Troubる   作:eeeeeeeei

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五十八話 混戦×三度目

ーーーーーー

 

 

──ザン!!

 

 ヤミは長い手足をしならせ、手足を刃へ変えると、迫りくる城の壁や地面、天井の全てを切り裂いた。

 

「小娘が、女になった…?」

 

 孔朱の前にいるのは、ダークブラウンのパイナップルヘアーの小さな女の子から、金髪の大人の女性へと変わっていた。

 

「………こんなものね」

 

 大袈裟に、顎に手を当てている大人の女、風を装うミカン。

 

 能力で過去にヤミと入れ替わった自分を体験し、変身(トランス)の練習も何度もしてきた。そのため、今やヤミと同じく、大人バージョンにも変身できるまでに達していた。

 なぜ今体を大きくしているのかは、もちろんハッタリのため。

 少しだけ、大人バージョンの自分に変身した事もあるが、加賀見を意識しすぎた為か、全く似合わず変な感じになってしまったのはヤミとミカンだけの秘密である。

 

「…なんなんだー!!お前はー!?」

 

 ついでにタコの足も何本か切り裂いたので、孔朱は叫び、距離をとっている。

 

「…金色の闇…って、知らないの?宇宙一の殺し屋と呼ばれた事もあるんだけど」

 

 ヤミの姿をしたミカンがその赤い相貌で孔朱を射抜く。

 だが、そこに殺気を込める事は、ミカンでは無理な話であった。

 そして、孔朱も殺気の籠らぬ言葉と振る舞いに惑わされるほど雑魚ではない。

 

「他者を殺したことも無いような目をして、何が殺し屋だ」

 

 放たれる蛸足を切り刻み、迫る壁は幾つもの髪の拳で殴りつけ、破壊する。

 肉薄しようとするも、孔朱の蛸足は再生を繰り返し、本体へ迫ると城の壁へと埋まり、別の場所から現れる。

 時間だけが、無駄に過ぎていく中で、ミカンは焦っていた。

 

「くくくっ。焦っているのか?大方、時間制限でもあるのかな?さぁ、貴様も私の城へ取り込んでくれよう」

 

 腐っても幹部。

 持久戦に持ち込まれたらどうしようもない。

 私の【円】の範囲は狭すぎて探知もできない……

 このままではと、奥歯を噛み締めたところで、声がした。

 

「美柑ッ!!!」

 

 来て、くれたんだ、リト……

 

「あれ?ヤミ?え?なんで大きく!?」

 

 バカ兄貴……結局私を見分けられていないではないか。

 

「私だよ!兄なら見分けられるんじゃ…」

 

──しまった!!

 

 後悔しても遅い。

 リトへと気を取られた瞬間、触手のような足に絡みつかれてしまう。

 身動きも取れないし、これ、なんだか、力が、抜ける……?

 

「クソ!!これでもくらえ!!」

 

 リトは持っている銃を連射するも、自由自在に動く城の壁に阻まれて当たりもしない。

 リトとの間には壁がどんどんと集まっていき、分厚い壁となってリトとの間に立ちはだかる。

 あれじゃあ、リトのパワーでは突破は難しい。

 でも、私ならできる。

 それでオーラを使い果たしちゃうと思うけど……

 

 でも、なんとかしてくれる、よね?

 あとは任せるよ。お兄ちゃん。

 

 金色の髪で特大の拳を作り出し、ありったけのオーラを込める。

 まるで鉄球のついたクレーン車のように、その大きな金色の拳を壁へと叩きつけた。

 壁には一気にヒビが走り、そのまま粉々に砕け散った。

 

「な!?あれを砕くとは!?」

 

 驚く孔朱だが、既に能力は解除されて、元のミカンの姿に戻っている事に一瞬気を取られた。

 

 壁が崩れる前から、リトは高まるミカンのオーラを感じ取っていた。

 妹は、何かする気だと。

 

 守ると言った。本人にも、もう一人の兄にも。

 

 ここでやらなきゃ、兄でも男でもない。

 リトは足へとオーラを集中して地を蹴り、壁へと飛んだ。

 

 そして、壁は崩れて孔朱が見えた。

 

「貴様…!?」

 

 瓦礫の中から飛び出したリトは、既に孔朱のそばに迫っている。

 リトもオーラを高め、あの日以来、溜め続けていた自分の災難を、全て孔朱へと解き放った。

 

「あぁぁぁぁぁ!!!」

 

──【災難汚染(カラミティ・ブレイク)】Lv80 解放

 

 リトの放つ光に包まれた孔朱はあまりの眩さに目を閉じた。

 

 そして、目を開くと、さっきとなんら変わりない光景。

 不発か?と思うほど、何も変化がない。

 

 攻撃をした人間の子供は捕らえた方の娘の側へと向かっている。

 

「驚かせおって…貴様らは、二人まとめてこの城に取り込んでくれ……」

 

──ビシィ!!

 

 その瞬間に、天井が丸ごと落ちてきた。

 その隙間からは黄金色の眩い光が漏れている。

 ミカンとリトは他の瓦礫によりその光を目にすることは無かったが、孔朱は直視はしてないと言うのに、その光が視界に入っただけでその瞳は焼かれて蒸発した。

 

「ぐぅぅぁぁ!!目が、目がぁ!!…いったい何が!?」

 

 目玉を焼かれ、視力を失った孔朱は違和感に気づく。自分の腕が半分、千切れていることに。

 目の見えない孔朱も、城の管理者であるために、城内の事であれば把握できる。

 その力によって、ようやく状況を理解した。

 落ちてきた鋭利な瓦礫は、ミカンを拘束していた四本の腕に落ち、切断していたのだ。

 しかも、それはそのまま孔朱の方に倒れてきている。

 

「くっ!!」

 

 慌てて距離をとり、城の修復へと力を使おうとするが、パシャっという水音がした。

 それと同時に、身体中に電気が走る。

 

「ぐあぁぁぁっ!!?」

 

 ミカンが最後に破壊した巨大な拳はこの城の水場を破壊しており、それはなぜか強力な電気を帯びていた。

 孔朱は黒コゲになりながらも残る足を使い、更に上へと登る。

 

「はぁ、はぁ…生き埋めにしてやる…この美しい城の礎となれるんだ…光栄だろう…」

 

 リトはこれでも倒れない孔朱に奥歯を噛みしめ、ミカンを胸に抱く。

 

「リト、逃げなきゃ…」

 

 不安そうなミカンの顔。

 

「大丈夫だ!俺がついてる!!」

 

 ミカンはそんなリトの顔を見て、どうしようも無い状況のなか、不思議と安心していた。

 だが無情にも、瓦礫がどんどんと押し寄せてきており、二人を覆い尽くす直前。

 

──ヒュン

 

 という軽い音が、した。

 何かが、高速で二人の横を掠めていったのだ。

 何事かと、視線を上へと向けると。

 

「なにが、なんだと言うのだ……」

 

 孔朱は、横に真っ二つに裂けた。

 下半身を失い既に足も1本を残すのみとなり、力尽き、地面へと倒れると、切り落とされた瓦礫の山へと埋もれていった。

 

「た、倒した……?」

 

「いや、わかんねーけど…ひとまず今のうちに逃げるぞ美柑!!」

 

 二人は孔朱をそのままに、その場から逃げ出した。

 

 

──ガラッ……

 

 微かに瓦礫が動いた。

 

「………姫……まだ私は…」

 

 なんとか瓦礫から這いずり出て、なおも二人を追おうとする気迫は、城の管理者を任された使命感と、姫への忠義だった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「あなたが、藍碑?」

 

 デビルークの、プリンセス……

 碧暗のやつはいなくなったが、どうするべきか。

 早く、コレを移し、研究の記録をまとめなければ……時間もないと言うのに…

 

「こんな事、もうやめて。地球を壊さないなら、私も戦う理由はないから」

 

「……そうか。なら、出て行ってくれ。私は私でやる事がある」

 

 なんだ、キョロキョロと。

 戦う気が無いのなら、関わらなければいいだろう。

 どう運ぶか、使い魔を呼び出すかと悩んでいると、メディカルマシーンに顔を近づけている。

 

「…それに、触るな」

 

「ねぇ…その人の事、好きなの?」

 

 コイツは、いったい何を言っている?

 

「違う」

「好きな人が目の前にいるのに、動かないんだよね……私も、手伝うよ。えっと、このコールドスリープから目覚めさせるには…」

 

 話を聞いていないのか?

 好きではないと言ってるだろう。

 この男は、私の戒めで残しているだけだ。

 死した肉体に別の意識を宿せるのか?

 もしくは、ホムンクルスのように作り出した肉体に魂を移す事はできるのか。

 私はそれが、知りたいだけだ。

 

「無駄だ。この男は既に死んでいる。私はその状態の人間でも回復する事ができるのか、生命力の研究をしているだけだ」

 

「うそっ!!」

 

 真っ直ぐな眼で、私を見るな…

 人とは、なぜこうも簡単に他人と繋がれるのだ…

 

「好きな人の事で、嘘はついちゃダメだよ。好きな人を助けるための研究なら、私も手伝う。それに…

──自分に嘘をついてまでする恋は、悲しいだけだよ?」

 

「……好きと言うものは、私にはわからないし、私に恋愛感情などない」

 

 そう。私はただ、あの続きが、見たいだけだ。

 この男と、生活をしていた時の…人間とともに生きたあの時の続きを。

 

「もしかして、藍碑ちゃんはこの人と同じ、地球人になりたいの?大丈夫だよ!私も、生まれた星は違ってもリトとラブラブだもんっ!」

 

 あ、藍碑、ちゃん?

 私が何百年生きていると思っているのだ、この小娘は。

 それに、キョロキョロしていると思ったが、資料を見ただけで、地球人の肉体に関しての研究であると、身体を入れ替える、作り替える研究だと言うことが分かったのか?

 デビルークのプリンセス、噂通りの天才か…

 

「いったいなんの話をしているんだお前は……ん?──ゔっ!…グゥァァゥ…!!」

 

「ど、どうしたの!?大丈夫!?」

 

 あ、頭が…割れる…コレは…

 白の蟲……私用の、特別性……

 

「早くここから離れろ…私が私じゃああ…ァァアアァァアアアア!!」

 

 

ーーー

 

 

「藍碑ちゃん!?藍碑ちゃん、どうしたの!?」

 

 藍碑ちゃんはいい子だ。

 ミカンに見せてもらった、昔のお兄ちゃんとどこか似てる気がする。

 きっと、自分がわからなくて、どうしたらいいかわからないだけ。

 それさえわかれば、戦う必要なんて、きっとない。

 でも、

 

「モモがいたら、よかったなぁ……」

 

 藍碑ちゃん、とんでもない宇宙人だったんだ…

 目の前にいるのは、大きな大きなお花の植物型宇宙人。

 どこか、昔のセリーヌに似てる気がする。

 

「うわわっ!!」

 

 いくつもの植物の蔓が襲いかかり、花弁から放たれる種子の弾丸をなんとか躱す。

 攻撃は、したくないけど…

 躱した種子からは芽が生えて蔓の数をどんどんと増やしていく。

 このままだと、いずれ捕まる。

 

「ちょっと、大人しくしててね」

 

 ララはデダイヤルからいくつもの発明品を取り出した。

 

【ごーごーバキュームくん】で種子を吸い込み、

【ピタピタくっつくん】で蔓同士をくっつけ、

【つるつるスリップくん】で地面を凍らせ、これ以上の蔓の増殖を防ぎ、同時に藍碑の動きを鈍くする。

 

 ララの発明品はまだまだあり、自我の無い藍碑の相手であれば、ハッキリ言って無双していた。

 

「まだまだいくよーっ!!」

 

 

ーーー

 

 

「クッソぉ…」

 

 キメラ一体でさえ厄介だったのに、それが今は4体。

 ドラ助、ライゾー、ジローネはまだ元気だが、このまま戦うとなると厳しい。

 『私はもう行きますよ。死にたく無ければ、今度こそ王女様は自分の惑星へ帰るといい』

 そう言い残し消えていった碧暗への怒りが湧き、今すぐにでも追いかけたいが、このキメラたちを放っておけば他の戦場がどうなるかはわからない。

 呼び出すことは無いと思っていた、一匹を呼び出すことに決めた。

 

月之承(つきのじょう)!!」

 

 月之承と呼ばれたのは大きな白いグリフォンのような見た目をしている。だが、赤黒い複眼のような大きな目をしており、尻尾の先は、三日月状の鋭利な刃のようだった。

 そして、幻獣と呼ばれるグリフォンのイメージとは全く異なり、禍々しい雰囲気を醸し出していた。

 

「……私は待機との事でしたが、もしや分が悪いので?」

 

 月之承もマジローと同じく絶滅種の最後の個体。

 と言うのも、彼の種族は知能が非常に高く、性格は残忍で狡猾。さらには人間を捕食していたために、人の手によって絶滅まで追い込まれた。

 だが、幼少期の頃から共に育ったナナにだけは懐いており、本来は人間を食べずとも、別のもので生きていけたので友達としてサファリパークに暮らしている。だが、気性の荒さと内に秘めた狂気から、ナナが現実世界に呼び出すことは今まで一度も無かった。

 今回も、折角穏やかに過ごせているのに、これをキッカケに、種の本能に目覚めて欲しくないという思いがあったから。

 

「あぁ。コイツらも、可哀想なんだ……今回だけは、思いっきりやってくれ」

 

「おぉ!それは、制限ナシということですかな?」

 

 口調は丁寧だが、嬉々としている月之承。

 そんな彼に、少し悲しげだが、怒りを堪えきれない、震える声でナナは答えた。

 

「そうだ…ここはみんなに任せる。アイツだけは、絶対に許さない…!!」

 

 キメラにされた動物は泣いている。

 悲しいという感情だけがナナへと流れ込んでくる。

 それが、5体も……最後まで、ふざけやがって。 

 

「ならば…ナナの道は私が切り開きましょう!」

 

 ナナに迫ってきていたキメラの一体に、月之承の尻尾の三日月が振るわれ、その胴体を容易く分断した。

 目を伏せるナナに、マジローが声をかける。

 

「ナナ。仕方ないんだ。せめて殺してくれと、こいつらは泣いてる…」

 

「もう不意打ちは効きそうにないか。この場は、我らに任せるのでしょう?速く行くといいですぞ」

 

 月乃承を中心に、ドラ助、ライゾー、ジローネも加わり4対3と、数では形勢逆転だが、油断はできない。

 

「……頼むぞ、みんな」

 

 ナナはこの場をみんなに任せ、マジローと共に藍碑の研究室へと向かった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「な、一体…何が…?」

 

『黙れ。 もう喋るな』

 

 今、目の前にいるものは、なんだ?

 先程までの自分の知っている女の姿とは違う。

 豹変し、明らかなこの世の異物となった自分の元妻に驚愕を隠せない。

 黙れと言う言葉に従うつもりなどなかったが、その眼に見られているだけで、言葉を発する事ができずにいる。

 

 虹色に煌く瞳。

 人ではあり得ないほどに白い肌。

 長く伸びた、黄金色に、燃えるように輝き揺らめく髪。

 これは、別格の存在だと。

 

『我が名はヘスティア。 貴様の矮小な魂は腹に入れることすらも値しない』

 

 現世に降臨した真の神。

 動くことはできない炉の神である彼女がなぜ現世に顕現する事ができたかと言うと、松戸の能力が関係する。

 

 松戸の念能力は、

 

善悪の解離(ジキルとハイド)

 悪魔のシルエットをしたアンテナを刺して対象を操作する単純な操作系能力。

 操作の際は自己を残しており、主に尋問等に使用していた。

 そして、アンテナは能力名の通り二本あり、ハイドが操作用であり、ジキルは操作対象用。

 ジキルを刺した対象をハイドを刺したものが操作することも可能。その場合はアンテナに込めた松戸のオーラが途切れるまでの間が操作時間となる。

 松戸が操作する場合はハイドのみを使用で操作可能。

 

 この松戸の能力を利用し、ユウリはミカンを鍛えており、お互いに自我があることも修行にはかなりのプラス要素となった。

 そして今、ジキルは松戸に、ハイドは加賀見に刺さっている。

 

 それだけではただ加賀見が松戸を操作するだけだが、ここに加賀見の能力が合わさると、今の現象が起きる。

 オーラが少なく、【念】と相性の悪い加賀見の生み出した能力はたった一つ。

 

十一分の一人羽織(じゅうにひとえ)

 ヘスティアを現世へと降臨させる能力。

 制約:自身を除く10人の意識を奪う事が条件。意識を奪われる者の精神的同意が必要。

 この場合の【人】は意識の数によるため、自身の中にある人格の意識を使用している。

 

 誓約: 発動中、オーラと失った意識の内、いずれかの魂を消費する。

 

 だが、一度目の発動時に魂の一つであったモモゼは既に消滅していた。

 『善悪の解離(ジキルとハイド)』では自我を保ったままなので、足りない人格を補うために、松戸はもう一つ能力を作った。

 

操られ人形(オートマータ)

 対象を自身へと乗り移らせる能力。

 その際の能力等全ては対象に推移する。

 操作される時も自身のオーラを消費する。

 

 制約:対象は自身に乗り移る事に精神的に同意している事が条件。意識も全て憑依者のものとなるため、能力の解除は自身ではできない。

 

 誓約:対象と自身の力の差が激しい場合、憑依時間につき寿命が減る。減る寿命は対象との差による。差が無ければ寿命は減らない。

 ヘスティアの場合は1秒で1年間の寿命を消費する。

 なお、寿命が尽きた場合のみ自動的に能力は解除される。

 

 この三つの能力を同時に使用することにより、ようやくヘスティアを顕現させる事ができたのだ。

 

 

 

 ゆっくりと、神々しくヘスティアは動く。

 まるでそこに重力などないかのように。

 

『生まれを憎み、育ちを憎むか。与えられたものに不満をぶつけるだけの、ただの子供(ガキ)めが』

 

「俺は…」

 

『喋るなと、言ったはずだ。理由などいらん。この私の愛した器を壊した事、万死に値する。

 ──【命の融解(メルトダウン)】──

 神界一美しい炎を、最後にその目に焼き付けると良い……』

 

 ヘスティアが手をかざすと、黄金色の光に覆われ、広間ごと、全てが塵も残さず消し飛んだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「んだよ?こんな辺鄙な場所まで連れてきちゃって」

 

「周りを気にしてちゃ、お前とはやってられないからな」

 

「見たとこ、こないだと対して変わってなさそうだけど、そんなんで俺に勝てんの?つまんなかったらすぐに終わらすぞ?」

 

 岩山だらけの、岩石地帯。

 ララに作ってもらった簡易ワープ装置を使い移動したそこは、城からはかなり遠くの場所だった。

 

 お互いに、尖った岩の上に立ち会話をしていた。

 

「でも、ギャラリーもいないようなとこに場所変えるなんてさ、やっぱ自分以外はいらないんだってこと、わかった?」

 

「随分と、お喋りだな」

 

 ヘラヘラしやがって。

 こちとらハラワタ煮え繰り返ってんだよ。

 もう少し、様子見されると思っていた。

 予定では我銀を潰し、孔朱も消しておくつもりだったのだが、完全に狂った。

 他のみんなが心配だが、神黒とエンカウントするよりは百倍マシだろうと、みんなを信じて気持ちを切り替える。

 

「まーなー。三回も俺に挑むやつなんて初めてだからな」

 

「三度目の正直って、知ってるか?」

 

「二度あることは、ってのなら知ってるよ」

 

 いちいちイラつくなぁ。

 小さい頃を思い出す。やられた事は、やり返す。

 もう二度もやられた。そしてまだ、やり返せてない。

 オーラを練り上げ、研ぎ澄ます。

 

「もう、言葉も、理由もいらない。お前は殺すぞ」

 

「ふーん…なら、自分でハードルあげた、次のお前を見せてみろよ」

 

 俺のオーラに呼応して、神黒のオーラも増大した。

 剥き出しの日本刀のような、触れれば切れてしまいそうな程に鋭いオーラ。

 肌がチリチリする。

 

 お互いまだ構えすら取っていないが、常人ならば、このオーラだけで逃げ出すか、自死を選ぶだろうな。

 

「まっ、バージョン2ってところかな」

 

 俺はデダイヤルから呼び出した、アイテムを手に取った。

 

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