暇潰し程度に読んでいってください!
士道side
もちろん人類も、その空白の二十五年前の間になにもしてこなかったわけではない。
再開発が成されて地域をはじめとして、三十年前から、全国の地下シェルター普及率は爆発的に上昇している。加えて、空間震の兆候を事前に観測することも可能になったし、極めつけに自衛隊の災害復興部隊なんてものもある。被災地に赴き、崩落した施設、道路などを再建することを目的に組織された部隊なのだが__その仕事ぶりはまさに魔法としか言いようがない。
何しろ、めちゃくちゃに破壊された街を、僅かな期間のうちに、もとの状態に戻してしまうのだ。
作業風景はトップシークレットということで公開されてないが、一晩で崩落していたビルが復元されたときは、手品でも見せられていたかのような心地になった。だからといって空間震の脅威が薄れるわけでもないのだが。
「なんか、ここら辺一帯って妙に空間震多くないか?去年くらいから特に」
「.....んー、そーだねー。ちょっと予定より早いかなー」
と、琴里がソファーの手すりにに上体を預けながら言ってくる。
「早い?何がだ?」
「んー、あんでもあーい」
「後半から琴里の声が少しくぐもっていたのが気になるな....」
『琴里ちゃんなにか食べてるんじゃないんですか?ほら棒つき飴ちゃんすきだったでしょう?』
「いやまさかこの前ダメっていったばかりだぞ....」
『人間ダメと言われたことはやりたくなるものです!』
「.....」
真冬にそう言われた瞬間に気になってきたので、俺は無言でソファーにもたれ掛かっている琴里のそばに歩いて行く。琴里もそれに気づいたのか、俺が近づくにつれて顔を段々と背けていく。
「琴里、ちょっとこっち向け」
「........」
「てい」
「ぐぎゅっ」
琴里の頭に手を置き、ぐりっとこちらに方向転換する。すると琴里の喉から変な声がなり、真冬の予想通りのものを見つけて俺はため息を吐く。朝飯前だというのに、琴里の口のなかには大好物のチュッパチャップスをくわえていたのだ。
『あはは、やっぱり言ったじゃないですか、士道君?』
「ああ、その通りだな。こら!飯の前にお菓子食べるなって言ってるだろ」
「んー!んー!」
飴を取り上げようとするも琴里は唇をすぼめて抵抗してくる。
俺が力を入れた方向に顔が歪み、せっかくの可愛らしい顔立ちがブチャイクなことになっている。
「.....ったく、ちゃんと飯も食うんだぞ?」
結局は俺が折れて、琴里の頭をグリグリしてやって、台所に戻る。
「おー!愛してるぞおにーちゃん!」
「ったく...」
『まーまー、良いじゃないですか士道君。ちゃんといつも食べてくれるんですから』
「そう言う問題じゃないんだけどなぁ....」
真冬と喋りつつ手を振り作業に戻る。
「....と、そう言えば今日は中学校も始業式だよな?」
「そうだよー」
「じゃあ昼時には帰ってくるってことか....琴里、昼飯にリクエストはあるか?」
『琴里ちゃんのことですからきっと「デラックスキッズプレート!」ね?当たりでしょう?』
俺も少し思ってた。デラックスキッズプレートは近所のファミレスで出しているお子様ランチだった。俺は直立の姿勢をとると、そのまま上半身を四十五度に傾ける。
「当店ではご用意できかねます」
「ええー」
キャンディの棒をぴこぴこさせながら、琴里が不満そうな声を上げる。
俺はふうと嘆息をしながら方をすくめた。
「....ったく、仕方ないな、せっかくだから昼は外で食うか」
「おー!本当かー!」
『やったーです!私は味噌ラーメンが食べたんですよ。士道君!』
「それはファミレスよりラーメン屋の方がいいと思う....」
真冬はラーメンが好きだから俺の体を使わせると大体ラーメンしかたべてないから注意なんだよな
『失礼ですよ?ちゃんとラーメン以外も今度から食べようとしていたところです!』
「どうだか...まぁいいや。学校終わったらいつものファミレスで待ち合わせな」
俺がそう言うと琴里は興奮した様子で手をブンブンと振った。
「絶対だぞ!絶対約束だぞ!地震が起きても火事が起きても空間震が起きてもファミレスがテロリストに占拠されても絶対だぞ!」
「いや、占拠されてちゃ飯食えねぇだろ?」
『一応地震と火事は規模が小さければ大丈夫だけど、空間震が起きたら復興部隊来るまで食べれないんじゃないかな?』
「ああ、確かにな....」
「絶対だぞー!」
「はいはい、わかったわかった」
俺がそう言うと琴里は「おー!」と元気よく手をあげた。
『ふふ、可愛いですね?』
「まぁ、確かにな...」
我ながら少し甘いかと思わなくもないが、まぁ今日はサービスしてやるか...今晩からしばらく台所に立たねばならないし....何より今日は二人?三人?まぁ真冬と俺は二人で一人だから二人か、二人とも始業式なのだし、これくらいの贅沢はしてもいいだろう。まあ、七百八十円のお子様ランチが贅沢にあたるかどうかはわからないけど。
『私と士道君と琴里ちゃんで食べれば何でも美味しいから贅沢ですよ!士道君が食べれば私も味を感じますし。』
「だな。...んー!!」
真冬の言う通りだと思いながら軽く伸びをして、台所の小窓を開ける。なにかいいことがありそうなくらい、空は晴れ渡っていた。
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『因みに士道君は今日の血液型占いは7位でした!』
「ん~微妙だな...」
『まぁ、こんないい天気ですから素敵な出会いとかあるかもしれませんよ?』
「素敵な出会いか...まあ始業式だし新たなクラスメイトには会うかな?」
『ふふ、そうですね。』
そんな感じで真冬と喋りながら歩いていると、学校にたどり着いた。
『今は午前の八時十五分ですよ?』
「そうか、ありがとう。」
『どういたしましてです。』
真冬の方は視力がいいらしく遠くの時計も見えるらしい。同じ体なのになぜ?と思ったこともあるが真冬いわく体は関係なく真冬自身の視力らしい、ますますわからないが詳しく考えなくてもいいことだと言われてからあまり詳しく考えてはいない。まあ遠くに書いてあるものを真冬によく読んでももらったりする。現に今も張り出されたクラス表を真冬に見てもらっているわけだし。
『二年四組ですよ、士道君。』
「ああ、ありがとう真冬。」
真冬にクラスも教えてもらったのでこれから一年間お世話になる教室を見つけ入っていく。
三十年前の空間震が起こったあと、東京都南部から神奈川県_つまり空間震で更地になった一帯は、さまざまな最新技術のテスト都市として再開発が進められてきた。
俺が通う都立来禅高校も、その例のひとつである。都立校とは思えない充実した設備を誇るうえ、数年前に創立されたばかりなため、内も外も損傷がほとんどない。もちろん旧被災地の高校らしく、地下シェルターも最新のものが設えられている。そのためか入試倍率は低くなく、「家が近いから」だけの理由で受験を決めた俺は少々苦労し真冬に教えてもらいながら受験勉強をして見事受かったのである。
「んー.....」
小さくうなり、何とはなしに教室を見渡してみる。
『まだホームルームまで少しあるのに結構来てますね。』
「だな。」
真冬のいった通りホームルームまで少し時間があったが、結構な人数がもう教室にいた。
それぞれ同じクラスになれたのを喜びおう者、一人机につまらなそうにしている者、反応は様々だが.....あまり俺の知った顔は見受けられない。
『士道君にとっては、初めましての人も多いですね?』
「去年のクラスメイトは大体別のクラスになったんだろうな。」
『まあ、沢山お友達作っていきましょうよ?』
「そうだな。でも自然とできるだろ。」
そう真冬と会話しながら黒板に書かれた座席表を確認しようと首を動かすと、
「五河士道」
後ろから不意に、静かで抑揚のない声がかけられた。
「ん....?」
聞き覚えのない声である。不思議に思い、振り向く。そこには、細身の少女が一人、立っていた。
肩に触れるか触れないか位の髪に、人形のような顔が特徴的な少女である。この人形のような、という形容に異を唱える人間は、恐らくそういないだろう。まるで正確に測量された人工物のように端正であると同時に彼女の顔には、表情のようなものが全く窺えなかったからだ。
「え.....」
俺は周りをキョロキョロと見回してから、首をかしげた。
「....俺?」
俺は自分以外のイツカシドウさんが見当たらないのを確認してから、自分を指差す。
「そう」
少女はさしたる感慨もなさそうに、まっすぐ俺の方を見ながら小さく頷いてくる。
「な、なんで俺の名前を知っているんだ.....?」
俺は少女にそう聞くと、少女は不思議そうに首をかしげた。
「覚えていないの?」
「.....う」
「そう」
俺が言い淀んでいると、少女は特に落胆らしいものも見せず、短く言って窓際の席に進んでいった。
そのまま椅子に座ると、机から分厚い技術書の様なものを取りだし、読み始めていく。
「な.....なんだ、一体」
俺は頬をかき、眉をひそめる。なにやら俺のことを知っている風だったけど、どこかであったことがあるのだろうか?
「とうッ!」
「げふっ」
と、俺が頭を悩ませていると、ぱちーん!と見事な平手打ちが背に叩きつけられた。
「ってぇ、何しやがる殿町!」
犯人はすぐにわかった背をさすりながら俺は叫ぶ。
「おう、元気そうだなセクシャルビースト五河」
俺の友人の殿町宏人は、同じクラスであったを喜ぶよりも先に、ワックスで逆立てられた髪と筋肉質な身体を誇示するかのように、腕を組み軽く身をそらしながら笑った。
「.....セク.....なんだって?」
「セクシャルビーストだ、この淫獣め。ちょっと見ない内に色気付きやがって。いつの間に鳶一と仲良くなりやがったんだ、ええ?」
そう言って、殿町が俺の首に腕を回し、ニヤニヤしながらきいてくる。
「鳶一.....?誰だそれ」
「とぼけんじゃねえよ。今の今まで楽しくお話ししてたじゃねえか」
言いながら、殿町が顎をしゃくって窓際の席を示す。
そこには、先程の少女が座っていた。
『鳶一折紙さん。この来禅高校が誇る超天才ですね。成績は常に学年主席ですし、体育の成績もダントツとこの前話している人たちがいました。』
なんでそんなすげえ奴が公立校にいるんだよと思いながらも殿町の話を聞く。
「去年の『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』でも第三位だぜ?見てなかったのか?」
『女子生徒の一人が主催していましたよ?』
「へぇ~」
そんなことしてたのかやったことすら知らなかったな.....
「ってかベスト13?って、なんでそんな中途半端な数字なんだ?」
「主催者の女子が13位だったんだよ」
「.....ああ」
俺は力なく苦笑した。その女子はどうしてもランキングに入りたかったらしい。
「ちなみに『恋人にしたい男子ランキング』はベスト358まで発表されたぞ」
「多っ!?下位はワーストランキングに近いじゃねぇか。それも主催者決定なのか?」
「ああ。全く往生際が悪いよな」
「殿町は何位だったんだ?」
「358位だが」
「主催者おまえかよ!」
「ちなみに選ばれた理由は、『愛が重そう』『毛深そう』『足の親指の爪が臭そう』でした」
「やっぱりワーストランキングじゃねぇかそれ!」
「まあぶっちゃけ、下位ランクには一票も入らないやつらばかりだったからな。マイナスポイントの少なさで勝負だ」
「どんな苦行だよ!やめりゃあいいだろそんなもん!」
「安心しろ五河。お前は匿名さんから一票入ったから52位だ」
「反応しづれぇ!」
「まあ他の理由は『女の子に興味なさそう』『ぶっちゃけホモっぽい』だったが」
「謂れなき中傷に死の鉄槌を!」
「まあ落ち着けって。『婦女子が選んだ校内ベストカップル』では、俺とセットでベスト2にランクインしているぞ」
「これっぽっちも嬉しくねぇぇぇ!」
たまらず俺は叫ぶ。少しだけ一位のカップルが気になった。
『大丈夫です士道君。私の中では士道君は一位ですよ?』
「え、マジでか」
『はい。マジです!』
その言葉に少し気恥ずかしくなり頬をかく。殿町の方を向くと殿町はさっきのランキングをさして気にしていたい様子(というか、もうすでになにかを乗り越えた様子)で、話を戻そうと、言うように腕組をした。
「まあとにかく、校内一の有名人っつっても過言じゃないわけだ。五河くんの無知ぶりに殿町さんもビックリです」
「いや何のキャラだよそれ」
と、俺がそう言ったところで一年の時から聞き慣れたチャイムがなった。
「おっと」
そういえば、まだ自分の席を確認していなかったため確認しようとしたところで真冬が。
『士道君の席は、鳶一さんの隣ですよ?』
「あ、そうなんだ。教えてくれてありがとう真冬」
『いえいえ』
真冬に席を教えてもらいそこに座る。鳶一の方に視線だけ向けると予鈴がなり終わる頃には本を閉じ、机にしまいこんだ。そして視線を真っ直ぐ前に向け、定規ではかったかのように美しい姿勢をとる。俺もそれを見たあと視線を鳶一と同じように黒板に向ける。それにあわせるようにして、教室の扉がガラガラと開けられる。
今回はここで終わりですまた切りの悪いところで終わってしまってすみません...
楽しんでいただけたのでしたら僕はとても嬉しいです。
ちなみに士道君と、真冬が会話しているときは士道君は小声で真冬としゃべっています。
普通に喋ったら変に思われてしまいますもんね!まぁ小声でしゃべっていたらぶつぶついっているようで変に思われるかもしれませんが、そこは皆には気づかれてないことにしておいてください。
今回も読んでくださりありがとうございました。次回もお楽しみに!