STAR LIGHT デビューってなんだっけ編 作:aiyamamiyu
「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。
只今よりスターライト芸能事務所 記者会見を開催いたします。」
司会者があいさつを始めるなか、舞台袖で怜は息を潜めていた。
会場の照明が暗くなる。
新しいグループがデビューすること、グループ名は「Blue Moon」であることがVTRで発表された。
スターライトから久しぶりのCDデビューということで、会場内がザワついた。
永遠と怜は、会場が暗い間にステージに出た。
ふたりにスポットライトがあたり、デビュー曲「宵闇」のイントロが流れ始めた。
とにかく歌詞と振り付けを間違えないように気をつけてパフォーマンスをする。
会場が明るくなると、たくさんの記者が来ていることが分かり、怜は今になって緊張し始めた。
まず、永遠がにこやかにあいさつする。
「この度CDデビューすることになりました、Blue MoonのTowaです。
今年十九歳です。
よろしくお願いします。
まず、Blue Moonというグループ名ついてご説明します。
「滅多に見ることができない青い月のように、たぐいまれな輝きを放つグループになろう」ということで社長が名付けました。
グループ名にふさわしく輝きを放っていきたいと思います。
えー、僕は事務所に入って今年で七年目なんですが、支えてくれた仲間、お客さん、スタッフ、家族のおかげでデビューまで頑張ることができました。
感謝の気持ちを忘れず活動して行きたいです。」
次に怜があいさつをした。
「Blue MoonのReiです。
十八歳の高校三年生です。
好きなパフォーマンスはダンスです。
高校生のうちにデビューできるとは思っていなかったので、驚きの気持ちでいっぱいです。
これから頑張ります。
よろしくお願いします。」
何を言えばいいか分からなかったので、簡単な自己紹介と正直な気持ちだけを言った。
質疑応答で聞かれたことに当たり障りのない返答をした後、最後に写真撮影をし、記者会見は終わった。
凛は、「スターライト新グループ!Blue Moonデビュー」というネット記事を見て驚いた。
基本的に用事がない時にはメールしてこない怜が、なぜか今朝は「行ってきます。」と送ってきた。
「行ってらっしゃい。頑張って。」とだけ返しながらも何かあったのかなと考えていたが、まさかデビュー発表だとは思わなかった。
デビュー会見の様子を動画サイトで見ると、怜がとても緊張していることが分かり凛の方まで緊張してきた。
スターライトからデビューできるなんてすごいと思いながらも、ふと、明日の学校大変だろうなという思いがよぎった。
予想通り、学校ではあちこちでBlue Moonデビューの話がされていた。
凛は友達に話を振られ、
「ああ、ふたりともカッコいいよねー。」
となんでもないふうに受け流していたが、内心ドキドキしていた。
デビュー発表会見以降、メディアで怜を見る機会が増えたが、連絡をとることは減った。
たまに短いメールはするが、怜はとても疲れているようだった。
凛は、怜に事務所に入るように提案してよかったのだろうかと今更ながら考えるようになった。
歌手になるという夢を勝手に託してしまったが、本当は他にしたいことがあったのではないか。
怜はこの状況をどう思っているのだろう。
凛が関西に引っ越してから五年が経った。
怜は歌や踊りを頑張って、有名な事務所からデビューするまでに成長した。
しかし自分は、特に成長していない。
学校で勉強し、週に何回か高校のダンス同好会で踊り、休日には農作業の手伝いをしたりネットを見たりしているだけだ。
本当にこのままでいいのだろうか。
怜は、ミュージックビデオ撮影、雑誌の取材、音楽番組の収録と大忙しだった。
有名な音楽番組に出演したときは嬉しかったし、歌手のパフォーマンスを生で見て感動することもあった。
しかし、忙しい日が続くと段々疲れて気持ちがすさんでくる。
雑誌の取材日に何度も同じような質問に答えていると、
「真面目に答えたところで、自分の記事をしっかり読む人なんて少ないだろう。
深く考えずに短く答えた方が、インタビュアーにとっても楽なのではないか。」
と思ってくる。
同じようなシーンを繰り返し撮影していると、
「実際に使われる時間はわずかなのに、こんなに何度も撮る必要があるのだろうか。」
と考え始めてしまう。
デビュー前からこんな気持ちで、これからやっていけるのだろうか。
デビューってもっとワクワクするものだと思ってたけど、こんな疲れた気持ちになるものなんだろうか。
ある日、見かねた社長に声をかけられた。
「怜、お疲れ様。
最近、忙しいでしょ。」
「ああ、はい…。」
「デビューから一ヶ月くらいしたら少しは落ち着くと思うから、それまでもうちょっと頑張って。
今の時期に頑張って、人脈作ったりスキルを磨くことが、将来の仕事に繋がるからね。」
怜は、デビューまであと一ヶ月以上あるから、「もうちょっと」ではないなと思ったが黙っていた。
「怜はデビューしたくなかった?」
思わぬ質問をされて、怜はハッとした。
「いや、そんなことは…ないと思います…。
ただ、デビューすることだけを目標に頑張って来たわけではないので、自分がこの状況にいることに納得できていない感じです。」
「なるほど…。
どうして、怜はスターライトでここまで頑張ってこれたの?」
「それは、ダンスが好きで、事務所に入ってからは大きなステージでパフォーマンスすることの楽しさも分かってきたからで…。
あと、永遠とか家族が助けてくれたからですかね?」
「うん。
いい理由だね。
デビューして仕事の幅が広がっても、その気持ちで活動することはできるんじゃないかな。」
社長に聞かれて、活動している理由を改めて考えた。
最近、忙しさにばかり目が向いていて、仕事の管理をしている会社の人、家の事をしてくれている家族、激励や感想のメッセージをくれる凛・仲間・お客さんのことをほとんど考えていなかった。
スタッフは忙しい中、良いものを作ろうと努力しているのに、自分の態度のせいで嫌な思いをさせたかもしれない。
これからのことはデビュー後に考えるとして、今は目の前の仕事をきちんとすることにした。