メケメケZ、強すぎる……。
そして、ネタが多分、黒い幽霊団なのかな?
アクション仮面の最終回を見て思ったこと。
「引き受けるの、それ?」
春日部探偵社、ジンの手に持っている依頼書をみて響は尋ねる。
「選りすぐりする立場でもないしなぁ、困っている人がいれば助ける。それが探偵社の方針だ」
「でも、護衛依頼だ」
「前のアイドル護衛の影響かねぇ?」
首を傾げながら依頼内容を確認する。
「まー、でも、この依頼は俺達が引き受けるべきだろうなぁ」
依頼内容の一文をみせる。
その内容を覗き込んだ響は納得した。
「仕方ないねぇ」
「まー、俺達の想像している通りのものなら……な」
依頼書を眺めながらジンはため息を零した。
「というわけでぇ、うちに仕事がきちゃったんですよぉ」
春日部国際警察署。
署長を務めている本願寺純が開口一番、告げた言葉に室内にいたメンバーはぽかんとする。
「あのぉ、署長、仕事というのは?」
いち早く復帰したひろしが尋ねる。
「それがねぇ、ひろしちゃん。有名なゲーム会社のイベントに脅迫状が送られてきたという連絡がありましてねぇ、その護衛をうちが引き受けることになっちゃったんですよぉ」
「護衛任務ですか、でも、それなら普通に警視庁の――」
「それがねぇ、別の仕事があるらしくて手が離せないらしいんですよぉ、おまけにそのイベントにあの風鳴翼ちゃんがくるみたいでしてねぇ。放っておくわけにもいかないので」
「我々が選ばれたという事ですか」
本願寺の言葉を貴虎が引き継いだ。
「そうなのよぉ、まぁ、今日の運勢は赤なので、行けると思うんですけどねぇ!」
ひらひらと赤いネクタイを揺らす本願寺にひろしは苦笑いを浮かべた。
デスクで書類作業をしていた進ノ介もやれやれと首を振る。
脅迫ということはただ事ではない。
進ノ介は不安を抱きながらミルクキャンディーを飲み込んだ。
「何故、貴様がここにいる!?」
「トップアーティストがデカイ声をだすなよ、周りに迷惑だぞ」
依頼を受けてやってきたジンと響は待合室へ通されたのだが、そこにいたのはあの風鳴翼だった。
ジン達の姿を見て大きな声を上げる翼にやれやれと釘をさす。
「むっ、どうしてここに」
「依頼があってやってきたんだ。それ以外でこういうところにはこない」
無縁過ぎるからなぁと豪華なソファーへ腰かけるジン。
同じく腰かけるとぴったりとジンへ寄り添う響。
何とも言えない表情を浮かべている翼。
普通の人なら気まずい空気だと思うだろう。
だが、ジンと響は気にしていなかった。余計に重たい空気が漂い始めている中。
「翼さん、遅くなって……おや?」
ドアが開いてスーツ姿の青年がやって来る。
「緒川さん、その」
「いえ、大丈夫です。春日部探偵社の方々ですよね?僕は緒川慎二といいます。翼さんのマネージャーをしています」
「あ、これはどうも、春日部探偵社の東郷ジンです」
相手が名刺を出せば自分も出す。
名刺交換を終えた緒川は向かい側、翼の隣へ腰かける。
「いやぁ、遅くなって申し訳ありません」
再びドアが開く。
入ってきたのはカジュアルなスーツを着た若者。
「今回の企画の責任者である壇黎斗です。よろしくお願いします」
彼の登場によって今回の依頼についての話し合いが始まる。
「先週の話です。わが社へこのような脅迫文が届けられました。最初はただの悪戯だと考えていましたが、このような出来事が続けて起こりました」
黎斗がみせたのは割れている窓ガラス、破壊されている機材の類。
「これ、警察には?」
「一応、話してはいますがまともに相手をしてくれませんでした。そして、一昨日にこれが」
「どれどれ?」
ジンは手紙を覗き込む。
――今宵のイベントを中止せよ、さもなければ、イベント会場で歌姫が血にまみれることになるだろう。我に奇跡の小箱あり。
「歌姫って……コレ?」
響が翼をみる。
翼は一瞬、眉間を動かすも表情は変えない。
傍に壇黎斗という部外者がいるからだろう。
ジンはある一文を見ていた。
「どうされました?東郷さん」
「ん?あぁ、ここの一文が」
「奇跡の小箱ですか?それに心当たりが」
「ある」
緒川の疑問にジンは迷わずに答える。
「だけど、それをいえば、余計に周りを不安にさせることになるし、向こうがそれを狙っているかもしれない。とりあえず、響」
「なに?」
「お前は歌姫の護衛な」
「えぇ……まぁ、仕方ない。わかった」
嫌そうな顔をしながら響は頷く。
「イベントはやるつもりなのでしょう?」
「はい、上やスポンサーはそれを望んでいます」
「翼さんに危険が及ばないようにお願いします……」
「じゃあ、響、そこの歌姫を楽屋へ連れて行ってくれ」
「はい」
面倒そうにしながら立ち上がる響、緒川に言われて翼は無言で部屋を出ていく。
残されたのはジン、緒川、黎斗の三人。
「さて、一応確認だが、お前の自作自演ということはないだろうなぁ?」
「……当たり前だぁあああああ!この天才的頭脳を持つ私がぁ!こんなことするわけないだろうがァ!」
先ほどまでの爽やかさはどこへいったのやら、壇黎斗は普通の人がドン引きするほどの狂気の笑みを浮かべる。
その姿にジンと緒川はため息を零す。
「お前も苦労するなぁ、緒川」
「ジンさんほどではありませんよ。それよりお久しぶりです。司令から話は聞いていますよ」
「根回しが早くて助かるよ……俺一人じゃ、この阿呆を抑えられる自信がない」
「すいません、僕もありません」
はぁ、とため息を零す二人。
実のところ、壇黎斗という男。天才的な頭脳は持っているが酷く人として狂っていて、前に自分の計画の為に多くの命を犠牲にしようとしたことがある。その時、緒川やジン、当時の探偵社のメンバーが計画を叩き潰したのである。
先ほどの初対面のような振りをしたのは風鳴翼に知られないようにするためである、もし、緒川が面識アリと知れば、余計な騒動を招くことは理解していた。
一応、大人しくしているが何か仕出かさないよう常に二課の監視の目があった。
「ところで、ジンさんの言っていた心当たりというのは」
「ガイアメモリだよ」
ため息を零しながらジンは答える。
「エコの街、風都でばらまかれた特殊なアイテム、生体コネクタを体に打ち込み、ガイアメモリを差し込むことでその者は超人、ドーパントと呼ばれる存在になる」
「そんなものが……」
「っても、数年前の話なんだけどなぁ」
ジンの記憶している限り風都でガイアメモリはかなりレア度が高いもののため、一般人が早々手を出せるようなものではない。ましてやこんなことのために手に入れる事態が奇跡に近いといってもいい。
「お困りのようだなぁ!神の恵みが必要かなぁ?」
揶揄う様に壇黎斗がジンへ顔を近づける。
いつの間にか彼の手には白いゲームカセットが握られていた。
「お前、それは」
「私に不可能はなぁい!破壊されたガシャットの再現など造作もないのだぁ!」
「……いつの間にそんなことを」
緒川が頭を抱えていた。
どうやら二課の目を掻い潜って開発していたらしい。
「お前は懲りるとかそういうことはないのか?」
「神を縛るものなど存在しなぃぃヴァアアアアアアアアアアア!?」
言葉を最後まで放つことなく緒川が用意していたハリセンで容赦なく殴り飛ばす。
「自重しろ、アホ」
天才とバカは紙一重である。
その言葉を二人は嫌というほど、理解した瞬間だった。
風鳴翼と響の間に会話の類は存在しない。
響自身、会話をする気が毛頭ない。
翼も元々、不器用の方であるため、話を切り出せない。
そんな重たい空気が漂っていた中。
「あれ、響ちゃん?」
「あ?」
自分の名前を呼ぶ存在に響は振り返る。
「刑事のしんちゃん」
「よっ」
やってきたのは泊進ノ介、響の中で刑事のしんちゃんで定着していた相手だ。
前のアイドル護衛事件の時以来だ。
「泊さん、こちらは?」
今回は見知らぬ人物がいた。
制服警官のような服をきている。違いがあるとすれば、胸元に「国際警察」という文字とマークがあること。
そして、無表情。
「彼女は響ちゃん、ほら、前に話した春日部探偵社のスタッフだ」
「初めまして、春日部国際警察に配属されました詩島霧子です」
「響、よろしく」
短く挨拶して、響は進ノ介に尋ねた。
「何しに来たの?」
「俺達の部署にアイドル護衛の依頼がきてな、そこでここの責任者に話を」
「ジンが今、話している。あっち」
「そうか、サンキュー……ところで、こちらの方は」
「泊さん!風鳴翼さんのことを知らないんですか?」
「えっと、護衛対象であることは聞いているんだけど、ほとんど、知らない」
どうやら本当に知らない様子。
進ノ介の態度に霧子は呆れるしかない。
「この国のトップアーティストを知らないなんて最上さんが呆れてしまいますよ!」
「ふぅん」
「初めまして、風鳴翼といいます」
沈黙していた翼が挨拶をする。
「春日部国際警察の詩島霧子です」
「泊進ノ介です」
「責任者の壇さんはあちらの会議室にいます。そちらの方がいっていたように探偵社の人と打ち合わせをしていますよ」
「ありがとうございます。霧子、行こう」
「はい」
ぺこりと会釈して進ノ介と霧子は離れていく。
「警察もやってくるのか……」
「依頼は必ず完遂するから」
漏らした言葉が届いたのか響は短く答える。
翼が視線を向けたが響は離れたところにいた。
「(なんだ、あれはミニカー?)」
手の中に赤いスポーツカーのようなものをのせながらぶつぶつと呟いている響の姿に翼は疑問を抱いていた。
今回のイベントは幻夢コーポレーションと提携しているゲーム会社との合同企画。
群雄割拠の時代に現れる主人公が様々な強敵と戦いながら天下泰平を目指すというゲーム。
風鳴翼はイメージソングとして参加していた。
今回のイベントの終盤でゲームのキャラクターの一人のコスプレをした風鳴翼がゲーム本編で流れる曲を歌う。
風鳴翼がみられるということで多くのファンが訪れていた。
「ガイアメモリ?」
「あぁ、風都という街でばらまかれていたアイテムなんだが、おそらく襲撃者はそれを使うと考えられる」
「それはとても危険なのもなのですか?」
ジンと進ノ介、霧子は会場に不審者がいないか見回りをしている。
「俺も詳しいことは知らない。ただ、メモリにはかなりの毒素が含まれていて、使用を続けていれば精神が蝕まれるとか」
「危険じゃないですか!」
「そういうことであれば、カモン!シフトカーズ!」
進ノ介の腹部に装着されているクリムことベルトさんが会場の護衛の為にシフトカーを集めた。
「ところで、ジン。このゲーム会社の社長さんと知り合いなのか?」
「まー、色々と」
壇黎斗との因縁は小説一冊分の話がある。
最終的にしんのすけのカンチョーによって世界が救われたなどと言えるわけがない。
「クスッ」
カンチョーされてレベルダウンした壇黎斗の姿を思い出して笑ってしまう。
「どうしたんですか?」
「あぁ、何でもない。さて、会場の見回りは終わったから、開始までは歌姫の護衛だけなんだが……」
「あの二人、大丈夫かなぁ?」
進ノ介の予感は的中していた。
室内に入ると重苦しい空気が漂っている。
少しばかりの距離をあけた状態で響はカチカチとゲーム機を弄っていた。
ライブまでの時間がないことから翼はメイクなどを受けている。
だが、あまりに重たい空気にメイク担当の人はやりづらそうにしていた。
そして、マネージャーの緒川がこの場にいない。
「まぁ、こうなるよなぁ」
「予想はしていたがとてつもない空気だね」
呆れた表情を浮かべるベルトさん。
同じことを思っていた進ノ介も同意した。
ジンは気にせずに少し間を開けて響の隣へ腰かける。
即座に響が開いた距離を埋めてくる。
「距離が近い」
振り返ると同時に置かれていたペンを響へ投擲する翼。
舌打ちしながら足でペンを蹴り飛ばす響。
「邪魔、するなよ」
「護衛なら護衛らしくしていなさい」
一触即発。
そんな空気の中でジンは購入していたポテチの袋を開ける。
「大物なのか、バカなのか」
「今回は泊さんに同意します」
離れたところへ腰かける進ノ介と霧子。
「てか、何でこんな空気なの?」
やれやれと肩をすくめるジン。
響はゲームの手を止めて画面をジンにみせる。
「ここの攻略が難しい」
「……お前、遊んでいるな」
「いいじゃん、本番まで時間あるし……ジンもポテチ食べているじゃん」
「まーなぁ、どれどれ」
「たるんでいる!!」
我慢ができなくなったのだろう。
バンと机を叩きながら翼が振り返る。
「人の護衛をすると言いながらたるんでいる!そんなので務まるのか!?」
「大丈夫だ。まぁ、うん」
少し考えながらジンは立ち上がる。
「さて、ちょっと出かけてくるわ」
「わかった」
響はゲーム機の画面へ戻る。
翼が響の前にやって着てゲームを取り上げた。
「話は終わっていない!」
「私は話をしていない」
にらみ合う翼と響。
「お前みたいなものがどうして、奏のギアを纏っているのか!」
「知るか、こっちも好きで纏っているわけじゃない。ノイズをぶっ壊せるから利用しているだけだし」
「貴様!」
「そ、そこまで!ほら、本番もそろそろ始まるから!」
止めに入る進ノ介。
このままでは本気でやりあいかねない。
先ほどの会話は気になるところだが、護衛としての仕事に意識を向けていた。
「私はお前を認めない」
翼はそういって外へ出ていく。
残された響は乱暴に置かれたゲーム機を回収すると外に出る。
「行かないの?」
「あ、そうだった。霧子」
「はい!」
響の後を追いかける進ノ介と霧子だった。
イベントが始まった。
最初に責任者である壇黎斗が笑顔でゲームについての説明を行っていく。
今回のゲームにおける目玉、そして主要キャラクター。
ゲームの簡単な操作方法などリアクションを交えながら行う。
腐ってもゲーム会社の若き社長。
あっという間に多くの観客を魅了させる。
会場が熱気に包まれた最高のタイミング。
その場面で、風鳴翼の登場。
会場が沸き上がるのは当然だろう。
トップアーティストとして奏でる彼女の歌声に誰もが魅了されていく。
「すげぇな」
風鳴翼の歌を始めてきた進ノ介は感嘆の声を漏らす。
「素晴らしい歌声だ」
同意するようにクリムも頷いた。
沸き上がる会場。
さらなるヒートアップのタイミングでソレはやってきた。
「泊さん!」
霧子が会場の空を指さす。
いつの間にか風鳴翼の前に人の形をした怪物が現れていた。
背中から伸びる羽を動かしながら複眼は風鳴翼を捉えている。
「警告を無視してライブかぁ、いい身分だなぁ、まぁいい!潰してやるよ!」
「やめろ!」
進ノ介が止めようと駆け出した時、怪物の後頭部から伸びている細長い尾のようなものから無数の針が放たれる。
飛来した針のいくつかが形を変えて進ノ介の体を壁に縫い付けた。
「さぁ、俺の剣を味わってもらおうか!」
いつの間にか怪物の手に細長い剣のような針が握られている。
振るわれる刃を翼は後ろへ下がって躱す。
「(人がいなければ!)」
怪物の出現で逃げ惑う人がいる。
大勢の観客の中で翼はシンフォギアを纏うことは出来ない。
国家の最重要級の秘匿であるギアを纏うには二課の司令の許可がいる。
「ノイズでなくとも、このような!」
下がろうとした翼と入れ替わるように響が前へ出る。
「なっ、よせ!」
「変身」
響は飛来してきたホッパーゼクターを掴んでパンチホッパーに変身。
目の前のトンボの怪物へ拳を放った。
シンフォギアと比べると爆発的なパワーはない。
しかし、ライダーの力は並の怪人であれば大ダメージを受けてしまう。
「シンフォギアではない!?」
驚く翼の前でパンチホッパーが二撃目を繰り出そうとしたが空へ逃げられてしまう。
「あぁ、メンドイ」
悪態をつきながらパンチホッパーは翼を脇へ抱えて走り出す。
「何を!」
「うるさい、ここで暴れたら問題」
騒ぐ翼を無視しつつ、パンチホッパーが逃げようとするが、阻止するように地面へ無数の針が突き刺さった。
「逃がすかよ!俺をコケにしやがってぇ!」
「別にしてない」
「うるせぇ!」
トンボの怪物がパンチホッパーへ迫ろうとした時。
「やめろ!」
拘束から解放された進ノ介がタックルを仕掛ける。
攻撃を受けた怪物は地面へ落ちそうになるがすれすれのところで堪えた。
「行こう!ベルトさん!」
「OK!Start your engine!」
イグニッションキーを捻りながらシフトカーを装填。
仮面ライダードライブに変身してドア銃でトンボの怪物を狙撃した。
攻撃を受けたトンボの怪物は会場の外へ飛び出す。
「逃がすか!」
ドライブが怪物を追いかけるのに対して、パンチホッパーは動かない。
「何故、怪物を追いかけない!?」
動かないパンチホッパーに翼は訴える。
「アンタの護衛」
「なに!?」
「私はアンタの護衛を引き受けている怪物の迎撃は依頼内容にない。あと」
――戻ってくるし。
パンチホッパーの言葉通り、衝撃と爆発がステージに起こる。
少し離れたところに着地するドライブ。
「やったか!?」
土煙の中、トンボの怪物は平然としていた。
「効いていないというのか!?」
驚きの声を漏らすベルト。
「どいつも、こいつも俺の邪魔をしやがってぇ!」
叫びと共に長い尾から放たれる無数の針。
「チッ」
パンチホッパーは拳を振るおうとして両手を広げてすべての針を受け止めた。
「響ちゃん!」
ドライブが叫ぶ中、爆発の中からふらふらとパンチホッパーが姿を見せる。
「まずはてめぇだ!」
トンボの怪物はパンチホッパーに狙いを定めたらしく、間合いを詰めて手の針を突き立てようとする。
誰もが間に合わないと思われた時。
光弾がトンボの怪物の額を射抜いた。
「ぐがっ!?」
光弾を受けて地面に倒れるトンボの怪物。
「盛大に遅刻しちまった」
ため息を零しながら会場内に乱入する者がいた。
右手に黒と紫のゲームパッド型ガシャコンウェポンを装着。そこから煙が出ている。
「すまないな」
倒れそうになったパンチホッパーを支える。
「ジン……」
「交代だ。俺がやる」
「わかった」
ふらふらと下がったパンチホッパーと入れ替わるようにして東郷ジンが前へ出た。
「次から次へと!なんなんだぁ!俺の邪魔をしやがってぇえええ!」
「悪いな、そういう仕事なんだよ」
左手に紫色のゲームガシャットが握られていた。
【マイティアクションX!】
背後にゲーム画面が表示されて、周囲に無数のメダルのようなものが広がっていく。
「グレード1、変身!」
ガシャットを差し込み、目の前のパネルを突く。
選択されたパネルが輝き、ジンの体を包み込んだ。
光の中から現れたのはずんぐりむっくりした者だった。
黒いバイザーに赤い瞳、頭部に黒い尖った髪のようなものがあった。
「え、何、あれ?」
「私もわからない」
突然の姿に味方側も困惑していた。
「可愛い……」
ぽつりと漏らした者がいたとか。
「ふざけてんじゃ!」
「そんなわけねぇだろ、慌てると損するぞ?」
【レベルアーップ!】
ドライバーの桃色のハンドルを開いた途端、ずんぐりむっくりした体から一転して細身の人型となった。
「ゲンム、レベル2だ、さて、行くか」
腕に装着しているガシャコンバグヴァイザーをチェーンソーのように攻撃形態へ切り替えて刃を振るう。
刃を受けたトンボの怪物は攻撃をまともに受けて仰け反る。
「このっ!」
「ほい」
【鋼鉄化!】
周囲へ現れていたエナジーアイテムの一つにゲンムは触れる。
鋼鉄化によって放たれたトンボの怪物の針は弾かれてしまう。
「チィッ!」
「さて、さっさと……ッ!」
全員へ降り注ぐ殺意。
あまりの濃厚さに誰もが動きを止めてしまう。
【トリプルスキャニングチャージ!】
「くそっ!」
上空から降り注ぐエネルギーの必殺技。
ドライブとゲンムは翼や霧子たちを守る。
爆風と煙で視界が奪われた。
しばらくして、煙が晴れるとそこにトンボの怪物の姿はない。
「逃げられた!?それにしても、今の攻撃は」
「まさか……」
「クリムの予想している通りだろうな」
やれやれと肩をすくめながらドライバーからガシャットを外す。
くるくると手の中でガシャットを遊ばせながらジンは周りを見た。
「さて、クリム、ちょっと任せた」
「む?」
「あ、ちょっと」
ドライブが止める暇もなくジンは足早にパンチホッパーに近づいた。
「外すぞ?」
小さく頷いたことを確認してからドライバーのホッパーゼクターを外す。
ヒヒイロノカネの鎧の中から響が姿をみせる。
ただし、背中から血を流して。
「響さん!」
霧子が驚いて駆け寄る。
「救急車を!」
「はい!」
「……そんな」
ぺたんと翼は座り込む。
その目は背中から血を流している響へ向けられていた。
「響さん、背中の傷が浅くてよかったですね」
「あぁ、出血が多すぎて今は輸血ってところだけどな。霧子、親御さんの方には」
「連絡済みです」
病院に運び込まれた響は麻酔で寝ている。
様態を聞いて一安心する進ノ介と霧子は座っているジンの姿を見つけた。
「東郷さん!」
「ん、あぁ……悪い、少し休んでいた」
「顔色が悪いようだが」
「これのせいだよ」
ジンが懐から取り出したガシャット。
「それは、さっきの」
「プロトマイティアクションX、自称神の頭脳を持つ男が作り上げたプロトタイプ、プロトタイプ故体にかなりの負担がかかる。短時間の変身でこれだからなぁ」
少し呼吸を整えて立ち上がる。
「さて、仕事はまだ終わってねぇから行くか」
「え、響さんの傍にいなくて」
「今は仕事が優先だ。それに麻酔でアイツは寝ているからな」
「でも!響さんは貴方の恋人では?」
「恋人じゃねぇよ!?相棒だ……目を覚ましたら文句は言われるかもしれないが仕事優先だ」
色々とウソが霧子へ吹き込まれているかもしれないと思いながらジンはイベント会場へ向かった。
「うわ、パトカーだらけ」
「警視庁のパトカーだ」
「おい!進ノ介ぇ!」
「現さん!?」
ライブ会場へ向かうとそこにはたくさんのパトカーが停車していた。
眺めている進ノ介達のところへ警視庁の刑事である追田現八郎がやってくる。
「お前ら国際警察だけに任せてはおけないってことで本庁から応援に来たんだよ。詳しいことを話せ……って、隣のてめぇは!」
「あ、ゲンパチさんだ」
「誰がゲンパチさんだ!追田現八郎って名前があるんだよ!」
「はいはい、じゃー、俺は黎斗にあって来るわ。後で来るだろ?」
「あぁ、また後で!」
現場に集まっていた警察と話を始める進ノ介達をみながらジンは施設の中に入る。
「遅かったではないかぁああああああああああああああああああ!」
「テンションたけぇな、おい」
壇黎斗が宛がわれている部屋。
その中に入ったジンを笑顔で彼は出迎える。
彼は狂気の笑顔を浮かべながら高速でキーボードを叩いていた。
動きを見るだけでジンは彼の機嫌がよくわかる。
「これ、返すぞ」
「待てぃ!」
黎斗は薄緑色のガシャットを投げてくる。
「何だ、これ?」
「レベル1、レベル2は取れた!ならば、次の段階へ行こうではないかぁ!!もう一個おまけ」
投げられた緑と黒のガシャットを受け取る。
「お前、自分が監視されていること忘れてないか?」
「知らぬわぁ!この神の頭脳を止められるものなど、誰もいなぁい!」
しんのすけのカンチョーが必要なのではないだろうか。
本気で心配になったジンである。
「ところで」
「急に真顔モードになるなよ」
先ほどまでの狂気の笑顔を引っ込めて黎斗は机にある資料を置く。
「何だ、これ?」
「提携先のゲーム会社で一週間前に退職した人間がいた」
「今回の騒動の主犯だと?」
「退職する前にこのゲームの企画のことで揉めたらしい。風鳴翼を使うなんて、それ目当てのプレイヤーしかこないのではないかと意見したという」
「それで首か?」
「企業は企業なりの考えがあるというが、まぁ私には関係のないことだ。あぁ、あと、キミが遭遇した怪物はトンボではなくメガネウラだ」
「あ?」
「古生代に生息していたと言われる全長七十センチの巨大生物だ!ガイアメモリは地球の記憶を内包しているのだろう?な、ら、ば!そういうタイプのメモリがあってもおかしくはない!」
「確かに、一理あるな」
「わかったら、とっとといきたまえ」
今は新たなゲームの製作で忙しいとキーボードを叩き始める。
ジンはため息を吐きながら手に入れた二つのガシャットを懐へ入れた。
「サンキューな」
感謝の言葉を告げて部屋を出る。
「フン」
「東郷ジン!貴方に、話がある」
「こんな道の真ん中で話というのもあれだから、近くのテラスで話そう」
風鳴翼と一緒に近くのテラスにある椅子へ腰かける。
「話っていうのは?」
「立花のことだ」
「アイツのことならアイツへ聞くのが……っていうのが普通だけど、そういうことが無理か」
「……あぁ」
お互いに不器用っぽいもんなぁ。
心の中でジンは思いながらも決して口にしない。
口にすれば何かが起こることは明白だった。
あの二人を相手にしていれば嫌でも学習できる。
「ンで、立花響のことで何を知りたいんだ?アイツがシンフォギアを纏っている経緯なんかは知らないぞ」
「そうじゃない、その…………力を立花はどうして振るうのか、その理由が気になった」
翼はぽつりぽつりと自らの疑問をぶつける。
ぶつけられたジンはため息を吐く。
「なっ!?」
「あぁ、違う違う。お前にため息を吐いたわけじゃない。俺が言いたいのは、まぁ、なんだ」
言葉を考えながらジンは告げた。
「難しく考えるな。お前は考えすぎなんだよ。お前の中でどれほど天羽奏が大きい存在なのかは知らない。だが、今、ガングニールを纏っているのは天羽奏じゃない。響だ。そのことだけは覚えておけ」
「それは……」
「まずはそこからだと思うぞ?アンタが立花響という存在を知ろうと思うのなら」
ジンは立ち上がる。
「あぁ、あと一つ」
伝えるべきか悩みながらもジンは話すことにした。
「守るということをよく考えることだな。俺が言えるのはそれだけだ」
「それは、一体」
「お前は防人を自称していたけれどさ、その防人のすべきことは何かってことだよ」
「それは……」
視線を鋭くしてジンは問いかける。
「お前が守りたいのは国か?それともそこに住まう人か?どっちだよ」
「そんなこと、どちらも」
「言っておくが違うからな。まぁ、よく考えておけよ」
ジンは端末を取り出す。
「はぁ、行くか」
響が目を覚ましたという連絡を受けてジンは一旦、イベント会場を離れることにした。
「……ジンはいないのか」
病室でむくりと響は目を覚ます。
起き上がろうとしたところで背中に激痛が走る。
「傷か」
風鳴翼を守ろうとして傷を受けたことを思い出す。
「はぁ、何やってんだか」
恨んでいるなら無視してもよかった。
だが、はっきりってそこまで恨んではいないのだろう。
あの時のライブが全てを狂わせた。
狂ってしまった針を戻すことは出来ない……ならば前を向くしかない。
その過程で過去の原因の一つと遭遇した場合、自分がどうするか。
「守るか……変わったかな?前より」
ただ恨むだけだった自分。
何もかも壊して、全てをぶっ壊してやりたいと思っていた。
それに変化が起こっている。
自分はこれからどうするのだろうか?
どうなるのか。
響がぼーっとしているとジンが入って来る。
「ジン!」
「元気そうだな。体の傷は?」
「まだ痛い」
「だろうな。ガイアメモリで受けた傷は自然治癒以外で治す方法がないからな。しばらくは休め」
「ねぇ、ジン」
「あん?」
「私、変わったかな?」
ベッドのシーツを掴み、俯きながら尋ねる。
自分は変わっているのだろうか?その不安の答えを求めるようにジンへ、いとしい人を求める。
「良いことを教えてやろう」
にこりとジンがほほ笑む。
「人は変わったかなと思った瞬間が、変わっている証拠らしい」
「なに、それ?」
にししとジンが笑う。
「俺の人生の先輩が教えてくれたんだよ」
「その人、変わっているね」
「かもな」
ジンは響の頭をポンポンと撫でる。
大好きな人の手の温もりが気持ちよくて目をつむった。
「ジンは私のこと、見捨てないよね」
「あぁ、俺が死ぬか、お前が自立するまでは面倒みてやるよ」
「じゃあ、結婚を」
「ガキが早い」
ペチンと額を指でついてジンは立つ。
「仕事に戻る。安静にしとけよ。後で何かお見舞いの品を持っていくからよ」
「うん」
ベッドへ響が横になったことを確認してジンは部屋に出る。
「さぁて、さっさと仕事を終わらせますか」
夕方に再びライブが行われる。
場所は変わっているがそこに再びメガネウラは現れるだろう。
その時に決着をつける。
「さぁ、始めようか」
男はふらふらとライブ会場へ向かっていた。
警告は念のため飛ばしていたが無意味。どうやらイベントは再び行われる様子だ。
「愚かだよなぁ、アイドルなんか入れるからゲームの面白みがわからなくなる。そんなこともわからない奴はクズだ」
ぶつぶつと言っているその目は濁り切っていた。
定まっていない焦点の瞳はライブ会場へ向けられている。
似たような言葉を繰り返しながら男は懐からガイアメモリを取り出す。
Mと側面に表示されているガイアメモリを起動させようとした。
「いやぁ、予想通りにこっち来るとか驚きだわ」
聞こえてきた声に男が顔を上げる。
いつの間にか立っている男がいた。
灰色のコートを纏い、腹部にゲーマドライバーを装着している。
東郷ジンは手の中でくるくるとプロトマイティアクションXガシャットを振り回していた。
「誰だぁ、お前?」
「ン?お前の邪魔をする人」
「そうか」
【メガネウラ】
「じゃあ、死ねよ」
メモリを起動して首元に現れた生体コネクタへ差し込む。
吸い込まれていくメモリ、同時に男の体をメガネウラドーパントへ作り替える。
「はぁ、俺さ、実のところ、アイツの歌、そこそこ好きなんだよねぇ」
ため息を吐きながらガシャットを起動する。
【マイティアクションX】
「だからさ、お前を潰す」
ガシャットを差し込み、目の前の選択パネルを突く。
選ばれたパネルと同時にジンはゲンムに変身する。
「さぁ、テストプレイの時間だ」
【ステージセレクト!】
ゲーマドライバーのステージセレクト機能を使って場所を教会へ変える。
「ランダムとはいえ、これはどうなんだ?」
メガネウラドーパントが急接近してくる。
ジャンプして攻撃を回避しながらゲンムはゲーマドライバーを開いて、レベル2へその体を変えた。
腕に装着されているガシャコンバグヴァイザーでメガネウラドーパントの背中を狙撃する。
攻撃を受けたメガネウラドーパントはのけ反りながらも尾から無数の針を放ってきた。
「おっと!」
攻撃が掠ってしまい、ライフゲージが減少する。
「さてさて、試してみるか」
ホルダーに入っている一つのガシャットを起動する。
【シャカリキスポーツ】
パネルから現れる自転車型のスポーツゲーマ。
「よっと!」
スポーツゲーマに乗り、ペダルをこぎながらメガネウラドーパントを翻弄する。
針や手の中の針を振るうも回避して、次々と翻弄していくことで相手が苛立ちの声を上げた。
「グレード3」
【レベルアーップ!】
【シャカリキ!シャカリキ!バッドバッド!シャカッとリキッとシャカリキスポーツ!】
ゲンムにスポーツゲーマが合体。
スポーツアクションゲーマーレベル3へその姿を変える。
両肩に装備されているトリックフライホイールの一つを外して投擲した。
メガネウラドーパントが針で防ごうとするが回転しながら繰り出されたトリックフライホイールに弾かれて直撃する。
大ダメージを受けたメガネウラドーパントは後ろへ吹き飛ぶ。
「さて、もう一つ、試すか」
ホルダーからもう一つのガシャットを取り出す。
緑と黒のガシャット。
【名探偵ダブル!】
「何これ?」
気になりながらもキメワザスロットにガシャットを差し込む。
【クリティカルストライク!】
雑音交じりの音を放ちながらエネルギーを纏ったキックをメガネウラドーパントへ放つ。
攻撃を受けたメガネウラドーパントは大爆発を起こす。
煙の中からメモリが転がり出てくる。
疲労に染まっている男は痙攣をおこして倒れた。
「ガイアメモリ破壊機能があるって試したけど、行けるな、これ」
キメワザスロットから名探偵ダブルガシャットを外しながら眺める。
「さて、警察を」
呼ぼうかと考えた直後、背中に衝撃を受けてゲンムは倒れる。
その際にドライバーからガシャットが外れて地面に転がっていく。
「油断はいけないなぁ、愛しい人ぉ」
「てめっ!ロイミュード108!」
熱のような痛みを感じながらジンは振り返る。
そこには雪音クリスと同じ顔をしている少女、ロイミュード108が銀色の鎧をまとっていた。
「酷いなぁ、今の私はロイミュード108って名前じゃないよ?」
「あ?」
「イリス、それが私の名前だよ。まぁ、進化態としての姿はまた別だけどねぇ」
ニコニコと笑みを浮かべながらロイミュード108ことイリスは結晶のような鞭を振るう。
咄嗟にジンは横へ跳んで回避しながらガシャットを拾い上げる。
「おっと、ダメだよぉ、愛しい人!」
変身しようとしたタイミングでイリスが鞭を振るう。
バチャンと地面が砕けた。
「あっぶねぇなぁ!おい!」
「だってぇ、変身されたら愛しい人の顔がみられないじゃん!今日は私の新しい衣装をみてもらいたいんだからさぁあああああ!」
連続して振るわれる鞭をギリギリのところで躱していく。
ガシャットを差し込もうとするタイミングで速度が増す。
当たれば致命傷。
そんな攻撃に意識を向けなければならないために変身することができない。
「流石だねぇ、でも、どうせだし」
――ギア、あげていこうかぁ。
イリスが深い笑みを浮かべた。
無理矢理ガシャットを起動しようとした時、脇腹に激痛が走る。
「づぁっ!」
口から苦悶の声が漏れる。
地面から結晶の鞭が出ていた。
「もう一本……」
「誰も一つしか扱えないなんていってないもんねぇ?」
笑顔を浮かべながらイリスは鞭を引く。
べとりと血がついた鞭の先端を彼女は舐める。
「うぅん、素敵ぃ、愛しい人の血っておいしい!」
「うわぁ、ドン引きだよ」
脇腹を抑えながらイリスを睨む。
「あ、変身できないよね?大丈夫、殺して愛しい人剥製にして愛するから!」
「全然、嬉しくねぇよ!」
痛む体を抑えながらガシャットを起動する。
【マイティアクションX】
「変身、グレード2」
差し込むと同時にハンドルを開いてゲンムレベル2へ変身する。
痛みに堪えながらバグヴァイザーを構えた。
その時、どこからか歌が聞こえてくる。
「この歌声……」
ザン!とイリスの目の前に刃が降り注ぐ。
「ったく、何だよぉ?」
イリスの目の前に降り立った巨大な剣。
その上には。
「あー、アメノハバキリかぁ」
「見つけたぞ!ネフシュタンの鎧!」
風鳴翼はシンフォギアを纏って刃をイリスへ向けている。
イリスはあーと思い出したような表情を浮かべた。
「そういえば、この鎧って二年前にアンタ達が起動させようとして失敗した鎧だったっけぇ?すっかり忘れていたよぉ」
「貴様ぁ!」
怒りながら風鳴翼は刃を振るう。
鞭でイリスは刃を受け止めた。
「ジン!大丈夫かね!」
シフトスピードがやってくる。
「クリム……マッドドクターを呼んでくれ」
「その傷でまだ戦うつもりか?すぐに避難を」
「嫌な予感がする」
ジンは目の前で戦う二人のやり取りを見て嫌なものを感じ取っていた。
「進ノ介が来るまで」
「クリム!」
シフトスピードを握り締めてジンは訴える。
「頼む!」
「あれは!」
風鳴翼が飛び出したことで泊進ノ介と緒川がトライドロンで目的地へやって着た。
シンフォギアを纏っている翼と鎧を纏っているイリスが戦う光景を見て緒川が息をのむ。
「あれはネフシュタンの鎧!まさか、本当に」
「緒川さん、あれを知っているんですか?」
「それは……」
「進ノ介!」
シフトスピードがやってくる。
「説明している暇がない!すぐにあの二人を止めるんだ!」
「どういうことだよ!」
「急げ!ジンの予想が正しければ、風鳴翼は自らの命をなげうってでもあの鎧を取り戻そうとするぞ!」
「はぁ!?命?どういう」
「時間がないんだ!すぐに変身してくれ!」
「後でちゃんと説明してくれよ!」
ドライバーを装着して進ノ介はドライブタイプワイルドへ変身。
ハンドル剣を構えて駆け出す。
「おい、やめろ!」
「邪魔をするな!」
「ドライブかぁ、面倒だなぁ」
風鳴翼は激昂しながら刃を振るう。
ドライブは咄嗟にハンドル剣で受け止めるが相手の剣技の方が上ですぐにいなされてしまった。
「くそっ、歌姫がこんなに強いってマジか!」
「なんということだ!ドライブと同等の性能があるのか!」
分析したクリムは驚きの声を漏らす。
くるりと回転しながら反撃しようとしたドライブだが足に鞭が絡みついて宙に投げ飛ばされてしまう。
「邪魔だってぇの!失せろやぁあ!」
叫びと共にドライブを近くの木々へ投げ飛ばす。
「グッ!」
「進ノ介!」
「そこで見てなよ!ドライブぅ!どうしたぁ?歌姫さん、この程度かぁ?」
翼を挑発するイリス。
刃を地面に突き立てて翼は覚悟を決めた。
「防人の矜持、ここで見せる時!」
「翼さん!駄目です!」
緒川が何かに気付いて止めに入ろうとしたがイリスの鞭が迫る。
ドライブがハンドル剣で弾き飛ばす。
「危ないから!下がって!」
「いけません!翼さんは!翼さんは死ぬつもりです!」
「どういうことだね!?」
ドライブが抑えている中で緒川が叫ぶ。
「翼さんは絶唱を使うつもりです!それを使えば、命を落とす危険があります!」
緒川が止めようとするも既に遅い。
風鳴翼は絶唱を奏でた。
絶唱は装者の負荷を考えずにシンフォギアの力を限界上に解放する手段。
その力の奔流に緒川やドライブは近づく事すらできない。
「ハハッ、マジかよ」
力の奔流を目の当たりにしてイリスは息をのむ。
直撃すればロイミュードである自分もただでは済まない。
人間のような直感をイリスは感じ取っていた。
逃げようにも翼は既に目前に来ている。
「クソが」
目の前で力の暴力がイリスを襲った。
「くそっ!」
ゲンムに変身したジンはレベル3の力を無理やり使って暴力の渦を突破していく。
巨大なクレーターが出来上がっている中を突き進む。
レベル3のゲンムが中を探す。
「風鳴翼……」
「私は死なない……」
くるりと目が合い、ゲンムは言葉を失う。
風鳴翼の目や口から血がどくどくと流れていく。
ギアが解除され崩れ落ちる翼をギリギリのところでゲンムが抱きかかえる。
「このバカ、無茶しやがって」
倒れた翼はまだ脈がある。
すぐに緊急搬送の手配をしなければならない。
「クヒャヒャヒャ」
煙の中、イリスの笑い声が聞こえてきた。
「やるなぁ、絶唱を初めて受けたよぉ……まぁ、コアのコアの損壊は逃れたけどさぁ」
ボロボロの体のイリスは狂気に染まった笑みでゲンムをみている。
「待っていろ。すぐに終わらせる」
血まみれの翼を横へ寝かせてゲンムはガシャットをドライバーから外してキメワザスロットへ差し込む。
【キメワザ!】
【マイティ!クリティカルストライク!】
「てめぇを此処で破壊する!」
「無理だねぇ、愛しい人、お前に私は壊せない!」
繰り出される鞭をゲンムは走り抜けながら傍に転がっていたエナジーアイテムを掴む。
【高速化!】
一瞬でゲンムはイリスの背後に回り込む。
「これで終わりだ!」
エネルギーを纏ったキックがイリスを貫いた。
【会心の一発ぅ!】
音声と共に大爆発が起こる。
『だから無駄だっていったのにぃ!』
爆発の中から108というナンバーが浮き出る。
『コアドライビュアを持っていない愛しい人じゃ私を破壊することは出来ないよぉ、まー、ネフシュタンの鎧を回収しないといけないからぁ、ここでさようならだねぇ』
「……くそっ」
108のナンバーが消えたことで追跡は不可能になった。
ゲンムは翼を抱きかかえて歩きだす。
「翼さん!」
煙を払いのけて緒川がやってくる。
「すぐに救急車を」
「はい!」
変身を解除したジンは一瞬、顔を歪めた。
プロトガシャットは体に負担をかける。
その負担が今になってやってきたのだろう。
「大丈夫か?」
進ノ介がジンへ声をかける。
「俺よりも今はこの子だ」
すぐに駆け付けた救護班によって翼は搬送される。
「ジン!」
「旦那、すまない」
「気にするな……といいたいがお前のことだ。気にしてしまうのだろう。だから言おう。お前は頑張った。それ以上は言わん」
「すまない」
やってきた風鳴弦十郎にジンは頭を下げた。
弦十郎はポンと肩に手を置く。
「それより、ネフシュタンの鎧のことだが」
「アンタら二課の保有していたあれだろ……どんどんあの時のライブの件が絡んできたな」
「あぁ」
頷く弦十郎。
「何かが起ころうとしている。多くの何かを巻き込んだ何かが、な」
何かが起こる予感めいたものがひしひしと伝わってくる。
「こりゃ、俺も本腰入れないといけねぇかな」
ため息を吐きながらぺたんとジンは座り込んだ。
冷たい嫌な風が二人の間をすり抜けていく。
今回はかなり長くなりました。
エグゼイドから神が出てきました。
悪事を起こそうとしてジン、二課と敵対、最終的にしんのすけの必殺技によって計画は破綻しています。