Troubる   作:eeeeeeeei

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五十一話 楽園×結成

ーーーーーー

 

 

「お兄様、こちらの料理はお食べになりました?美味しいですよ」

 

「当たり前でしょう。この天条院家の誇る一流のシェフが──」

「それはもう何度も聞きました」

 

 お兄様に料理を勧めたところで、天条院さんがそれはもう何度も聞いたセリフを挟む。

 

「もらうよモモ。あと、サキもありがとな。でもさ、説明ばかりでさっきから食べてないけど、一緒に食べよーぜ?」

 

「は、はいっ!ユウリ様」

 

 どう考えても、お兄様の事が好きな天条院さん。

 でも、今はまだ憧れの方が強いのか、それとも元々そういった方なのか、普段とは打って変わってお兄様を目の前にすればおとなしいですね。

 

「これは……から取り寄せた一品でして、このソースは……」

 

 あの後、お兄様とヤミさんは二人で戻ってきた。

 今料理の説明をしてくれている嵐山さんも無事で、島から脱出しようとしていた本物の猿山さんも、今は同じ食卓を囲んでいる。

 でも、あの男が有名な殺し屋、クロだとは思いもしませんでしたが、無事に戻ってきたので安心したし、電波を妨害していた装置はクロが設置していたようで、今は問題なく過ごせていた。

 到着して早々に事件が起きたので、みんなこの夕食会が終わればすぐにでも眠りにつくだろう。

 そうしたら私は……

 

「あ、これにはソースがあったんだ」

 

「私がつけてあげますよ」

 

 目の前の料理を、最近慣れてきたお箸で掴むと、ソースをつけてそのままお兄様の口へと運ぶ。

 口のすぐ前まで料理を持っていくと、少し間を開けてそのまま食べてくれた。

 

「………パクっ」

 

 こうゆう時、リトさんなら照れて食べてくれないんだろうけど、お兄様は一瞬思案されたようですが、何も言わず食べてくれる。

 差し出した女性を道化にしないように。

 本当に、優しい人。

 

 でも、あちらは……

 私はそっと横を見る。

 

「リト、私も食べさせてあげるよっ!」

 

「うわっ!やめろよララ!自分で食えるって!」

 

「えーっ。お兄ちゃんは食べてくれるのに。リトのケチ」

 

 お姉様とリトさんはいつもと変わらない様子。

 お兄様に特訓をされ始めて男らしさが増したように見えてきたのですが、女性のこととなると変わり無いようですね…

 でも、最近はまんざらではなさそうなのですから、お姉様とさっさとくっついて欲しいのですが……

 

 

ーーー

 

 

 モモさん…

 

 最近は露骨にユウリさんにベタベタとくっつきすぎじゃない?

 ユウリさんは優しいから何も言わないけど…

 私もしたいのに、なんて言うのは、内緒だけど。

 

「モモ、さっきから兄上にベタベタしすぎだぞ!あと、ソレッ!!」

 

 ナナさんも私と同じ意見のようだ。

 何がこうも心を逆立てさせるのか、それはナナさんと私は共通していたと思う。

 

「あらっ。私とした事が、気付きませんでした。──ナナでは、当たる胸がないですもんね」

 

 そう。さっきから胸がユウリさんの二の腕に当たっていたのだ。

 というより、当てていたようだが。

 

「なんだとっ!!自分がちょっとあるからって…」

 

「ナナ、落ち着けって。あとモモも、食べづらいからちょっと離れてくれ」

 

 うーん。

 ユウリさんも最近はなんでも言ってくれるようになった気がするけど、今はまたなにかを隠してるような気がするんだよね。

 私は目の前のお肉を箸で掴みながら、横に座る親友を見る。

 

「………」

 

 こちらも何か考えてるのか、さっきからどこか上の空だ。

 二人でクロをここから引き離した時、何かあったんだろうか?

 

 幸いヤミさんとは相部屋だし、あとで聞いてみようと思ったところで、お静さんがウェイトレスの格好をしてみんなにドリンクを配っている。

 それをみんなが飲み干したところで、またも事件が起きた。

 

 

ーーー

 

 

 なんだ、これは……

 

 感情が、昂る…体に熱が籠るのがわかる。

 胃から喉にかけて、上へ上へと何か熱を持ったものが昇ってくる。

 これがチャクラか……と馬鹿な事を思う程の熱量。

 

 それもこれも、お静ちゃんが持ってきたコノ飲み物を飲んでから……

 

 

ーーー

 

 

 窓からの日差しで俺は目を覚ました。

 見覚えのない天井、と一瞬思ったが、サキの別荘で俺にあてがわれた部屋の天井だと理解した。

 昨夜の記憶が曖昧だが、部屋に帰ったのは、覚えている。

 

 「あー頭が痛ぇ、こんなに酒弱かったのか、悠梨は…」

 

 以前の世界でも酒はなんどか飲んだことはあるが、ここまで酔ったことなど、一度もなかった。

 ガンガンと痛む頭を押さえ、とりあえずベッドから身体を起こすと、何かが身じろぎをしたような…

 嫌な予感がして、掛け布団をゆっくりと剥がすと…

 

「………」

 

 そこには、一糸纏わぬ姿の、モモとミカンとヤミが気持ちよさそうに眠っていた。

 ミカンとヤミはまだしも、モモの胸は自身の腕で挟まれてその存在を強調している。 

 

「……楽園かここは?」

 

 違う違う違う。何言ってんだ俺は。

 思い出せ思い出せ思い出せ、どうしてこうなった?

 そもそも、シタのか?しかも4人で?

 いやいやいやいや。でも俺は服を着てる。

 それはないはず…うん、ないはずだ!!

 もしもあったとしたら、酔ってて覚えてないなんて、俺はなんてもったいない事を……

 じゃないっ!!何を考えてんだ俺は。

 よし、一旦落ち着こう。落ち着きがてら、とりあえず三人の裸を見ておこう。

 今後見ることなどないかも知れないしな。

 

 思考回路がぐちゃぐちゃなまま、再び三人に視線を向けると、

 天使のように愛らしい笑顔と、

 羞恥心で死んでしまうのではないかと思うほどに赤い顔と、

 宇宙一の殺し屋と呼ぶに相応しい顔が、俺を見ていた。

 

 

ーーー

 

 

 朝の食卓。

 全員が浮かない顔をしており、皆一様に頭を抑えている。

 それはそうだ。

 この部屋は昨日凄惨な光景を作り出した部屋。

 

『これからの事を思うと、すごく縁起の良いものがありました!みんなで飲みましょう!!』

 

 お静ちゃんがそう言って持ってきたのは、『大吟醸・龍ころし』という強烈な酒。というのは後で知ったのだが、グラスになみなみと注がれたそれを飲み干すみんなの姿を最後に、ここは混沌と化した。

 

 ララは笑いながら全裸になるとリトへとくっつき、負けじとルンが、続いて西蓮寺とリサミオも下着姿となってリトへと群がる。

 それをあろうことか、酔っているリトは受け入れたのだ。

 その姿はまるで楽園(ハーレム)を築く王となったように見えた。

 

 古手川とナナは泣き上戸だったようで、二人してネガティブな発言を繰り返し泣き続け、猿山はそれを慰めているようだが日本語を話せていないほど呂律が回っていない。

 

 サキと九条と、とばっちりで捕まったお静ちゃんの三人は、酒癖が悪かったのであろう藤崎に絡まれている。

 

 俺は胸にこみ上げる気持ち悪さにやられ、この混沌な空間からいち早く出ていき部屋でベッドに横になった。

 それにモモがついてきていたようで、モモも部屋につくなり裸になると、「お疲れでしょう」などと言いながらベッドへと潜り込んできた。

 更にモモを追ってきていたのか、ミカンとヤミもなぜか負けないとモモに対抗しはじめたのは覚えているが、目を覚ましたら今朝の光景。

 

「はぁー……頭痛え…」

 

 二日酔いももちろんあるが、ついさっきヤミに変身(トランス)の巨大な拳で頭をぶん殴られたのもあり、グワングワンと世界が軽く回って見えている。

 

「大丈夫ですか?お兄様、はい、お水です」

 

 酒豪だったのか、一人平気なモモに介抱されながら、他の一同はしばらく二日酔いに苦しんだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「一昨日は、お楽しみでしたね」

 

「………加賀見さん、ゲームするんすか?」

 

「いえ…?なぜですか?」

 

「…なんでもないです」

 

 まさか加賀見さんからそのセリフが飛び出してくるとは思っていなかったので思わず吹き出しそうになる。

 あの日のことは、もう思い出したくない。 

 

「ところで、偉く大勢連れてきているようだが、何のようだ?」

 

「顔合わせもかねて、作戦会議、しときません?」

 

 松戸さんは表情を変えない。

 

「僕のやることは変わらないが…まあいいだろう」

 

 そう言ってくれた松戸さん。当初からすると随分丸くなったもんだ。

 応接室のさらに奥、広間へと向い、加賀見さんに飲み物を用意するようにお願いしていた。

 そして、全員が広間に集まった。

 

 俺から時計回りに、松戸さん、加賀見さん、リト、ララ、ナナ、モモ、ザスティン、ブワッツ、マウル、ヤミ、ミカンの順に大きなテーブルをぐるりと囲む。

 

「まず言っとくとあと一ヶ月ちょっとしか、時間は残ってない」

 

 既に知っている三人以外は、驚く。

 

「……デビルーク王も、現在は知性の低い星々から、なぜか一斉に襲撃を受けているようで……地球のことはお前らでなんとかしろとの話です」

 

 ザスティンはそう話す。

 が、デビルーク王の参戦など、はなから期待していなかったのでなんとも思いはしなかったし、ザスティンの表情からすると、さっさと連れて帰ってこい。が本来言われたことだろうな。

 まぁ、デビルーク星の今の状況を作ったのもどうせ黒蟒楼だろう。

 

「まあ、それは良いとして、とりあえず、それぞれの標的を決めておきたくてさ」

 

「……標的(ターゲット)、ですか?」

 

「そう。まず、俺がやるのは神黒。あと、加賀見さんと松戸さんが黒蟒楼の本体と白。これはどちらも譲れない」

 

 そうは言っているがおそらく本体はどうするかはわからない。

 が、たぶん白は黒蟒楼の主に執着していると言う話は聞いた。

 まとめて相手することになるだろうから、そう言っておくことにした。

 

「残りの幹部は、戦闘部の我銀、隠密部の紫音、情報部の碧暗、技術部の藍碑、城内の管理者の孔朱がいるらしい。で、戦闘になった場合それぞれ誰がどれを相手にするかを……」

 

 俺の中でなんとなく決めてはおり、我銀をヤミに、と言おうとしたところで二人に遮られた。

 

「我銀……その方は、私が仕留めます…」

「碧暗とかゆうクソヤローはあたしがやる!!」

 

 ナナはわかる。話は聞いたし、おそらく戦闘での相性も良い。

 だけど、モモは?

 

「モモ、どうしたの?」

 

 ララの問いに、モモはゆっくりと口を開いた。

 

「我銀…炎の化身などと、ほざいている方ですよね。あの方に焦土とされた惑星をいくつも見た事がありますから…」

 

 植物を愛するモモだからこそ、許せないのだろう。

 佐金よりも、おそらく強いので心配ではある。

 私怨か、と思うが人のことは言えないし、認めるしかないか…

 

「モモ、やばくなったら、逃げるんだぞ?ならザスティンたち三人は、モモについてくれないか?」

 

「ユウリ殿、それではララ様とナナ様は…」

 

「モモの相手は戦闘部隊。そこに人手を割くのは当然だろ。ララには藍碑をお願いしたいんだ。戦闘力は高くないが、技術部となると地球の俺たちじゃ理解が追いつかない。宇宙一の発明家であるララならどうとでもできると信じてる」

 

「…うんっ!任せてお兄ちゃん。私が懲らしめるからっ!!」 

 

 拳を握り込み、笑顔で言うララ。

 藍碑というのがどの程度のものかはわからないが、頭でララに勝てるはずもないし、力もデビルーク星人であるララは、このメンツの中では最強の一角に間違いなく入る。

 無理はしなくて良いからと告げて、本当はモモにお願いしようとしていたのだが、

 

「ヤミは、紫音だな。戦闘力はかなりのものらしい。隠密っていうから、本来は俺の【円】か、モモのトラップが適任だとは思うが……」

「別にかまいません。私の標的は決まりですね。その後は、白黒以外は誰をやってもいいのでしょう?」

 

 なんとも頼もしい。

 もう、殺しはしないだろうが本気のヤミが相手なら、白黒以外の幹部の誰であれ負けはしないだろう。

 俺は大きくうなづいた。

 

「ユウ兄、なら俺とミカンは?」

 

「二人はペアで行動して、紫音の部隊狙いだな。隠密連中にチョロチョロされるとかき回されて鬱陶しい。幹部に出会ったら、必ず離脱しろ。ヤミもそれで良いか?」

 

 ヤミは無言でコクリとうなづく。

 お守りを押し付けたようだが仕方ない。元々はサポートに適したモモとくっつけるつもりだったが、我銀の元へ二人は送り込めない。

 

「で、残った孔朱は、接敵したら俺がやる。幹部の中では下の部類だそうだが、元々はタコの異星人らしい。ヤミはやめといたほうがいいかもな」

 

「うっ……わかりました」

 

 少し顔を引きつらせて了解してくれるヤミ。

 

 これで決まり。

 あとは突入と撤退の装置の確認と、松戸さんが手荒く聞き出したであろう幹部に関しての情報の伝達。

 あらかた終わったところで、松戸さんが最後に口を開いた。

 

「……君たちが好きにやるのは構わない。何度も言うようだが、勘違いであれ何であれ、僕の獲物には手を出すな。これは僕の一世一代のショー、観客になることすらも許さん」

 

 殺気を垂れ流しながら告げる松戸に、一同は無言でうなづいた。

 その空気を重苦しいと感じたのかリトが話し出す。

 

「な、なんか、Ⅻ機関って感じするな」

 

 突拍子もないし、ゲームがわかる俺くらいにしか響かないネタだろう。

 案の定、みんなの頭にはハテナが浮かんでいる。

 

「いやさ、チームの、俺たちの呼び名みたいな」

 

「そういう意味ですか。この場にいるのは12人。まるでオリュンポス12神のようですね」

 

 漫画家である才培さんの仕事を手伝っているためか、ザスティンが神話に因んでそういうと、わずかに加賀見さんが反応をしたのがわかる。

 禁句、というわけではないが、良い気はしないだろう。

 ま、フォローしとくか。

 

「なら、ここは彩南町だし、彩南十二柱(さいなんじゅうにちゅう)って感じ?」

 

「ユウ兄、なんで、ちゅうなんだ?」

 

「だって俺、神じゃないし。柱くらいがちょうどいいだろ。人間なんだから」

 

 正直名前なんてどうでも良いが、これでリトの士気があがるのであれば、まぁいいか。

 

 それよりも、俺には時間がない。

 あの差を一月で埋めるのは無理がある。

 

 決戦までの秒読み段階の今、なんか方法を考えないと……

 

 その後、光明が見えたからか、焦りすぎた俺の前に、得体の知れないモノが現れたのは、これから一週間後の事だった。

 

 

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