まあ知らない人にもわかるように書きたいとは思います。
ガチャ
鍵を開け、自室に帰った俺こと曽田はベッドに倒れる。
「ふぅ〜、疲れたわー。」
(...アイスでも食うか。)
今日残業帰りの途中で買ってきたハーゲンダッツの抹茶味。
抹茶味が苦味でクッソ甘いアイス本体を打ち消してくれるからなんとなく好き。
いやおばさんか!って言われたらそれまでだが。
カパッ
袋からそれを取り出し、蓋を開けてプラスチックのスプーンで食べる。
「あぁ〜、やっぱ9月でも熱いからアイスはやめられないわ。」
と、自堕落な生活を送りながらふと気づく。
「...PCつけるか。」
今は帰ってすぐキッチンにいたが、自分の寝室兼ゲーム部屋として使ってるとこに置いてあるPCを起動してみようとする。
「なんたって、今日は金曜なんだからな...。」
久しぶりにできるゲームに喜びを感じながら部屋を変え、
カチッ
プッシュ型の起動ボタンを押してPCをつけてWindows10が立ち上がるまで少し待つ。
パク パク
そしてその間も手に持ってるアイスを食べながら画面を眺める。
カチ カチカチ
色々と前回残してたPC内の作業を片付けて、いざゲームを立ち上げる。
その名はずばり
「...Escape from Tarkov...あぁ〜マゾゲーなんだけど銃好きにはたまらねぇよなぁ。」
エスケープ・フロム・タルコフ タルコフからの脱出。
このゲームは最近というか、ここ一年ほどハマっているFPSゲームだ。
現実に存在する銃火器と、カスタマイズで様々な銃火器を作り上げる。
「今日の気分はAK腰うちブッパだわ。レーザーサイトつけとくか。」
カチカチ
マウスをクリックする音が部屋に響き渡る。
ちょうどアイスも食べ終わったようで、両手をキーボードとマウスにかざす。
「...カップについてるどうしても残ってしまうアイス、腐ると嫌だから後で洗って捨てるか。」
後のことも考えながらゲーム内で銃器 世界的に有名なアサルトライフル
AK-74Mのカスタマイズを行う。
そうして数分が経つと、
「よっしゃ!
弾持った、回復持った、痛み止めもった、鍵持った。
マップはどこいくかな〜。」
一通り装備を整えた俺は、現在PMCとして舞台となるタルコフ市内のマップを選択する。
このゲームには勢力が大まかに二つ分かれている。
一つめは今言ったメインキャラ PMC。
民間軍事会社に雇われてタルコフ市内に派遣されているグループで
その中でも街に取り残された連中のことだ。
大まかに分けてアメリカ人のUSEC ロシア人のBEARがいる。
もう一つのグループはSCAV 通称スカブだ。
スカブは市内に自主的に残った民間人だ。
とは言え、あのクソ共はゴミ漁りに明け暮れて金目のものをあらかた盗んで行きやがる。
しかも武装してる、民間人というよりギャングだな。
「...Tokonosu city?聞いたことねぇな。」
最近のアップデートで、ゲーム内のマップはどれも超広くなり、基本的に水、食料は持参しなければならなくなった。
が、アップデートがあったとは言え、新マップの追加なんて聞いていない。
それどころか日本語っぽい名前だ。
「...サイレントパッチか?」
静かなるパッチ、つまり告知なしの新要素だ。
「...面白そうじゃん。」
と、好奇心を前に出し、俺はそのマップに決めた。
「死にたくねぇなぁ。7N39詰めてきたし。」
と、愚痴を言いながら RAID(襲撃)開始ボタンを押す。
7N39とは、弾薬の種類のことである。
ゲーム内でも屈指の強さを誇る弾薬で、値段もそれ相応だがあらゆるものを貫通できる。
つまりはアーマーをぶっ飛ばせるってことだな。
このゲームのプレイヤー つまりPMCはアーマー着用は当然 ヘルメットすら硬い。
カチッ
そのクリック音と共にマッチングがスタートされた。
「いっしっし...奮発して60連マグまで買っちまった。
まあお金はまた今度貯めればイイか。」
と、マッチング中に購入の余韻に浸る。
60連マグとは、その名の通り60発装填のマガジンの事だ。
とは言えこれほどの装備にはやはり金がかかる。
今回のRAID(試合)じゃ、恐らく80万ルーブルは超えてる。
ルーブル はロシアの通貨、日本円でだいたい90万円くらいか?
「おっ、マッチングしたわ。」
マッチングを知らせる合図が画面に出て、興奮気味になる。
クルクルと画面上にロード中の表記が出る。
そしてRAID開始のカウントダウンが表示される。
「初めてのマップだからなぁ、ちょっと地理には疎いかもな。」
と、心配を思いながらも頑張って脱出をしようと心がける。
ガチャッ
スタートを知らせる銃器を持ち出す音が聞こえる。
すると...
「は?」
バリバリバリバリバリ
ヘリのローター音がけたたましく鳴り響く中、俺は画面を覗き込む。
見ると、そこには俺と同じようにUSEC アメリカ人のPMCが横に4人並んでいた。
そして俺含めてプレイヤー5人は謎の黒い輸送ヘリの後部で、待機していたのだ。
「いやいやいや、待てや待てや。いくらなんでもこんなスタートなんてなかったぞ!?
しかもなんでチームなってんの?俺ソロできたんだが。」
と、普段ならあり得ないヘリからのスタートと、謎の隣に立ち並ぶUSECのPMCに驚きを覚える。
バリ バリ バリ バリ
「てか音量でけぇな、ヘリってこんな音すんのか。」
明らかに変ではあったものの、ここが新マップである事を吟味すればあながちアリなのかもしれない。
告知にはなかったが、こういうチームプレイもやれってことだろう。
「オーケイ、ならやるか。」
隣のUSECプレイヤーに首を曲げて顔を合わせてみると、
Air Frameというヘルメットを付けたガチムチの奴が立っていた。
『Hey bro, Let’s work together.(よぉ兄弟 せいぜい働こうぜ。)』
俺はチャットの設定してあるキーを押して、ゲーム内のPMCに英語で喋らせる。
すると、
『Yeah, sure. By the way do you know where here is.(あぁ、もちろんさ。ところでアンタここがどこだかわかるか?)』
と返してきた。
「なんか妙に人間っぽいな。こんなセリフ設定にあったか?」
チャットはゲーム内のボイスで行われる。
ゲーム内のボイスには多種多様のものがあるが、こんな長いボイス聞いたことがなかった。
と、俺はこの会話にどう返すか困った為 Mumble を押した。
Mumble(つぶやく)は自動的にその場にあった会話をしてくれる機能だ。
『I don’t know. I’ve never heard this place in the meeting.
(知るか、こんな場所打ち合わせでは聞いてなかったぞ。)』
と言う。
「んー、まあヘリからの始まりも結構良さそうだな。
...おっ、てかここ市街地か!」
後ろの後部ハッチが開いていたのを眺めてみると、下は少し高めにヘリは飛んでるが
住宅街の並ぶ市街地っぽかった。
「にしちゃぁ日本っぽいな、風景が。」
見てみるとそこはロシアっぽさとはかけ離れており、日本のどこにでもあるような住宅地の密集しているところだった。
そんな中黒いヘリが真っ昼間から飛んでいるのだ。
当然住民からは奇妙な目で見られそうだが、このゲームに民間人なんかいないのでよしとしよう。
『To Alpha one , It’s here to get down.
(アルファ1へ、降下地点に到着。)』
『Roger. Get ready deploying.
(了解、展開に備えろ。)』
『Copy that.(了解)』
と、ずっと待機していた我らがUSEC5人チームに降下命令が下る。
「相手は新しいレイダーかなぁ、ボスかなぁ。」
と、敵キャラに想像を膨らましながら降下準備をする。
『Now, it’s time to get down.Good luck.(降下開始。幸運を。)』
ヘリパイロットからの無線が響き渡り、5人とも静止したヘリから出されたロープに捕まって一気に降下する。
「てか降下って言ってもロープに近づいたら勝手に降りれちゃったし...なんか変な感じだな。」
いつもと違う操作感だが、まあ慣れるだろう。
スチャッ
地面に落下した時の摩擦音が響き渡る。
他の四人も降下したようで、それぞれの武器を構えながら前進する。
「そういや、降下地点はろくに知らされてないが、ここどこだ?」
そう、ここ 降下地点は見たところ日本のどこにでもありそうなマンションの屋上だった。
『Hey Frick, What er you doing there? Hurry up, we have no time.
(フリック、なにやってんだ?早く来い、時間がないぞ。)』
と、呆然としている俺に向かって1人のUSECプレイヤーがチャットしてくる。
というか俺のPMCの名前 フリックってよくわかったな。
『I’m on it.(わかった。)』
と、俺も返して、とりあえず彼らと行動する。
「...妙だな、特に目的もなくブラブラと脱出地点に着くまで戦うゲームだった気がするんだが。」
どうやら明確な目的があるらしい。
この新マップの要素の一つか?
同時に脱出地点が気になったので、Oキーを2回ダブルプッシュして脱出地点の場所を確認する。
「えーっと...Catch the Documents ...? これが脱出地点か?」
そうには思えない英語だった。
直訳すると、『書類をゲットしろ』
意味がわからない。
「...いや、脱出地点ではなく目的が書かれてるのか?」
と、今更になって気づく。
カンカンカンカン
ゲーム内では依然としてこの5人のUSECプレイヤーで、マンションの非常用階段を降りていく。
住人は幸いなことにいないようだ。
階段からは近くに日本の高校や、自動車が走っているのが見える。
「...おいおい、マジで?普通の日本じゃねぇか。それに民間人もいるって事は殺したらアウト的な?」
ふざけんなと思い、なぜこんな新マップを出したのか意図が全くわからなかった。
が、
「...まぁ金欠だったし、ここでどれだけ稼げるか試してみるか。」
そう、このゲームには金の要素がある。
まずカネがなければなにもできない。
あらゆるものに金が必要なのだ。
それ故にゴミ漁りを徘徊する金稼ぎのプレイヤーも多い。
『One time again, we have to get the documents which are in that school.
(もう一度言うが、俺たちはあの校舎内に残された書類を回収しなきゃならねぇ。)』
と、USECの中の先頭に立つ1人がそう言う。
俺も英語は少しくらいならわかるが、長い文は嫌いだ。
なんとなーく目的を理解して、校舎内の書類をゲットすると言う事を聞く。
「校舎内って、さっき見えたあの高校の校舎内のことだよな?」
と、先ほどの記憶を掘り返す。
今ではもはや人気のない団地のマンションの階段を降り切り、玄関口から高校への坂道を歩いているところだ。
「それにしても人気がないな?SCAV共もいねぇし...こんな楽な仕事なら稼ぎ放題じゃねぇか?」
と、周りの風景を見ながら愚痴る。
SCAV つまりギャング共は見えない。
その上、ここらの住宅街は荒れた様子はなく、本当に日本の風景っぽい場所だった。
『Keep nondescript.(目立たないようにしろ。)』
と、先頭のM4 ライフルを持ったプレイヤーが言う。
そうして数分坂道を行くと、普通の並々の坂道ではない道路と共に目の前に校門が見えてきた。
『Wait here.(ここで待機。)』
またもや恐らくこの隊の指揮を任せられているプレイヤー USECが言う。
そうして俺たちは電柱の裏に見えないように一列で並んで待機している。
「いやいやいや、変態集団すぎるだろ。」
と、少し笑いながらこの異様な光景を見ていた。
高校を狙う武装集団 フハっ、傑作だわ。
そうする事さらに五分。
『Here coming is.(きやがったぞ。)』
と、隊長格のUSECがいう。
「お...ってなんだ、あいつ?」
ガタン ガタン ガタン
と、高校の校門の前で手を校門の隙間から出し、虚な目でガタガタと門を震わせるサラリーマンらしき男がいた。
だが様子が変なのは明白、肌は青白く、足取りも遅い。
どうやらこの騒ぎを駆けつけてきたのか、女教師と体育会系の教員たちが来た模様で
「なんですか、あなたは?妙な事はやめなさい。」
と、女教師が眼鏡を手であげながら問いただす。
ガタン ガタン
だがこの男はなにも聞いていないかのように、体を校門に当てている。
「まあまあ、林先生。任せてください。」
明らかな日本語を喋る普通の高校の教師達、そしてその中の体育会系の教員1人が前に出てこの男に近寄っていく。
『Ha, it’s a show.(見ものだな。)』
と、前から2人目のUSECがほざく。
そうして傍観していると、体育会系の教師が
「ォラッ...!」
と、その男の襟首を掴みあげる。
「ちょ、ちょっと手嶋先生!過剰な暴力は...。」
と、先程林と呼ばれていた女教師が宥める。
が、
ガッ
グチッッッ!!!
と、その男はあろうことかその教員の手首を掴み、食いちぎった。
「ッがぁぁ!!」
「「「ッ!!」」」
その教員は手首を必死に抑えるが、異常な出血量に耐えきれずに
バタンっ
息絶えた。
他の教員が心配して近づいていき、
「し、しんだ...。」
と、1人の初老の教員が言う。
「そんな...この程度の傷で。」
と、林教員が驚きを隠さずに言うと
ピクッ ピクッ
死んだはずの体育系の教員の手がピクリと動いた。
「あっ...手嶋先生!」
と、林という女教師がその様子を見て嬉々として彼に近づく。
すると
「よかった...手嶋先せ
ガッ
ギチッッッ
「ギャァァァァァァァ!!!!」
と、心配していたその女教師の首を掴み、体育教員が青白い肌と虚な目で噛み付いた。
そうして女教師が悲鳴を上げてのたうちまわる。
「あぁぁぁぁッ...ががッ...かはッ...。」
ピクッ...ピクッ...
と、女教師が息絶えたようで、悲鳴を上げなくなり地に伏せた。
周りの教員達は恐れ慄き、逃げ出してしまった。
『Come on boys. We shall go into!(行くぞお前ら、この間に中に入るぞ。)』
と、先頭のUSECが良い、漸く校門前へと進んでいく。
「...ゾンビ...?」
校門前で未だに門を揺らしている 正にゾンビ化した男に向けて
ダンッ
と、破裂音とそれを抑える金属の音が響き渡り、
ドサッ...
その男は綺麗に頭を撃ち抜かれて死んだ。
「うわー、グロ。このゲームそんな死体の描写あったか?」
と、男の頭はそこそこデカい穴が開いている。
『Climb up. (のぼれ。)』
隊長格らしきUSECから門を登るよう指示され、4人とも一斉に上る。
目の前には感染してしまった先ほどの女教師と男性教師2人が校内へと向かって言ってるのが見えた。
「マジかよ、ゾンビモードとか聞いてねえぞ?てかタルコフにゾンビとか意味不明すぎるだろ...。」
と、愚痴を漏らしつつも隊についていく。
『We need find staff room. This is best time.
(職員室を探す。絶好のタイミングさ。)』
と、USECの1人が口篭る。
「職員室ね、りょーかい。」
と、それとなく指示に従いながら学園内を捜索していくのだった。