自分はオーズが嫌いというわけではありません。
この短編もあと、一話~二話で終わらせる予定。
「ジン、矢車師匠は?」
「知り合いの闇医者にみてもらったが大丈夫だ。しばらくは輸血するために動けないそうだが」
深夜の探偵社。
そこにジンと響がいた。
血まみれの矢車を闇医者に預けて戻ってきたジンはフードをかぶって縮こまっている響へ声をかける。
「一応、言っておくが矢車が傷ついたのはお前が原因じゃないぞ?」
「わかっている。でも、私、呪われているから」
「アホらしい」
俯いている響にジンは呆れた。
「矢車や俺もこの仕事を始める時から覚悟はしている。まぁ、矢車をやった奴は許さないけどな」
だから、とジンはフードの上から響の頭を撫でる。
「気にするくらいなら、下手人を捕まえることを考えろ」
「……うん」
「明日から忙しくなるから少し休め」
「…………わかった、一緒に寝よ」
「少しやることがあるから一人で」
「お願い、怖いから一緒に」
服の裾を掴んで離さない響にジンはため息を零す。
こうなった響は頑固だ。こちらが折れるまで決して譲らない。
「わかった、わかった」
響の手を引いて、ジンは別室の寝室へ向かう。
ただ寝ただけである。決して疚しいこと何にもないことをここで記しておいた。
翌日。
「矢車さん、話だとしばらくは動けないって聞いたけど?」
「あんな生ぬるいところで死ねるか」
「あ、そう」
包帯を巻かれながらも平然と事務所内にいる矢車の姿に重体だと聞いていた木場勇治は苦笑するしかなかった。
「さて、全員が揃っているようだからそろそろ始めてもいんじゃないかな?ジン」
「そうだな、クリム」
ジンは机の上に置かれている銀色のベルトに頷いた。
ベルトには顔らしきものが表示されている。
木場勇治、
矢車想、
クリム・スタインベルト、
響、
そして、東郷ジン。
探偵社に所属しているメンバーで戦闘面において秀でている者達が集っていた。
「さて、矢車をボコボコに」
「あぁん?」
声を上げてにらむ矢車。
ジンは肩をすくめる。
「……下手人の件だが、クリムが偶然にも映像を手に入れてくれたからそれをみてみることにするか」
「では、映写を始めよう!」
クリムの言葉と共に室内が暗くなり、壁に映像が流される。
――それは阿鼻叫喚ともいえるような光景だった。
どこかのクラブ。
内装や天井の至る所が破壊されていく。
破壊していくのはノイズ。
人型ノイズが逃げ惑う人たちを次々と炭に変える。
普通の人ができることはただ逃げる事のみ。
しかし、一人、また一人とノイズによって消えていく。
その中でキックホッパーが室内の中心にいる何かと戦っている。
人の姿をしているが漆黒の鎧、胸部には鷹、虎、飛蝗の三つの円形の紋章が描かれている。腹部には長方形の形をしたパーツがあり、その中に三つの赤、黄、緑のメダルがはめ込まれている。
矢車の纏うキックホッパーの蹴りが放たれる瞬間、緑色のメダルが輝き、その蹴りを受け止める。
続けて、黄色いメダルが輝き、腕に虎の爪が展開されてキックホッパーを切り裂く。
キックホッパーも攻撃を受けているだけではない。反撃して相手に叩き込んでいる。
しかし、阻むようにノイズが壁となってキックホッパーの攻撃を防いでいた。
「この後、矢車君は攻撃を受けて敗北、辛うじて逃走した」
「ハッ、笑えよ。無様に一人だけ生き残った、この俺をよぉ」
室内が明るくなり苛立ちを隠さずに矢車が転がっていた空き缶を片足で踏みつぶす。
「落ち着きなよ……その、相手の正体は?」
「ただの餓鬼……見た目はなぁ」
矢車が懐からひび割れた端末をみせる。
クリムが端末を受け取って解析を始めた。しばらくして、クリムがプリンターに接続して印刷した。
「便利だなぁ」
木場勇治が感嘆とした声を漏らしながらプリンターから印刷された用紙を手に取る。
「情報を見る限りでは普通の人だね……いや、普通という言い方は悪いかな、悪人だよ」
受け取った情報が記載された紙をジンはみる。
「こりゃ酷い、窃盗、傷害、軽犯罪は全てやりつくしているような奴だな」
「つまり、社会のクズ?」
響の言葉にジンと木場は肩をすくめた。
「俺はあんなクズに負けたのか……クズ以下か」
矢車はより荒れる。
「まだ負けたわけじゃない。これから挽回するんだろ?」
「東郷の言うとおりだ。まだ負けたわけじゃないよ?矢車さん」
「フン」
視線をそらす矢車。
「とにかく!この男を捕まえるという事で良いのかな?」
「あぁ」
クリムの問いかけにジンは頷いた。
「矢車をボコボコにした件も含めて、捕まえた後は国際警察に身をゆだねることになるだろうな」
「矢車師匠の仇をとる」
「おい、俺はまだ死んでねぇぞ」
響の言葉に矢車が悪態をつく。
ジン達は大声で笑った。
「それで、今回はこの車?」
春日部探偵社の入口。
そこには黒と紫を基調にしたスポーツカーが停車している。
響はぺたぺたと興味深そうに車へ触れていた。
「その通り!名前をプロトトライドロン!正式なロールアウトに時間がかかりそうなのでね!」
クリムがジンの腹部に装着される。
「あ?」
「さ!ジン、運転するんだ」
「お、おう」
やけに自信満々のクリムに戸惑いながらジンは運転席に響は助手席へ座る。
走り出すプロトトライドロン。
その後ろを木場が運転する車が続く。
「完成品はベルトを差し込む場所があるってきいたが、プロトタイプはないんだな」
「本来なら色々と手を加えたかったのだが、プロトタイプを形にするまでにかなりの時間がかかってね」
「……前から気になっていたけど、クリムはなんでベルトなの?」
響の問いかけにベルトの画面が困った顔を浮かべる。
クリムは人ではない。
その意識はドライブドライバーと呼ばれるベルトの中にインストールされており、本来の肉体は何年も前に失われている。
詳しい事情を知る者は限られていた。
運転席のジンは沈黙して答えない。
「すまない、響達のことは信頼しているのだが……私の中で話す決意ができたら伝えようと思う」
「わかった。私も無理やり聞きたくないし」
「ありがとう」
目を細めながら微笑む響にクリムは感謝の言葉を告げる。
ジンは無言でアクセルを踏み込む。
しばらくして、二台の車は町はずれにある古びた洋館へ来ていた。
前にカラス男が潜伏していた場所と異なり、森の中にひっそりとただ朽ちていく時をまつのみ。
そんな場所に彼らは来ていた。
「ここにあのくそ野郎がいるのか?」
「調べたところ、屋敷の周辺にはノイズが存在していることが確認されている」
クリムの情報にジンは柔軟運動をはじめた。
「響と木場は待機で」
「ジン!私も行く!ノイズを叩き潰す!」
「全員で一気にいったら戦力をさらすようなものだ。だったら、様子見、いや、最初の挨拶は俺と矢車で行こう」
「いいねぇ、地獄に足を突っ込めるわけだ」
獰猛な笑みを浮かべる矢車。
ジンは木場へ二言、三言、告げて矢車と共に屋敷へ近づいていく。
「ジンは何て?」
ノイズを潰すことができないから若干、不機嫌な声で響が尋ねる。
「二人で暴れるから隙をついて屋敷を調べてほしいって、何かあれば、これで連絡してって」
「なぁ、何でこんなところに屋敷があるのに、誰も知らないんだ?」
「さぁなぁ?離れすぎて誰も知らないだけか、何者かが意図的にここの情報を伏せていたのかのどっちかだろうな」
「もし、後者だとするのなら相手は底知れない相手だ。警戒はすべきだ」
「まぁな、クリム、ドライブシステムの方は?」
「完成はしている。だが」
クリムが続きを濁す。
続きを理解しているからこそ、ジンは何も言わない。
「さて、挨拶をするわけだが」
「これをやるか」
ジンはどこから取り出したのかロケットランチャーを取り出す。
「何だ、それは?」
「しんちゃんボンバー!発射!」
「変な名前だな」
呆れる矢車を余所に放たれた砲弾が屋敷へ直撃。
大きな爆発を起こす。
「燃えないな」
「そうならないようにしてあるからな、さて、どんな反応が……」
しばらくしても何も起こらない。
ノイズも姿を現さないし、何も。
「あれ?」
首をかしげていた時。
「だぁれだぁああああああああああああああああああああ!お楽しみを邪魔しやがってぇえええええええ」
「沸点が低いようだね」
呆れるクリム。
「あ?何だ、てめぇら?」
「俺はともかく矢車の方は」
「男なんて興味ねぇよ」
ばっさりと切り捨てられて矢車に苛立ちの表情が浮かぶ。
金髪に染めた髪をオールバックにして、派手なジャケットを着ている姿はどうみても不良にしかみえない。
「てっきり来るなら“二課”の連中だと思っていたんだが、まぁいい。てめぇらも雪音クリスを狙ってんだな」
「は?」
突然のことに目を点にするジン。
仲間の敵討ちにきたのだが、どうやら向こうは別の目的で攻めてきたと勘違いしているらしい。
「悪いが、あれは俺が味わう予定の女だ。てめぇらは失せな。痛い目を見る前によぉ」
笑みを浮かべる男に矢車の怒りは頂点に達した。
「お前ぇえええ、俺のことを笑ったなぁ!」
やってきたホッパーゼクターを掴んでキックホッパーに変身する。
「彼、荒れているねぇ」
「まぁ、ボコボコにされた相手が自分のことアウトオブ眼中なら仕方ねぇだろ?色々と気になることはあるけれど……クリム」
「オーケー!シフトカー!」
「さて、始めるとするか」
やってくる黒いシフトカー。
「行こう!Start your engine!」
ドライブドライバーのシステムを起動。
シフトスピードプロトタイプを掴んで、腕に装着されているシフトブレスへシフトカーを差し込む。
【ドライブ!タイプスピード!】
光と共にジンの体が漆黒の鎧に包まれる。
クリムが考案したドライブシステムの戦士。
「プロトタイプも良いところだから、ゼロドライブか」
「良い名前だ!採用しよう!」
「あ、そう(名前すらなかったのか)」
クリムの言葉に驚きながらもゼロドライブが拳を構える。
「さ、試し乗りだ」
「何もない」
木場勇治と響は隙を突いて屋敷の中に突入した。
力を纏わずに響は屋敷内を見渡して呟く。
「何かの設備とかが置かれてはいたみたいだけど、撤去もしくは破壊されているね」
地面に広がる埃を調べる木場。
響はちらりと木場をみて、歩き出す。
「あ、響君」
「なに?」
「あっちで音がする」
指さす方へ足早に向かう響。
彼女は木場勇治が苦手だ。
常に笑顔を絶やさず。
口から出る言葉は当たり前のようなものばかり。
戦えば強いのに暴力を嫌う。
破壊の為に率先して力を振るう響にとっては嫌悪の対象になっていた。
しかし、ジンが彼を信頼しているから行動はしている。
最低限の会話で済ませる。
木場がある部屋の前で立ち止まった。
「ここに誰かいる」
響はいつでも戦える状態で構えた。
ドアをゆっくりと開ける。
その向こうでは一人の少女がぺたんと座り込んでいた。
「なぁ~、矢車」
「話しかけるな」
ゼロドライブは首を傾げながらキックホッパーへ質問を投げようとしたが苛立ちの声で拒絶されてしまう。
「なぁ、クリム」
「すまない、私も困惑している」
もう一度、ゼロドライブは目の前の相手をみる。
地面に倒れこんでいるタカ、トラ、バッタの紋章が胸部にあり、仮面と鎧を纏った存在。
時間は少し遡る。
「何だよ、お前らも同類かよ」
ゼロドライブとキックホッパーの姿をみて、男がため息を吐く。
男は長方形のケースのようなものを取り出すと腹部に装着する。
装着したアイテムはベルトになった。
ベルトへ赤、黄、緑のメダルをはめ込み、側面についていた円形のアイテムでスキャンする。
「変身!」
【タカ!トラ!バッタ!】
男の前に三つの獣の紋章が現れて鎧を身に纏う。
「仮面ライダーオーズ、お前らを潰す欲望の王だ!」
オーズと名乗った男は地面を蹴り、駆け出す。
そうして、戦闘が始まった。
――始まって数十分、経たずして。
ゼロドライブとキックホッパーの攻撃によってオーズは地面に倒れていた。
キックホッパーを倒した相手ということで警戒していたゼロドライブだが。
「弱すぎる」
「あくまで推測だが、あの場で矢車君は他の人を庇いながら戦っていたこととノイズによる物量作戦で押し負けたと考えられる」
「まぁー、そうとしか考えられないな」
クリムの指摘が正解だろうと頷くゼロドライブ。
「ハッ、笑えよ。こんな雑魚に負けた俺をよぉ」
相手が弱すぎたことに拍子抜けもよいところだと自虐的な態度をとるキックホッパー。
ふらふらとオーズが体を起こす。
「殺す!てめぇらは殺すぅぅぅぅぅ!」
【タカ!トラ!チーター!】
隙をついてメダルを入れ替えたオーズは俊足で迫る。
だが。
「ほい」
「フン」
二人は左右に回避すると同時にパンチとキックを叩き込む。
「なん、で!」
反撃を受けて戸惑う男。
「直線的でわかりやすい」
「馬鹿正直もいいところだ」
呆れながらおまけというようにキックホッパーが蹴りをオーズのがら空きの背中に叩き込む。
「クソがっ!何なんだよ!お前らサブライダーじゃねぇか!俺は主役だぞ!王だぞ!そんな俺がなんでてめぇらなんかに!」
隙をついたつもりで取り出した剣をゼロドライブが手刀を入れて叩き落す。
性能的にゼロドライブはオーズに劣る。
だが、ジンと男は圧倒的な差があった。
「確かに力は凄いだろうよ。けれど、お前はそれに慢心して何にもしていない。ただただ呆れてしまうわ」
圧倒的な戦闘の経験差というものが――。
「貰えた力で偉そうに説教を垂れるんじゃねぇよ!てめぇのそのベルトも!力も貰い物だろうがぁああああああ!」
「叫ぶ元気があるなら反撃して来いよ。隙だらけだってぇの、だから――」
【ライダージャンプ!】
音声と共にゼロドライブの頭上を越える影。
【ライダーキック!】
エネルギーを纏いながら繰り出されるキックホッパーの【ライダーキック】がゼロドライブを超えてオーズに炸裂した。
必殺技を受けたオーズは地面を転がる。
「が、ふぅぅぅ」
ぴくぴくと無様な痙攣をするオーズ。
光と共に変身が解除されて、口からよだれをこぼす男の姿が現れる。
本当に勿体ないとゼロドライブの仮面の中でジンは呆れる。
オーズの力がどういうものなのかジンは知らない。
だが、ドライバーにセットされている三つのメダルを入れ替えることでその力は様々な派生の力をみせるのだろう。
全ては成長していればだろう。
慢心せずその力を鍛えていたらゼロドライブやキックホッパーは苦戦、もしくは敗北していたかもしれない。
現実は非情である。
目の前の男は特訓や鍛えるという類の全てを放棄した。自分の欲、嗜虐心、それら全てを満たすためだけに力を使う。強者も弱者もない、強い覚悟もない相手。
そんな奴に負けることなどない。
ましてや、守るために注意を割く必要がない状態で負けなど。
彼らにありえない。
「くそっ、クソクソクソクソクソクソクソクソクソ!このまま終わってたま――」
【スピスピスピード!】
一瞬でゼロドライブが男の眼前に立って男の片腕をへし折った。
「いぎぃぃ!?」
「痛いか?」
ゼロドライブが静かに問いかける。
「その程度の痛みで悲鳴を上げるんじゃねぇよ。お前が殺した、いや、ノイズを使って消し去った人たちはもうそういった痛みを感じることもねぇんだからよ」
へし折った個所を掴みあげるゼロドライブ。
「次、変な動きを見せればへし折るだけじゃ済まさない。手足をそぎ落としてダルマにしてでも無力化させる」
シフトカーの映像で男は笑っていた。
矢車が必死に守っていた人たちとノイズで消し去っていくことに快感を覚えていた。
オーズの力で店を壊す。
その時に男は笑いながら力を使っている。そんな光景にどうしょうもないくらいジンは苛立ちを感じ、そして矢車以上にキレていた。
「ジン!落ち着きたまえ!」
クリムの警告にジンは体を起こす。
「原作を知っているから俺は好き勝手出来ると思ったのに!この力があれば欲のままに……クソが、何で」
「ハッ、こんな奴に負けたとか、笑いも起きないぞ」
悪態を漏らす男の姿にキックホッパーは呆れた。
「流石にこれ以上は変身の強制解除をさせられそうだし、止めておくか、さて、木場や響達は」
「東郷!」
キックホッパーの叫びと共に衝撃がゼロドライブを襲う。
咄嗟に腕でガードをしたがとてつもない衝撃で腕が痺れた。
「ふーん、耐えるんだ」
ズザザザザザと仰け反りながらゼロドライブは痺れた腕を乱暴に動かす。
「お前――」
倒れている男の傍、そこに銀色の鎧を纏った少女がいた。
流れるような銀髪。
バイザー越しにこちらをみている視線はドロドロした何かを感じさせる。
一瞬で姿を現したことで警戒を高めた。
「雪音、クリス……いや、違う」
「ふーん、わかるんだ。正解だよ。私は彼女の姿をコピーしたの」
ニコリと微笑みながらクリスは笑みを浮かべた。
「ロイミュードといえばわかるかな?クリム・スタインベルト」
「何だと!?」
ゼロドライブに装着されているドライブドライバーのクリムが驚きの声を漏らす。
「ある感情とシンクロしてね、コピーさせてもらったんだ。あ、オリジナルは殺していないよ?ボクを再起動させてくれたマスターの頼みでやめたんだぁ」
ニコリとバイザー越しに雪音クリスの姿をコピーしたロイミュードが笑う。
それだけのことなのに警戒が高まる。
「このボケ!早く助けろよ!」
「うるさいなぁ、ここに来たのはお前のためなんかじゃないよ。お前が雑なことをするせいで迷惑しているんだからね?あ、念のため、教えておくけど、あそこの屋敷は既に放棄しているから」
敵の方が上手、どうやらクリムの予想が的中したらしい。
「フーン、彼女が教えてくれたけれど、ボクの顔、苦手みたいだね」
クリスはゼロドライブが動揺していることを見抜く。
「どういう、意味だ」
「だってぇ、聞いたよ?オリジナルの雪音クリスと一緒に生活していたことがあるんでしょ?そして戦地で見捨てたって」
「おい!いつまで俺のことを」
「うっせんだよぉ!このドアホがぁああああああ」
叫びと共にロイミュードが結晶状態の鞭を振り下ろす。
そのまま男の顔や体を踏み抜いていく。
「てめぇよぉ、てめぇが何をしでかしたと思ってんだ?あぁ?マスターの計画にどれだけの影響が出ると思ってんだ?あぁ!」
「……コピーしたといっていたが、オリジナルもあれくらい荒いのかね?」
「俺に聞くな」
クリムの問いかけにジンは首を振る。
「性格が酷く不安定のようだ」
ひとしきり暴れたことで荒い息を吐いているロイミュードのクリスは笑みを浮かべる。
頬にべっとりと血がついていて余計に不気味さが増す。
「さて、始末するかなぁ」
パチンと指を鳴らす。
男の周囲にノイズが現れる。
「な、何のつもりだ!?」
「はぁ?お前を消去しに来たに決まっているでしょ?マスターはお前みたいな女を乱暴に扱う奴が嫌いみたいだし、よくないよねぇ?欲を晴らすための道具扱いなんて、ま、ボクも大嫌いだし!」
「た、助けろ!」
男がゼロドライブとキックホッパーへ命乞いする。
「助けてくれたらこれからのこと、その、全てを教えて」
「失せろ」
ノイズが男へ触れる。
触れた途端に炭化して消え去った。
「あっけない最期だったなぁ」
「そこは同意、汚い奴だからもっとむごたらしい姿になるかと思ったんだけどなぁ」
さて、とロイミュードのクリスが灰の中からオーズのドライバーを取り出す。
「話によれば、よっと」
オーズのドライバーが装着される。
「ンで、話によれば」
【タカ!トラ!バッタ!】
「ヘンシン、だっけ?」
【タカ!トラ!バッタ!】
ロイミュードのクリスがオーズに変身する。
「さっきよりも体が軽くなったなぁ、うん、良いかも」
胸部のバッタの紋章が輝く。
地面を蹴り、あっという間にゼロドライブの前に現れる。
「っ!」
振るわれるトラクローの斬撃。
ゼロドライブは後ろへ下がることで攻撃を回避する。
「へぇ、今の避けるんだ!マスマス、好きになりそうだよ」
「何の、話だ!」
「うん?あぁ、いけない、いけない。いってなかったっけ?」
オーズは首を傾げながら爆弾を落とす。
「ボク、貴方のことが大好きなんだ。I LOVEユーってことだよ!」
「「は?」」
「Oh?」
ジンと矢車、そしてクリムの思考が停止する。
「疲れた、帰るか」
「ジン、現実逃避はいかんよ!」
「ダーメ!マスターが邪魔者は潰せってことだから、無力化させて連れていくよ?愛人」
バッタのメダルを外してチーターのメダルに入れ替える。
「東郷!」
「あぁ、くそっ!」
【スピスピスピード!】
ゼロドライブがスピードを上げてオーズと正面からぶつかりあうも押し負けたのは――。
「東郷!!」
攻撃を受けて後方へ吹き飛んだのはゼロドライブ。
オーズは接近してトラクローでゼロドライブの体を切り裂いた。
くるくると回転して地面に倒れるゼロドライブを庇うようにしてキックホッパーがキックを繰り出す。
「おっと、邪魔するなよぉ」
オーズのキックがキックホッパーの攻撃をいなして蹴り飛ばす。
地面に転がるキックホッパー。
「さぁて、愛人、ってあれ?」
前を見るもゼロドライブの姿がない。
オーズの死角からゼロドライブが裏拳を叩き込む。
【タカ!ゴリラ!チーター!】
拳が迫る瞬間、オーズの両腕に銀の拳が装着されてゼロドライブの攻撃を受け止めた。
「残念」
振るわれるゴリラの腕。
しかし、ゼロドライブは地面をすべるように移動して必殺技の体勢に入っていた。
【ヒッサーツ!フルスロットル!】
回転しながらエネルギーを溜めたキックをオーズへ放つ。
攻撃を受けたオーズは屋敷の中に吹き飛んだ。
「あぁ、くそっ、何て奴だ」
「大丈夫かね?」
「まぁな」
ゼロドライブが体を起こしてクリムが心配する。
首を振りながらゼロドライブは倒れているキックホッパーへ視線を向けた。
「おい、無事か?」
「ハッ、この程度でくたばるかよ」
「だよな、さて、木場達と合流して」
【トリプルスキャニングチャージ!】
「あ?」
聞こえた音にゼロドライブの反応が遅れた。
屋敷の中から飛び出したオーズ。
タトバキックがゼロドライブの体を打ち抜いた。
小さな爆発と火花が連続して起こり、変身が強制的に解除されてしまう。
「いやぁ、良いのもらっちゃったよ。このオーズっていうの?それがなかったらボディは破壊されていたかもねぇ」
屋敷の一部から一瞬で姿を見せるオーズ。
「チィ、クロック――」
「はい、邪魔」
片腕に装着されていた赤い円形のディスクから放たれた光弾がキックホッパーを襲う。
攻撃を受けて強制的に変身解除がされた。
「矢車!!」
「いかん、このままではマズイ。撤退しよう!」
「逃がさないよ。そこに転がっている奴と愛人、絶対に殺す。あぁ、でも、素敵だなぁ……ボクの攻撃を受けてここまで平然としているなんて、愛をうけいれないってでもいうつもりかぁ?逃がさねぇぞ、最初から受けていた方が幸せだったと思わせるほど痛みを与えて、与えて、与えて!そっから愛してやるよぉ!」
「何ていう歪んだ感情だ!」
クリムが驚愕する中でジンはちらりとシフトブレスからプロトタイプのシフトスピードを外す。
「おい、クリム……確か正式にロールアウトされたヤツあったよな?」
「そうだが、まさか!?」
驚くクリムに対してジンは笑みを浮かべる。
「こういう危機的状況だ。プロトトライドロンに置いてあるギアを取りに行ける時間もない。だったら、使うしかないだろ」
「無茶だ!そんなことをすれば、キミの体が!」
「何か奥の手があるの?だったら使った方がいいよぉ?片づけたら別行動している方も始末しないといけないしぃ、あ、でも、愛人はただじゃ、殺さないよ?愛を受け付けねぇってんなら脳髄引っ張り出してさらに痛みと愛を教えてやるよぉ」
「クリム。敵は逃すつもりはねぇんだ。矢車もダメージがあってダメ。援軍も期待できない以上、わかっているだろ?」
「しかし……」
「クリム!!」
渋るクリムへジンは叫ぶ。
「俺は既に覚悟という名のエンジンを回した。後はてめぇだ!どうする?」
「……OK、シフトカー!」
クリムの叫びで現れる数台のシフトカー。
三台がオーズの行く手を阻み、その中の一台がジンの手の中に納まる。
「体のダメージからして戦闘は五分が限界だ。覚悟を決めた!一緒に走ろう!Start your engine」
「うし」
赤く塗装されたシフトカーを握り締めてシフトブレスに装填する。
「変身!」
【ドライブ!タイプスピード!】
「ぐぅぅぅぅ!」
変身と同時にジンの体に激痛が走る。
光と共に装甲が展開された。
ゼロドライブと似ている点が多いが胸部に装着されたタイヤ、全体的に赤い色のドライブ。
正式な適合者が使用するはずのドライブ。
東郷ジンでは確実に使いこなせない力だ。
「ぐぅ!くそっ……」
「ジン!やはり」
「止まらねぇよ!止まっている暇なんかねぇ!」
「あれ?姿を変えたんだね?でも、無駄だよ?ここで叩き潰して」
【タイヤコウカーン!ミッドナイトシャドウ!】
接近したドライブはタイヤ交換してエネルギー状の手裏剣を振るう。
ドライブの攻撃を受けて大きくのけ反るオーズ。
【タイヤコウカーン!マックスフレア!】
炎を纏ったドライブの拳が反撃を許さないという風にオーズへ連続攻撃を叩き込んでいく。
「愛している、愛している、愛している、愛している、愛している!これだけ言っているのに、なぜこっちの愛を受け入れねぇ」
「うる、さい!」
バチバチと火花を散らしながらドライブはタイヤ交換を続ける。
【タイヤコウカーン!ファンキースパイク!】
交換したタイヤについているトゲ、ミドルスパイクニードルが放たれてオーズの体を切り裂いていく。
シフトスピードのタイヤへ戻した時にはバチバチと各所から火花が走っていた。
「時間がない!あと一分」
「それだけあれば、十分だ!」
エネルギーを纏いながら駆け出すドライブ。
攻撃を受けていたオーズがメダルの色を統一してスキャンさせようとする。
しかし、ドライブの必殺技の方が早い。
【ヒッサーツ!フルスロットル!】
必殺のキックがオーズの鎧を貫通して中のクリスの姿をコピーしたロイミュードを貫いた。
「だぁああああああああ」
バチバチと火花を散らしながら必殺のキックはオーズを屋敷の奥へ叩き込んだ。
地面へ降り立つドライブ。
バチンと大きな火花を散らして変身が強制解除される。
「グフッ!」
せき込みながら吐血するジン。
その事に気付いたクリムが叫ぶ。
「大丈夫か!ジン!」
「まだ、生きているよ……」
立ち上がろうとしたところで光弾がジンに迫る。
動こうとしたところでガクンと膝がもたついた。
「あ、ヤベ」
動きが鈍った瞬間。
「ジン!」
屋敷から鎧を纏った響が光弾を拳で破壊する。
「あ、サンキュー、響」
「ジン、大丈夫?」
「ごめん、少し限界……あと、頼む」
響にもたれる形でジンが倒れる。
「ジン、ジン!?」
「落ち着きたまえ、気絶しているだけだ。それより、この場は危険だ!すぐに」
「逃がすかよぉォぉォぉ!」
半壊した屋敷からコピークリスが姿を見せる。
怒りで顔を歪めながらロイミュードに戻った。
「お前かあああああ!」
「響!落ち着くんだ。ジンや矢車君がボロボロだ。木場君と合流して離脱するんだ」
「チィッ」
舌打ちしながらジンと地面に転がっている矢車を抱える。
「GO!プロトトライドロン!」
クリムの指示で現れるプロトトライドロン。
「運転は?」
「俺がやる」
むくりと矢車が目を覚ます。
「師匠」
「これくらいはできる。響、俺を運転席へ、東郷は助手席に乗せろ」
「わかりました」
矢車の指示で二人をプロトトライドロンへ乗せる。
走り出すプロトトライドロンの上に飛び乗った響。
矢車がアクセルを踏んだプロトトライドロンはドリフトしながらその場から走りだす。
「逃がすかよぉォぉォぉ!」
ロイミュードが光弾を構えようとした時、屋敷の上から灰色の巨大な影が現れる。
「ぐあっ!」
防ぐ暇もないまま、巨大な影の足によって屋敷の中に押し込まれるロイミュード。
ちらりと反撃がないことを確認した巨大な影はそのまま疾走する。
名もなき転生者はカマセ、本命はそのあとに変身するコピークリスの圧倒的オーズ。
うまくかけたかな?