春日部探偵社へようこそ   作:断空我

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少し駆け足になってしまいました。



第十六話:動き出すフィーネ

「えぇ!これって、翼さんのライブのチケット!?」

 

 春日部探偵社へやってきた未来は机の上に置かれている複数のチケットを見て驚きの声を上げる。

 

 風鳴翼が退院して一回目のライブ。

 

 彼女の復帰を望んでいたファン達によってチケットは初日で完売。

 

 未だにネットで出回っていないか多くの者が探している中でチケットが無造作に机へ置かれていることに未来は驚きを隠せない。

 

「お?これってそんなに有名なの?」

 

「知らない。緒川が置いていったからな」

 

 しんのすけがチケットを覗き込む横でジンはバリバリとチョコビを食べていた。

 

「いや、ジンさん、知らないんですか!?」

 

「あまり歌とかに興味がない」

 

「オラ、きゃりーぱみゅぱみゅがいいなぁ!」

 

「お前……前はおひなだっただろ!?」

 

「男はかわるものだゾ!」

 

「納得だ」

 

 イェーイ!とハイタッチするジンとしんのすけの姿に未来はため息を零す。

 

 ちらりと離れたところで丸まっている響をみる。

 

「なに?」

 

「あ、ううん。何でもない」

 

 響にライブの話をするのはよくない。

 

 嘗て自分がいけなかったことで起こってしまった悲劇。

 

 あの話と結びつくライブの話をするのはよくないだろうと考えていたのだが。

 

「別に昔のことだから」

 

「え?」

 

「あの時、ライブに行くことを決めたのは私。別にお前が悪いとか、そんなことじゃないから」

 

 雑誌で顔を隠す響。

 

 今までは無視だったのに、話しかけてくれたことに未来はとても喜ぶ。

 

「でも、実際にこのチケット、どうするの?」

 

「売るか?」

 

 木場の疑問にクリスが転売を提案する。

 

「それは駄目!やっちゃいけないことだから!ここに書いてあるし」

 

「うわっ、マジかよ」

 

 チケットの項目を見てクリスは「うへぇー」と声を漏らす。

 

「しっかり人数分だもんな。行かなければただの紙切れだが」

 

「でも、でも、来なかったら刀を持ってお姉さんがくるかもしれないゾ?」

 

「ありえるな」

 

 しんのすけの言葉にジンは辟易とした声を漏らす。

 

 緒川を通して弟子入りを断ったところ、自分の実力を証明すると刀を持って探偵社を襲撃してきた事件は記憶に新しい。

 

 思考が妙に時代劇っぽい歌姫のことだ、来なければ何が起こるかわからない。

 

 ハラキリなんてこともありえると考えて、ジンはため息を零す。

 

「俺、女運そのものがないのかもな」

 

「まーまー、それがジンさんですから」

 

「どういう意味だ!?お、No21じゃねぇーか」

 

「あー!オラも欲しい!」

 

 アクション仮面カードの取り合いが起こる中、未来は尋ねる。

 

「人数分っていっても、一人、最近、来ていませんけれど」

 

「矢車師匠は気まぐれ……行くなら代わりの奴、連れて行かないと」

 

「代わりねぇ……仕方ない」

 

 騒ぐしんのすけへカードを渡しながらジンは端末を操作した。

 

 呼び出す相手は城戸真司。

 

『いく!』

 

 メールを送って数秒足らずで城戸真司は参加を決意した。

 

 即決されたことに響は顔をしかめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで、ライブチケットと一緒に俺を呼びだして何の用だ?」

 

 東郷ジンは呼び出されて廃墟へ向かう。

 

 そこには緒川慎二、そして風鳴弦十郎の姿がある。

 

「実は我々も呼び出されたんだ」

 

「あ?お前らも?」

 

 二人の態度からしてウソではないらしい。

 

「誰が呼び出した」

 

「ボクだよぉ」

 

 聞こえた声に三人は身構える。

 

 目の前に現れたのはイリス。

 

 クナイを構える緒川、ドライバーを取り出すジンと弦十郎だが、イリスはにこにこして敵意を現していない。

 

「今日は敵対しにきたわけじゃないよぉ」

 

「だったら、なぜ呼びだした?」

 

「今のままじゃマスターの勝利はゆるぎないからさぁ、もっと人間側にも頑張ってもらわないとねぇということで情報を持ってきたんだぁ」

 

「あ?」

 

「情報ですか?」

 

「まずは話を聞こう。それからでも遅くはない」

 

 弦十郎の言葉にジンは渋々、ドライバーを仕舞う。

 

 にこりとイリスは笑った。

 

「カ・ディンギル」

 

「何だ、そりゃ」

 

「マスターの計画の要、発動して成功しちゃったらそっちのマケだよぉ」

 

「カ・ディンギル?」

 

「大砲のようなものとイメージすればいいんじゃないかな?でっかい塔から放つといっていたし」

 

「塔……か」

 

「お前、何を考えている?」

 

 情報を告げるイリスにジンは問いかける。

 

 その目は懐疑の感情が込められていた。

 

 はっきりって信用していない。

 

 クリスと同じ姿だが、中身は悪の感情で一杯のロイミュード。

 

 素直に情報を伝えるとは思えない。

 

「まー、有体にいえば、愛しい人にもっと頑張ってもらいたいんだよ。だって、どうしょうもないくらい頑張って、頑張って頑張って頑張りぬいた末に敗北してしまう。そんな絶望的な姿を見たら興奮しちゃうよぉ!」

 

 顔を歪め、狂気を孕んだ瞳に緒川は後ろへ下がってしまう。

 

「あ、どうだせだから、もう一つ。愛しい人も知っているあの発掘現場で起こった事件?あれもマスター、フィーネが関わっていたみたいだよ」

 

 言ってはならない禁句を告げた。

 

「っ!」

 

「ジン!落ち着け!」

 

 緒川は息をのみ、弦十郎が横からジンを抑え込む。

 

――無。

 

 イリスをみている東郷ジンの顔から全ての感情といえるものが消え失せていた。

 

 何もない。

 

 敵意も憎悪も何もかもが消え失せてしまっている顔にイリスは嗤う。

 

「そうだよぉ!もっとみて!貴方のそんな顔がもっとみたいの!待っているからね?頑張ってねぇ、愛しい人ぉ」

 

 

 イリスは笑いながら姿を消す。

 

「旦那、大丈夫だ」

 

 しばらくしてジンを弦十郎は離す。

 

「カ・ディンギルはこちらで調べる。お前は」

 

「悪いけれど、俺も調べ物ができた。そっちは任せる」

 

「……彼は大丈夫でしょうか?」

 

 ジンが離れた後に緒川は尋ねる。

 

「わからん、だが、フィーネという存在があの事件の黒幕だとするなら……フィーネは鬼を相手にするということを知るだろう」

 

――東郷ジンが本気で怒った場合、敵は徹底的に叩き潰す。

 

 それが、東郷ジンという存在だということを風鳴弦十郎は知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野原家。

 

 ローン三十二年の一軒家だが、家族愛やら嵐を呼ぶ幼稚園児などが帰るための場所。

 

 そこに東郷ジンは来ていた。

 

 キッチンで料理を手伝う響はみさえと話をしていた。

 

 クリスは戸惑いながらひまわりの面倒をみている。

 

 しんのすけはアクション仮面を城戸真司と笑いながら見合っていた。

 

「いや、何でお前がいるの?」

 

「今月、厳しくてさぁ……みさえさんには次の給料で支払うからって」

 

「はぁ……俺が支払ってやるからお前は貯蓄しろ」

 

 呆れながらジンは懐から封筒を取り出す。

 

「みさえさん!」

 

「あら、ジン君“おかえりなさい”」

 

「ただいま戻りました。これ、真司の分です」

 

「あら、いいの?」

 

「えぇ、親友が金欠で職員の子の親に支払う姿をみるというのはちょっと」

 

 親友の哀れな姿というものをみたくないという本音だろう。

 

 封筒を渡してジンはリビングの机の前に腰かける。

 

 アクション仮面をみて笑いあうしんのすけと真司の二人を見ていると先ほどまでの悩みがあほらしく思えた。

 

 夕食が用意できて、全員が食卓を囲む。

 

「焼肉だゾ!」

 

「おぉ!贅沢ぅ!」

 

「ジン君が奮発してくれたからね!」

 

「たああい!」

 

 嬉しそうにする野原家。

 

「あ!俺の肉!」

 

「早い者勝ち」

 

「しょうもないやりとりすんなよってぇ!アタシの肉だぞ!?しんのすけぇ!」

 

「オラが狙っていた肉だゾ!」

 

 城戸真司と響が肉を取り合う。

 

 クリスが呆れながらしんのすけの箸とばちばちぶつけあっていた。

 

「お行儀が悪い!クリスちゃんも!良い年なんだからもう少しマナーを守りなさい」

 

「……はい」

 

「ほい」

 

 みさえの睨みにクリスとしんのすけは争いをやめる。

 

 ひろしが笑いながらビールを飲む。

 

 野原家、否、この中で一番、怒らせたら怖いのはみさえだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジン、さ、何かあった?」

 

 騒がしい焼肉も終わり、夜空を縁側でジンは眺めていた。

 

 縁側で缶ビールを開けて飲んでいたジンへ隣にいた真司が尋ねる。

 

「いきなりだな」

 

「いや、大体さ。何か大事な手前があると、こうして家族団らん!みたいなことをしているからさ」

 

「そんなことは……ないって、ウソはつけないだろうな」

 

 城戸真司はバカだが、何もかもバカではない。

 

 人が思い悩んでいれば傍にいて支えようとする。

 

 親切すぎるバカだ。

 

 ジンは傍でしんのすけと枝豆を食べているひろしをみる。

 

「ひろしさんはさ、どうして刑事なんかやっているの?」

 

「唐突だな。確かに俺は冴えないし刑事なんて向かないかもしれないけれどさ」

 

「「(そこまでいっていない!)」」

 

 心の中でジンと真司は同時に思った。

 

「切欠は上京してすぐにある刑事さんに助けてもらったことかな」

 

「へぇ」

 

「知らなかったなぁ、どんな話!?」

 

 興味津々という風に真司は尋ねる。

 

 ひろしは思い出すようにしながら話す。

 

「上京してすぐに窃盗騒ぎがあってね、偶々、俺が見学に来ていたビルで起こった……警察がきて調査をしている時に」

 

 警察が荷物検査をしていた時にひろしの鞄から盗まれた宝石が見つかった。

 

 必死に否定するひろしだったが、現場の制服警官達は犯人と決めつけて逮捕するために手錠をかけようとする。

 

 その時に待ったをかけてくれた刑事がいた。

 

 彼はひろしの話を真剣に聞いて、状況を分析して罪をなすりつけようとした犯人を見事、逮捕する。

 

 その時の刑事と話を聞いていて、上京して現実を知り始めていたというのに子供みたいにひろしは熱を抱く。

 

 刑事になりたいと。

 

「それから頑張って、頑張って、今は国際警察の係長として頑張っているわけだ」

 

「あれぇ、オラは出てこないの?」

 

「大人の話に水を差すな!」

 

「ケチ~」

 

 騒ぐしんのすけに枝豆を与えながらジンはビールを一口。

 

「最初は憧れだったけれどさ、今は違うんだ」

 

「え?」

 

 ジンは顔を上げる。

 

「今は警察官として家族を守るため、若者が犯罪者にならないように頑張る……まぁ、うちの部署は不思議部署扱いだけどねぇ」

 

 ビールを飲みながらひろしは困ったように言う。

 

「家族を守るかぁ……ひろしさんは怖いと思わないの?守ることに」

 

「俺にとって家族は宝だよ」

 

 ひろしの言葉に迷いの類はない。

 

 心の底から思っている。

 

 その姿にジンはとても羨ましいと思う。

 

「俺は怖いですよ」

 

 酒が入っているからか、ジンは普段から心の中で思っていたことを吐く。

 

「アイツから探偵社を引き継いで、皆と出会って、今は和気藹々としているけれど、ふと、思ってしまうんです。また、俺の前からいなくなってしまうんじゃないか?俺の手から零れ落ちてしまうかもしれない」

 

「ジン……お前」

 

「ジン君」

 

 ひろしが不安を零したジンの肩を叩く。

 

 伸ばした手は真司を巻き込みながらジンを抱きしめる。

 

「ここはキミの帰る場所だよ」

 

「……それは」

 

「不安になったり、悲しくなればいつでも帰って来ると良い。俺だけじゃない。しんのすけやひまわり、みさえもいる。それにみんなで和気藹々と楽しくすれば、不安は大きくなるかもしれない。けれど、それよりもたくさんの幸せを感じればいいと俺は思う」

 

「たくさんの幸せ……」

 

「そうだって!何に悩んでいるのか知らないけど!ジンは悩み過ぎなんだって」

 

 バシンと真司が叩く。

 

「まぁ、そうなのかもな」

 

 その後、ひろしや真司、しんのすけ、後に風呂からあがってきたみさえとひまわり、響やクリスと騒がしくなっていく。

 

 いつの間にか、ジンの中にあった不安は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠!会いに来てくれたのですね!?」

 

「……誰が師匠だ。お前を弟子にした覚えはない」

 

「そうですか、でしたらこれにサインを」

 

「あ?」

 

 渡された書類を覗き込むジン。

 

 迷わずに破り捨てた。

 

「何を!?」

 

「アホか!弟子にすれば私の体を好きにしていいなんて阿呆なことを書くな!」

 

「当然ではないですか!弟子は師匠の言いなりになる!」

 

「お前の常識を押し付けるな!」

 

「むむむ」

 

 小さく唸る風鳴翼にジンは呆れる。

 

 今日は用事があって二課の本部へ来ていたのだ。

 

「お前、ライブの準備とかあるだろう」

 

「防人はライブも日々の鍛錬も欠かしません!」

 

「病み上がりだろう、無理はするな」

 

 退院したとはいえ医者からは激しい運動は控えるようにという話を緒川から聞いていた。

 

「心配してくれるのですね!」

 

 目をキラキラさせる翼にジンはため息しか零さない。

 

「師匠!私と手合わせしてください」

 

「忙しい」

 

 一蹴して待ち合わせしている弦十郎のところへ向かおうとしたが。

 

「あーら!いけないわよ。女の子を乱暴に相手しちゃ」

 

 道を遮るように櫻井了子が現れる。

 

「うへぇ」

 

「何よ、その嫌そうな顔」

 

「胸に手を当ててよぉく考えろや」

 

「あーら、私の胸を見たいの?」

 

「誰もそんなこといってねぇだろ!?頭スイーツか!」

 

 ゴチン。

 

 了子から振り下ろされたゲンコツでジンは地面にたたきつけられる。

 

「私年上、貴方年下、言いたいことわかるかしら?」

 

「はい、お姉さま」

 

「よろしい、さ、あそこの休憩スペースに行くわよ」

 

 どこの世も弱肉強食はあり、弱者は強者に勝てぬのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面倒なことになったなぁ」

 

 二課のエレベーターを使ってリディアン音楽院のある地上へ戻ってきたジンだが、困ったと同じ言葉を繰り返している。

 

「東郷さん?」

 

 帰ろうとしたところで学生鞄をもっている未来の姿があった。

 

「小日向か」

 

「どうしたんです?あ、もしかして」

 

「まぁ、旦那に用事があったんだが……丁度いい」

 

「はい?」

 

 首をかしげる小日向にジンはある提案を持ち掛ける。

 

「助けてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、俺は明日一日お休みなので何があっても連絡するな、てか、頼むからしないでくれ」というメッセージを送ってジンは小日向と向き合う。

 

「えぇ!?大丈夫なんですか」

 

「大丈夫なわけがないから困っているんだよ」

 

 明日、一日翼とデートせよ。

 

 そんなお願い(拒否権なし)を受けたジンはデートの内容について小日向と話をしていた。

 

「翼さんが異性と遊んだことなんて」

 

「旦那に聞いたんだが、生まれてからずっと鍛錬やらシンフォギアの訓練でまともに遊んだことがないとさ」

 

「それで、デートってハードルが高いかと」

 

 未来の指摘にジンは頷いた。

 

「だよなぁ、無難に遊ぶでいいかと思うんだが、女子高生って何して遊ぶんだ?」

 

「……カラオケとかゲームセンターではないでしょうか?」

 

 顎に指をあてて考える未来。

 

「まぁ、それでデートとしての話を」

 

「デート?」

 

 その声はとても低い。

 

 ジンでも、ましてや未来でもない。

 

 固まったジンはおそるおそる隣をみる。

 

 ファミレスの窓。

 

 そこに絶対零度の視線で覗き込んでいる響の顔があった。

 

 ジンは悲鳴をあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――響へ説明中

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デート、じゃ、ないの?」

 

「そうだ、だから、その拳を下ろせ」

 

 瞳から光を失った状態で拳を構える響に未来が事情を説明したことでジンにぴったりと寄り添った状態で尋ねる。

 

 未来は親友の変わりように少し戸惑いつつも話を進めることにした。

 

「あの、提案なんですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デート当日。

 

「ジンとデート」

 

「遊ぶだけだ」

 

 私服でジンと響は待ち合わせ場所に来ていた。

 

 あれから未来の提案で翼を交えた四人で遊ぶことになる。

 

「この情報、真司が知ったら騒ぐだろうな」

 

「バカも一応、記者だからね」

 

 その真司はクリスに連れられて買い物へ行っている。

 

 貴重な荷物持ちとして利用されていた。

 

「響!東郷さん!」

 

 二人でわいわいと話をしていると私服姿の未来がやって来る。

 

「よぉ、小日向、似合っているな」

 

「そうですか?ありがとうございます!響」

 

「なに?」

 

「似合う、かな?」

 

「聞かないで」

 

「あ、ごめん」

 

「……私、服とかわかんなくなっているから」

 

 付け足した響の言葉に未来は笑みを浮かべる。

 

「大丈夫!私がしっかり今日は教えるから!」

 

 自信満々に答える未来の姿に響はうげーとしていたが気付かない。

 

「む、すまない。私が最後だったか」

 

 サングラスや帽子で変装した風鳴翼がやって来る。

 

「師匠!今日はよろしくお願いします!」

 

「そんな固くなるなよ。遊ぶだけだし……あと、俺は師匠じゃない」

 

「しかし」

 

「思考が固い、防人のことは今だけ忘れろ。普通の、どこにでもいる女子高生風鳴翼としての日常を今日は満喫しろ」

 

「は、はい」

 

「えっと、前にちゃんと挨拶をしていなかったですけど、私は小日向未来です。よろしくお願いしますね?」

 

「あぁ、小日向、私のことは翼と呼んでくれて構わない」

 

「はい、翼さん!」

 

 にこりとほほ笑みながら翼と未来は楽しそうにやり取りを始める。

 

「ジンとのデート~」

 

「違うだろ、しがみつくなぁ」

 

 響を押し戻しながらジンは歩き始める。

 

「あ、響!ジンさん!待って!」

 

 慌てて追いかける未来と翼達。

 

 騒がしくもこうして四人による遊びがはじまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(しかし、華の十代の中に二十歳過ぎの男が混じっているって、犯罪臭がしないか心配だ)」

 

 実際に周囲から視線が集まっていた。

 

 風鳴翼がいることがバレたというよりもジンがいることで嫉妬などの視線が集まっているようにみえる。

 

 実際のところ、ジンの予想は当たっていた。

 

 フードで素顔を隠している響、サングラスと帽子で変装している翼、そして私服姿の小日向、彼女達の性格はともかく美少女ばかりだ。その中にコートの男がいれば妬みなどの視線が向けられるのは仕方ないだろう。

 

「(俺、要らなかったんじゃないかなぁ)」

 

「東郷さん、自分が要らないなんて考えていませんよね?」

 

「小日向はエスパーか!?」

 

「こんな視線ばかりくれば嫌でもわかりますよ」

 

「あははは」

 

「忘れないでくださいね。これは翼さんのデートをあくまでみんなで遊ぶということで緩和しているんです。東郷さんが帰ると余計にこじれますから」

 

「心得ています。この視線に耐えればいいんだろ?わかっているって」

 

「無理はしないでくださいね。これからカラオケですから」

 

「わかったよ」

 

 三人の少女を先頭にしながらジンはカラオケに入る。

 

 支払いはジンがこっそりと済ませておいた。

 

「響、カラオケは大丈夫?」

 

「まぁね。仕事の時間潰しでやっていたから」

 

「あー、そうだったな」

 

 カラオケボックスでだべっているのもそうだけど、試しに歌うとかやっていたなぁとジンは遠い目をする。

 

 よくよく考えれば密室空間で男女がいて、片や肉食に狙われていたことを考えるとよく無事だったものだ。

 

「しかし、本物の歌姫がいて、カラオケというのもレアだなぁ」

 

 ぽつりと漏らしながらもカラオケがスタートする。

 

 先発はまさかの小日向。

 

 話題のドラマ主題歌を選んだ。

 

 続いて響。

 

 彼女はまさかのアクション仮面の歌。

 

 しんのすけとみていた番組の影響だろう。

 

 続けての風鳴翼がまさかの演歌。

 

 歌姫が演歌で力拳を作って歌うという姿はとても貴重だった。

 

 最後に東郷ジン。

 

 彼が選んだのはまさかのラブソング。

 

 久しぶりだったことでかなり熱を入れてしまい、響以外の女性を呆然とさせてしまう。

 

 その後、響と一緒に野原夫妻が世界を救うために歌ったデュエット。

 

 あの騒動のことを少しだけ思い出しつつもジンと響は抜群のコンビネーションを発揮した。

 

 昼食を楽しんで景色が一望できる場所に四人は来ている。

 

「知らなかった。今まで戦いばかりに身を投じてきたから」

 

「勿体ないですよ」

 

「小日向?」

 

「翼さんの後ろにはこんなにたくさんの人や街があるってことを知らないのはもったいないです。何も知らずに守っているなんて」

 

「そうだな、今日一日、小日向や師匠、そして立花も……すまない」

 

「いえ」

 

「別に、私は何もしてないし」

 

「師匠呼びはやめろ」

 

「やめません!」

 

「即答かよ!?」

 

 翼はクスリと笑う。

 

 ジンも毒気を抜かれたように息を吐く。

 

 こうして騒がしくも絆が深まった休日は終わりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、風鳴翼のライブが始まった。

 

 ライブ会場にジンは響、クリス、城戸真司、小日向のメンバーを連れてきている。

 

 そのまま会場内に入ろうとしたのだが。

 

「先に行ってくれるか」

 

「え、おう!」

 

「あれ、東郷さんはどこに」

 

「お手洗い」

 

 短く告げてからジンは席を離れる。

 

 その姿を響はじぃーっと見つめていた。

 

「あら、こちらの視線に気づいたのね」

 

 会場から少し離れた通路。

 

 人気がない場所に東郷ジンは来ていた。

 

 彼の視線の先、金髪にダッフルコートを纏い、大きな帽子で素顔を隠している女性がいる。

 

「アンタがフィーネか」

 

「こうして直接相まみえるのは初めてだな。東郷ジン。その通り、私がフィーネだ」

 

「素顔を見せないのか、みせられないのか?」

 

「どう捉えても構わない。しかし、貴方も呑気なものね。世界の終わりが近づいているのにこうしてライブを聞きに来るなんて」

 

「世界の終わりなんていつどこで起こってもおかしくはない話だ。偶然と小さな奇跡が成り立って防がれているに過ぎない」

 

「奇跡など潰すことは容易い。しかし、その奇跡を呼び寄せる要因は根絶やしにすべきだと思うわ」

 

 フィーネから殺意が放たれる。

 

 普通の人間なら失神してしまうほど濃厚な殺意だが、ジンは平然としていた。

 

「だから?」

 

「東郷ジン、貴様を此処で潰す」

 

 フィーネの後ろから男性が現れる。

 

「やっほー、また会えたねぇ」

 

 シャツを着崩した少年。

 

 年齢は響達より少し下か同い年くらいだろう。

 

 しかし、こちらをみているその目はおそろしいほど何も映していない。

 

 冷たい瞳。

 

「楽しもうよ。キミを潰せることがとても楽しみなんだぁ」

 

 少年の顔に黒い筋が入り、ドラゴンオルフェノクに姿を変える。

 

「お前、オルフェノクか」

 

「そのとーり、さぁ、遊ぼうよぉ」

 

 ジンはため息を吐きながら隠し持っていたデルタギアを取り出す。

 

「貴方はその子と遊んでいなさい。それじゃあね」

 

 ひらひらと手を振ってフィーネは立ち去る。

 

 その様子から自分をここで釘付けにすることが目的だろう。

 

「フィーネ、貴様の目的は何だ?」

 

 去ろうとしている彼女へジンは問いかける。

 

「月を落とす」

 

 驚くことにフィーネが答える。

 

「なっ」

 

「オイ、僕のことを無視するんじゃねぇよ」

 

 振るわれるドラゴンオルフェノクの攻撃を躱しながらデルタに変身して拳を振るう。

 

「お前に構っている暇は、ない!」

 

 押し戻しながら近距離でフォンブラスターを放つ。

 

 攻撃を受けたドラゴンオルフェノクは後ろへ仰け反る。

 

「やるねぇ」

 

「遊んでいる暇はないと言った」

 

 フォンブラスターにミッションメモリーを装填してドラゴンオルフェノクへ撃つ。

 

 ターゲットマーカーがドラゴンオルフェノクの動きを封じ込める。

 

「吹き飛べ」

 

 必殺のルシファーズハンマーがドラゴンオルフェノクを貫くという瞬間、相手は自らの鎧をパージして高速で移動してデルタの背後に回り込む。

 

 高速で繰り出されたタックルを受けて壁に激突。

 

 その際にベルトが外れて変身が解除されてしまう。

 

 地面に倒れたジンへドラゴンオルフェノクはくるくると手を動かしながら近付いてくる。

 

「仕方、ないか」

 

 ジンが覚悟を決めた時、横からタキオン粒子のエネルギーを纏った拳がドラゴンオルフェノクの脇腹を貫いた。

 

「グフッ!」

 

「お前、ジンを傷つけたな?許さない、許さないからな!」

 

 パンチホッパーに変身している響はぞっとするほどの低い声でドラゴンオルフェノクの頭部を掴むとさらに一撃を叩き込む。

 

 強固な肉体を持つドラゴンオルフェノクだが、今はほとんどの鎧を解除した状態になっている。連続してパンチホッパーの拳を受けてしまえばダメージは溜まっていく。

 

 最後の一発を受けて、大きく吹き飛ぶドラゴンオルフェノク。

 

「ジン、大丈夫!?」

 

 パンチホッパーに声をかけられてジンは起き上がる。

 

「あぁ、俺は大丈夫だ」

 

「いってぇな、お前なんかにこのまま潰されてたまるか」

 

 ふらふらと起き上がりながらドラゴンオルフェノクは自らの鎧をまとう。

 

 先ほどまでのふざけた態度から一変して、冷酷な声で二人へ殺意を向ける。

 

「悪いけれど、お前はここで潰す」

 

 デルタギアを装着して変身。

 

 ミッションメモリーを装填してフォンブラスターを構える。

 

 パンチホッパーも体勢を落とす。

 

 ドラゴンオルフェノクが迫って来る。

 

 フォンブラスターから放たれたターゲットマーカーが動きを封じ込め、ルシファーズハンマーが繰り出された。

 

 その攻撃を両手で防ぐドラゴンオルフェノク。

 

 だが。

 

【ライダーパンチ】

 

「今度こそ、潰す!」

 

 パンチホッパーの必殺技がドラゴンオルフェノクの体を貫く。

 

 続けてフォンブラスターの光弾がドラゴンオルフェノクの体に穴をあける。

 

「まだだよ、僕はまだ、遊び足りないんだ」

 

 ふらふらと体から青い炎を吹き出しながらドラゴンオルフェノクが近づいてくる。

 

 身構えるデルタとパンチホッパー。

 

 ドラゴンオルフェノクが奇声を上げながら二人へ近づこうとして灰になった。

 

「一人、潰したね」

 

「あぁ、一人、殺した」

 

 淡々と言いながらデルタギアを外す。

 

 光と共に変身が解除される。

 

 遠く離れた会場から聞こえる歓声。

 

 風鳴翼のライブは大成功のようだ。

 

「響、ライブ後の打ち上げはなしだ」

 

「どこへいくの?」

 

「どうやらフィーネの奴が何かを始めるらしい。それを潰す」

 

「いいね、私も行く」

 

 頷いた響にジンは少し考える。

 

 その時、端末が鳴り出す。

 

 響が取り出すと画面には小日向未来と記されていた。

 

「なに?今、忙しい――」

 

『響!大変なの!リディアンが!リディアンが!』

 

 電話の向こうから悲鳴に近い未来の訴え。

 

 ジンは舌打ちをした。

 

「向こうに先手を取られたか、さて、答えが早く来ることを願おうか」

 

 端末を操作しながらジンは駐車場へ向かう。

 

 

 

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