短いですが...どぞ。
「きゃぁぁぁ!!」
「どけッ!!」
既にこの校舎内は滅茶苦茶だった。
いきなり校内放送が聞こえたかと思えば、放送者が恐らく感染者に食い殺されたであろう悲鳴が流れたのだ。
それからは目にみえるように生徒はパニックに陥り、こうして階段を雪崩れるように降りてきていた。
『...全員この診療室で待機だ。わかったな?』
『了解、ロゼック。』
指示だし役のロゼックがそう言いながら、この清潔感漂う所謂保健室とやらに4人のUSEC隊員が隠れている。
各員、この騒ぎが落ち着くまでここにいるつもりだ。
その間、隊員達は手持ち無沙汰で音楽をComtac2越しに流してる奴もいる。
室内にある給湯ポットからお茶を入れていたりと、和やかな雰囲気が漂う。
目の前のヤツらを除けば...。
『そこを動くなよ、少しでも騒げば貴様らをあの世へ逝かせてやれるんだからな?』
そう英語でヘルナーが恐喝してる相手は、この保健室らしき室内にいた校医だった。
「ふぇええ...そ、そーりー、あぃきゃんと...あぅぅう...!」
片言の英語しか喋ってこず、常に怯えた表情でオロオロとしているこの女をヘルナーは若干嘲笑しながら、
『何言ってんだか聞き取れねぇよ。英語通じてないのか?』
と、愚痴を漏らす。
すると、
「...先生を馬鹿にするなよ!どこの誰だかは知らないが、早く出ていけ!」
と、威勢よく威嚇してくる男子生徒が校医の横から出てくる。
『...騒ぐなと言ったはずだが。』
ガチャ...
ヘルナーが感情に任せて照準を合わせるが、
『...やめておけヘルナー。そんな奴に弾を無駄にしてどうする?サプレッサーの消耗も考えておけ。』
隊長であるロゼックからの指示で、『チッ...。』と舌打ちしながらもM9を下す。
レーザーサイトとサプレッサーで威圧感の増した銃火器を向けられ、緊張した面持ちだった男子生徒は安堵した顔で「先生の事は僕が守りますから...。」と女校医に伝えていた。
この男子生徒はこの室内で同じく騒ぎが収まるまで校医と共に身を潜めていたただの連れ合いだった。
このパニックが起きた時点で、彼らも我々と同じ判断を下したようでここに隠れてる事となったわけだが、こちらとしてはすぐにでも追い出したかった。
が、そんな時に限ってお調子者の気の軽いロックナーが口を挟んでくる。
『...生存者が一人減れば、それだけ倒してくれる感染者も減るってもんだ。生存者の排除は任務になかったろう?』
そんな事を言い出すような奴じゃなかった気がするんだが...と、内心で呟いていると、ヘルナーが苛立った様子で
『...こいつらはまだ何も知らないとはいえ、俺達の情報を詳しく知りやがったら嬲り殺していいんだろ?それにちょっとでも俺達の障害になりゃ、今すぐにでもあの世へ逝かせてやれる...ミーティング中に隊長もそう言ってたはずだ。』
と、高圧的な態度で接する。
昔からヘルナーは戦場ではこの様に冷酷で、任務遂行の為ならば何一つ躊躇いもせず残酷になれる所があった。
また、それに助けられた事も何度もあったのも事実だ。
だからこそ、隊長は
『...そこら辺でやめておけ。感染者は音に反応する。ここで事を起こしちまえば、サプレッサーを装備してようとも多少の発砲音で位置を把握される可能性もある......。フリック、お前が見張りを交代してやれ。』
隊長なりの気遣いなのか、ヘルナーに諭す様に言うと、『...了解、隊長。』とだけ言って校医と生徒から離れた。
俺もMumbleを押して、
『了解...。』
とだけ言い、指示に従う。
『...そろそろだな。おおよそのクソどもは外に出しゃばっていきやがった。』
と、あれから一時間少しが経ち、日が少し傾いたところで隊長のロゼックが言う。
フリックである俺自身も、Mumbleを押して会話を繋げる。
『...ロゼック、俺は左側をクリアリング、ロックナーは右側を確認。それでいいな?』
『あぁ、構わない。ヘルナーは左側の支援をしろ。』
『了解。』
それぞれが扉の前の持ち場に着く。
それを神妙な面持ちで見る背後の校医と生徒二人を無視して、ロゼックは続けて言う。
『...いいか、校長室の場所をそこら辺にいるまだ生きてる奴から尋問して聞き出せ。障害は全て排除しろ、わかったな?』
『『『了解』』』』
全員が返事をしたと同時に、俺達は部屋を飛び出た。
パスッ パスッ
ドサッ...
乾いた音と硝煙の匂いが立ち込める中、感染者の脳髄が撒き散らかされ、地面を赤く染め上げる。
そんな廊下の中を俺達は必死に進んでいく。
『フリック、右前方だ。』
ドタァァァンッ
隊員の誰かに言われたその瞬間に俺はすぐそこを通りそうになった教室のドアが一瞬にして破れ、中から大量の感染者が湧き出てくるのを視認した。
『了解。』
パスッ パスッ
タンッ タンッ
2人がかりで邪魔になりそうな人数を排除しながら、前へ進む。
『急げ、走りながら3階B棟に向かえ。この調子じゃ屋内を殲滅するのに弾を全て使い切っちまう。』
ロゼックが冷静に廊下を進みながら言う。
校長室の場所をそこら辺にいた逃げ惑うガキ共の中の女子生徒の一人から聞いた話によれば、隣の高学年用のB棟4階左廊下側の手前にあるらしかった。
要件を満たした後、その女子生徒を解放して逃してやったが、一悶着あった。
我々に付いてくると言い出したのだ。それも拙い英語で...。
たしかに、並の人間ならばそう思うだろう。我々の武装は追従を求めるだけの分量だ。
だがしかし、我々はオママゴトをするようなタチのいい連中じゃない。言葉も通じず、ただの民間人がついて回れば明らかに任務に支障をきたす。
だからこそ、目の前にいた食われているが、まだ息のある女子生徒を感染者ごと撃ち殺して、教えてやった。
『...立ち去るかここで死ぬか、どっちがいい。』
ヘルナーがそう冷たく突き放すと、女子生徒は言葉は通じなくともその冷たい目をみて理解したのか、一目散に校外へと駆けて行った。
(...どうせ、外も中も一緒みたいなもんだろうが。)
そう心内では呟きながらも、目的の場所を探しながら、俺達はA棟-B棟連絡橋を渡るのだった。