Troubる   作:eeeeeeeei

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六話 日常×非日常

ーーーーーー

 

「あ!いたいた!!」

 

 それはララが校長から一発OKをもらってこの彩南高校に通うようになってから何日かした日の昼休み。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん!!」

 

 ざわざわざわーーー

 騒ぎ立つ教室。

 

 なんだあの美少女!

 髪色ピンクだ!!

 めっちゃかわいい!!

 あっ後ろの子も可愛いじゃん。

 え、?七瀬くんって彼女いたのぉ……

 いや、大丈夫よ!お兄ちゃんって呼んでるわ!!

 オイコラァァ!!なんだお前変な頭のくせに!!

 ナナセァァァ……

 ララた〜〜んはぁはぁ。

 

 男子も女子もちらちらと、こちらも見ながら好き勝手言ってくる。最後の方、誰だおい!!

 

「リトがお弁当一緒に食べないって言うの!お兄ちゃん一緒に食べよ!!ハルナも、ね!」

 

「ちょっと、ララさんっ」

 

 ハルナと呼ばれたララに手を引かれた子が困った顔をしている。

 黒髪のショートカット。前髪をピンで止めた可愛らしい子。あれ、この子って確かリトの……

 

「……あー、とりあえず、屋上で食べよう」

 

 俺はララの手を引き教室を飛び出して屋上へ向かった。

 この時のクラスの男子全員と数人の女子の光のない目と色々と聞こえる誹謗中傷悪口呪いに耐えられなかったのだ……

 

「はじめまして。えーっとーー」

 

「あ、西蓮寺 春菜です。七瀬先輩」

 

「あ、宜しくね。西蓮寺。なんで俺のこと知ってるの?」

 

「あ、いや、先輩は、ちょっと有名なので……」

 

「とにかく聞いてよお兄ちゃん!」

 

「あーわかったから。とりあえず飯食うんだろ?」

 

 西蓮寺の言う有名ってのがひっかかるが、弁当を食べる時間もなくなりそうなので一旦話を切り、食事を開始する。

 最近は俺が家の事を手伝えていないので完全に料理担当となったミカンの作った弁当を食べながら話しを聞くと、ララがリトのためを思って発明品を使っているのに、リトは怒って怒鳴ったりすると。

 

「全部リトのためを思ってやってることなのに、全然楽しんでくれないの!!お兄ちゃんはどう思う?」

 

「……西蓮寺は、どう思う?」

 

「ーーーえっ!私、ですか……?」

 

 先輩の風上にも置けない完全な投げつけに困惑する美少女。ごめん、ちょっと頼む。俺は教室に戻った後の空気に耐えられるか、どう対応するかを今考えているんだ……!

 

「え、えっと、結城くんに、素直に聞いてみたらいいんじゃないかな?」

 

「なにおー?」

 

「その、何が嫌なのかって」

 

「あーそーしよう!お兄ちゃんもそう思う?」

 

「ーーん、それがいいんじゃないか?ララにとっていいことが、リトとにとっていいことかわかんないからな」

 

 再度俺に振ってくるララ。出会った日からなぜかお兄ちゃんと呼ばれる。厳密には出会ってるのは転生初日なのだが。

 

 そう、俺は思い出していた。転生初日に獣人たちに誘拐されてた子だ。ララはまったく覚えていないようなので俺から特に何も言う気はないが、元気に笑ってはしゃぐララを見てるとなんだか気分は良かった。もしかしたら、見られなかった光景だからな。

 そういえば、もう一人いた子はどうなったんだろう?双子の妹がいるって言ってたから、妹のどっちかだったのかな。

 

 昼休みももう終わるので、ララと西蓮寺は自分たちの教室へと帰って行き、

 

 俺は意を決して、そのまま屋上で寝ることにした。

 

ーーーーーー

 

 「ーーーーーさい。起きーーーーー。七瀬さん、起きてください」

 

 誰かに声をかけられている。俺はぼんやりと目を開けると、目の前に加賀見さんが立っていた。

 

「おはようございます。七瀬さん」

 

「……おはようございます。ーー学校に来るなんて、なんかあったんですか?」

 

「先生からですが、この付近に宇宙船の反応がありました。おそらく校内にいると思われるのですが、心当たりはありませんか?」

 

「松戸さんの探知機でもわかんないんですか?」

 

「はい。ですので宇宙船の確認はできましたが、肝心のターゲットは私の"目"でも特には確認できませんので」

 

 松戸さんの作った探知機というのがあり、地球に存在しないエネルギー源を探知できる機械があるのだが、他の惑星の『生物』はこれに当てはまらないことが多く、宇宙人自体の探知は難しいのだそうだ。

 そこで普段の仕事時は探知機を使って宇宙船を確認したあたりを、加賀見さんの"目"で見て、転送してもらっている。

 加賀見さんのいう"目"というのは、実は核となる人格である加賀見さんとは別に、部位ごとに異なる人格が10人いるらしく、そのうちの一人、左眼の人格は『ベス』というらしいのだが、その能力はいわゆる千里眼のようなものらしくかなりの広範囲を透視付きで見る事ができるのだが、その"目"を持ってしても今の校内には地球人以外は発見できないようだ。

 なるほど。と言うことは見た目じゃわかんないってことか。

 

「ーー残念ながら心当たりは無いんで、ボロを出すまでは待ちですかね」

 

 ーーー!!

 

 加賀見さんの顔が真横に向いた。

 

「……いえ、ちょうど見つけました。体育倉庫、でしょうか?他にも人がいますね。ーーあと、七瀬さんの義理の弟さんも向かわれているようですよ」

 

「ゲッ、リトが?……じゃあ、ちょっと急いで行ってきます」

 

 俺はポケットに入れている黒い筒を取り出し、ボタンを押した。

 サイズ的にはうまい棒くらいのスティックなのだが、それが瞬時に広がり俺の服装が仕事着に変わる。松戸さんの作ってくれたアイテムなのだが、どこぞのヒーローの変身シーンみたいで気に入っている。変身後の見た目は悪役なのだが。

 リトも向かってるなら、さっさと片付けないとな。

 

 屋上から勢いよく飛び出し、空中で結界を蹴りさらに加速。すぐに体育倉庫に近づいたのでそのまま【円】を展開し倉庫内を確認する。

 人質の位置はーっと。お、いたいた。って、これは西蓮寺じゃないか!!

 速攻で人質である西蓮寺の横の壁を破壊し、倉庫内に侵入する。

 

「な、なんだお前は!?!?」

 

「ハンターだよ」

 

 佐清とかいったか?学校の教師に擬態してたのか。突然の侵入者である俺に驚いてわざわざ聞いてくる。あきらかに敵対者なのだから構えくらい取れば良いのに、隙だらけだ。俺は答えると同時にオーラを飛ばして牽制の攻撃を放っていたので聞こえてたかはわからないが。俺はオーラの着弾後の反撃に備えていたのだが、

 

「ギャァァーーー!!」

 

 なんの抵抗もなくそのまま反対側の壁にぶつかり気絶した。

 元々の姿なのか、紫色の小柄な宇宙人の姿となって気絶しているそいつを見下ろしながら思う。なんだこいつ……弱すぎだろ?普通に地球人でも勝てるんじゃないのか?

 まあ、リトが来てるなら、西蓮寺は任せていいだろう。

 西蓮寺を拘束しているロープのようなものを引きちぎり、宇宙人を掴んで俺は開けた穴から飛び出して屋上へと戻った。

 

「七瀬さん。お疲れ様でした」

 

「いや、全然弱かったんで特に何もしてないですよ?とりあえずこいつ、任せますね」

 

「ありがとうございます。では、私はこれで」

 

 加賀見さんはそういってエレガントにお辞儀をして去っていき、俺もそのまま家に帰ることにした。

 

ーーーーーー

 

「はぁぁぁぁ」

 

「おいおい、ため息なんかつくなよ!俺たちを呪い殺す気か!?」

 

 彩南高校三年B組の教室でもう何度目かのため息をつく。

 やかましいクラスメイトに腹が立つがそれ以上に、俺はこの状況に疲れてるんだ。

 

「うるさいよ。魔術は使えないって言ってんだろ」

 

「いやいや、お前が黒魔術で美少女の召喚に成功したのはみんな知ってるんだぞ!!」

 

 何回目だ。ララがこのクラスに来た日から俺は黒魔術で美少女を生み出した者となった。

 先日も、たまにリトといるのを見た事がある猿山という一年の男子生徒からも、

 

「俺にも美少女の召喚魔法を教えてください!!!お願いしますお兄さん!!!」

 

 と急に土下座された時は思わず頭を踏みつけてしまいそうになった。俺は耳元で殺すぞと念を込めてまで脅したが、彼はそのまま白目を向いて泡を吐き気絶した。その後、俺の前には現れなくなったが代わりに魔術で人を呪うこともできるという噂も広まった。あのガキャア…!!

 リトも…… 友達は、選べよ……

 

「もーほっとけよ俺は眠いんだ。MP切れなんだよ」

 

 俺はそもそも友達がいない。この髪色のせいもあるが、良く話すくらいの奴は何人かいるが、全て学校内だけの話で俺は家のこともあるしそれに加え三年になってから就職先にも行っているのでリトやミカン以外と外に出る事もない。

 

「認めてんじゃん!回復したら俺んちにも召喚しといてくれよ?」

 

「はいはい」

 

 適当に返事をして俺は眠りにつく。俺の学校生活は孤独ではあったが別に苦じゃなく、それなりに普通だったはずなのに……

 最後の最後でなんでこんなことに……

 

 俺の平和な学校生活はあと一年を切った今、完全に崩壊した。

 

ーーーーーー

 

 憂鬱な学校が終わって、松戸さんから話したい事があると連絡をもらったので、俺は事務所を訪れていた。

 

「七瀬くん。どうやら地球は少し厄介な事に巻き込まれて来たようなんだ。今後は少し注意をした方が良いよ」

 

「厄介な事?」

 

「君と住んでいる、デビルーク星の第一王女である、ララ・サタリン・デビルークの婚約者候補達が地球に続々と向かって来ているそうなんだよ」

 

「えぇ。ーーーなんか家でそんな事を言ってたような気がするけど、実際に現れたことは無いって言ってたんですけどね」

 

「この間学校で捕らえてくれた彼に聞いたんだよ。それに、彼もその婚約者候補の一人のようだよ。ララ・サタリン・デビルークに辿り着く前に、君が排除しているからじゃないかな」

 

「あぁ、なるほど」

 

 そう言えば最近は何度か『仕事』があったな。

 

「と言うことだから、家の方を用心した方がいいかもね。狙いは君といるのだから」

 

 あのレベルのやつであれば正直何匹きても問題ないが、中には好戦的な宇宙人や、強力な力を持った宇宙人もいるとの事だ。

 今まではミカンへの言い訳にちょうどいいと、もっぱら仕事という名の修行だったのだが、最近は以前よりも『仕事』が増えている。念は戦闘によってこそ伸びる。精神力に大きく作用するので命のやり取りをするような場面でこそ開花するのだ。

 一回の実戦が百の修行に勝ることも多いのだが、今のところ苦戦するようなレベルの相手には出会えていないので大した成長はしていないのだが。

 そんな事を考えていると松戸さんが再度口を開いた。

 

「あと、話の続きだけど、仕事がある時はこちらから連絡をするよ。君は普段から彼女と行動を共にしていた方が効率が良いと思うからね」

 

「ーーーわかりました」

 

 俺はうなづいて事務所を後にした。

 

ーーーーーー

 

「なんか、こうしてみんなで出かけるの久しぶりだね」

 

 日曜日。

 今日はみんなで街に繰り出していた。

 

「そうだなー、ただーーー」

 

「その服はなんとかならんのか?」

 

 ララを見て俺は言う。

 ララはドレスフォームのため目立ってしょうがないのだ。

 もともとララの服はペケのため、何度かの失敗?を経てようやくまともな格好になった。

 それから色々と四人で回り、ララは終始驚いたり、笑ったり、目一杯楽しんでいて、今はゲーセンに来ていた。

 

「ララさん、嬉しそう」

 

「そうだな。ミカンにも取ってやろうか?」

 

「ん、私はいいですよ。今はあの二人見てるだけでお腹いっぱいです」

 

 ララはリトがゲーセンで取ってくれたぬいぐるみを抱きしめて嬉しそうに笑っていた。それからそろそろ水族館に向かい始めようと歩いていると、

 

「ラ、ララ!!??」

 

 リトがララの服が無くなって来ていることに気付いた。

 ペケの充電がなくなり、服を維持できなくなって来ているらしい。

 

 ーーパサーー

 

「……」

 

 ララのスカートの下から穴だらけのパンツが落ちて来た。

 リトとミカンはパニックになっており、ララが一番落ち着いているが、このままでは全裸のララが誕生してしまう!!

 

「ひとまず、これでも着とけ!!」

 

 俺は来ていたTシャツを脱いで無理やりララに着せる。そのせいで、上裸の俺が誕生したがララがなるよりまだマシだろう。

 

 俺のTシャツは身長差もあるのでララにとってはワンピースのようになっており、肌の過度な露出はない。妹のような存在の子のあられもない姿を他人に見せるのは勘弁だ。

 

「ちょ!ちょっとユウリさん!!??」

 

「ありがとうお兄ちゃん!ーーあれ?その傷、どこかで……」

 

 ミカンは顔を赤くして驚いており、ララが俺の肩の傷跡を見て一瞬呆けているが、

 

「リト。ミカンと急いでララの服を買いにいったほうがいい」

 

「わ、わかった!!けどユウ兄は!?」

 

「通報される前に帰るに決まってるだろ!俺の事は気にせず水族館は三人で楽しんで来なー」

 

 そう言って俺はダッシュでその場から去った。

 

 ーー白黒まじった特徴的な髪色の男性が街を上裸で走り回るという事件がおきました。ーー

 

 そんなニュースが出るのはきついので、ビルとビルの間の人目のつかない場所へ飛び込むと、結界を使って、一気に屋上へ飛び上がると黒コート姿へと変わった。

 

 はぁ。ーーとんでもない目にあった

 でも、これはこれで、ちょうどよかったのかな?

 

 そう思いながら俺は携帯を取り出して画面を見た。そこには松戸さんからのメールが届いていた。

 

『君のそばに、反応は小さいが地球のものではないものが近づいてるよ。』

 

ーーーーーー

 

「西蓮寺が増えてんのな」

 

 俺はその後リト達をストーキングしている。

 小さな反応との事なので、また弱いやつなのか、それとも擬態しているのかはわからないが、どちらにしろ用心するに越したことはない。

 その後俺に変わって増えた西蓮寺を含む四人は水族館の前へと来ていた。

 

「本当にいいのかな、?その、七瀬先輩に悪い気がして……」

 

「大丈夫だよ!お兄ちゃんなんでか帰っちゃったし!」

 

「なんでかじゃなくて、ララのせいだろララの!でも、ユウ兄は絶対何も言わないし、むしろ券も無駄にならないから。ーーさ、西蓮寺も一緒に入ろうよ?」

 

「う、うん。…ありがとう。結城くん」

 

 お!リトのやつ西蓮寺となんかいい雰囲気だな。

 俺は今、【円】を展開しながらリト達の尾行を続けている。黒コート姿は目立ちすぎるので、Tシャツとキャップを買って着ており、四人から俺の【円】の範囲ギリギリである20mほど離れた位置を歩いていた。

 

 水族館の中で、ララがはしゃいでどこかへ行き、ミカンが二人から離れてこちらへと向かって来た。

 

「ユウリさん、来てたんですね。ーーー話しかけないのは、リトのためですか?」

 

「……バレてた?それにやっぱりミカンも、気付いてる?」

 

「はい、バレバレです。ハルナさんもリトに気がある感じはするんですけど」

 

「うむうむ。俺と同じ見解。流石だなーミカンは」

 

「…ん、子ども扱い、しないでください」

 

 俺はミカンを褒めながら頭を撫でている。ミカンは口では嫌がっているが照れているようだ。

 まだまだ子どもだな。

 と思ったら目つきが強くなった。俺の考えてる事を見抜いたのか、本当に、勘が鋭いな……

 

「ひ、ひとまず俺はララがやらかさないか見にーーーって、手遅れだったみたいだな」

 

 俺がそう呟いた後、ペンギンの集団がいい雰囲気のリトと西蓮寺へと突撃していた。

 

「ララさん、なにやったんでしょうか、」

 

「ま、西蓮寺にも気を使わせたら悪いしミカンはみんなと先に帰っておいて。後は俺がなんとかするさ。リトが残って手伝おうとしたりしてたら邪魔だから、適当に言っといてフォローよろしく」

 

「わかりました。でも、たまには私のフォローもしてくださいよ?」

 

「ん、じゃあ次の休みにあそこのアイスケーキ食べ行こう」

 

「約束ですからね?」

 

「おう。約束な」

 

 俺は笑顔でミカンに答える。そのまま移動してさっきから【円】の範囲に入っている小さな浮遊物を捕まえた。ララの周りばかりを気にしていたが、どうやらこいつは婚約者候補筆頭のリトを狙っていたらしい。

 小さい反応というが、それはサイズそのもののことだったんだな。そいつを胸ポケットに押し込む。ハント終了。なんともあっけない。

 

 その後逃げたペンギンを全て捕まえて、めちゃくちゃ謝罪して、こいつを渡すべく俺は松戸探偵事務所へと向かった。

 

ーーーーーー

 

「うーん……」

 

 今日のお出かけは楽しかった。お兄ちゃんもいたらもっと楽しかったのになー。

 でも、あのお兄ちゃんの身体についていたいくつもの傷跡。あれを見たときに、罪悪感に襲われた。なんでだろう。なぜだかわからないけど謝らなきゃって思ったけど、お兄ちゃんはそのまま帰っちゃった。

 私たちが家に帰ったときには出かけているのかいなかったが、ミカンが用事ができたらしいから遅くなるんだってと言っていた。

 さっき帰って来たけど、疲れたって言ってすぐに寝ちゃった。

 

「私、なんであやまらなきゃなんて思ったんだろう?」

 

 お兄ちゃんは不思議な人だ。初めて会った時から、初めて会った気がしない。お兄ちゃんも言ってたし、お兄ちゃんの事も、もっと知りたいな。

 

 そんな事を考えながら、新しくできた宝物の、リトに取ってもらったぬいぐるみと、お兄ちゃんにもらったTシャツを抱きしめて眠った。

 

 




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