

 これであれば、ユウリですら捌けるレベルだった。

 

「にぃー」

 

 なおも避ける神黒。

 

「ララ、逃げろっ!!」

 

 血を吐き出しながらも無理やり叫ぶ。

 

「いーち」

 

「んんっ……!!」

 

 歯を食いしばり、ララのエネルギーを尾の先へと凝縮し、地球を破壊しかねない程の強烈なビームを放つが、

 

「ウソ!?」

 

「ゼロ」

 

 躱されると思ってもみなかったララの渾身のビームは神黒の真横を通り過ぎて虚しく空を焼く。そして眼前には右腕を振りかぶる神黒。

 宣言通り、右ストレートを顔面に叩き込まれて吹き飛んでいく。

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

 いつのまにか二人の間にいたユウリ。

 殴られた顔面は赤く腫れており、ララを胸に抱いて呟く。

 

「ララ。今度こそ俺の言うこと聞け。俺が帰ってこなかったら、みんなを連れて、デビルーク星に…」

 

「やだ!やだよ……!!」

 

 『堕天堕悪の閨(ベリアル・ゲート)』へとララを押し込みリトたちの逃げた方向へと吐き出す。 

 

「まともに喰らえばやばかったけど、あんだけ溜められたらどうとでもなるわなー。てか、まだそんなことする元気あったんだ」

 

「もー動く気も起きないけどな。──お前は、何がしたいんだ?」

 

「あん?何がって、別に何も」

 

 一切の光を映さない。永遠に続く黒い瞳。

 他人はもちろん自分にも、この世の全てを本当に何とも思っていないようにも感じる。

 

「生きるのなんて、退屈な毎日を何かで満たすだけの作業だろ?それが無くなりゃ、全部殺して俺も死ぬだけだ」

 

「…殺しで、お前は満たされるのか?」

 

「そーだよ。まー俺の場合は飯も兼ねてるからさー」

 

 命を喰らう。

 つまり、星神と同じ、『魂蔵』持ちか…

 

「黒蟒楼にいると、その効率が良いって事か…?」

 

「ん?まー暇つぶしと足代わり。てかその足が帰りそうだから俺もそろそろ行くわ。ついでにお前を食ってくけど」

 

「はっ……次の俺に、せいぜい気をつけな」

 

 そう、次だ。

 一回目は瞬殺。

 今回は負けたが、ようやく差は見えた。

 次は、俺が勝つ。

 

 絶界の力は完全にアイツも誤算だったはず。

 細胞すらも、一つ残らず消してやれば、今度こそ……

 

 一度目の死と同じく、強く念じる。

 今死ぬ事は受け入れる。その代わり、死にたく無い、消えたく無いという矛盾を。

 

 

 

「次?──おっと」

 

 神黒が急に飛び退き、何かを躱す。

 するとそこにバラバラとパーツが集まっていき、ゴツゴツとした体を形成していくと、やがてそれは人型となった。

 

「オイ、依頼人。お前に先に死なれては、雇われてる身としては困るのだが」

 

「は?」

 

 ヒャグレグが、ユウリと神黒の間へと立っていた。

 

「なるほど、これは化物だな……」

 

「バカッ!お前じゃ無理だし、コイツは俺の獲物だっ!!」

 

 神黒との間に割って入る、自分よりも弱い乱入者。

 そもそも勝てるはずがないし、何より、ヒャグレグの表情には感じるものがあった。

 

「あー。センチピード星人ね!なつかしー、もう狩り尽くしたかと思ってた」

 

「やはりお前か、俺の星を滅ぼした奴は…」

 

「そーだよ。君ら生命力高いからさー。狩り始めたら止まんなくな──」

 

 神黒のセリフに怒りが頂点に達したヒャグレグが襲いかかり戦闘が始まる。

 

 幾度なくぶつかり合う二人。

 だがぶつかり合うたびにヒャグレグの体はバラバラになるわけではなく、ボロボロと崩れ去っていく。

 

 ヒャグレグが戦闘を始めて数分。

 既に満身創痍なヒャグレグに対して、一発たりとももらっていない神黒。

 業を煮やしたヒャグレグは体内のエネルギーを急速に高める。

 

「くそ……これならば!!!」

 

 自身最大の技であるコスモ・ノヴァの体勢に入るが……

 

「もう、終わってんだよね。他のセンチピード星人と大して変わんねーし、もー理解したから」

 

 神黒が呟き、右手をヒャグレグへと向けた。

 

「……おまえが、生きのこ…」

 

 コチラを向き、満足げにも、悲しげにも見える表情で呟く。

 直後、一瞬でヒャグレグの体全てが灰になり、その灰すらもすぐに風に乗って消えた。

 

「ごちそさま。俺はもう満足したから、次のお前にせーぜー期待しとくわ」

 

「テメー!!待てコラァ!!」

 

 仲が良かったわけでもない。大して話したこともない。

 だが、今目の前で殺されたヒャグレグの求めた死場所は、ここではなかった気がする。

 なにより、アッサリと傭兵を殺し背を向けて帰ろうとする神黒にも、それを見送る事しかできない自分にも、無性に腹が立つ。

 

「うるせーなー。弱い奴は死に方すらも選べない、だろ?」

 

 神黒の言葉を最後に、ユウリは完全に意識を失った。

 

 

 

ーーー

 

 

「──コラァ!!殺るなら俺……を…?」

 

 飛び起き叫ぶが、思い描いていた景色とは違う場所だった。

 寝かされているのか、飛び起きた際にかけられていたであろう布団は地面へと落ちる。

 起きた際、体中に走る激痛に思わず顔を顰める。

 

「クソ……追っかけて、今度こそぶっ殺してやる」

 

「コラ、ここで物騒な事言わないで 」

 

「──!?」

 

「目を覚ましたみたいね」

 

「……ミカド、先生……」

 

 

 そのままベッドから飛びだそうとした直後に、ミカド先生の声が聞こえ、ちょうどドアを開けて部屋に入ってきていた。

 

 感情が高ぶりすぎてドア越しの気配にすら気付かないとは迂闊だった。

 ここがさっきまでの戦場だったら速攻で死んでるな…

 

「少しは落ち着いたようね。──えーと、何から知りたい?」

 

「……俺がここにきて、どのくらい経ってるかですかね」

 

 ここがどこかはわからないが、窓に覆いかぶさっているのは分厚いカーテン。蛍光灯の明かり以外に差し込む光はなく、今が何時なのか、予測すらつかなかった。

 

「今はお昼前。あなたが運ばれてきてから5,6時間ってところかしら。ちなみにここは私の自宅の空き部屋」

 

「……クソ…」

 

 そんなに経ってるのか…

 宇宙船、一度しか乗っていないがルナティーク号並みの速度で飛び立たれたらとてもじゃないが追いつけない。

 

「乗り込んできていた宇宙人たちは軒並み連行されたわ。あなたを倒した人は、そこにはいないでしょうけど」

 

「軒並み?……そんなに来てたんですか?」

 

「えぇ。でも、全員無事だから、安心して」

 

「そう、ですか」

 

 自分の不甲斐なさと弱さにイラつきながらのため、上手く考えが纏まらない。

 そんな俺を無視してミカド先生は話を続け、どうやら俺たちが山で戦っている間に彩南町は大変なことになっていたらしい。

 山にいた連中じゃない、モモとナナとヤミと、ミカンまでもが戦闘行為に及んだと言うこと。

 だが、無事だと聞いてひとまず安心した。

 

「……他に聞きたい事は?」

 

「運ばれたのは、俺だけですよね?」

 

「えぇ、そうだけど? 」

 

「…そっすか」

 

 ほんとに、みんなは無事でよかった。

 もしかして、と思った奴はやっぱりいない。

 そりゃそうか。

 俺の目の前で灰になって消えたあいつが、今更か。

 

「誰か、他にもあの場にいたのかしら?」

 

「いや……まぁ、そうですね。目の前で消されましたけど。俺はそれを眺めてるだけでしたから」

 

「そう……失ったものは帰っては来ない。生きているあなたは、しっかり生きなさい」

 

「……なんか、先生みたいなこと言いますね」

 

「それ、冗談よね?」

 

「です」

 

「もう……他に聞きたい事は もう無いの?」

 

「無いっす。──お世話になりました。じゃあ俺は…」

 

「まぁ、七瀬くんならそう言うと思ったけど…」

 

「あ、ちゃんと代金は支払いますよ。また持ってきますね」

 

 俺も状況を大まかに知りたかったが、ある程度は把握した。

 体の事はなんとなくわかる。

 あいつに殴られた部分はめちゃくちゃに痛いし、骨もかなりの箇所がイッてるだろうが、怪我の治りの早さには自信があるし、動かす分に支障は無い。

 

 それに、今の俺じゃ勝てない。

 何か、パワーアップする術を考えなくては…

 

 立ち上がり、自分が入院着のような物を着ている事に気付いた。

 

「あれ?俺の服は…」

 

「ここにあるわ。もちろん、あなたを着替えさせたのはワタシ。フフフッ」

 

 妖艶な、からかうような笑みを浮かべるミカド先生になんだか妙に恥ずかしい気持ちになるが、今更かと思う事にして諦めた。

 

 神黒に負ける度、ミカド先生には世話になりっぱなしだ。

 次は、次こそは……

 

 着替えようと衣服に手を伸ばし、ミカド先生は部屋を出て行こうとするが、急に振り向かれた。

 

「ああ、言い忘れてたけど───七瀬くん」

 

「なんすか?」

 

「殺すなら自分を、みたいな死に急ぐような言葉……みんなの前じゃ間違っても言っちゃダメよ」

 

「えっ?」

 

「みんな、ボロボロの七瀬くんを見てかなり動揺してたの。連れて来たアナタの同居人と妹さんはもちろんのこと、他の子たちも、ね」

 

「そうだったんすか……」

 

 俺を運んだのは、ヤミとミカンだったのか。

 

「他の子たちも何度も治療中の部屋に入ろうとするから、諦めさせるのに苦労したのよ?」

 

「へー」

 

「へーじゃなくて……全く、みんなのお兄さんなんでしょ?ちゃんと発言には注意しなさいって事」

 

「わかりました。もう落ち着いたんで、大丈夫です」

 

「そう、なら良かった。外の子たち、起こさないようにね。朝までは起きてたみたいだから」

 

「ん?」

 

 外の子?

 言いたい事は言い終えたのかミカド先生は今度こそ部屋を出て行った。

 なんとなく、察しはつくので【円】は使わない。

 

 着替える前に、ソッとドアを開けると…

 

「………」

 

 廊下には、やたらと豪華でフカフカしたソファーが3つ。

 ハッキリ言って、まったくこの家のテイストには合っていないし、そもそも廊下の幅とほぼ同じなので無理やり置いたことが見てわかる。

 

 そこにいるみんなに、驚いた。

 てっきり、リトとミカンだと思っていたが、全然違った。

 

 ひとつめのソファーにはサキ、九条、藤崎が肩を寄せ合って眠っている。

 もう一方のソファーではルン、リト、ララ、ナナ、モモが並んで眠っている。サキ達とは違ってルンとララがリトに寄り掛かって眠っており、双子はお互いに寄り添いスヤスヤと静かに眠っている。

 少し離れたソファーにはお静ちゃん、西蓮寺、沢田、籾岡、古手川が寝てる。

 みんな静かに寝ているが籾岡の手は古手川の胸の上にあり、古手川は少し表情が強張っていたが見なかった事にする。

 

 最後に、扉の真横に置かれた椅子でミカンは船を漕いでおり、隣には、

 

「…おはよ」

 

「…おはよう、ユウリ」

 

 ヤミが腕を組んで立っていた。

 赤い瞳が俺を見つめている。

 

「……負けたんですか?」

 

「まさか。俺は生きてる」

 

 そう。

 あの時、二度目の死を覚悟した時にそう思った。

 どうやってでも、この世界で再度転生を果たす。

 何をしてでも、アイツを殺す。

 じゃないと、いつかみんなが殺される。と、そう思った。

 

「俺が勝つまで、負けてねー」

 

 なんなら死んでも、別の肉体でアイツを殺すまでは負けてない。という、台詞はミカド先生の忠告通り飲み込んだ。

 そう言うと、ヤミは小さく、だが…確かに笑った。

 

「なら、いいです」

 

 微笑むのではなく、笑う。

 それは初めて見た気がする。

 それに、ヤミも戦ってくれてたんだよな。

 そんな事を思いながらジっと見つめていると、

 

「な、なんですか…そんなに、見ないでください…」

 

「あ、ごめん…とりあえず部屋入るか。みんなを起こしちまいそうだ」

 

「………もー起きてますよ」

 

「お兄様、ヤミさんだけを部屋に連れ込んでナニをしようというんですか?」

 

 ミカンとモモも起きていた。

 立ち上がり俺の方へと向かってくる二人を、思わず抱きしめた。

 

「良かった。二人とも、みんなも無事で良かった」

 

 自分にはしなかった…と少しムッとするヤミ。

 それに気づく事なく、二人の無事を喜ぶユウリと、照れた様子の二人の少女。

 

「ユウリさん?」

「ど、どうしたんですか?」

 

 正直なところ、目が覚めた時は怒りに駆られていたがララに言った手前、自分しかこの惑星には残っていないんじゃないかと、ひとりぼっちになったんじゃないかと言う不安が込み上げていた。

 ヤミと話している間にも込み上げてくるなんとも言えない感情が、二人の声を聞いて溢れ出てしまっていた。

 

──ガタンッ!

 

 と、突然音がしたと思えば…

 

「ユウリ様!起きられたのですね!ご無事だと沙姫は信じておりました!」

「綾を助けていただいて、ありがとうございました…私は、逃げることしかできず…」

「ああ、あの、私、覚えて無いんですが沙姫様と凛から、聞いて…本当にありがとうございます」

 

 サキは嬉しそうに、

 九条は申し訳なさそうに、

 藤崎は恥ずかしそうに言う。

 

「七瀬さん、無事で良かった…」

「おにーさん、ありがとね」

「私も何にも覚えてないんだけど…助かりました」

「あの、災いの神はどうなったんですか?」

「あの、呪いとか、無いですよね?」

 

 心配してくれる古手川。

 素直にお礼を言ってくれるリサミオ。

 地蔵の最後を気にするお静ちゃん。

 それで思い出したのか、怯えながら聞いてくる西蓮寺。

 

「お兄さん、怪我は、大丈夫なんですか…?」

「ユウ兄…またボロボロだ…俺も、戦えるから、次は一緒に…」

「お兄ちゃん、おかえり。だから、デビルーク星には帰らないよ」

「……兄上…」

 

 一番まともに見えるルンが心配してくれる。

 決意のこもった目を向けるリト。

 柔らかい微笑みを向けてくれるララ 。

 最後に、何か言いたいことのあるような、浮かない顔をしたナナ。

 

 そんなナナが気になったが、みんなの質問に答えたりしていた。

 するとリトのラッキースケベが始まり、サキの胸を揉みながら九条の股間に顔を埋めもみくちゃにされたりとどんどんと騒がしくなり、五月蝿いとミカド先生から追い出されるのだった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「それで、お前の方はどうだった?」

 

「部下は全滅。神の居場所は、報告と間違いないと言うことはわかりましたけど。あなたの方は?」

 

「上手いこと逃げられちゃった」

 

「……」

 

 碧暗は目の前のこの男が明らかに嘘をついているとわかってはいたが、自分よりも強い神黒に詰め寄るわけにもいかず、

 

「仕方ありませんよ。白さんに言われた時間ですし、戻らなくてはいけませんから」

 

 それに、自分も嘘をついているのだから、お互い様だと思っていた。

 

 

ーーーーーー

 

 

「それで、君たちはいつ来るんだい?焦らすのは好きだが焦らされるのはな」

 

「……わかりませんが、1128h後くらいだと…」

 

「ふむ。二月弱と言ったところか……じゃあ、君たちは何が欲しくてここに来た?」

 

「……松戸は、処分…能力の詳細は、ふめ、い… 子供は、捕獲…」

 

 虚な目をした宇宙人が松戸の質問にたどたどしく答える。

 その宇宙人には、針のようなものが刺さっていた。

 

「クッ。僕を警戒でもしているのか?それじゃあ、子供はなぜ捕獲する?どの子供が狙いだ?」

 

「あ、ああ…生命エネルギーを…操る能力を持つ、こど、も……」

 

 だんだんとたどたどしさは増していくが松戸は質問をやめない。

 

「なるほど…【念】に興味を持っているのか。じゃあ、こちらは君たちのボスの能力でも教えてもらおうか?」

 

「そそそ、それは──────」

 

「……もういいよ」

 

──グジュ

 

 黒い巨大な腕に潰され、その腕が持ち上がると、そこに誰かが、何かがあった痕跡は無く、綺麗な床が見えていた。

 

「クククッ。もう少しだ、もう少しだよ加賀見くん」

 

「はい、先生」

 

 虚空を見つめ笑う松戸を見ずに、加賀見は返事だけをしていた。

 

 

 

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