春日部探偵社へようこそ   作:断空我

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第七話:遊び心

「まーさか、翌日にやってくるとは思わなかったぞ」

 

「すまない、どうしてもキミ達と話をしたかったんだ」

 

 ショッピングモールの激闘から翌日。

 

 ゆっくりと惰眠をむさぼろうとしたところで着信。

 

 相手は目の前にいる風鳴弦十郎。

 

 映画をみて、食って寝るという生活を行うことで超人的な力を手にしている人物。

 

 ノイズ相手に直接的なダメージは与えられないが人類最強という称号を手にしてもおかしくはない。

 

 しかし、人格者としてはとてもできた人物で信頼、信用における人物だ。

 

 個人においてはという前置きがついてしまうけれど。

 

「話の内容はうちのスタッフのことだろ?」

 

「悪いが調べさせてもらった。雪音クリス君……それと、立花響君だな?」

 

「旦那、アンタが良い人だから一応、警告しておく。響へ、アイツに不用意なことは言わないようにしてくれ」

 

「わかっている。この前の戦闘を見ていた。彼女は――」

 

「アンタの想像通りだ」

 

「すまない、キミには俺達の不手際ばかり」

 

「言葉にして伝えてくれるだけ、アンタは良い人だ。後は、広木のオッサンくらいだよ」

 

「防衛大臣とは」

 

「まぁ、あの時以来、会っていないなぁ。テレビで見るくらいだ」

 

「そうか」

 

 そこで沈黙が続く。

 

「ところで、彼女達は」

 

「寝室で爆睡中」

 

「そ、そうか……しかし、キミがまさかシンフォギア装者を保護していたとは……」

 

「シンフォギア?そういや、あの刀使いもいっていたが」

 

「まさか、知らなかったのか?」

 

「全然、俺のコレと似たようなものかと思っていたが?」

 

 足もとに置いてあるアタッシュケースをこつこつと蹴る。

 

「いや、違うんだ。シンフォギアというのは」

 

 弦十郎によってシンフォギアについての説明がなされる。

 

 話を聞いていたジンはため息を零す。

 

「はぁ、成程、理解できた」

 

「それで、相談なんだが」

 

「アイツらを旦那のところへ預けるとか検査の類はなしで、こっちで調べているデータでよければ渡すぞ」

 

「良いのか?」

 

 手を出す。

 

「代わりに条件がいくつか、その一つとして、俺達に深く干渉しないこと」

 

「わかっている。ここが特殊な場所という事は理解している」

 

 彼が頷いたことを確認してジンは事前に用意しておいたデータを差し出す。

 

 クリムが調べてまとめていた響とクリスのデータ。

 

「これだけのデータがあるのか!?」

 

 驚く弦十郎。

 

 どうやら二課の所有しているシンフォギアはこちらと比べると得られているデータが少ないらしい。

 

「もう一つは?」

 

「それはおいおい、決めるかな。てか」

 

 ちらりとジンは扉の方を見る。

 

「あの子はどうするつもりだ?」

 

「ぬ!?」

 

 弦十郎が振り返るとドアが開いて風鳴翼が現れる。

 

「翼!?」

 

「司令!そいつはあの鎧の男です!警戒すべきでは」

 

「翼、落ち着いて聞いてくれ、彼は、東郷ジンは敵ではない」

 

「ですが!ノイズを倒す力を有しているばかりか、シンフォギアを持っている者を保護しているなど!」

 

「旦那、どうする?話を改めるなら、別の日でも俺は構わないけど、こうして付きまとわれるっていうなら、提案があるけど」

 

「提案?」

 

 ニヤリとジンが笑い、弦十郎は困惑した表情を浮かべていた。

 

 探偵社から少し離れたところにある工場。

 

 既に廃れていて、誰も立ち入ることはない。

 

 そこにシンフォギアを纏った風鳴翼、向かい合う様にジンがいる。

 

 ジンはベルトの類がなく、どこかで手に入れた日本刀を携えていた。

 

「貴様、なぜ!鎧を纏わない」

 

「必要ないからだよ」

 

「舐めるな!防人として鍛えたこの剣、腑抜けた貴様など一突きだ」

 

「やってみろよ?ほら、旦那、開始の合図、奴さんはやる気に満ち溢れているぞ?」

 

「はぁ、仕方ない」

 

――はじめ!

 

 弦十郎の合図とともに突っ込んでくるのは風鳴翼。

 

 直線的な攻撃だが、その速度を常人が捉えることは出来ないだろう。

 

 だが。

 

「遅い」

 

 あっさりと回避するジン、そればかりか足で彼女をひっかけて地面へ転倒させる。

 

 バランスを崩したが地面へ手をついて、逆立ちして脚部のブレードを回転しながら放つ。

 

――逆羅刹。

 

「翼!?」

 

「大丈夫だって」

 

 振るわれる技をジンは横滑りしながらそのまま翼の手を足で狙う。

 

「くっ!」

 

 手で地面を叩くようにして上空へ舞い上がる。

 

「芸達者だな、おい」

 

 大型化させた大剣が青いエネルギー刃を放ちながら落下してくる。

 

 爆発と衝撃が広がっていく。

 

 弦十郎は腕で石などが飛来するのを防ぐ。

 

 しばらくして土煙が晴れる中。

 

「ほい、俺の勝ち」

 

 煙が晴れた先、そこでは刀の剣先を翼の眼前へ突きつけているジンの姿があった。

 

「バカな!」

 

 信じられないという表情をしている翼の前でジンは欠伸を噛みしめる。

 

「お前は遊び心が足りないんだよ」

 

「なっ!?遊び心だと!?」

 

「そうそう、がっちがっちに固まっている。そんなんじゃ、いつか身動きできなくなる」

 

「ふざけるな!私は剣で――」

 

「はぁ、こりゃ相当の……ア?」

 

 ジンの視線が周囲へ向けられる。

 

 弦十郎も気づいたのだろう、ジンと翼へ駆け寄った。

 

 黒いバンが数台、停車する。

 

 ドアが開くと同時にぞろぞろと複数のカイザが姿を現す。

 

「何だ、これは」

 

 戸惑いの声を漏らす翼。

 

「旦那」

 

「対策委員会の連中か……カイザを完成させていたのか」

 

 ぞろぞろと現れたカイザは腰に装着されているブレイガンの銃口をこちらへ向けてくる。

 

 前へ出ようとする翼を弦十郎が止めた。

 

「翼、お前は前に出るな!」

 

「ですが!」

 

「子供を守るのが大人の仕事だ」

 

 拳を構える弦十郎の姿にカイザたちはバカにしたような失笑を漏らす。

 

 自分達が超人で弦十郎のような男など敵ではないと思っているのだろう。

 

 横でジンがベルトを差し出した。

 

「旦那、覚悟はあるか?」

 

 突き出されたベルトをみて弦十郎は頷く。

 

「覚悟はあるとも!」

 

 叫びと共にバースドライバーを装着する。

 

 ドライバーの側面についていたセルメダルをドライバーに装填、ハンドルレバーを回転させた。

 

「変身!」

 

 光と共に弦十郎の体が黒い防護スーツ、セルティックアーマーに覆われるとともにバースへ変身する。

 

「お、おじさまが変身した」

 

「へー、そういう可愛い顔もできるんだな」

 

「かわっ!?」

 

 ジンの指摘であたふたする翼をみながらデルタギアを装着、デルタムーバにデルタフォンを差し込み、デルタに変身する。

 

「さぁて、暴れるか」

 

 光弾が飛び交う中でバースの拳による衝撃波で多くのカイザが吹き飛ぶ。

 

 バースは本来ならセルメダルを多用して様々なユニットを用いるのだが。

 

「まぁ、元から規格外な人だしなぁ、変身したらしたで、こうなるのは当然か」

 

 自ら鍛えた拳と映画で見た技を用いてカイザを圧倒する。

 

 デルタはカイザブレイガンのエッジを手でいなしながら背後のカイザへ肘鉄を叩き込む。

 

 カイザギアはデルタギアの後に開発されたアイテムで当然のことながら性能はデルタより上である。

 

 だが、デルタを纏っている男は一対多である戦闘に慣れているどころかそういう戦闘ばかりを潜り抜けていることでかなりの経験を積んでいた。

 

 多少、人でなくなっていた存在の相手など赤子の手をひねるようなもの。

 

 フォンブラスターによって次々と体から青い炎を吹き出して消滅するカイザたち。

 

 時間にして十五分程度。

 

 襲撃してきたカイザたちは全滅していた。

 

 二人とも変身した状態で周囲を警戒するが現れる気配がないのでドライバーを外す。

 

「しかし、誰がここの情報を伝えてきたのだろうか」

 

「心当たりはある」

 

「なに?」

 

 ジンの言葉に弦十郎が驚いて尋ね返す。

 

「少し前にフィーネとかいう正体不明の相手とやりあった。そいつの側近にロイミュードがいたから、そこから漏れたかも」

 

「ロイミュード、確か蛮野博士が作ったアンドロイドの名称だったな」

 

「あぁ」

 

「おじさま、無事ですか!」

 

 翼が弦十郎の傍へ駆け寄る。

 

「あぁ、少し窮屈はしたが問題はない!」

 

 ドライバーを返そうとした弦十郎だが、ジンが止める。

 

「余計な迷惑をかけたし、それはやるよ。元々、持っていても俺は使えないし、アンタなら他の人間へ渡すみたいなことしないだろうしな」

 

「すまん」

 

「どうして……」

 

 謝る弦十郎の傍で翼がぶるぶると腕を震わせた。

 

「どうして、そこまでの強さを持っていながら戦おうとしない!?」

 

「翼!」

 

「もし、貴様みたいな奴が、いれば、奏は……奏が死ぬことは」

 

「カイザは人間だ」

 

「ジン!」

 

 弦十郎を止めてジンが翼の前に立つ。

 

「今、なんと」

 

「俺と旦那が戦っていた相手は人間だと言ったんだよ」

 

「そんな!」

 

「カイザの力は強大だから、体内に特殊なエネルギーを宿す必要があった。倒されて青い炎を吹き出すのはエネルギーが暴走したことで起こる現象だ。お前は防人といったよな?守るために戦う者だと」

 

 ぐぃっと風鳴翼の胸倉を掴む。

 

「覚悟ができているのか?人を斬れる覚悟があるのか?…………お前に!!」

 

「それは」

 

「風鳴翼」

 

 ジンは真剣な表情で翼へ告げる。

 

「今のままじゃ、お前は失っていくぞ。周りのもの、自分すら」

 

 そういってジンは離れていく。

 

 振り返らずに彼は立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、この程度じゃ、相手にならないかぁ」

 

 高い場所からロイミュード108は本来の姿で戦いの様子を眺めていた。

 

 情報をオルフェノク対策委員会へ流したのは彼女である。

 

 デルタのベルトが指定した座標にあると。

 

 あっさりとオルフェノク対策委員会は食いついた。

 

 やはり量産型しか所有していない組織としてはオリジナルギアが欲しいのだろう。

 

 膨大なネットの海で残されていた情報を入手していたロイミュード108は呆れた声を漏らす。

 

「人間の欲望というのは底なしだねぇ」

 

 じゃらじゃらと手の中にある三枚のメダルを弄りながらロイミュード108は考える。

 

「あぁ、また撃破されたのかぁ」

 

 ロイミュード108はため息を零す。

 

 108体しかいない自分の同胞。

 

 来るべき約束の数を揃えるために活動を始めているようだが、最近、仲間達が次々と破壊されている。

 

「仮面ライダー、かぁ」

 

 ロイミュードの仲間がかつて伝えてきた情報。

 

 実際のところ、108はその姿を見たことがない。

 

 グローバルフリーズ時に多くのロイミュードのボディを破壊したが、002の進化した姿に敗北したと聞いている。

 

「同じ人物ではないだろうなぁ、そうなると適合者が見つかったということかぁ」

ちらりと倒された同胞の情報を収集しながら彼女は先ほどの戦いを思い出す。

 

「あぁ、何だろうなぁ」

 

 彼の戦いを見ているだけで彼女の中の何かが激しく暴走する。

 

 体内のエネルギーがまるで生きているかのように活性化して、コア・ドライビアが暴走してしまいそうだ。

 

「はぁ、まだ動いちゃダメなんだよなぁ」

 

 フィーネの協力者という立場だが、勝手に動けばコアが破壊されてしまう。

 

 今は彼女の協力者であるウェザーの指示で各々が動くタイミングを見計らっている。

 

「次はアイツだし、はぁ、早く会いたいなぁ、愛しい人……それと」

 

 ここにいないコピー元のことを考えてロイミュード108の体が激しい怒りに包まれる。

 

「動き出した時がてめぇの最後だぞ。オリジナルゥ」

 

 一瞬、ロイミュード108のボディに変化が起こりながらも誰もその姿を目撃しなかった。

 

 

 

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