STAR LIGHT デビューってなんだっけ編 作:aiyamamiyu
スターライトではローマ字表記の名前で活動することが慣例であるため、怜は十五歳から"Rei"として活動することになった。
芸名があると、プライベートと仕事の気持ちの切り替えがしやすい気がするし、ローマ字だと名前の漢字や読み方を説明しなくていいので、怜はこの制度を気に入っていた。
事務所に入ってからは主に、事務所のカラーに合ったダンスのレッスンや、それまでは特に意識していなかった歌を強化するためのレッスンを受けていた。
動きながら歌うことはなかなか難しく最初は苦労した。
同じ曲を何度も練習して歌詞と動きをしっかり覚えるようにしたり、体幹トレーニングを行って腹筋を鍛えたりすることで少しずつレベルアップしていった。
研修生の主な仕事は、先輩のライブでのバックダンサーであった。
色々なグループのライブに出ることで、ライブの流れや客の盛り上げ方を学んだり、自分の表情の作り方やダンスの魅せ方を検討したりできる。
研修生の中で目立つようになると、事務所の雑誌に載ったり、春休みと夏休みに行われる研修生ライブに出演するようになっていく。
Reiとして活動を始めて一年目は、時々バックダンサーの仕事があるのみであった。
二年目からは雑誌に載るようになり、研修生ライブに出演することもあった。
スターライトに入ったら忙しくなるだろうということで、高校は週に一度通学すればいい通信科にしていた。
しかし、平日のレッスンは普通科に通っている研修生に合わせて夕方からなので、昼間は学校の課題をしたりレッスンで習ったダンスの復習をしたりと、割とのんびり過ごしていた。
怜としては、夕方のレッスンは部活のような感覚だったので、芸能人として活動しているという実感はあまりなかった。
ある時から怜は、Towaこと笹原永遠と一緒に活動することが増えた。
永遠は、いつもニコニコしている、かわいらしい顔と明るい性格が人気の研修生だった。
事務所の雑誌に毎月載っており、研修生ライブではいつも最前列にいたので、デビューが最も近い研修生のひとりだと言われていた。
怜が永遠と初めて話したのは、バックダンサーとして出演するライブの日だった。
リハーサルが終わり、お昼休憩に入った。
怜は、人であふれている控え室を出て外の空気を吸った後、控え室に戻ろうとした。
しかし、初めて来た会場だったため研修生の控え室の場所が分からなくなってしまった。
関係者通路をしばらくウロウロしていると時々スタッフが走って通り過ぎていくが、忙しそうなので話しかけづらい。
困っていると、誰かから声をかけられた。
「どうしたの?
迷った?」
振り向くと永遠がいた。
ふんわりした茶髪、ゆったりとした白いティーシャツ、黒いジャージーパンツという格好をしている。
それまでふたりは違う先輩のライブに出ることが多く、レッスンで時々見かけるくらいの関係だったので話したことはなかった。
怜にとって永遠は、事務所の雑誌によく出ていて研修生なのに知名度がある人だったので、いきなり話しかけられて少し動揺した。
「あー、はい。
控え室の場所が分からなくなっちゃって。」
「 じゃあ連れていくよ。」
「あ、ありがとうございます。」
永遠が控え室に連れて行ってくれることになった。
「怜くんだっけ?
この会場は初めて?」
「はい。
あの、名前覚えてくれてるんですね。」
レッスンの時に振付師に呼ばれているのを聞いて名前を知ったと思われるが、何度か同じレッスンに出ただけなのに顔と名前を覚えられていることが怜には意外だった。
「うん。
ダンスうまい子が入ってきたって話題になってたよ。
今回のダンスはどう?」
「半分以上が踊ったことない曲だったので覚えるのがちょっと大変でした。
でも一応覚えられたと思います。」
「そうなんだ。
頑張ったね。
じゃあ今日は楽しめそう?」
「はい。
楽しめるよう頑張ります。」
「珍しい表現だね。」
なぜか微笑まれたが、実際、怜はライブを楽しむということがよく分からなかった。
ダンススクールの発表会とは比べ物にならないほど多くの客が目の前にいるということに緊張するし、振りや移動のタイミングを間違えないかということも心配だ。
踊り慣れた好きな曲の場合はステージ上でもステージ上でなくても楽しいが、覚えたばかりの曲は楽しさよりも緊張が大きい。
そのうち控え室の前に着き、「じゃあ頑張ってねー。」と言って永遠は笑顔で去っていった。
無愛想な後輩にも優しく声をかけられるところも、研修生のトップと言われる所以なのかなと思った。
その日のライブは大きなミスなく終えることができた。
後日、永遠はスターライトの社長と話していた。
「そういえば、社長がこの前言ってた怜くんって子と話しましたよ。
爽やかでかっこいいのに、目立ちたがりじゃなくて自信無さげなところがいいですね。」
「そうね。
ああいう性格だと調子に乗って失敗するってことがなさそうだから良いわね。
ただ、あまりにも自信とかこだわりが無いと、いきなりふわっとした理由で辞めるってことも考えられるんだよね。」
社長は前社長の娘で、十年程前に会社を継いだ。
子供の時から、数多くのタレントの様々な事例を見てきたため、こんな性格の子はこんな行動をするだろうということが予想できるようになってきた。
「 あー、言われてみればそうですね。」
「うん。
あんなに踊れる子は手放すにはもったいないよ。
まあ、真面目な子は次の仕事が決まってたら基本辞めないと思うけどね。
永遠と怜で組むとしたら、ありがちだけど、太陽と月みたいな感じでプロモーションしようかな。」
この後、永遠と怜は一緒に仕事をすることが増えていった。
人気のある永遠と雑誌で同じページに載ったり、研修生ライブで一緒にパフォーマンスをしたりしていると、段々怜の知名度も上がっていった。
愛嬌のあるTowaとクールなReiは、名前も性格も真逆な"れいとわコンビ"として事務所の客の間で知られていった。