少しお久しぶりで第十九話です。
前話で「あと2,3話でカントー編終わります」とか言った気がするのですが、ガラルに行く前に『彼』と『彼ら』の話をしておいたほうがいい事に気が付いたので、多分終わりませんすみませんorzorz
どんどんガラル編が遠ざかってる気がしないでもないですが頑張りますorz
では今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。
「じゃあリオちゃん。荷物もあるから私は先に帰るけど、今夜はオーキド博士との約束もあるからなるべく早く帰ってくるようにね。あと博士も是非と仰有ってたからカスミちゃんとタケシくんも誘ってらっしゃいな。ピカちゃん、ルカちゃん。リオちゃんの事よろしくね。」
「ピカ!」
「ワウ」
「あはは……。大丈夫です、あとはキバゴの様子を見に行くだけですし。約束の時間までには必ず帰ります。確か、オーキド研究所にそのまま行けばいいんですよね?」
「ええ。バリちゃんはもう研究所にいるでしょうし私も少し後片付けしたらすぐ向かうつもりだから。じゃあまた後でね。」
「はい、また後で。」
――結局昼食中に降りだした雨は私達がファミレスを出た頃にも雨足こそ弱まったもの振り続いたままだった。
多分これ以上待ってても止むことはなさそうだし夕食の準備もあるからとキバゴの様子を見に行く事を今日の予定に組み込んでいた私達と別れ、ファミレスの前に呼んだタクシーで一足先に荷物と一緒に帰ることになったハナコさんに私より早く返事を返した相棒二匹に眉を下げて笑いながらしっかり頷き、発車したタクシーを軽く手を振って見送っているとねえ、と背後からカスミに声をかけられた。
「今のママさんとの会話って何なの? リオ、今日オーキド博士何かあるの?」
「俺達も誘って、ってハナコさん言ってたな。」
「ああ、うん。昨日の夕方くらいかな、私に紹介したい人がいるってオーキド博士に言われたんだよね。私も詳しくは聞いてないんだけど、博士の古い知人でハナコさんとも少し面識がある人なんだって。それでその人今日の夕方ぐらいに息子さんと一緒にオーキド研究所に来ることになってるから、夜ご飯を一緒に食べようって話になってて。タケシくんとカスミも会っておいた方がいいから二人の都合が良ければ来て欲しいって。ね?」
「ピカ」
「ワウ」
不思議そうな表情を浮かべる二人に一つ頷き、本当だったらもっと早く伝えなくちゃいけなかった筈だけど色々……うん、本当に色々ありすぎて完全に伝えそびえていたオーキド博士からの伝言を説明する。
最後にそう付け足すとしっかりと同意した相棒二匹に小さく笑い、どうする?と改めて尋ねればそうね、と先に口を開いたのはカスミだった。
「特にこの後も予定もないしオーキド博士がそう言うのなら行こうかしら。タケシはどうする?」
「そうだな。俺も特に予定はないから行くよ。それに、博士が紹介したいって言う古い知人という人も気になるしな。」
「決まりね。あ、じゃあポケモンセンター着いたら一応博士に電話入れようかな。ルカリオの事も報告しておきたいし。」
「ワウ。」
「ピカチュ。」
「じゃあまずは何はともあれポケモンセンターね。」
そう二人の意思も確認したところでカスミの一声が合図となり、誰ともなしに折り畳み傘を開きポケモンセンターへの道を歩き出す。
ちなみにピカチュウ達は私の傘に入るから除外するとしても、各々が持つ傘のうち二本は私ので一本はハナコさんが貸してくれたものと言う内訳はきっとご愛敬と言うやつだろう。
今朝の天気予報を見た時、初代において。
何ならオープニングでさえサトシ、カスミ、タケシの三人が旅の最中傘を差すってシーンがほとんどなかった事を思い出し、念のため折り畳み傘二本用意しといて良かったと私より少し先を歩く二人の背中を眺めながら小さく笑う。
そのまま灰色の雲が重く立ち込めた空を傘越しに見上げると、やっぱり胸は痛むけれど、それでも絶望感や孤独感やそれに伴う嫌悪感は沸いてこないどころか、あり得ない程泣いたからか六年前の事も含めて全部晒け出した心の内を当たり前のように受け止めて貰ったからかあるいはその両方か。
やけにすっきりと心は晴れ渡っていて、そんな心持ちのせいか今までよりしやすくなった呼吸と軽くなったように感じる体にそっと瞳を細めた。
***
「何かポケモンセンター混んでない?」
「本当ね。ソファやベンチ全部埋まってるわよ。」
「急な雨だったから皆雨宿りしに来たんだろうな。カウンターにも今人がいるようだし、暫く待ってみるか。」
「それしかないわね。」
「だね。あ、なら先にオーキド博士に電話してこよっかな。」
「イブッ!」
先程までの土砂降りの雷雨から避難するためかポケモンセンターはかなりの混雑を見せていた。
自動ドアをくぐったところでぐるりとセンター内を見回し、とりあえず邪魔にならないような位置に移動しながらふと思い立った私に応えるようなタイミングでいつも通り左肩に乗ってる相棒や隣を歩くパートナーのものではない、力強くて凛とした声が耳朶を打つ。
「……『イブ』?」
「ピ?」
その自らの足元から聞こえた声に咄嗟に足を止め視線を下に向ければ紫がかった大きな瞳をきらきらと輝かせ私を見上げる兎のような長い耳にみるからにもふもふで大きな尻尾、首の周りを覆うこちらももふもふな襟巻きのような毛が特徴的なポケモン――その人気からピカチュウと並んで商品化される事も多いしんかポケモン・イーブイとぱちりと目が合った。
あ、可愛い。
普通に可愛い。
ピカチュウを初めて見た時も思ったけど本当可愛い系のポケモンってとことん可愛くなるようにデザインされてるよね……じゃなくて。
何でこんなところにイーブイが?
「うわあ、可愛い! イーブイね!」
「ああ。ここにいるって事はポケモンセンター内にいるトレーナーのポケモンだろうな、きっと。」
「ブイ!ブイ!!」
その可愛さに思わずずれかけた思考を何とか正し、タケシくんとカスミに答えるようにぴょんぴょんと跳ねながら元気いっぱいに声をあげるイーブイに感じた違和感をおくびにも出さずそっか、と少し身を屈め笑いかける。
「このポケモンがイーブイなんだ。最近になって発見されたフェアリータイプも併せると八種類の進化先がある凄いポケモンだってオーキド博士に教えて貰った事あるけど実物見るのは初めてだよ。本当に可愛い。」
「イーブイ!」
さらにそう言えば多分凄い自慢げに声をあげ尻尾をぶんぶんと振り私の瞳を真っ直ぐに見つめぺたんとその場に座った、尻尾の模様から判断するなら彼女のその瞳に凄い既視感を覚えきょとんと首を傾げた。
…………ん?
「何かこのイーブイ、リオの事知ってるみたいじゃない? ……あ! まさかリオあんたまだあたし達に隠してる事あるんじゃないでしょうね!」
「……今日その事であれだけ色々あって、これでまだ二人に隠し事できるような根性持ち合わせてないよ。てか今『実物初めて見た』って言ったばかりでしょ。」
「まあまあ。カスミだってリオが俺達にもう壁を作ってないのは分かるだろう? これからは一人で抱え込まないで何でも包み隠さず話してくれるさ。なあ、リオ。」
「……う、うん。…………ん? タケシくん、今……。」
「ん? どうかしたのか、リオ。」
瞬間イーブイに対して私と同じような感想を口にしつつ瞳を眇めこちらを見遣るカスミにあれだけ人の心丸裸にしといといて何言ってるんだと眉を下げ脱力する。
さらにそう続ければ私達を嗜めつつ何か有無を言わせない威圧感が含められたタケシくんの声音に少々びびりながらも軽く頷いた。
あれ、てかさらりと『何でも』とか言われたよね今。
「もしかして言質取られた?」と彼を見遣れば結構なドヤ顔で私を見遣るタケシくんとバッチリと視線が絡みしまった、とさらに肩を落とす。
「…………ちなみに、今のなしとか言ったら怒る?」
「ああ。もし言ったら暫くリオとは口を利かないくらいには怒るな。」
「っ、それは嫌! 絶対嫌!! もしそんな事したらタケシくんが年上のお姉さんナンパする度に腕にしがみついて『私という彼女がいるのに浮気するなんて!』って喚いて嫌がらせするからね!」
「え。」
恐る恐る尋ねれば私の心に一番クリティカルヒットする事をあっけらかんと答える彼に、この世界に来た当初オーキド博士に誤解された事を思い出しバッと真っ正面から向き直りそう告げれば、何故か驚いたように私の顔を凝視するタケシくんにん?と首を傾げると同時にバカ、とぺしりとカスミに頭をはたかれた。
「そこは『じゃあ言わない』とか答えるところでしょ。何でやり返そうとしてんのよ。あとそれだとタケシがナンパしようとした相手にはリオがタケシの彼女だって誤解される事分かってるの?」
「……だって……。タケシくんがあまりに的確に私の心を抉る案提示してきたから、つい。あと見ず知らずのお姉さんに彼女だって誤解されたところで痛くも痒くもないし、嫌でもないから私としては問題ないかな。」
「…………本当リオって変なところで肝が据わってるわよね。」
「ピカチュ」
「ワウ」
「イブ」
今度は私があっけらかんと答え固まったままのタケシくんによし、と悪戯気に瞳を細めれば完全に呆れた様子のカスミとパートナー達の中にちゃっかり混じっているイーブイに眉を下げ、そうだったと彼女を見遣る。
「……ま、それはともかくとしてさ。さっきも言ったように二人にはもう隠し事ないつもりだしこのイーブイとも初対面だよ。それは間違いない。でもだからと言ってポケモンセンター内とは言え一匹でウロウロしてるこの子を放ってもおけないし、この子が何か伝えたい事があるんだろうなって事も分かる。だからとりあえずこの子のトレーナーを探すのが一番だと思うんだけど。どうかな?」