訳あり新人トレーナー、目指すは全地方制覇です!   作:白野蒼

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閲覧ありがとうございます。
ついに二十話ですヽ(*'▽')ノ

今回からオリ主の他にオリキャラが二人ほど登場します。

こそっと他の拙作とも一部繋がっているキャラですがこの小説だけで分かるようにしていきます。

では今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。




第二十話 『新人トレーナーと必然の事』②

結論から言えばイーブイのトレーナー探しは難航していた。

 

そこまで広くないポケモンセンター内での事だし今いるトレーナー達に声をかければ直ぐに見つかると考えていたにも関わらず、どのトレーナーに聞いても皆首を横に振るばかりな現状に知らず知らず眉を寄せ、ん~~……と唸り声をあげる。

てかこれもしかしてまた厄介な事に首突っ込んだっぽくないかと言う一瞬脳裏を掠めた疑惑はあえて見ない振りをしておかしいなあ、と首を傾げた。

 

「これで大体一通り聞いたよね。なのにトレーナーが見つからないって事ある?」

 

「うぅん。確かに妙だな。タマムシシティのポケモンセンターはそこまで大きいものでもないし、俺達が来る前からいたトレーナーだって限られてるのにこれだけ探して見つからないとなると……何かしらの事情があるのかもしれないな。」

 

「事情って……何があるって言うのよ。」

 

「んん゛~~。それこそジョーイさんに聞けば何か分かるかもしれないが……。」

 

やっと空いたベンチを見つけ全員で腰を下ろし、カスミにそう振られたタケシくんが難しい顔で腕を組む。

うんうん唸る彼の視線の先を辿れば、私達がポケモンセンターに入ってからというものポケモンの回復等を受け付ける以外はずっとカウンターの端の方でこちらに背を向けて立つ長身でがたいのいい黒のトレンチコート姿の黒髪の男性と、小豆色の髪に紫襟の水色のクレリックシャツを着た中肉中背の男性二人と何やら深刻な顔で話しているジョーイさんの姿があるもののとてもじゃないけど声をかけれる雰囲気じゃなくてどうしたものかと一つ息を吐いた。

 

……てか……、うん。

黒髪の人は分からないけど小豆色の髪の人、何か見覚えあるというか……多分、十中八九、知ってる人なんだよなぁ。

 

()()()()()()、だけど。

 

いやあまあそりゃあね、放送年月って視点だとXYから新無印放送開始までの間って約六年あるけど、作中ではサトシの年齢から考えると初代から新無印最新話まで通してもまだ一年経ってないわけだし。

例え該当シリーズが来るまで影も形もなくてその存在すら示唆されていなくてもそれはあくまでもアニメに登場してないってだけで、皆当たり前にこの世界に存在して日々を生きてるんだからカントー地方にいる以上遭遇する可能性はあるに決まってるし、考えてなかったわけじゃない。

ただ彼の人や『彼ら』の居住地域ってクチバシティの筈だからまさかタマムシシティ(ここ)でその姿を見るとは思ってなかったけど。

 

「何か深刻そうだし忙しそうだよね、ジョーイさん。」

 

「そうよね。さっきからずっとあの調子だからとてもじゃないけど話しかけられる雰囲気じゃないし。そう言えばイーブイの事聞いてないのってあとはカウンターのあの二人だけよね。って事は二人のうちのどちらかがイーブイのトレーナーって事にならない?」

 

「ん~~……。確かにその可能性はあるけどただそれにしてはイーブイがあの二人に無反応なんだよね。それに自分のポケモンが側から離れたらトレーナー側からも何かしらの反応があってもいいと思うけどあの二人見てるとそれもないし。」

 

うん、てかその場合だと彼の人――新無印の登場キャラクターでオーキド博士の教え子の一人であるサクラギ所長……や、この時系列だとまだ研究所オープンしてないから博士のがいいか。

サクラギ博士が常にモンスターボールから出してるのはワンパチだし、彼がイーブイを手持ちにしているような描写はなかった筈だから必然的に黒髪の男性のポケモンってなるんだろうけど、でもなあと眉を寄せる。

顎に手を当て考えながらそうつらつらと自分の考えを告げればああ、とタケシくんが頷いた。

 

「俺もそれが気になってた。ただいずれにしてもジョーイさんにはイーブイの事伝える必要があるだろうし、キバゴの事も考えるととりあえずはジョーイさんの手があくまで待つしかないだろうな。」

 

「そうね。」

 

「だね。」

 

そうカスミと二人で彼に同意すると、この短期間ですでに打ち解けたらしく私達の足元の床の上でピカピカイブイブとじゃれ合い転げ回っている相棒とイーブイにふと視線を落とし瞳を細め小さく笑う。

真剣に悩んでるトレーナー達の事なんかどこ吹く風と言わんばかりの二匹に呑気だなあと少しだけ無意識に入っていた肩の力を抜くと同時にそのじゃれ合いには加わらず、相変わらず強い意思を宿した赤い瞳で真っ直ぐに私を見つめるルカリオとパチリと目が合い、ああそうだったとずっと感じていた違和感を思い出し内心で呟いた。

 

……うん、これ一度ルカリオと二人で話した方がいいよね、多分。

 

そう考えあのさ、と切り出す前に電話が設置されている方をくいっと軽く顎で差すと踵を返しスタスタと歩き出す彼に小さく苦笑する。

 

――ま、確かにここでは聞かない方がいいか。

 

「ワウ。」

 

「はいはい、行きますよ。」

 

「リオ? ルカリオ?」

 

「二人ともどうしたんだ?」

 

さらに少し行った先で立ち止まって肩越しに振り返るルカリオの声と瞳に促されるように立ち上がり訝しげなタケシくんとカスミにああ、うんと曖昧に笑う。

 

「えと『暫く待機なら先にオーキド博士に電話を入れた方がいいだろう』ってさ。で、『一緒に行くから早くしろ』って。そんな訳でちょっと電話してくるから」

 

どう言ったものかと少し頭を悩ませながら二人に説明しかけたところでガーー……と言う微かな音につられふと視線を向けた自動ドアから入ってきた小豆色の髪を三つ編みの一つ結びにした特徴的な錨型のマークがあしらわれたワンピース姿の少女と、彼女が腕にしっかりと抱えた三角の大きなに胴長短足の体、ぐるりと首を一周するように覆う襟巻きのような黄色い毛が特徴的なこいぬポケモン・ワンパチの姿に思わず言葉を止め目を見張った。

 

……や、確かにあそこにサクラギ博士がいる以上その娘の彼女がいてもおかしくはないんだけどさ。

 

てかこの頃って当たり前だけどサトシとゴウが出会う前だからゴウはミュウをゲットする事しか頭になくて学校にもほとんど行かず友達も幼馴染みの彼女以外いない時で、彼女もまだそんな幼馴染みに呆れながら、ポケモンに対してかなり距離を置いてる時だよね、うん。

 

さらに戸惑いがちにキョロキョロとポケモンセンター内を見回し、カウンターに視線を向けハッとしたように走り寄る彼女――サクラギ博士同様新無印の登場キャラクターかつ、新無印シリーズにおいてヒロインという立ち位置であるサクラギコハルの背中を眺めているとリオ?とカスミに呼び掛けられハッとする。

 

っと、そうだった。

 

「あ、ごめん。……電話して来ようと思ったんだけど、今入ってきたあの女の子カウンターにいる男の人達の連れっぽいし、少し様子見た方が良さそうだね。ルカリオ、電話後にしよ。」

 

「……ワウ。」

 

さらに自らの父親であるサクラギ博士に駆け寄り何事か話しかけているコハルの姿を見遣り結論付け、ルカリオに声をかけると少し逡巡した後一声あげ戻ってきた彼の頭を軽く撫でると足元からイーブイ!と声が上がり見れば瞳をきらきらと輝かせ尻尾をぶんぶんと振る彼女と目が合い眉を下げた。

 

…………これは。

 

「『自分も撫でろ』って解釈でいいのかな?」

 

「ブイ!!」

 

確認するように尋ねれば元気よく返ってきた声に分かったと頷き、その場に片膝を立ててしゃがみその茶色い体毛に覆われた頭を優しく撫でるとブイ!とさらに嬉しそうに頭と言わず体全体をぐいぐいと押し付けてくるイーブイに思わず小さく笑う。

 

……うん、てかやっぱこのイーブイ……。

 

「ねえ、やっぱりどう見てもそのイーブイ、リオに懐いてるみたいなんだけど。本当にあたし達に隠し事してないわよね?」

 

「……してないです。てか考えてもみてよ、仮に私とこのイーブイが知り合いだったら私とこの半月ずっと一緒にいるピカチュウだってイーブイと知り合いって事になるでしょ? そしたら街中で、道路はさんで反対側の道にいたリオルにさえ反応してたのにイーブイと出会った時無反応だったのはおかしいし、もし何らかの理由があって『私に『黙ってて』と頼まれたとしてもピカチュウが素直に聞くと思う?」

 

「――聞かないだろうな。ピカチュウはリオを大切にしているが、不必要に甘やかしたりはしない。むしろリオが間違えた道を進もうとしたり、尻込みしそうになると叱咤するくらいだ。仮にそう頼んだとしても、それがリオのためにならない事なら黙っていないだろうし、何としてでも伝えようとするだろうな。俺達に。」

 

「ピカチュウ。」

 

再度問われた内容に苦笑しながらも答え八の字に眉を下げたタケシくんにしっかりと頷いたピカチュウに思わずだよね、と息を付いた。

 

そう。だからこそ、この小さな相棒に、これからもずっと敵う気が全くしないのだ。

 

「さらに三日前からはピカチュウと全く同じ考えの相棒がもう一匹増えたしね。だからそもそもの話、ピカチュウ達が知らない私の過去の話以外をタケシくんとカスミに内緒に出来る環境じゃないんだよね。と言うか過去の話でさえ臆病風に吹かれる事を許してくれなかったし。それに明後日から行くガラル地方でだってうっかり怪我でもしようもんなら、速攻で二人にチクられそうで怖いもん。むしろ『黙ってて』って言った時点でお説教だろうし。」

 

「ピカ」

 

「ワウ」

 

そう言って二匹に視線を向ければ当然とばかりに頷かれてますます眉を下げる。

うん、本当に私に対して手厳しい。でも。だから私は迷わずに前を向いて歩き出せるんだろう。きっと。

 

「……それにさ、私結構後悔してるんだよ? タケシくんとカスミに『自分達の思いが私を苦しめてるんじゃないか』なんて思わせちゃった事。……それを言って貰うまで気付かなかった自分の鈍感さにも腹が立ってる。……あんな思い二人に二度とさせたくないし、私もしたくない。だってね、本当に嬉しかったから。二人が私に『いて欲しい』って想ってくれてた事。だからさ、その……これからはちゃんと二人に話さなくちゃいけない事は話すし、嘘とか誤魔化しはしないって約束するから。えと、今までの事もあるからすぐには無理かもしれないけど。信じて、欲しいな。……なんて。」

 

ダメかな、と付け足しながら内心で我ながら都合の良いことだと自嘲する。

いつだって自分の事しか考えてなくて、周りを見ようともしなかった私はこれまでいくつ大切なものを取り零してきたのかなんて分からない。

ちゃんと向き合えば、手を差し伸べてくれてた人達はきっといた筈なのにそれに気が付かない振りをして。

見ない振りをして全部拒絶して自分の殻に閉じこもって。

そうしていつだって元の世界に戻って一番に心に浮かぶのは『ごめんなさい』な癖に何度も同じことを繰り返して。

 

……本当、弱いなあ。私は。

 

そんな風にさらに自嘲を深くすると二人が小さく笑った気配と共にぽん、ぽんと二つの手が頭に乗せられ無意識に伏せていた顔をあげればいつものように仕方ないな、と笑う二人と目が合った。

 

「……タケシくん。カスミ。」

 

「分かった。信じるよ、リオの事。それに、元から信じていたからな。リオは俺達の思いを蔑ろにするような奴じゃないって。だからきちんと思いを伝えればきっと応えてくれる、俺達の手を取ってくれるってさ。」

 

「そうね。それに、リオこそ信じてよね。リオにはいつもあたし達が付いてるって事。例え別々の場所にいても、心は繋がってるから、だから、あんたは絶対にひとりなんかじゃないって。」

 

そう笑う二人の声が当たり前のように心に染み渡り、さっきあれだけ泣いたのにまたしても潤みそうになる瞳にそっと力を入れて笑い返す。

 

ああ、何か無印の最終話で二人と別れた後、何度もありがとうと叫んでいたサトシの気持ち凄く分かる気がするなあ……。

……もう本当に、敵わない。

 

「――ありがとう、タケシくん、カスミ。私も信じるよ。私にはいつも二人が付いてるって。……私が、ピカチュウとルカリオと一緒に帰ってくる場所はここだって。二人がいてくれるここなんだって、信じてる。」

 

「ピカ」

 

「ワウ」

 

そっと伸ばした手で二人の手をしっかり握り伝えると左肩に加わった温かな重みと肩に乗せられた力強い手に瞳を細めチャアアと私の頬に擦り寄せられる相棒のふわふわな頬が擽ったくて小さく笑い声をあげたところで、イブ、と声をあげとても真摯に真っ直ぐに私を見上げるイーブイと目が合った。

一つの強い意思を宿した瞳と、決めたと確かに聞こえた声に眉を下げちらりとルカリオを見れば軽く頷いた彼にやっぱりかあと呟く。

 

どうしたものかと口を開きかけると同時にえ?と背後から聞こえた凛とした少年の声にハッと振り返れば、驚いたような表情を浮かべ私を見遣る右肩に首周りの黒い毛が特徴的な黄色い体に黒く縁どられた平たい大きな耳、黒い短い尻尾に桃色の電気袋を持つこねずみポケモン・ピチューを乗せ、黒のボタンダウンシャツにカーキー色のカーゴパンツ、さらにその上から細身で灰色のチェスターコートを身に纏いボリュームのあるダークブラウンのキャスケット帽を被った、つい今しがた自動ドアから入ってきたカスミやサトシと同い年くらいの少年とその隣に立つルカリオが視界に入り思わず目を見開いた。

 

「…………え。」

 

「イブ!!」

 

瞬間嬉しそうな声をあげ彼の元へ一直線に駆け寄るイーブイを少し呆然として見送り咄嗟にタケシくんとカスミを振り返れば、多分私が彼を見た瞬間に感じたのと同じ気持ちを抱いているのだろう唖然とした表情のままカスミがゆっくりと口を開く。

 

「……ねえ、あのトレーナー……。」

 

「……ああ。連れているポケモンが似通っているってのもあるだろうが。……それにしたって、似てるな。リオに。」

 

「……ピカ」

 

「……ワウ」

 

さらに微かな警戒を抱き声をあげる相棒達の声を聞きながら立ち上がると改めて少年へと向き直り、イーブイに視線を落としていた可愛いと評される事が多そうな顔立ちをした彼の強い意思を宿したよく晴れた空の色の瞳と目が合った瞬間、視界いっぱいにぶわっと桜吹雪が舞った。

 

「…………は?」

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