異界の太極・外伝――異世界を赤く(紅く)染め上げて 作:夜叉烏
強化ムー陸軍による防衛線を描きます。
グラ・バルカス帝国は、カルトアルパスにて前世界に対する宣戦布告と同時に、第二文明圏の列強ムーへの侵攻を予定していた。
陸軍部隊の越境と同調し、海軍も第52地方隊"イシュタム"でもって工業都市マイカルを艦砲射撃により蹂躙し、そのまま一気呵成に首都オタハイトを占領するという、やや力押しなプランである。
それでも、グラ・バルカス軍の投入戦力を考慮すれば、その戦略も非現実的なものではなかった。
この後、ムーへの情報収集を怠った彼らは、戦いの結果を聞いて顔を青く染めることになるが。
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「化け物だぁっ!!」
「こいつの主砲じゃ歯が立たないっ!!」
「側面に周り込…うわぁっ!?」
旧レイフォル・ムー国境を超えたグラ・バルカス陸軍第4機甲師団を待ち構えていたのは、ソ連がムーへ輸出したT-72B1MS戦車20両、ソ連製のB-11歩兵戦闘車、GAZ-2330歩兵機動車、そしてAK-47MやRPK軽機関銃、RPG-7Mで武装し、防御陣地を築いた歩兵たちであった。
パーパルディア皇国戦前にソ中との接触を果たしたムーは幸運にも、2国から様々な技術供与に恵まれた。
軍事技術もそれに漏れず、嘗ての世界にて、東側各国へ売り飛ばしていた輸出用兵器多数を買い入れ、グラ・バルカス帝国が宣戦布告をする前に何とかまとまった数を保有することに成功したのだ。
戦闘車両の国産化は流石に間に合わなかったが、歩兵たちの装備するAK-47MとRPK軽機関銃、RPG-7Mは、その構造の安易さもあり、ムーでも容易にライセンス生産ができたため、何とか兵士全員へ持たせることができた。
「撃て撃て!グラ・バルカスなど、我々の敵ではないッ!!」
国境都市アルーの防衛を担当するホクゴウが、兵士たちへ激を飛ばす。
先行するT-72が、125ミリ滑腔砲を一斉に発射する。
旧日本軍の九七式中戦車に酷似した"ハウンド"20両がほとんど同時に撃破され、弾薬庫を吹き飛ばされた車両が巨大な爆炎を上げた。
負けじと"ハウンド"も57ミリ砲を撃ち返すが、時速70キロ以上で疾走するT-72に掠りもせず、運よく当たったとしても複合装甲に弾かれ、撃破には遠く及ばない。
側面へ回り込もうにも、最高時速40キロも出ない"ハウンド"・"シェイファー"と、超信地旋回が可能で、最高時速70キロを超えるT-72では、機動力の差が浮き出ている。
東側諸国でも96B式と並んでトップシェアを誇るT-72戦車は、性能こそ本国軍に配備されている99A式、ソ連軍の最新鋭戦車T-14に劣るものの、同車の技術で行われた近代化改装でほぼ別物と言って良いほどまでに生まれ変わった本車は、グラ・バルカス製の戦車を文字通り蹂躙していた。
T-72が敵戦車を相手取っている間、B-11とGAZ-2330が2A42 30ミリ機関砲、Kord 12.7ミリ重機関銃を発砲する。
最大装甲25ミリに過ぎない"ハウンド"や、それ以下の装甲圧しかない"シェイファー"は30ミリ弾によって蜂の巣にされ、付き従う歩兵が12.7ミリ弾に蹴散らされていく。
随伴歩兵もAK-47やRPKから7.62×39ミリ弾をばら撒き、グラ・バルカス歩兵を次々と撃ち倒し、RPG-7で戦車を爆砕していく。
敵戦車には敵わないと判断した"ハウンド"や"シェイファー"も、隙を見て歩兵を目標に砲撃するが、堅固な防御陣地は健在な姿を見せ、兵を殺傷するには至らない。
T-72が圧倒的な性能差で数の劣勢を埋め、100両以上の戦車は瞬く間にスクラップになっていく。
「まだか!?航空支援は要請したはずだ!」
「もう間もなくです!」
後方の指揮車両に搭乗するボーグが喚くようにそう訊き、通信兵が言い返した直後、後方空域から爆音が聞こえてきた。
「味方だ!」
上空を見上げ、"アンタレス"戦闘機と"シリウス"爆撃機の姿を認めた瞬間、彼の口から歓喜の声が漏れるが、それらに白煙が突っ込んで爆砕されたのが見えた瞬間、緩んだ顔がまた硬直した。
ソ連からムーへ供与された、Mig-29Mの搭載するR-73短距離空対空ミサイルによるものだ。
この機体も、中国製のJ-10共々東側諸国へ輸出されていた、トップシェア戦闘機である。
Mig-29M 20機がマッハ2の最高速度で距離を詰め、機体に埋め込まれたGsh-30-1 30ミリ機関砲に火を噴かせ、バルクルス基地から進撃してきた"アンタレス"、"シリウス"を次々と喰っていく。
戦闘機の要撃を辛うじて潜り抜けた"シリウス"が、地上部隊を掩護しようと機体を翻すが、こちらも輸入品のZSU-30-2M4"シルカ"30ミリ連装自走対空砲――ZSU-23-4の23ミリ四連装機関砲を30ミリ連装機関砲に換装した――の弾幕射撃が歓迎した。
毎分3900発の弾幕に飛び込んだ"シリウス"が、文字通り木端微塵に砕け散り、主翼を吹き飛ばされて墜落する。
降下してきた"シリウス"が全滅し、"アンタレス"もMig-29Mの猛撃に逃げ回る中、制空権を失った敵部隊に、最後の攻撃が行われる。
空気を叩く音とともに現れたMi-28"ハボック"――こちらも輸入品――が9M133"コルネット"対戦車ミサイルを発射し、87ミリS-8ロケット弾をばら撒き、2A42 30ミリ機関砲を真上から射撃した。
M1A2"エイブラムス"やレオパルト2などを撃破しうる対戦車ミサイルは、愚帝製戦車にはオーバーキルも良いところだ。
命中した瞬間文字通り弾け飛び、爆風の余波や宙を舞った戦車の残骸が、兵員を殺傷していく。
S-8ロケット弾が連続で着弾して歩兵たちを吹き飛ばし、30ミリ弾を食らった者が文字通り消え、砲塔天蓋や車体上部を貫かれた戦車が停止し、炎上した。
九九式小銃や九九式軽機関銃に似た小火器を向け、発砲する勇敢な兵もいたが、強固な防弾板に阻まれ、撃墜には至らない。
逆に、発射位置を突き止めたMi-28が容赦のない銃爆撃を浴びせ、抵抗の芽を摘んでいく。
「なっ、何をやっている!?早く撃墜しろっ!!」
「無理です!直掩機も全滅してますし、我々の装備でh…!」
直後、指揮車至近に着弾したS-8ロケット弾の炸裂が、ボーグ以下司令部要員を車両や機材諸共吹き飛ばした。
閲覧ありがとうございました。
次回はソ連と中国にもムー大陸の争いに介入してもらいます。