春日部探偵社へようこそ   作:断空我

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第十三話:デュランダルと複数のコンボ

 

 特異災害対策機動部二課は先の広木防衛大臣暗殺事件から数日後、様々な情報の分析の結果、本部の地下に封印されている完全聖遺物“デュランダル”が狙われていると考え、輸送を決断。

 

「翼が入院中という事で戦力が大幅にダウンしている中、強力な助っ人が輸送の護衛を申し出てくれた」

 

 絶唱を放った翼は運よく一命をとりとめたが昏睡状態が続いている。

 

 ノイズに対抗できる戦力がない今、輸送は危険ではないかという藤尭の言葉に弦十郎は助っ人の存在を告げる。

 

「強力な助っ人?」

 

 首をかしげる友里あおいに頷きながら話す。

 

「あぁ、東郷ジン、春日部探偵社の所長だ」

 

「……マジかよ」

 

 ぽつりと藤尭が声を漏らす。

 

「よく、彼が協力をオーケーしましたね、その」

 

「まー、あんたらとは色々と因縁めいたものがあるけどなぁ」

 

 司令室のドアが開いてそこから東郷ジンが姿を見せる。

 

 ボリボリと乱れた髪をいじりながら。

 

「しっかし、まさか女子高の地下に秘密施設があるとは思わなかったぞ?」

 

「ところで後ろの子達は?」

 

 友里の言葉に面倒そうにジンは振り返る。

 

「ついてくるといって聞かなかった。俺一人でやるっていったんだがなぁ」

 

「ジンのついていくところに私は行く」

 

「このバカと同意なのは腹立つけど、右に同じだ」

 

「探偵社としての仕事じゃないけれど、僕も手伝うよ」

 

 響、雪音クリス、木場勇治の三人の言葉にジンはため息を零す。

 

「感謝する。だが、何が起こるかわからん、危険な任務であることは」

 

「おい、オッサン、アタシらをあんまりみくびるんじゃねぇぞ」

 

「これでも僕達は色々と場数を踏んでいますから大丈夫です」

 

「まー、所長の立場からすると戦力として数えて問題なしとだけ」

 

「そうか、すまない……あと」

 

 弦十郎の後ろから白衣にメガネ、お団子ヘアーという女性が姿を見せる。

 

「はーい!できる女!櫻井了子よ!ところであなた達のメディカルチェックを……」

 

 最後まで彼女が言葉を告げることはなかった。

 

 響とクリスが今にも殺そうとするかのような形相で睨んでいたのである。

 

 女の子がしてはいけない表情であると記しておく。

 

「代償に命を貰うかもよ?」

 

「そのようね~、ま、貴方みたいな素敵な男と話をできるのは最高かもねぇ」

 

 そういって櫻井了子はジンの頬へ触れようとするがやんわりとその手を抑える。

 

「まー、今日は顔合わせなので、その他の細かい内容については旦那から連絡を貰うことになっているから、じゃ、これにて」

 

「あらー、もう帰っちゃうの?」

 

「悪いけど、ここに良い思い出がないんで」

 

 ひらひらと手を振りながら出ていくジン。

 

 続いていく響とクリス。

 

 木場は藤尭や友里へ簡単に挨拶をしてから後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、どーするつもりだ?」

 

 高機動エレベーター(命名、ジン)で地上へ戻ってきた彼らは探偵社へ戻ろうとしていた。

 

 そんなジンへクリスが尋ねる。

 

「何を?」

 

「輸送任務って奴だよ。噂の歌姫様が寝ている中でやるなんざ、ノイズに襲われたどうするんだって話」

 

「旦那にはドライバー渡しているから対処はある程度、できるっていいたいけれど、頭だから早々、動けない、まぁ、俺が頑張るつもりだった」

 

「ジンだけにやらせない。ノイズが出てくるなら私も――」

 

「響!」

 

 聞こえてきた声に響は顔をしかめる。

 

 マフラーで口元を隠しながら振り返った。

 

 リディアン音楽院の制服姿の小日向未来がやってくる。

 

「何か用?」

 

 淡々と彼女へ問いかけた。

 

「その、姿を見かけたから、どうして、いるのかなって」

 

「別に、仕事で来ただけ」

 

「仕事って危ない仕事?」

 

「関係ないでしょ」

 

「関係、あるよ……その一時的に探偵社の見習いスタッフになったから」

 

「あ?」

 

 初耳だった。

 

 響は先を歩いているジンを睨む。

 

「余計なことを」

 

「……響?」

 

「気安く名前を呼ぶな」

 

「……怒っている?」

 

「怒らないと思うか?お前は」

 

「ごめんなさい!」

 

 続けようとした言葉の前で未来は頭を下げる。

 

「なに、を」

 

「私、手紙を響へ送ったつもりでいて、何もしてなかった!心配していたのに、駆けつけることもしなかった。後悔している。許してもらえるとは思っていない。でも!」

 

 真っ直ぐに未来へみられて響は後ろへ下がる。

 

 その強い目の輝きに言い表せない何かが沸き上がってきた。

 

「今度は逃げない。ちゃんと、響と向き合うから」

 

「………勝手にしろ」

 

 逃げる様に響はその場から離れる。

 

 未来はそんな彼女の背中を見送るしかできなかった。

 

 ジン達にはすぐに追いつく。

 

 響は接近するとジンの横腹へ拳を繰り出す。

 

 音を立ててめりこむ拳だが、ジンは表情を変えない。

 

「余計なお節介」

 

「そうか」

 

 短いやり取りをして車に乗り込む。

 

 助手席にいたクリスは何も言わず、木場も無言で車に乗り込む。

 

「帰るぞ」

 

「わかった」

 

 頷いた響を車に乗せてジンは探偵社へ戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 デュランダル輸送当日。

 

 ジンは愛車のシトロエン・2CVで輸送開始地点まで向かっていたのだが。

 

「どうしたの?」

 

 助手席(じゃんけんで勝ち取った)に座っている響が尋ねる。

 

「あそこ、国際警察が封鎖してるんだよ」

 

「え?国際警察も関わっているってこと?」

 

「まぁ、いってみるか」

 

 ジンはアクセルを踏んで封鎖されているパネルの前で停車させる。

 

「申し訳ありませんが、ここから先はって、ジン君?」

 

「どうも、野原係長~、お勤めご苦労様」

 

「あぁ、どうも、じゃなくて!ここから先は!」

 

「ほい、許可証」

 

 事前に風鳴弦十郎から渡されていた書類をみせる。

 

 ひろしは書類を覗き込む。

 

「本当みたいだな、やれやれ」

 

 ため息を吐きながらひろしは通行を許可する。

 

 通ろうとしたところでジンは気になっていたことを尋ねた。

 

「広木防衛大臣暗殺事件の件、どうなっているんですか?あれって、国際警察の管轄になりますよね?」

 

「本来であれば、その予定だったんだけどね」

 

「何か?」

 

「警視庁がこの事件を引き受けているよ。なんでもどこぞの官僚から鶴の一声で決定したって署長が話していて……ヤベッ!」

 

 青ざめるひろしだが、既に遅い。

 

 シトロエン・2CVは走り去っていた。

 

「俺が漏らしたっていうなよぉ!」

 

 ひろしはそう叫ぶしかなかった。

 

 彼の声を聴きながらジンはアクセルを踏む。

 

「何を調べているの?」

 

「いんや、まだ調べていないさ」

 

「アタシ達に隠し事か?」

 

 むすぅと後ろからクリスが顔を出してジンを睨む。

 

「別に隠しているわけじゃないさ。話す必要があれば、話すよ……だから、待ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はよろしく頼む」

 

「ンで、護送する当人の車について」

 

「何よう。私の愛車にケチをつけるつもり?年季入りまくりの車に乗っている癖に」

 

「人の愛車にケチをつけるとは良い度胸だ。見た目は古いかもしれないが中身は新車にだってヒケを取らないぞ!その気になれば――」

 

 目の前でヒートアップしていく二人に弦十郎はため息を零し。

 

 響とクリスは不機嫌な目でジンを睨み、木場は来ていた緒川と打ち合わせをしている。

 

 櫻井了子の車の後部座席にケースが積まれていた。

 

「あれが、デュランダルか?」

 

「そうだ。二課の保有する完全聖遺物。狙いがコレの可能性があるからな……」

 

 打ち合わせによると弦十郎はヘリから指揮をとるという。

 

 事態によってはバースに変身して参加するつもりでもある様子だ。

 

 櫻井了子の車を後ろからジンの車がついていく。

 

 何かあれば、サポートする要因として緒川の運転する車に乗るメンバー。

 

「まぁ、こうなるよなぁ」

 

 目の前で繰り広げられるじゃん拳。

 

 響がグーをだせば、クリスがグーで防ぎ、

 

 チョキを出せば、チョキで相殺する。

 

 一撃でも当たれば勝者、敗者が決まり、そして、普通の人ならしばらくは起き上がれないことだろう。

 

「これ、私の知っているじゃんけんじゃない」

 

「奇遇だな、俺も同じ意見だよ」

 

 目の前で繰り広げられるじゃん拳は既に五分が経過している。

 

「お前ら」

 

 時計を確認しながらジンが告げた。

 

「一分で終わらせろ。そうしなければ、木場を連れていく」

 

 じゃんけんの結果。

 

 勝利したのは響だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一応、仕事だからな?」

 

 愛車の助手席で嬉しそうにしている響へ釘をさす。

 

「大丈夫。今度デートしてもらうから」

 

「俺とお前はカップルじゃないんだがなぁ」

 

「そう遠くないよ」

 

 何の根拠があるのだろうか。

 

 心の中で思っていたジンはハンドルをきる。

 

 突然、車が大きく揺れて驚きながらも響は睨む。

 

「ノイズ!」

 

「バカ、今は飛び出すな!」

 

 シンフォギアを纏って飛び出そうとした響を止めながらジンはアクセルを踏む。

前の車の速度が急にあがったのだ。

 

 大きく切り離されてしまうとまずい。

 

 運転席に隠されているレバーを引っ張る。

 

 愛車に隠してあるニトロが起動して、速度が増す。

 

 弾丸のように飛んでくるノイズを躱す。

 

「さぁて、もう少し頑張ってくれよ!」

 

 悲鳴のような音を立てながら愛車の速度を上げる。

 

「っ!」

 

 周囲に雷撃が降り注ぐ。

 

「おいおい、マジかよ」

 

「おやぁ、奇遇ですねぇ」

 

 対向車線側からウェザードーパントがゆらりと現れる。

 

 皮切りにドラゴンオルフェノク、メデューサ、そして魔進チェイサーまでも現れた。

 

「大集結かよ!」

 

 ハンドルを操作しながらウェザードーパントの操る雷撃を躱すが。

 

「私もいるよぉ、愛しい人ぉ」

 

 耳元で囁くような声にジンの体が凍り付きそうになった。

 

 バチュンと後方で嫌な音がした。

 

「ジン!タイヤが千切れた!」

 

「だろうな!ハンドルが言うことをきかない!捕まってろ!」

 

 ブレーキを踏んだことで愛車がドリフトしながら回転する。

 

 しばらくして、白い煙を吐きながら急停車した。

 

「チッ!」

 

 停車すると同時にシンフォギアを纏った響が飛び出す。

 

 轟音を立てながら放った拳だが、集まったノイズの壁によって阻まれた。

 

「凄いですねぇ、ノイズを一瞬ですか、でも」

 

 ウェザードーパントが手の中の杖を振るうとノイズが現れる。

 

「このソロモンの杖がある限り、ノイズはいくらでも増やせるのですよぉ」

 

「どうでもいい……」

 

 拳を構えながら響は睨む。

 

「お前は叩き潰す。それだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょせい!」

 

 クリスはイチイバルをガトリングにして連射する。

 

 メデューサは飛来する弾丸を避けながら反撃を仕掛けた。

 

 ガトリングから弓状の武器へ切り替えて撃つ。

 

 放たれる矢をメデューサは杖で弾き飛ばす。

 

「あらあら、乱暴ね」

 

「うるせぇよ、てめぇらみたいに邪魔をする奴はぶっ潰してやる!それだけだ!何より、ジンの邪魔をするなんざ許せねぇ!」

 

「奇遇ね。私も同じことを思っているわ」

 

 ぶわぁぁとメデューサから膨大な魔力が噴き出す。

 

「フィーネの邪魔をする貴方達が目障りなのよ!」

 

「そうかい!」

 

 スカートから無数のミサイルを射出しながらクリスは親指を下へ向ける。

 

「覚悟しやがれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、中々やるねぇ」

 

 木場勇治はデルタギアで変身してドラゴンオルフェノクと戦っていた。

 

 暴力的ともいえる攻撃をデルタは躱しつつ、反撃を試みる。

 

「残念~」

 

 ドラゴンオルフェノクはデルタの動きを先読みして拳を腕の鎧で受け流してタックルした。

 

「ぐっ!」

 

 衝撃によってデルタは数メートルほど吹き飛ぶ。

 

「キミ、弱いぃ、もっと強い子と戦いたいよぉ」

 

 別の相手を探そうとするドラゴンオルフェノクの横を弾丸が通過した。

 

「あぁ?」

 

 苛立ちを隠さずにドラゴンオルフェノクが振り返る。

 

「悪いけど、キミ程度の相手なら僕で十分だ」

 

 フォンブラスターを構えたデルタが静かに挑発した。

 

「ハハッ――面白いな、お前」

 

 ドラゴンオルフェノクは挑発にのった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔をするな」

 

「そうはいかん!子供たちが戦っているのに大人である俺が何もしないということはできない!」

 

 バースに変身した弦十郎は魔進チェイサーと戦う。

 

「子供?あれほどの力を持っていてか?」

 

 チェイサーの問いかけに弦十郎はゆるぎなき覚悟で答える。

 

「力を持っているいないは関係ない!」

 

 ドライバーを装着してセルメダルを弦十郎は装填する。

 

「子供を守るのが大人の役目だ!戦う理由はこれだけで十分だ!」

 

【ドリルアーム】

 

 バースに変身してドリルアームを展開した。

 

「そうか、俺はロイミュードを狩る死神、そして、108がその対象なのか見極める必要がある。それまでは破壊されるわけにいかん」

 

 ブレイクガンナーをバースへ向ける。

 

 大人と死神の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛しい人、逢いたかったよぉ」

 

「クリスの姿を模したままか」

 

 愛車から出たジンに両手を広げてロイミュード108が出迎える。

 

 外見は雪音クリスと同じ、違いがあるとすれば髪の毛がセミロングになっていることとシンフォギアではなくオーズドライバーを装着していることだろう。

 

ドライバーには黄三色のメダルがはめ込まれていた。

 

「さっきの異常な速度はメダルの力か」

 

「そうだよぉう、使ってみてよくわかったよ。このメダルの力はすさまじいって、あのクズが使いこなせていなかっただけでねぇ」

 

 ドライバーからメダルの一つを外しながらロイミュード108がほほ笑む。

 

「お前は使いこなせると?」

 

「勿論、あんなクズとも、そう、オリジナルとも違うもの」

 

 狂気を孕んだ瞳でロイミュード108が真っすぐにジンをみる。

 

 ジンは飛来したダークカブトゼクターを掴む。

 

「やるのぉ?まぁ、愛しい人を壊す目的で来たんだけどさぁ」

 

「ロイミュード108、お前はここで潰す」

 

「酷いなぁぁ」

 

 真ん中のメダルを緑にしてドライバーを傾ける。

 

「私の名前はイリスなんだから、ちゃんと覚えてよ」

 

【ライオン!カマキリ!チーター!】

 

 ライオンを模した頭部、カマキリの刃の腕、そしてチーターの脚部。

 

 オーズの姿になると同時に高速で攻め込む。

 

【Henshin】

 

 ダークカブトに変身と同時にカブトクナイガンで振るわれる刃を防ぐ。

 

「ぐっ!」

 

 チーターの速度が加わったことで通常よりも威力が上がった攻撃にダークカブトは下がってしまう。

 

「このコアメダルってすごいねぇ!超進化していないのに、それと同等の力を引き出せるんだもん!」

 

【ライオン!ゴリラ!チーター!】

 

 一旦、離れると同時にゴリラの腕力の力を得たオーズの一撃がダークカブトを狙う。

 

 咄嗟に両腕を交差したが体は宙を離れてそのままジンの愛車へ激突する。

 

 衝撃で愛車のボンネットが大きく凹んだ。

 

「おい、人の愛車になんてことしてくれんだ」

 

 苛立ちを隠さずにオーズへカブトクナイガンを撃つ。

 

 光弾を受けて仰け反るオーズだ。

 

「愛している。嬉しいなぁ、でも、私の愛しているはちゃんと受け止めてくれない。悲しいよ。だから」

 

 ドライバーから三つのメダルを外す。

 

 そして、三枚の緑のメダルをセットした。

 

「見せてあげる。愛の暴力」

 

【クワガタ!カマキリ!バッタ!】

 

 ガタキリバ、そう呼ばれるコンボへオーズは姿を変える。

 

 前までは三色様々な色だったのに対して今回は緑一色、クワガタの頭部、カマキリの刃、バッタの脚。

 

 全てが昆虫で統一されていた。

 

 その姿にどうしょうもない不安に包まれながらダークカブトはカブトクナイガンを構える。

 

 攻撃を仕掛けてくるオーズを躱す。

 

 瞬間、背後からオーズがもう一体、現れる。

 

「っ!?」

 

 驚きながらも攻撃を防ぐ。

 

 別の角度からオーズが攻め込んでくる。

 

「おいおい、増殖かよ!」

 

「沢山だせる!といいたいんだけど、今の私じゃあ、五体までが限界なんだよねぇ、超進化できれば、変わるんだろうけれど!」

 

 言葉通りに現れたオーズは五体。

 

 そのうちの四体がドライバーからメモリを入れ替える。

 

【ライオン!トラ!チーター!】

 

【サイ!ゴリラ!ゾウ!】

 

【シャチ!ウナギ!タコ!】

 

【タカ!クジャク!コンドル!】

 

 五体コンボ形態のオーズ。

 

「勘弁してくれよ」

 

 心からの本音をダークカブトは漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジン!!」

 

「余所見は禁物ですよぉ!」

 

 ダークカブトが五体のオーズと戦っていることに気付いた響は向かおうとしたがウェザードーパントの風の刃に阻まれる。

 

「お前と遊んでいる暇はないぃ!」

 

 足場のコンクリートをえぐり取って、掴んで投げ飛ばす。

 

 ウェザードーパントは躱しながら水の塊を放つ。

 

 躱して移動しながらがら空きの胴体へ全力の拳を叩き込む。

 

 人なら十回ほどバラバラになっていただろう一撃を受けたことで流石にダメージを折ったのだろう、膝を折る。

 

 そのまま相手の首をねじ切ってやろうと考えた時。

 

「よろしいのかなぁ?余所見していて」

 

 響は振り返る。

 

 ウェザードーパントの呼び出したノイズが櫻井了子の乗る車を襲撃していた。

 

 後部が抉られて宙を舞うケースが目に入る。

 

 奪われてはまずい。

 

 ウェザードーパントを蹴り飛ばして全力で走る。

 

 ノイズ達がケースへ手を伸ばす。

 

 ロックが外れて中から一振りの剣が現れた。

 

 響はノイズを蹴散らしてその剣を掴む。

 

 瞬間、世界が黒一色に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだと!?」

 

 膨大なエネルギーが衝撃波となって周囲に広がる。

 

 衝撃は周囲のノイズ全てを蹴散らし、戦っていたドラゴンオルフェノク、魔進チェイサー、メデューサ、オーズ、クリス、デルタ、バース、そしてダークカブトが動きを止めた。

 

「響……」

 

 ダークカブトは膨大な力というべきエネルギーを身に纏う響の姿をみる。

 

 全身が漆黒に染まり、赤い瞳は全ての敵を恨むかのように敵意で満ち溢れていた。

 

 あれは危険だ。

 

「だけど、放っておけないよな……キャスト・オフ!」

 

【キャスト・オフ!】

 

【チェンジ・ビートル!】

 

 アーマーをパージしてライダーフォームへ切り替える。

 

「あ!」

 

「お前の相手をしていられるか!」

 

 目の前のオーズを踏み台にして宙へ跳びあがる。

 

 そのままの勢いを利用しながら弾丸のように急降下していく。

 

 響がデュランダルを振り下ろす。

 

【ライダーキック】

 

 タキオン粒子をエネルギーに変換して必殺のキックとデュランダルの一撃が派手にぶつかり合う。

 

「あぁ、くそっ!」

 

 バチバチと装甲が悲鳴を上げていた。

 

 ヒヒイロノカネですらデュランダルの攻撃を受け続ければ長くは保てないだろう。

 

「だからって!」

 

 さらにライダーキックのエネルギーを集めた。

 

「ここで押し負けられるかよぉお!」

 

 続けて放った二撃目のライダーキック。

 

 それがデュランダルのエネルギーを弱らせた。

 

 衝撃でダークカブトが吹き飛ぶ。

 

 近くの地面に巨大なクレーターを作った。

 

 続けて、周囲へ広がる衝撃波。

 

 それはすべての戦いを中断させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、何を」

 

 朦朧とする意識の中で響は自分がデュランダルを握り締めていることに気付いた。

 

 体が鉛のように重たい。

 

 手の中にあったデュランダルを落として倒れそうになった時。

 

 正面から温かい何かに包まれる。

 

「ぁ」

 

 ボスッと抱き留められた響はぼんやりとした意識の中で相手を見る。

 

 それは自分の大好きな人、東郷ジンの姿。

 

「ジン……」

 

「その様子だと大丈夫みたいだな、少し休め」

 

「うん……」

 

 頷いた響はそのまま意識を失う。

 

「いやぁ、やりますねぇ」

 

 気絶した響を抱き留めていたジンの前にウェザードーパントが現れる。

 

 メモリを排出して井坂深九郎に戻っていた。

 

「まさか完全聖遺物の力を使って無事とはぁ、是非とも解剖を――」

 

 井坂が続けて言葉を告げることはなかった。

 

 響を抱きしめているジンの目。

 

 その目をみて、井坂は言葉を失う。

 

「ハハッ」

 

 井坂は笑う。

 

 ドーパントとしての力を手にして様々な人体実験、非人道的なことを重ねてきた井坂すら震えあがってしまう彼の目。

 

「興味はまだ尽きませんが、今は撤退するとしましょう。またお会いしましょう」

 

 笑みを浮かべながら井坂は姿を消す。

 

 彼の撤退を皮切りにドラゴンオルフェノク、メデューサ、魔進チェイサーの姿もなくなっていた。

 

「ジン!」

 

「東郷君!」

 

 クリスが響を抱き留めているジンに近づいた。

 

 響を抱き留めているジンの体の至る所から血が出ていたがすぐに傷が塞がる。

 

「ジン、大丈夫か?」

 

「俺は、まぁ、大丈夫だよ」

 

 ジンは肩をすくめながら抱きかかえている響をみる。

 

「……木場、響を頼む」

 

「あ、うん」

 

 木場へ響を預けてジンは落ちているデュランダルを拾い上げる。

 

「グッ」

 

 拾い上げた途端、胸元に走る痛みに顔を歪めながら転がっているケースへ乱暴にデュランダルをしまい込む。

 

「ジン!大丈夫か!?」

 

「旦那、俺達はまぁ、大丈夫。ただ、愛車とかがなぁ」

 

「すまん。請求はこちらへ回してくれ」

 

「懐の大きい旦那に感謝だよ。それと」

 

 デュランダルのケースを差し出す。

 

「輸送はしない方がいいかもしれない。持ち出すことがばれてる」

 

「……そうだな」

 

 頷いた彼へケースを渡してジンは木場達のところへ向かう。

 

「帰ろう」

 

「うん」

 

「あぁ」

 

 木場から響を預かってジンは歩き出す。

 

「東郷君……その」

 

「木場、敵は俺達を脅威と判断した」

 

「それは……」

 

「奴らが攻め込んでくるってことかよ」

 

 後ろにいたクリスが尋ねる。

 

「そういうこともありえるだろうな。しばらく探偵社は休みにするから、その間に整理を」

 

「必要はないよ」

 

 木場は首を振る。

 

「僕は覚悟を決めている。探偵社はどんな仕事も完遂して、全員が生き残る。そういう決まりだろう」

 

「木場のいうとーりだ!ジン、アタシ達はちゃんと覚悟しているからな!そこで寝ているバカもな」

 

「……弱気になっていたのは俺だけか」

 

 ため息を吐きながらジンは顔を上げる。

 

「じゃあ、覚悟を決めろよ。これから本格的に俺達、探偵社はフィーネとのその配下の連中を叩き潰す!」

 

 ジンの宣言に木場とクリスは頷いた。

 

 フィーネと奴が奴の計画全てを叩き潰す。

 

 

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