Troubる   作:eeeeeeeei

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五十四話 戦塵×激突

ーーーーーー

 

 

 さて、開戦の合図をあげようか。

 とりあえず、黒いモヤをブッ飛ばす為に、シミュレーション済みの一発打ち込む。

 と、動こうとしたところで、思っても見なかった発破がかかった。

 

「くくくくっ。敵は神とも見紛うほどの存在だ」

 

 松戸がゆっくりと前に出て、語りかけるように話し出す。

 松戸の醸し出す雰囲気に、全員が飲まれていた。

 それは、デビルーク星の親衛隊長であるザスティンさえも。

 

「だが、ここまで歴史を紡いできたのは、間違い無く人間。神など所詮創るものでしかない。育て、変えるのはいつだって人間だ。さぁ、ここから先は、各々の判断に任せるよ。もう、僕と会うこともない。

──だがもしも、次に会うとしたら、来世で会おう」

 

 松戸さんは言い切ると、全員に背を向けた。

 そして、加賀見さんが俺たちにお辞儀をする。

 その様は、優雅で優美としか言いようがなく、性別問わず見惚れるほどだった。

 

「それではみなさん、さようなら、ごきげんよう」

 

 加賀見さんは、その体を何倍もの大きさに変えると、松戸さんを背負い飛び出して行った。

 

 呆然と見守る一同と、加賀見さんのヤバさに気づいたザスティンが震えていた。

 

「な、なんなんだ彼女は……内包された力は…いったいどれ程のものなのだ…?」

 

「ザスティン、加賀見さんもまた、理から外れた存在の一つ。制約はいろいろあるみたいだけどね」

 

 ちょっとタイミングはズレたけど…

 もう、完全に視界を覆い隠す程に近づいている黒いモヤのかかった星。

 

「ララ、モモ、やるか」

 

「えぇ、お兄様──」

 

 モモがデダイヤルからこの電脳世界を操作し、俺の立つ地面がどんどんとせり上がる。俺はそのまま慣れたように結界群を生成し、大小の結界は列となした。

 

「お兄ちゃん!準備オッケーだよっ!」

 

 ララはその先端の巨大な結界に、昔、松戸さんからもらってすぐに壊した物と同じような物を取り付ける。

 だが今回は直径10mはあろうかと言うほどに大きく、円状のそれはメカメカしい見た目をしていた。さらに、全体にお札のようなものまでがビッシリと貼り付けてある。

 台風を吹き飛ばした時、あの時とは比べものになら無いほどに巨大な結界と呪具。それに、俺自身のオーラ量も桁が違う。

 

「ユウ兄、ぶちかませ!」

 

「任せとけ。

 ──『暴王の咆哮(タイラント・ブラスト)』!!」

 

 暴れ狂う暴王の衝撃が、黒い星を覆うモヤを吹き飛ばす。

 中から出てきたのは…巨大な、空に浮かぶ城と城下町。

 一つの街が、浮島のように空に浮かんでいた。

 

「思っていたよりは、小さいですね」

「ヤミさん、それでも彩南町くらいはありそうだよ?」

「レベルは、いい感じだな…あとは、使うタイミングを…」

「リトー?何一人で喋ってるの?」

「あ、姉上はそっちじゃなくて、あたしとだろ!」

 

 それにしても、こいつら全然緊張感ないな……

 良くも悪くも、わりといつも通りな面々に、ユウリは苦笑した。

 

 

ーーーーーー

 

 

「どわぁーーっ!!」

「なんだなんだ!?」

 

 騒然とする城内。

 

 地球レベルの惑星への侵略で、トラブルが起きるなど想像もしていなかった面々は騒ぎ出すが、動揺すらしていないのが幹部たち。

 

「松戸の仕業か、小僧の仕業か。どちらでもいい。邪魔するものは、消してこい。戦闘行動を許可しよう」

 

「はっはっはっは!!面白そうなのがいるな、俺が相手をしてこよう。ついて来いお前らっ!」

 

 白の言葉を聞き、我銀は部下を従えて、我先にと城から出て行く。

 

「あぁ。私の結界を吹き飛ばすとは……この城にこのような暴挙……許さんぞ……」

 

 城下町と城の一部を破壊された孔朱は怒りながらも、修復作業のために力を使う。

 

「碧暗、お前気づいていなかったのか?」

 

「警戒に値しないと言っていたではないデスカ。ボクは気にもしてませんデシタヨ」

 

「ふーん……」

 

 紫音の言葉に碧暗は返すが、すぐに興味を失ったように、紫音は頬杖をついたままだったが、立ち上がり部屋を出て行くと、残っていた者たちも部屋を後にした。

 

 自身の研究室へと向かう藍碑は長い渡り廊下で立ち止まる。

 手すりに座る、今は着流のような服を着た黒髪の男がこちらを見ていたから。

 

「なんのようだ?」

 

「べっつにー。お前ってさ、自由になりたいんだろ?今がチャンスだと、思ってるんじゃないかと思ってね」

 

「……なにか、するつもりなのか?」

 

「いんや。俺は何もしない。これから起きるのさ。チャンスはそう多くない。せいぜい、頑張れや」

 

 神黒の言葉にうなずくこともせず、藍碑は研究室へと急いだ。

 そんな藍碑の背を見送ると、入れ替わりのように白が現れる。

 

「お前の、狙いはなんなんだ?」

 

「狙いなんかないさ。面白ければそれでいい。別に俺はお前らの仲間じゃないんだし」

 

 神黒の思考は単純明快。本当になにも考えていない。

 掻き回して遊んでいるだけな上に、手を出せないほどの力を持っている。真面目にやっている者からするとタチが悪すぎる存在。

 だからこそ、白は内側に置くことにしたのだが。

 

「そー怒んなよ。俺の遊びが終わったら、二、三人は殺してきてやるからさ」

 

「ん?まさか、乗り込んできているのはその程度の数なのか?」

 

「あれ、マジで言ってる?気づいてないの?やっぱあの碧暗とかゆーの、遊んでんのな」

 

 白は碧暗にも蟲を入れているつもりだったが、神黒の言葉で気づいたようだ。

 

「……くだらないヤツばかりだな。これが終われば、一度掃除でもするとしよう」

 

「くくく。終われば、ねぇ…」

 

 白の言葉に、神黒は面白そうに笑みを浮かべた。

 

 

ーーーーーー

 

 

「さて、じゃあ…こっからは予定通り」

 

「ララ様、ナナ様、皆さん、御武運を…」

 

「うん!ナナ、行こう!!」

 

「ミカン、結城リト、私から離れないように…」

 

 俺はモモとザスティンたちと。

 ララとナナは、ドラ助に跨り空を駆けた。

 ヤミとリト、ミカンは三人で城下町へと乗り込む。

 

「では、モモ様。我らも行きます!行くぞ!ブワッツ、マウル!」

「「はっ!」」

 

 ザスティンたち三人が、一番にこちらへと向かってくる異星人達へと向かい、俺も行こうとしたところで、モモに外しているフードを掴まれて振り返る。

 

「あ、お兄様…忘れ物です」

「ん…え────」

 

 

──唇に、温かく柔らかいものが触れる。

 

 モモに、キスされた。

 え?あれ?なんで?いま?

 

 いくつもの疑問符が頭に浮かぶが、ニコリと微笑むモモ。

 

「お兄様のではなく、私の忘れ物でした。この先は、帰ったらしてくださいね♡」

 

「え、あぁ……」

 

「いいんですね?約束ですよ♡じゃあ、いまからは、お仕置きの時間ですね」

 

 反射的に了承してしまった。

 モモはデダイヤルから浮遊植物を呼び寄せると、その上に立ち、空へと飛び、俺はそれを一瞬だとは思うが、我に帰るまでボーッと眺めていた。

 

 

ーーー

 

 

 タイミングをずっと図ってましたが、うまく行きましたね。

 内心、一足先に向かってくれたザスティンたちはいい動きをしてくれたと思いながらも、更に上空を見上げる。

 

 かなりの数の、100は軽く超える程の異星人たち。

 その中でも、一際目立つ存在がいた。

 馬の下半身に人の上半身。四本足に六本腕を持つ大型の異星人。

 

「あれが、我銀……」

 

 唇を噛み締める。

 あれか。あいつか。

 私のためにも、ユウリさんのためにも、倒させてもらいましょう…

 

──ッ!?

 

 我銀の持っていた火球がどんどんと巨大化していることに気づく。

 

「あ、あんなのを受けたらひとたまりも…」

 

 今は既に、先程のお兄様の一番大きな結界くらいのサイズ、直径50mはあろうかと言う大きさになっていた。

 

「モモ、止まるな!あれだけタメがいるなら、肉薄すれば、次は来ない」

 

「は、はいっ!」

 

 次、と言うことは、この一撃はお兄様がなんとかしてくれる。

 

「ザスティン!周りは任せた!モモは俺の後ろにいろ」

 

「承知!ブワッツ、マウル、右翼は任せる。左は私がっ!」

 

「「はっ!」」

 

「最初は俺の射線に入るなよ。一発打ち込んでくる」

 

 私を中心に、左にザスティンさん、右に二人が向かう。

 そして、私の前に、お兄様。

 

「お前が、さっきの攻撃をした噂の小僧か?お返しだ」

 

 投げ飛ばされる特大の火球を見て、お兄様は両腕を前に突き出した。

 

「お返しをお返ししまーす」

 

 ふざけたようにそう言うと、火球の前に、亜空間への扉がこじ開けられる。

 火球は吸い込まれるようにして消えたかと思えば、城下町の方で大爆発が起きていた。

 

「なに……?」

「戦力は、神黒とやる前に極力削いどきたいもんでな」

 

 速いっ!!

 

 いつのまに仕込んでいたのか。

 別の次元の裂け目から姿を現したお兄様は、既に我銀の背後にいる。

 しかも、青色に煌く、ありえない長さの剣を振り上げた状態で。

 

「『熾獣王の爪(アスタロト・ブリット)』!!」

 

 アスタ……?

 叫ぶ言葉に聞き覚えのある名前があったが、その後の光景を見るとそんな事など気にならなくなった。

 

「貴様……やってくれたなぁっ!!」

「いやいや、お前もやるじゃん。あわよくば、殺す気だったんだけどね」

 

 横一文字に振るわれた剣の射線にいた数十匹の異星人たちは、二つに分かれ、地面へと崩れ落ちて行く。

 我銀は、腕二本を失ったようだ。

 

「モモ、このまま────チッ!!もう来たか!!」

 

 なにも、見えなかった。

 

 黒い影?

 何かが飛来したんだとは思う。

 お兄様の身体がブレたように見えたが、直後に真下の地面が大きく爆ぜた。

 

「な、なんですか!?」

 

「モモ様、離れてください!!アイツは…アイツが…ッ!!」

 

 地面にできた巨大なクレーター。

 その中央にいる、アレが……

 

「おー今回は避けたか…じゃー、次のお前がどんなもんか……見せてみろよ?」

 

 ゾクゾクと、悪寒が全身を駆け巡る。

 あの時の…一瞬しか見えていなかったけど…

 私と、お姉様を拐った男…

 怖い…恐怖と言う感情が、私の全てを支配していく。

 

 ダメだ。勝ち負けなんかではない。

 あれは、相手にしてはいけないモノだ……

 

 心が折れかけた時、クレーターがその大きさを二倍に増した。

 そして、遅れて聞こえる轟音。

 

──ドバァァアンッ!!

 

 次はドンドンドンドンと、何かをぶつけあう音が響く。

 既に、二人は空を駆けながら殴り合っていた。

 

「ははは!なんだぁ?今回は最初っから強気じゃん?彼女が見てんのか?」

「うるせー。場所変えるぞ、ゴミヤロー」

 

 そのまま、二人は姿を消した。

 お兄様が、最後に私にウィンクしたのは見逃していない。

 あの合図…二人で決めた、任せるのサイン。

 あんなのを相手にしながら、わざわざしなくてもわかるのに、それなのに、目を逸らすなんて……

 私の恐怖心、わかってたんですね。

 

「神黒め……まぁいい。お前らから殺してやろう」

 

 作戦通り。

 お兄様はもともと神黒が強襲してくる事は予想していた。

 来るまでは、ここにいて、できるだけ我銀を消耗させるとの話だったのが、予想よりも少し早まっただけ。

 

「すぅー…ふぅー…」

 

 大きく息を吸って、吐く。

 よし。もう大丈夫。

 お兄様に消されるのは、神黒のほうだ。

 そして、この場を任されたのだと、自分を奮い立たせる。

 

「モモ様!!私が行きますっ!できれば援護を…!」

 

「えぇ…いくわよ、みんな」

 

 デダイヤルに手をかけ、戦闘用の子たちを呼び寄せた。

 

 

ーーーーーー

 

 

「くっ。流石だ。随分と派手にやるな」

 

 城下町の一部が大きく燃え上がり、隕石でも落ちたのかと思うほどの巨大な穴が空いている。

 街の端でその光景を見下ろしている松戸と加賀見。

 

「先生、彼は黒と接敵したようです。が、今はかなり遠くまで離れていますね」

 

「あぁ。そう言えばそんな事も言っていたな。僕らの邪魔にならないようで何よりだ」

 

 ユウリが神黒と戦闘を始めると場所を変えると言う話は聞いていた。

 松戸にも勧めていたが、松戸は興味なさそうに、必要ないと言い切っていた。

 

 奴の所有するモノを余すことなく破壊し、奪う。

 そして、絶望と後悔を味わってもらう。

 それなのに、場所を変えるのは違うだろう。

 

「さぁ、僕たちも始めようか…あの建物、ちょっといいじゃないか。壊そう」

 

 加賀見は返事をする事なく、またも巨大化し、身体からいくつもの黒い足を生やすと、百足のように建物を破壊しながら進んでいく。

 道中にいた異形の者たちを、軒並み殺しながら。

 

 

 そんな二人を遠くから見ているものが一人。

 

「ありゃー、ヤバイわ」

 

 自身の気に入っている街並みを破壊していく者を見に来たが、完全に規格外。神黒に匹敵するのではないかと言うヤバさがあの女から漏れ出ているのがわかる。さっき傀儡に見させていた神黒とやりあってる例のガキといい、相手も随分と化け物揃いだこと。

 

「白には悪いけど、こりゃ逃げた方がいいかな」

 

 どうしようか悩んでいるところで、自分がどこかから見られていると言う事に気づいた。

 自分と少し似たような…暗殺者か?

 

「はぁ。こっちも、めんどくさそうだね…」

 

 紫音は呟き、その姿を消した。

 

 

ーーーーーー

 

 

「藍碑さん」

 

「碧暗か、いったい何のようだ?」

 

 藍碑は苛立っていた。

 いつでもこの場を離れる事ができるように、今までの研究の結果を纏めているところだったので、その手を止めざるを得なかったからだ。

 逃げる気か、と言われるのも面倒であり、そもそも藍碑は自身の研究がしやすいだろうと黒蟒楼に近づいたところを、白に虫を入れられているからここにいるだけ。

 黒蟒楼がどうなろうと、興味は無かった。

 

「あなたの研究の成果。生命力を取り出すと言うものが欲しくてね」

 

 いつもと口調も違う碧暗に少し戸惑うも、自身の研究を横から急に取り上げられるのは、我慢ならない。

 

「……なぜ?」

 

「必要だから。それ以外に理由があると思ってるんですか?」

 

 碧暗は、地球には、星神以上のものが巣食っていると確信しており、それを引っ張り出すにはまずは力が必要。更には神黒を手懐ておく必要があるだろうと考えていた。

 だが、それは決して力だけで押し開けるようなものではないともわかっている。

 黒蟒楼、命喰の生命力を取り出し自分に入れることができれば、自分も星神レベルにはなれるのではないかと言う考えがあり、星神となり地球と共鳴すればまた一つ、自分の知らない世界を見ることができるのではないかという結論に至っていた。

 その考えを、今こそ実行すべきだと思ったからだ。

 

「仮にお前に必要だったとしても、私が渡す通りは無い」

 

「やれやれ、では命令しますよ。さっさと渡せ。そもそもここは地球じゃ無い。お前の望む結果にはならないぞ」

 

 ここが地球ではないことにも、碧暗は既に気付いていた。

 加賀見の中のベスと近い、千珠眼(せんじゅがん)と呼ばれる見通す力を持つ碧暗は、この地球はハリボテであり、精巧に作り込まれているのもこの近辺のみだと既に見ている。

 

「なん、だと?私を、どうするつもりだ…?」

 

 藍碑は後退りながらも、一つのメディカルマシーンへと寄り添い、自分の望みは、もう叶わないかもしれないと思った。

 だが、藍碑の想像した展開とは違い、碧暗はローブに覆われた顔を歪めると、藍碑に背を向けた。

 

「あぁ。鬱陶しい事この上ない……今度こそ、滅ぼしてやろうか」

 

 藍碑には、何も見えてないが、碧暗はこの研究室の遥か先を睨んでいた。

 

 

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