牙持つ兎の英雄譚   作:37級犬築士

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やっと見せ場です。どんどんライダー要素が増えていきます。


第十三話 離別

 

 

 

「おい、アーデ」

 

「!」

 

 後ろから話しかける声、獣人の男たちは尊大な態度でリリを見下している。

 

「……」

 

…誰だろう、でもこの人達

 

 装備の様子から見て同じ冒険者で、その充実さから自分よりも年季のある、きっとレベルも僕より上なのだろう。

 

……でも、なんだろう。この人達

 

 僕を置いてリリと話を続ける男は同じファミリアの団員らしく、少し話す用があると言ってのけリリを連れてそのまま別の所へと移動する。リリに待っていてと言われたけど、どうにも僕はこの一連の行動を見逃せなかった。

 

「……リリ」

 

 人込みに紛れていくリリ達を追いかけようと、僕は足を進めた。だけど

 

「……おい」

 

「!」

 

 後ろから急に腕を掴まれる。咄嗟のことで腕を払いのけ振り向きざまに構える。一瞬驚いた様子を見せるも、男はひょうひょうと僕に近づき、そして

 

 

「……なあ、てめえ。あいつがどういう奴か知ってるか?」

 

「……何の話だ。」

 

 曲刀を背負う釣り目の男は淡々と言葉を並べる。

 

 やれあいつは嘘つきだと、手癖が悪いのだと、けれど僕にはその言葉は聞き入れられなかった。

 

 

…こいつ、あの時の

 

 

 以前に、あの小人の子を助けた時に、僕はこの男の声を聴いている。

 

「……」

 

「……なあ、要はてめえは「お断りです」……なっ、まだ何も」

 

「……ッ」

 

「おい、てめえ……」

 

 腰に携えたナイフに手を置く。目の前の男が何を企んでいるかはわからない。だから、僕は何時でもこの刃をふるえるように構えを取る。

 

「…僕は、あなたの言うことなんか聞かない。リリのことは十分に知っている、でたらめを言うなら」

 

「……クソッ、後悔しても知らねえぞ」

 

 捨て台詞を吐き、男は去っていく。

 

「……はぁ」

 

…とりあえず、これでいいよね

 

 

 荒ぶる感情を抑える。らしくないとはわかっていたが、リリのことを追及されて僕は少し向きになってしまった。

 

「…でも、あんな風に言われたら」

 

「何を言われたんですか」

 

「!」

 

 気づけば、僕の後ろにはリリが戻っていた。頭までフードをかぶり、その顔色はよく覗けない。

 

「……えっと、さっきのは」

 

「……大丈夫です。どうせよくわからないチンピラでしょう。ベル様が追い払ったならもういいです。」

 

「……ねえ、リリ」

 

「なんです、別にさっきのは何もないです……ろくでもない団員から金を無心されただけですから」

 

「……無心?…それって、許されないよね、いくら同じ団員でも……冒険者なのに」

 

「…いえ、冒険者だからです。」

 

「!」

 

 

 

「冒険者だから………冒険者ですから、別に珍しくありません。」

 

 

 

「…でも、そんなのって「所詮、サポーターと冒険者の関係なんて言うのはそう言うものです。何も知らないのに、知った気にならないでください……!」

 

「……ッ!」

 

 

…どうして、そんな悲しいことを

 

 

 感情を吐露したリリは、今までに見てきたどのリリよりも悲しい顔をしていた。いったい何があれば、君はそんなに絶望に慣れてしまったような表情を浮かべるのか。

 

 

……リリ、君は

 

 

 ふと、先ほどの男の政府が脳内をよぎる。考えたくないのに、気味悪い文面がリリに張り付こうとして止まない。

 

 

「……リリは、それでいいの?」

 

「……いいもなにも、それが現実です」

 

「……リリは」

 

「……」

 

「リリは……冒険者が嫌いなんだね」

 

「……ええ、よくお判りで」

 

 すでに、リリの笑顔は消えている。どこか諦めきったようで、何者の意見も寄せ付けない、そんな風に重く彼女の隔たりを感じてしまう。

 

 

「……リリ」

 

「…しゃべりすぎましたね。でも、気にしないでください。リリはベル様を信用しています。嫌いにはなりませんよ。」

 

「………」

 

 いつものあどけない笑みで、リリはそう答える。その後も、僕はそれ以上リリについて言及する気になれず、ただいつも通りにダンジョンを突き進む。

 

 

 

 

 

 

 

 10階層、モノクロの世界に枯れた樹木が茂る物寂しい風景。

 

 ただよう霧が奥行きを隠し、進むことを躊躇させるような不穏さをただよわせる。

 

 

 

ガキンッ!

 

「くっ」

 

 ナイフを振るう。敵の大振りをいなし、すれ違いざまにその膨らんだ肉を切り裂く。血が噴き出し、モンスターはその醜悪な顔を怒気に染め上げ、その手に持つ無骨な棍棒を僕の頭上から振り下ろす。

 

 

「!」

 

 地面を砕く一撃、だがその痕跡に僕はいない。余波の勢いに任せ、踏み込みと同時に逆手に持ったナイフを敵の中央目がけて穿つ。厚い脂肪をかき分け、傷口から穿つそれはモンスターの命を屠る。

 

 

「――――ッ!!」

 

 声にならない断末魔を上げ、モンスターはその肉体を消滅させる。後に残るのは魔石のみ、これまでに戦った敵の中でこいつの魔石は一番大きい。10階層のモンスター、豚の頭を持つ大型二足、オークだ。

 

「……ベル様、前方に二体。備えてください」

 

「!」

 

 敵が迫る。ランドスケープで武装したオークが迫る。一体ならまだしも、複数を相手取るにはまだ避けたい相手だ。

 

「…ファイヤボルト!」

 

 雷の如く空を駆ける炎の速撃。僕が覚えた詠唱無しの魔法だ。

 

 続けざまに手の向きを変え魔法名を唱える。放った魔法は二発共に敵の顔面を焼き焦がす。

 

 頭部を吹き飛ばすほどに火力は至らないが、隙を作る手段としては十分だ。

 

「……はッ!!」

 

 逆手に持ったナイフを順手に構え、敵の喉元目がけてナイフを突き刺し、そして払った。隣に並ぶオークにも同様にに首を断ち切る

 

 

…敵は、まだ

 

 

 霧に囲まれた四方で、僕はさらなる敵の出現を警戒する。辺りに落ちる魔石やドロップに目もくべず、周囲の音を集中して探る。

 

「……」

 

…両横から二体、それに奥から近づいてくるのは3、いや5

 

「…リリ、一回下がろう。敵が迫っている」

 

 後方にいるはずのリリに報告する。けれど

 

「?……リリ」

 

 振り返るもそこには誰もいない。辺りに散らばる魔石もそのままに、リリの姿だけが忽然と消えている。

 

「……リリ、もしかして、はぐれて」

 

ドサッ

 

「!」

 

 足元に何かが転がる。そして、その正体はすぐに気づく。

 

……異臭、これは

 

 それはモンスターをおびき寄せるアイテムであり、その効果は一定時間モンスターのエンカウントを上げるだけでなく、見つけたモンスターの凶暴性も引き出す。

 

「!」

 

 咄嗟の事で動揺しながら、僕はまだここにいないリリの事に気が回っていた。だから、背後からくるそれに、僕は対応する事が出来なかった。

 

「……ッ!?」

 

 腰に衝撃が来た時には既に遅く、納刀したナイフがワイヤーに繋がり宙を飛び去ってゆく。目で追うそれが行き着く先は

 

 

「……そんな、なんで」

 

 目を疑った。連絡路のある崖の先から見下ろすのは、紛れもなくリリであった。

 

「……リリ、どうして」

 

「………」

 

「リリ、何か言ってよ!そんな、君は、僕を……!」

 

「………」

 

 何も答えず、リリは僕を一瞥しそのまま上へと進む。

 

「そんな、待って……待ってよ、リリ!!!」

 

 むなしく、僕の声だけがこだまする。喉がかれるまで叫び続けても何も帰っては来ない。

 

 

「ぐるぅううぅうぅう………!!」

 

「!」

 

…もう、こんなに

 

 辺りを囲むモンスター達オークに混ざりゴブリンやコウモリ型のモンスターなど、すでに周りは包囲されている。

 

「……くっ」

 

…追いかけないといけないのに、これじゃあ

 

 唯一残された武器は魔法のみ。頼みのバイクも先ほど奪われたポーチの中に収めたまま、これでは追いかけるなど到底出来ない。

 

「……リリ、どうして」

 

 迫ってくるモンスター達、じりじりと距離を詰める敵に僕は右手を構える。

 

……魔法で、どうにか突破口を

 

 マインドポーションもない。既に何度か行使した今、後どれだけ打てば自分は気を失うのか。次第に、思考の奥では一つの言葉が浮き上がる。

 

 

……死

 

 

「……ッ!!…ダメだ、こんなところで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、お前をここで死なすわけにはいかない」

 

『ウェイクアップ………ッ!』

 

「!?」

 

 一瞬だった。

 

 どこか無機質な音声が鳴るや、辺りのモンスター達は一瞬にして四散した。モンスター達の体に赤い線がいくつも走ったと思いきや、後に残るのは焼け焦げた地面と魔石のみ。

 

「…誰が、魔法?……いや、でもこれは」

 

「……おい」

 

「!」

 

 黒煙の中から声の主が現れる。

 

 僕は、その声の主を知っている。

 

「……お前は、あの時の」

 

 あの日、ホームに現れて情報を知らせたあの男が今また目の前にいる。

 

「…お前は、いや……あなたは」

 

 紅い刃を携え、その容貌は仮面に隠れて見えない。ローブの合間から見え隠れする鎧は、今まで見た事のないぐらい華美なものだった。

 

「……冒険者?……それに、敵を一瞬で、まさか助けて……って、あっ!」

 

 無造作に、男が何かを放り投げ、僕はそれを慌てて受け取る。

 

……これ、曲刀?……いや、ロングダガーかな……装飾凝ってるし、高そう

 

「……あの、これは」

 

「それを使って上に進め」

 

「……いや、でもこんな高そうなモノ「バシュッ!!」……ひぃっ!?」

 

 顔の横をすれすれで過ぎる紅い光線、要らぬ事を言えばそのまま顔を断つと言わんばかりに、無機質な複眼は僕を見据えて逃してはくれない。

 

「要らぬ事を喋るな。そのガルルセイバーは貴様のモノだ。」

 

「……ガルル、セイバー?…そんなの、でも」

 

「……用件はそれだけだ、それより、貴様には追わねばならない女がいるはずだ。」

 

「!?」

 

「奴は逃げるつもりだが、恐らくは無理だろう」

 

「それは、どういう……」

 

「行けば分かる、すぐに走れ、さもなくば……死ぬぞ」

 

「!!……リリ」

 

 その言葉を聞くや、僕の体は動き出していた。あの仮面の男にもらった武器を、ガルルセイバーの布を解く。

 

 

 

「……リリ、どうか無事で…!!」

 

 男の言葉を僕は信じていた。以前にも、アイツの言った通り僕は神様の窮地を救えた。もし、今起きている事があの時と同じなら

 

 

……早く行かないと、リリが

 

 

 段とばしに階段を駆け抜け、現れるモンスターにも目もくべず僕は足を速める。無我夢中で駆け抜ける度に、次第に頬の上にはうっすらと文様が走る。身体は軽く、踏みしめる大地はガラスのように砕けて爆ぜる。

 

 

「……リリ」

 

 

 

 

 

 

「……行ったか」

 

 男の役目は終わる。全てを知り、その上で企みを看過した黒幕達は、事の終局をただ見届けるのみ。

 

「……だが、仕事が増えてしまったな」

 

「!!」

 

 

 一閃、振り払った紅い剣は鞭のようにしなり遙か後方の霧を文字通り一文字に切り裂く。

 

 

「……っ!!」

 

「剣姫か、よくぞ躱したな。」

 

「……貴方は、誰」

 

 間一髪、男の一撃を躱したアイズはレイピアを抜き構えをとっている。その顔に余裕はなく、道の強敵を前に全力で警戒し続けている。

 

「……名乗る名はない。だが、ここまで影に潜むのはつまらん。呼び名ぐらいはくれてやる」

 

「……」

 

 男が構える。紅い刃をぎらつかせ、青白い眼光がアイズを捉える。

 

「…行かしては、くれないんだね」

 

「……アイツの邪魔はさせん。事が終わるまで、貴様はここで封じる」

 

「……ッ!!」

 

「命までは奪わん。貴様に死なれては困るからな、だから……なるべく死んでくれるな」

 

「…舐めないで。あなたを斬って、あの子を助ける!」

 

「それが、要らぬ世話だと言っている……!!」

 

 両者同時に踏み込む。切り放つ刃は火花を散らし、交わす斬撃は円舞のように両者の戦いは過激になる。

 

 

 

「……知るがいい、剣姫よ。全ての頂点に至る戦士、遥か過去に名を轟かす真の英雄を……仮面ライダーの名を!!!!!」

 

 

 

 

次回に続く

 




今回はここまで。

先に出したのはサガです。ベルの活躍は次回に
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