春日部探偵社へようこそ   作:断空我

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次回くらいに設定などを載せる予定。

ちなみにこの世界のしんちゃん達は昔に放送された「野原ひろしの事件簿」「かすかべ探偵社」などがモデルになっています。

世界観もそれをベースにいろいろ、いじっています。




第三話:護衛の依頼

 

春日部国際警察。

 それは多発する凶悪犯罪において警視庁が特別に設置した部署、警察の管轄の垣根を超えた活動を目的としている組織である。

 

 しかし、実態は警察において役立たず、問題ある人材などが集められている組織だった。

 

「本日付で春日部国際警察のメンバーとして配属された泊進ノ介巡査だ」

 

「泊進ノ介です!よろしくお願いします」

 

「野原係長、キミに彼を任せる。頼むぞ?」

 

「あ、はい!」

 

 貴虎に指名されて書類作業をしていた野原ひろしが立ち上がる。

 

「よろしくお願いします。野原係長」

 

「よろしく泊君」

 

「彼が配属されて早々だが、インターポールイタリア代表として刑事がやって来る。どうやらどこかの犯罪マフィアがこの町で何かを企んでいるらしい」

 

「それはまた……」

 

 息をのむ野原刑事。

 

 そこでドアがノックされた。

 

「来たか」

 

 身構える貴虎達。

 

 しばらくしてドアが開かれて長身の……長身過ぎる足の上に乗った人の姿をした豚が立っていた。

 

「豚?」

 

「失礼な!私はアレッサンドロ・フランチェスカ・デ・ニコラだ、まぁ、よろしくやろうよ」

 

 シュボッと葉巻を吸いこもうとしてせき込むぶりぶりざえもん。

 

「てめぇ!この前の野郎じゃねぇか」

 

「……私も同意見だが、残念ながら同一人物ではないと言われている」

 

 叫ぶひろしに対して貴虎が眉間へ皺を寄せながら答える。

 

 前にフランス代表とかいってやってきたぶりぶりざえもんに振り回された結果、ひろしは簀巻きにされてあやうくみそ汁の具にされそうになった。

 

 貴虎も振り回されていたのだが、残念ながら別人という結果だった。

 

 どうみても、同一人物なのだが。

 

「本当にィ?」

 

「ぐだぐだいっても仕方ない。野原係長と泊巡査は今から言う場所へ彼と一緒に向かってくれ」

 

「どこですか?」

 

「場所は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春日部探偵社の一室。

 

 ジンはそこで有名なプロダクションの社長と話し合っていた。

 

「アイドルの護衛ですか?」

 

「はい、うちのレミに嫌がらせが多発しておりまして……」

 

「嫌がらせをなんとかしてほしいと?」

 

 彼の事務所にレミと呼ばれる有名アイドルが所属していた。

 

 人気で言えば風鳴翼に劣るかもしれないが人気急上昇中ではある。

 

「そうなんです。ここの事務所でしたらどんな問題もすぐに解決してくれると……」

 

 いやがらせというのが新聞の四コマ漫画の切り抜き、謎のファックス、彼女の寝込みを狙って顔中に洗濯ばさみをとりつけるといったもの。

 

 取り付けた洗濯ばさみが日に日に大きくなっていき、事態を重く見たプロダクションの社長は解決のために春日部探偵社へ訪れたのである。

 

「わかりました。引き受けましょう!」

 

 ずぃっと隠れていたしんのすけを戻す。

 

「報酬についてはこのように」

 

「背に腹は代えられません。よろしくお願いします」

 

 決まった。

 

「オラもいくぅ!レミちゃーんに会いたい!」

 

「お前、護衛だってことわかっているか?てか、お前の場合、レミちゃんの生足の撮影とかするだろ?」

 

「そ、そんなことないぞ!」

 

「本当に?ウソついたら響のグリグリだぞ?みさえさん直伝の」

 

「……やる、かも」

 

「だよなぁ。ま、お前を事務所に一人っていうもの問題だし、行くか」

 

「うぉっほーい!」

 

 喜ぶしんのすけ、ジンは苦笑しながら立ち上がる。 

 

 後々にこの事件で自分達が不在の間に面倒なことが起こってしまい、激しい後悔をすることになるのは別の話だ。

 

 社長と一緒に向かおうとするとソファーで寛いでいた矢車が声をかける。

 

「出かけるのか?」

 

「アイドルの護衛だ。どーする?」

 

「面倒だ。パス……酒でも飲んでいる。何かあれば呼べ」

 

「そうするよ」

 

 矢車も事務所の鍵を持っている。

 

 戸締りは任せて俺と響、しんのすけの三人は芸能プロダクションのアイドル、レミの護衛のための道具をそろえることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、面倒だ」

 

 ぶらぶらと矢車は懇意にしている店へやってくる。

 

 はっきりいって護衛任務など面倒以外の何物でもない。

 

 かつて組織に所属していた自分なら行動をしていただろう。だが、今の矢車にとってはどうでもよいものである。

 

 ぶらぶらしながらカウンター席の方へ向かうと化粧をしたスタイル抜群の女性が近づいてきた。

 

「あら、矢車さん、今日も来てくれたのね?」

 

「いつもの」

 

「はいはーい」

 

 女性は笑顔でカウンターの男から受け取ったテキーラを持ってくる。

 

 矢車はそれを一気に飲み干す。

 

「いつも思うけれど、それ、大丈夫なの?」

 

 普通は大丈夫ではない。

 

 しかし、喉や全身を焼かれたと錯覚する気分が良いのである。

 

 自分が地獄にいると思えた。

 

 あの日から少しばかり変ったと思っているが、果たしてどうだろうか?

 

 疑問を抱きながらテキーラを飲む。

 

「あっちはうるさいな」

 

「うん、最近、来るようになったお客さん、羽振りがいいみたいなの……でも、好きじゃないんだぁ」

 

「この店は客を選ぶのか?男で金持ちなら誰だっていいだろ?」

 

 少しふらつきながら矢車が言うと女性は苦笑する。

 

「そうあるべきなのかもしれないけど、私だってプロだもん、良い人と飲みたいって思うもん」

 

 男を魅了させるようなスタイルをしている女性が言うとは思っていない(矢車談)言葉に彼は何も言わずに酒を飲もうとした時。

 

 テーブル席から悲鳴があがった。

 

 喧嘩はこの店でよくあることであり、矢車も何度か遭遇したので興味なく別の酒を飲もうとした時。

 

「あ?」

 

 目の前にあったはずの酒がなくなっていた。

 

 視線を動かすとグラスが地面に転がっている。

 

「あぁ?」

 

 後ろを見る矢車、そこでは店内にいるノイズ達とニタニタと笑みを浮かべている男。

 

 そんな男の周囲には黒いスーツを着た集団が警戒したような笑みを浮かべていた。

 

 矢車はいつの間にか傍にいた女がいなくなっていたことに気付く。

 

 女がいた場所には少しばかり残っている灰。

 

「あぁ、お前ぇ」

 

 苛立ちを隠さずに矢車は立ち上がる。

 

 笑みを浮かべていた男と目が合う。

 

「お前、俺のこと、笑っただろ?」

 

「当然だろ?お前らみたいな塵芥が王様みたいな俺に歯向かうことがどれほど愚かなことか、笑う以外に教えてくれよ」

 

「いいだろうぉ、教えてやるよ。お前に」

 

 警戒していた男達を押しのけて矢車が前に出た。

 

 男を守るようにノイズが現れる。

 

「地獄をみせてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンで、何で国際警察の人がいんのさ」

 

「いや、奇遇だね」

 

「父ちゃんもアイドルのレミちゃん目当てぇ?警察がいけないんだぁ」

 

「ち、違うって!こっちは――」

 

「あのぉ、野原係長、こちらの方々は?」

 

 レミの住まう屋敷。

 

 親が有名企業の社長らしくかなり豪華な屋敷にジンや響、しんのすけが屋敷に張り込もうとしたタイミングで野原ひろしと泊進ノ介がやってきたのである。

 

「ごめんな、こっちも捜査のためにやってきたんだ。えっと、レミちゃんはいる?」

 

「あぁ!ずるいぞぉ!父ちゃん!オラだってレミちゃんのところに」

 

「きゃあああああああああああああ!」

 

「今の、悲鳴ですよ!」

 

 進ノ介とジンが同時に駆け出す。

 

「レミさんの部屋は!」

 

「そこを曲がって左!」

 

 二人は息の合ったコンビネーションでドアを開ける。

 

 そして、絶句した。

 

 レミの寝室。

 

 寝間着姿の彼女はベッドから離れている。

 

 ベッドには上半身裸で下半身、紫色のタイツを履いている二足歩行の豚であった。

 

「アンタ、何やってんだ!?」

 

「あー、知り合い?」

 

「イタリアからやってきたインターポール捜査官で、今回の……おっと」

 

「チッ、口固いな」

 

「けだものぉ」

 

「「お前がな!」」

 

 二人同時にぶりぶりざえもんへゲンコツを落とした。

 

「あ、ぶりぶりざえもん!」

 

「失礼な!私はアレッサンドロ・フランチェスカ・デ・ニコラだ」

 

「長いからぶりぶりざえもんでいいんじゃねぇか?」

 

「略すな、愚か者」

 

「エロブタは外で反省してろ!」

 

 響の回し蹴りがぶりぶりざえもんに直撃。

 

 部屋の外へ放り出される。

 

「……凄いな、あの子」

 

「まぁ、な」

 

 進ノ介にジンは肩をすくめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野原係長、春日部探偵社って何ですか?」

 

 屋敷の外で見回りをしていたひろしと進ノ介。

 

 進ノ介は彼らのことが気になっていた。

 

 警察組織よりも探偵が雇われていたことに思うところはある。しかし、あまりに個性的なメンバーに興味の方が勝る。

 

「春日部探偵社は金さえ受けとれば、どんなことでも引き受ける探偵たち。メンバー全てにあったことはないけれど、依頼完遂99.9パーセントを常にキープしている人達だよ」

 

「金さえあればって」

 

「そこだけをみれば、みんな、そういう顔をするんだね」

 

「え?」

 

 戸惑う進ノ介。

 

 直後、屋敷内から大きな音が響いてきた。

 

「まさか、襲撃!?」

 

「行こう!泊君!」

 

 二人が屋敷のテラスに駆けつけると、そこでは痙攣して倒れている不審者と頭にたんこぶを複数個、作って気絶しているぶりぶりざえもんの姿があった。

 

「え?」

 

「これは?」

 

「犯人確保っと、後は警察の方でよろしく」

 

 痙攣している不審者を洗濯ばさみ(推定二メートルくらい)で拘束しながらジンは立ち上がった。

 

「そこの、インターポールの刑事さんは?」

 

「自業自得」

 

 手を払いながら響は気絶しているぶりぶりざえもんを冷たい目でみる。

 

 野原しんのすけは巨大な洗濯ばさみを模したロボットの上に腰かけていた。

 

「犯人確保は警察の仕事、さて、明日、頑張るか」

 

 体を伸ばしながらジンは立ち上がる。

 

「帰るの?」

 

「今日は襲撃ねぇだろ。明日も忙しいからな……寝る」

 

「豚のせいで疲れた」

 

 帰り支度を始める三人にひろしは「気を付けて帰りなよぉ。しんのすけは歯を磨け」といって見送る。

 

「……係長、俺、困惑しています」

 

 戸惑っている進ノ介にひろしは苦笑した。

 

「ま、追々、慣れるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、なんで?」

 

 翌日、泊進ノ介はどういうわけか春日部探偵社のメンバーと一緒に下町の中華料理屋に来ていた。

 

 目の前でチャーハンや餃子を食べているジン、響、しんのすけの三人+ぶりぶりざえもん。

 

 どうして、泊進ノ介がここにいるのか?

 

 それは春日部探偵社に呼ばれたからである。

 

――警察が必要になると。

 

「いや、何で食べているの?」

 

「「腹が減ったから」」

 

 同時に答えるジンと響。

 

「息ぴったりだな」

 

「ま、刑事のしんちゃんもそのうち慣れるよ」

 

「え?慣れるって、どういうこと?てか、刑事のしんちゃん?」

 

「泊進ノ介でしょ?オラ、野原しんのすけ、だから刑事のしんちゃん」

 

「成程……」

 

 納得してしまう進ノ介。

 

 それから食べている響とジンをみる。

 

「そういえば、あの二人、仲良しだな」

 

「ま、いつかは結婚するんじゃない?」

 

「え?そういう関係?」

 

「いいや、全然」

 

 首を振るジン。

 

「いつかはそうなる」

 

 ジンを睨む響。

 

「見事に違う回答だなぁ……てか、こんなに食べて大丈夫なの?」

 

「大丈夫、ちゃんと計算しているから……けれど、おい豚」

 

「誰が豚だ!私は由緒あるイタリアの」

 

「イタリアの首都は?」

 

 響の問いかけにつまるぶりぶりざえもん。

 

 横からひそひそとしんのすけが囁く。

 

「スペインだ」

 

「「ローマだ、アホ」」

 

 響と進ノ介が同時に叫んだ。

 

「まぁまぁ、事前に話したこと、やれ」

 

「偉そうに命令して、まぁいい!」

 

 ぶりぶりざえもんは自らの腕の毛を抜いてスープの中に落とす。

 

「うぉおい!ここの料理は豚の毛が混ざってんのかぁ!」

 

 叫ぶぶりぶりざえもんに店員が慌ててやってくる。

 

「も、申し訳ありません!」

 

 頭を下げながら謝罪してきた。

 

 怒るぶりぶりざえもんは悪態をつきながら店員を煽る。

 

「いやいや、流石に」

 

 一応、警察官が問題を起こすのはまずい。

 

 進ノ介が止めようとした時、ぶりぶりざえもんの一言で事態が変わる。

 

「インターポールを舐めんじゃねぇぞ!」

 

「なに?インターポール」

 

 男の表情が変わり、懐から拳銃を取り出す。

 

「え?」

 

 突然の事態に呆然とする進ノ介。

 

 至る所から現れた男たちが銃器を全員へ突きつける。

 

「え?え?どういうこと!?」

 

 戸惑う進ノ介に対して、他のメンバーは酷く冷静だった。

 

「当然の反応ですなぁ」

 

「五歳児が冷静なことに俺も驚きだよ!?」

 

 武装した男達に店から地下へ連行されていく五人。

 

 目を白黒していた進ノ介だが、冷静すぎる三人をみて次第に落ち着いていく。

 

「てか、何なんだ、ここは?」

 

「秘密結社?〇〇の爪みたいな」

 

「えぇ!?」

 

「違う、黒い幽霊〇だよ」

 

「えぇ!?」

 

 しんのすけ、響の告げた内容に驚く進ノ介だった。

 

「いや、香港マフィアのアジトだから」

 

「ごめん、逆にしっくりこない」

 

「染まってきてんなぁ」

 

 進ノ介の姿にジンは小さく笑う。

 

「黙ってついてこい」

 

 銃を突きつけられて大人しく手を挙げる四人。

 

 ぶりぶりざえもんはいつの間にか銃を突きつける側に回っていて、全員から踏みつけられた。

 

 階段を下りてたどり着いたのは広い空間。

 

「まさか、お前達が噂の春日部探偵社か、お会いできて光栄ダ!」

 

 暗闇の向こうから現れたのは禿げたオッサン。

 

「禿だ」

 

「禿だね」

 

「ツルッツルだな」

 

「拭いたら光りそう」

 

「油でも塗るか?」

 

 それぞれ感想を漏らす。

 

「お前ら!失礼だゾ!」

 

 香港マフィアのボスはダンと回転机を叩く。

 

 実際のところ、マフィアのボスの頭はツルツルで拭いたら光る予感が五人の中にあった。

 

「さて、話がズレたが、我が組織に探偵社が何の用かな?」

 

「まぁ、一応は交渉かな。アイドルのレミの嫌がらせをすぐにやめろ」

 

「え?マフィアがアイドルの嫌がらせの犯人!?」

 

「何だ、お前は気づいていなかったのか、やれやれ、日本の警察の底が知れるなぁ」

 

「うるさいよ!そういうお前は気づいていたのか!?」

 

 小ばかにした態度をとるぶりぶりざえもんに進ノ介は叫んだ。

 

「当然だ、インターポールを舐めるな」

 

「「「(絶対にウソだ)」」」

 

 胸を張るぶりぶりざえもんに全員が冷たい視線を向けた。

 

「嫌がらせだと?私はレミを愛している!ファンとして手紙を五百通も送ったんだ!なのに一通も返事を寄越さなかったんだ!私の気持ちを無碍にした!当然の報いだ」

 

「いやいや!五百枚とか」

 

「変態だ」

 

「うーん、オラでもそんなに書かない」

 

「とにかく、私の邪魔をする貴様らはここで消えてもらう」

 

「やれやれ、仕方ない」

 

 動き出そうとしたジンよりも早くぶりぶりざえもんが回転机の上に立つ。

 

 ポケットに両手を入れながらゆっくりと歩いていく。

 

 放つオーラというべきか空気にマフィアのボスは息をのむ。

 

 そして、振り返りマシンガンを突き付ける。

 

「ナハハハハハ!私は強い者の味方なのだぁ!」

 

 銃口の先は香港マフィアのボス。

 

 後ろを見ると春日部探偵社のメンバーがいた。

 

「あれ、タイム!やり直し、やり直し」

 

 走りながらマフィアのボスのところへ向かい、四人へ銃を突きつけようとするもどういうわけかマフィアのボスへマシンガンを構えていた。

 

 不思議に思いながらスタート位置に戻って走り出すと同時にジンが机を回転させる。

 

 くるくると回る机によってぶりぶりざえもんは元の場所へ戻った。

 

「あぁ!汚いぞ!」

 

「どっちが!」

 

 進ノ介が殴り、全員がぶりぶりざえもんを踏みつける。

 

「やめろ!この野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 叫びながらぶりぶりざえもんがマシンガンを連射した。

 

 突然のことに仰け反る全員。

 

 無茶苦茶に撃たれた弾丸は棚の上に置かれていたレミのフィギュアの頭を撃ちぬいた。

 

「あぁ!自家製レミのフィギュアがぁあああああ!殺せ!奴らを殺せ!」

 

「あの人、短気過ぎるゾ!」

 

「自家製っていったか?冗談抜きで血涙流しているぞ」

 

「アホだ」

 

「キミだけ冷静だね」

 

 辛辣な言葉を告げた響に進ノ介は感想を漏らしてしまう。

 

「(この人達、いや、この子も、みんな冷静だ……)」

 

 むしろ、戸惑っているのは進ノ介だけという事実に愕然としていた。

 

「(刑事である俺だけが困惑していた……クソッ)」

 

 彼らの姿を見ていると慌てている自分が酷く滑稽に思える。

 

「どうしたの?」

 

「いいや」

 

 響に尋ねられて進ノ介は首を振り、ネクタイを締めなおす。

 

 そんな進ノ介の表情をジンがちらりと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞ!もう逃さん、必ず殺してやる!」

 

 怒りに顔を歪めてマフィアのボスがやってくる。

 

 逃げ出したジン達は厨房へ来ていた。

 

「逃げたつもりだろうが違うぞ!お前達は誘い込まれたのだ!」

 

 マフィアのボスが指を鳴らすと壁や天井がめくれて、そこから獅子舞の仮面をつけた集団が現れる。

 

「おぉ~!」

 

「いや、今のどうやったんだよ!?」

 

 感嘆の声を漏らすしんのすけと叫ぶ進ノ介。

 

「時間は?」

 

「問題なし」

 

 それに対してジンと響は酷く冷静だった。

 

「お前達は殺す!」

 

「まぁ、待て、ボス!私だけは見逃してくれ、そうしたらこれをやろう!」

 

 ぶりぶりざえもんが取り出したのはどこで撮影したのか、レミの足だった。

 

「それはレミの生足!?よし!約束だ!」

 

 しんのすけを拘束して歩き出すぶりぶりざえもん。

 

「コイツ、最低だ」

 

 進ノ介が呆れて言葉を漏らす中、ぶりぶりざえもんはしんのすけをボスの前に連れ出す。

 

 ボスはハンマーを構える。

 

「させるか!」

 

 振り下ろされるという瞬間、進ノ介は駆け出し、周りを気にせず走り抜けて、そして。

 

「ぶふぁああ!?」

 

――ボスを殴り飛ばした。

 

「ぶふぃぃぃぃぃぃ」

 

 ついでにぶりぶりざえもんを踏みつぶす。

 

 息を吐きながら進ノ介は拳を握り締める。

 

「お前達みたいな悪党にこんな小さな子を傷つけさせてたまるか!」

 

 覚悟を決めた表情で進ノ介はしんのすけを守る。

 

「きぃさぁまぁ!」

 

「俺は刑事だ。市民を守るのが警察官の義務だ!」

 

「生意気だ!お前も殺して」

 

「さぁて、ボスさんよ。タイムアップだ」

 

 叫ぶボスと戦闘員たちの前にジンが立つ。

 

「な、何のことだ?」

 

「外は国際警察が包囲している。アンタは俺達に喧嘩を売った。だから、しかるべき機関に裁きを受けてもらう」

 

「ふざけるな!お前らは皆殺しだ!我らにはこれがあるのだから!」

 

 ボスは懐から細長いUSBメモリのようなものを取り出す。

 

 骸骨を象ったデザイン、側面には『B』と表示されていた。

 

【バード!】

 

 メモリを起動すると自らの腕に差し込む。

 

 体内にメモリが消えるとボスは鳥を模した怪物へ姿を変える。

 

「怪物!?」

 

 驚く進ノ介を前にバードドーパントが雄叫びをあげて飛び掛かる。

 

「ぶひぃ!」

 

 突然のことに反応が遅れて進ノ介はぶりぶりざえもんと共に壁に叩きつけられた。

 

 ぶりぶりざえもんがクッションになってくれたおかげで頭にダメージはなかったがあまりの衝撃に進ノ介は気絶してしまう。

 

「刑事のしんちゃん!」

 

 しんのすけが気絶した進ノ介へ駆け寄る。

 

「響、彼らのこと、頼む」

 

「いいよ、どうするの?」

 

「ま、“刑事のしんちゃん”がみていないから、俺が行くよ」

 

 飛来してくる黒いカブトムシ、ダークカブトゼクターを掴む。

 

「この姿を見られると色々とややこしいからな」

 

 気絶している進ノ介をみながらダークカブトゼクターをベルトにセットする。

 

【Henshin】

 

 光と共にヒヒイロノカネで作られた鎧を身に纏う。

 

――ダークカブト。

 

 そう呼ばれる戦士へ変身する。

 

 バードドーパントは唸りながらとびかかってきた。

 

 ダークカブトは正面からバードドーパントの攻撃を受ける。

 

 バチバチと爪がヒヒイロノカネの装甲を切り裂こうとするがダメージはない。

 

 近距離で拳を連続して叩き込む。

 

 バードドーパントを守ろうと獅子舞の戦闘員が飛び掛かる。

 

 獅子舞の戦闘員の顔をダークカブトは殴った。

 

 パンチを受けた獅子舞の戦闘員の顔は砕け散る。その中から覗いたのは機械。

 

「こいつら、ロボットか」

 

 専用武器、カブトクナイガンで次々と戦闘員を射抜いていく。

 

 次々と破壊されていく戦闘員に焦りを覚えたのかバードドーパントが羽を広げてダークカブトに迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれ?」

 

「あ、進ノ介君、目を覚ました」

 

 進ノ介が体を起こすとひろしが声をかける。

 

「野原係長、あれ、俺は?」

 

「爆発のショックで気絶したんだよ」

 

 起き上がろうとした進ノ介をやんわりとひろしが止める。

 

「爆発?」

 

「香港マフィアのボスがアジトに設置していた爆弾を起動させたんだよ。幸いにも周囲に人がいなかったからね、ケガ人はキミとニコラ刑事くらいだよ」

 

 ひろしが指さすと包帯まみれのぶりぶりざえもんが肉屋に運ばれていた。

 

「そうだ、探偵社、彼らは!?」

 

「無事だよ。仕事の報告をしにここへいないけれど」

 

 進ノ介が周りを見ると制服姿の警官達が現場検証をしていた。

 

 探偵社の、彼らの姿はない。

 

 そのことが悔しさを進ノ介は感じた。

 

「助けられたってことか」

 

「泊君、彼らから伝言を預かっているよ」

 

 顔を上げた進ノ介にひろしはにこりとほほ笑む。

 

「機会があれば、また会おうだって」

 

 その言葉に進ノ介は笑う。

 

 次に会うまでに刑事としてもっと成長しよう。

 

「良い顔になったね」

 

「係長、俺、頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、懐が潤った」

 

「嬉しそうだね」

 

「まぁ、報酬がもらえるのは嬉しいことだからな」

 

 ジンと響は探偵社のあるビルに帰宅する。

 

 しんのすけを野原家に返しているため、久しぶりの二人っきりだ。

 

「ねぇ、ジン……どうしたの?」

 

 鋭い目でジンは地面を注視していた。

 

 数滴の血液。

 

 ジンは事務所の前へ向かう。

 

「矢車!」

 

 春日部探偵社の入口、そこでジンは扉にもたれるようにして倒れている矢車を発見した。

 

 矢車は血まみれだった。

 




次回、ようやく転生者登場……予定。
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