二十一話です。
ある意味で主人公の回想回です。
彼女が家族の事に折り合いが付けれたきっかけの話であり、一つの終わりと始まりの話。
ぎりぎり今年中にここまで書けたことにほっとしています(*'▽')
来年もマイペースにではありますが「訳あり新人トレーナー」シリーズゆるゆると続けていく所存ですのでのんびりとお付き合いいただければ幸いです。
来年もよろしくお願い致します。
※今回オリキャラ(モブ)の死ネタ注意です
「…………ここって。」
視界いっぱいにぶわりと舞った桜吹雪に咄嗟に顔の前でクロスさせていた腕を下ろし、無意識に閉じていた瞳を開き真っ先に飛び込んできたのは四方に伸ばした枝という枝全てに満開に薄紅色の花を咲かせた桜の大木だった。
時刻は恐らく夕焼けより一歩手前といったところだろうか。
周囲全てが柔らかい琥珀色に染まる中、時折吹く暖かく心地良い風にはらり、はらりと薄紅色の花弁を散らしている艶やかというにふさわしいそれに違和感を覚えると同時にカコン、と耳朶を打った鹿威しの高い澄んだ音に眉を寄せる。
……正直に言えば、この眼前に広がる光景には物凄く見覚えがある。
というか、うん、まあ言ってしまえば、八年前私が初めて世界を越えた場所でもある父方の実家の庭だ。
多分この桜の大木を背にして母屋の方へ歩き途中で左に折れればあの蔵だって存在するだろう。
でもそんな筈はない。
だって……――。
「…………この桜、去年の夏に雷が落ちて燃えた筈なのに。」
「ピカ!!?」
「……………『ピカ』?」
そう。
それは丁度夏休みだから帰省すると言う伯父さんと甥っ子に誘われるがままにひっついて、家族を失った年の夏休み振りにこの家を訪れた私の目の前で起きた出来事だったし、去年から社会人になった従兄の号令の元バケツリレーで何とか火を消そうとした事だって覚えてる。
……結局間に合わなかったけど。
だから少なくとも私が今回アニポケの世界に落っこちた時分には決して有り得ない光景に唖然としたまま口から零れ落ちた声に驚いたように答えたのはとてつもなく聞き覚えのある力強くて勇ましくて可愛らしい声で、バッと視線を向ければ私の隣で当然のようにこちらを見上げるピカチュウが………………ピカチュウが!!??
「え、はっ、ちょっと待って!!? 何で君ここにいるの!? 」
「ピッカ!!!!」
「いったああああ!!?」
状況も何も分からないながらも少なくとも『ここ』には当たり前だけどいるはずもない相棒に思わず叫ぶと、明らかに機嫌を損ねたらしき彼の回し蹴りならぬ回し尻尾がバッシーンととてつもなくいい音を立てて向こう脛にクリーンヒットし、あまりの痛さに絶叫しその場にしゃがみこんだ。
「~~~~!! 君ねえ!! さっきまで私が階段を踏み外したのは自分のせいだとか落ち込んでたくせにどういう事だよ!」
「ピカ!! ピカッ、ピカチュウ!!」
人体の急所の一つだけあってとてつもなくジンジンびりびりする痛みに耐えながら涙目でキッと相手を見遣り、それはそれこれはこれだとさらに怒りの声をあげる相棒とそのまま互いに一歩も退かずに睨み合うも数秒で降参、と息を付く。
「……やめよう。不毛だ。」
「……ピカチュ。」
と言うか多分こんな事してる場合じゃないし。
最後に付け足すと同意してから私の体を駆け登り、すでに定位置となっている左肩に乗った彼に小さく笑う。
その重みとぬくもりに瞳を細め立ち上がった瞬間一際強く吹いた風に揺れた枝からはらり、はらりと舞い散る薄紅色の花弁を何となく目で追い気持ちを切り替えるように一つ息を付いた。
……よし。
「……うん、何が起こったのかさっぱり分からないけどじっとしてる訳にも行かないし、まず現状の確認から始めてみようか。――私達、さっきというかつい一瞬前までポケモンセンターにいたよね?」
「ピカ」
そう確認すればしっかりと頷く相棒にだよね、と呟き改めて周囲に走らせればちょっとした庭園程の広さがある庭には私達以外の誰の姿もなくて瞳を伏せる。
てか正直、ピカチュウがいなかったからSAN値ピンチどころかSAN値直葬案件だったよね、これ。
だって、『戻らない』って決めた矢先に目の前に桜の花吹雪が舞ったかと思ったら元の世界に戻ってましたなんて洒落にならな過ぎるしそんなの悲劇でも喜劇でもなくてただの茶番に他ならない。
……そうこの桜を見た瞬間、脳裏を掠めた考え得る中で一番最悪な事態にどくりと嫌な音を立てて跳ねた心臓の感覚を思い出し、誤魔化すように服の胸元をぎゅうっと握りしめる。
大丈夫、ここは元の世界じゃない。
いつも世界を越える時に感じる階段を一段踏み外した時のようなあれもなかったし、何より状況がおかしすぎる。
「……てかピカチュウが現実にいるって時点で元の世界の筈ないか。」
「ピィカ?」
「ん? 今ここに君がいてくれてよかったって思ってさ。」
思わず口から漏れた本音にきょとんとして尋ねてくる相棒に笑いかけその黄色い小さな体に自らの頬を擦り寄せる。
ピ?と不思議そうに首を傾げながらもまんざらでもないのかチャアアと嬉しそうに声をあげてお返しというように赤い頬をぐいぐいと擦り寄せてくる彼の背を撫でれば、先程までの冷たい手で心臓を鷲掴みされたような嫌な感覚が霧散していくのを感じ眉を下げた。
……本当、この相棒にはいつまで経っても敵いそうにない。
「……さてと。じゃあ次の確認ね。私のここにくる前の最後の記憶はイーブイが駆け寄っていったあのトレーナーと目が合った時なんだけど、ピカチュウもそんな感じ? てか桜吹雪見た?」
「ピカ。ピカ、ピカチュ、ピカ?」
「……ん、そうだね。場所だけで言えばここは私の元の世界にある親戚の家の庭に間違いないと思う。たださっきも言ったようにこの桜は今はもうない筈だし、ここの家って結構人の出入りがあって常に騒がしい筈なのに周囲が静かすぎるのも気にかかる。仮にこの瞬間がたまたまそう言う時だったとしても、大前提としてあのトレーナーに一瞬で私と君を異世界に送れるような力があるとは思えないし、それは彼が連れてたポケモン達も同様。と言うより私達が彼と出会ったのは偶然だからそんな事をする理由が思い当たらない。っていうのをを踏まえて色々考えると、この状況のトリガーは間違いなく彼なんだろうけど事故的な要素が強いだろうし、ここも現実じゃなくて夢、もしくは幻の類いの可能性が高いように思える。……それなら今ここにタケシくんとカスミ、ルカリオがいない理由も説明が付くしね。彼と真っ正直から向き合ったのは私と、私の肩にいた君だけだから。」
「ピカ。」
見たとしっかり頷きさらにこの場所の事を尋ねてくる彼に頷き、顎に手を添え暫く思考を巡らせた後、一つの結論を口にする。
魔法や魔術がある世界ならそういう方面からも考えなきゃいけないけど、そもそもこの世界で人間一人とポケモン一匹を一瞬で異世界に送るなどの芸当が出来る存在がいるとしたらそれはポケモンに他ならない。
けどそんな事が出来るのなんてそれこそ幻や伝説や準伝説級のポケモンくらいだろうしあの場にそんなポケモン達がいるとは考えにくい。
さらにあの時あのトレーナーや彼のポケモン達は勿論、ポケモンセンター内にいるポケモン達が不審な動きをしていたような事はなかった筈だ。
それに何より、ピカチュウに言ったように彼がそうすることの動機――『ホワイダニット』が存在しない。
いつかの世界で出会った常に眉間に皺を携えた黒が似合うロードの口癖が脳裏に過り瞳をすいっと瞳を細めると私の考えを静かに聞いていた相棒が何かに気が付いたようにハッと顔をあげた。
瞬間パチッと彼の回りで弾けた電気とキラキラと輝きが増した黒曜石の瞳に何が言いたいか即座に判断しピカチュウが口を開くよりも先に却下、とだけ言い放つ。
「ピカ!? ピカ、ピカチュピ!!」
「横暴じゃないです。てか君これが夢とかそう言うのだったら君の≪10まんボルト≫で目が覚めるかもって言いたいんだよね?! 確かにその可能性がないとは言えないけどその方法だと私の目は覚めたとしても君の目が覚めるかどうかが分からない。私は相棒を残して一人で助かるとかしないし、そんな事されても嬉しくない。ッ、私のせいで大切な誰かが危険な目にあったり、いなくなるのはもう二度と嫌だから。絶対に、嫌。だからそれは却下だからね、ピカチュウ。」
「……ピィカ……。」
「…………それに。もし≪10まんボルト≫で目が覚めなかった場合、私ただ無意味にピカチュウのわざを受けただけの間抜けって事になるでしょ? それもちょっとなあ。」
「ピィカ!!?」
さらに横暴だなんだと騒ぐピカチュウにそれでも意志を曲げる気は微塵もないと彼の瞳を真っ直ぐ見つめ、本音を軽口で誤魔化しながらくすくすと笑えばからかわれた事に気が付いたらしく声を荒げる彼に笑みを深くした。
一度は下げかけた耳と尻尾をぴんと上げピカピカと抗議するその背をごめんごめんとぽんぽんと撫でていると不意に母屋がある方向からこちらへ向かってびゅううっと音を立て吹き付けた風にハッとして動きを止める。
……今………。
風に混じりザッ、ザッ、という母屋から此方に向かってくる足音が微かに聞こえ、バチィと赤い電気袋から電気を弾けさせ警戒体制に入った彼を見つめ頷きあった。
「……誰か、来るね。とりあえず一旦様子見も兼ねて隠れようか。」
「ピカチュ。」
もしここが本来の元の世界ならば母屋の住人は把握してる分あの足音の主はある程度想像が付く。
でも私の予想通り夢や幻の類いなのだとしたら、何が起こったとしても不思議ではない。
用心するに越した事はないだろうと周囲に視線を走らせ桜の後ろにお誂え向きにあった生垣の裏に回り込みその場へ生垣に背中を押し付ける形で片ひざをついてしゃがみ込む。
「ここなら向こう側からだと桜の影にもなってるから見えないし物音さえ立てなければ気付かれないとは思うけど、一応用心はしておいて。」
「ピカ。」
さらに声を潜め、私の肩から降りて一つ頷いた相棒と共に生垣から少しだけ顔を覗かせていればやがて微かな足音と共にこちらに向かって歩いてくる腰まで伸ばした滑らかな白髪を首の後ろで一つに結び、白の半襟を首元から見せた木蘭色の無地紬を黒地に七宝柄が染め上げられた帯で締めた老齢の女性が見え目を見開いた。
……あれって……。
「…………ひい祖母様?」
「ピッ、ムュカ!?」
意識せず口から零れ落ちた言葉になかなかの音量で驚きの声をあげかけた相棒の口を掌で塞ぎ人差し指に唇を押し当てシー……と声をかける。
こくこくと頷く彼の手から口を離しその小さな体を抱き寄せつつ視線を再び桜の方へと戻せばいつの間に来たのか大木に対峙するような位置で立ち止まりその薄紅色の花を見上げる旧家である父方の実家の当主を勤めていたひい祖母様の姿があり、やっぱりここは現実ではないのだと確信した。
「……確かにあの人は私の父方のひい祖母様で間違いないと思う。でも、それはあり得ない。……だって。ひい祖母様は、一ヶ月前に亡くなったんだから。」
それはそれまでの厳しい寒さが漸く和らぎ初めこの庭にある梅が満開に咲き開いた頃の話だ。
去年桜が燃えてからというものまるで長年肩に背負っていた何かを下ろしたかのようにすっきりとした、それでいてどこか寂しそうな表情を浮かべる事は増えたけど、齢九十をとうに超えている筈なのにそうとは微塵も思わせない矍鑠さは相変わらずで、その日の朝も威厳と風格に満ちたしゃんと伸びた背筋と立ち振舞いはいつも通りだったと住み込みのお手伝いさんや近所に住む従兄達からは聞いている。
ただ朝御飯を食べた後、日課である庭の散歩からいつまで経っても戻って来なかったため不審に思った従兄達が探しに行ったら燃えてしまった桜がかつてあった場所――丁度今彼女が立っている辺りに倒れているひい祖母様を見つけたらしい。
……とても穏やかな、満足そうな顔で眠っているようだったと葬儀の時ぽつりと従兄が話してくれた時、ふと、去年の夏皆の必死の消火活動も敵わずただただ黒焦げになっていく桜を見ながらたった一言、――もう、その必要もないのですね、と。
誇らしさや寂しさ、そして何よりも愛しさを含んだ感慨深い声で呟いたひい祖母様を思い出した。
その言葉の意味やそれが誰に向けられたものかは分からないけど、何となく、あの桜は何らかの意味があって存在していたものだったんだろうと察したのもその時だ。
そのまま物思いに耽りそうになった瞬間膝に添えられた温かくて小さな黄色の手に瞳を細めるとその上から自らの手を重ね微笑む。
「……ピィカ。」
「――ありがとう、ピカチュウ。大丈夫だよ。だって私、こんな状況でも一人じゃないんだもん。君が……、大切で大好きな相棒が隣にいてくれるんだから。だから絶対大丈夫。信じて。」
「――ピカチュ。」
最後にそう付け足せば真っ直ぐに私を見つめきらきらと濡れた黒曜石の輝きを宿す瞳で言われなくても、と頷いた彼の頭をありがとうとぐりぐりと撫で回すとその場を吹き抜けた風にざああ……と音を立てて揺れる桜の向こう側から聞こえてきたよく知っているひい祖母様の声が耳朶を打った。
「――――……お久しぶり。今日は私の孫達の話をしたいと思うの。最期までそうであろうとした二人の兄と、そんな二人に愛され望まれていた妹の……――とても似た者同士な三人の孫の話を。貴方達と繋がる子達の話なのだから、きちんと聞いて頂戴ね。」
そう一つ何か決意したかのような響きを宿したただただ優しい声でひい祖母様が朗々と語り出したのは私がついさっきピカチュウ達に語ったあの事故の話で。
私が話すよりも詳細で現実的なそれに重ねた手に少しだけ力が籠るのを感じながら眉を下げて聞いているうちにひい祖母様が話しかけているのは桜そのものではなく、桜を通して彼女が見ている誰か――ひい祖母様の言を借りるなら私達兄妹と『繋がる貴方達』であり、さらに何の確証もないただの憶測だけどその『貴方達』はあのトレーナーと関係しているような気がした。
「……詰まるところ。あの子達はただの兄妹思いな似た者同士なの。自らの身を呈してでも妹を庇い守った二人の兄も。二人を犠牲にして助かった事を悔いてそんな事望んでいなかったと、自らが犠牲になった方が良かったと嘆く理生も。抱いている思いはただ一つ。――『例え自らの身が犠牲になったとしても、大切な人に生きていて欲しかった。』ただそれだけなのよ。その思いに違いはなく、今回の事は二人の兄が理生よりも一瞬早く行動しただけの事。そうして今あの子が生きている事こそがあの子が愛され、望まれていた事の何よりの証拠。――だから、言ってやったのです。考えてもご覧なさいって。『もし貴方とあの二人の立場が逆になったとしたら、貴方は二人にいつまでも貴方を犠牲にした事を嘆き悔やみ生きて欲しいと思うのですか?』と。そしたら理生は、あの子は何と答えたと思う?」
「………………『もしそんな風に生きてたら一発ぶん殴ります。』だったっけ。……だってもし私と兄さんとあいつの立場が逆だったとしたら例え自分が犠牲になろうとも私は自分がした事に後悔などしないだろうし、むしろ大切な人を守れた事に満足して生を終える自信さえあったから。なのにそれをぐだぐだうじうじと悩んでいられるなんて真っ平ごめんだし、そんなの死んでも死にきれない。だからもしそんな風に生きてられたら、何とかして一発ぶん殴って、誰がそうしろって言ったって。そんな事のために助けたんじゃないって。――私はただ大切な人に生きていて欲しかったんだって怒鳴ってやるって答えたんだよね。……でもね、ピカチュウ。そうじゃないんだって私は君達に出会って知ったんだ。大切な人達に生きていて欲しいってのは変わらない。けどそれで自分を蔑ろにしたり、犠牲にしてもいいって考えるのは結局大切な人達を傷つける事と同義なんだって。君達に出会ってから今日までそれで大切で大好きな皆に散々叱られたり怒られたり泣かれたりしたしね。」
「…………ピカチュ。」
くすくすと笑いながら楽しそうに話すひい祖母様に声を潜めて続けたところで一つ息を付き、そんな私の答えが気に入らないと顔に極太の筆で書いてあるのが見えそうなくらい憮然とした表情を浮かべ、多分絶対後でタケシくん達にチクると内心で決意しているのだろう相棒の頭をぽんと撫でそう付け足すと笑いかける。
――ひい祖母様にそう問われた日の事は覚えている。
今から三年前。
十三歳の誕生日の直前――身を切るような寒さは日を追う毎に増し、中学に入学して初めての冬休みがいよいよ三日後にまで迫っていた十二月も半ば頃、色とりどりのイルミネーションに彩れた街並みが道行く人々の目を楽しませるのを横目に眺めつつすでに陽は沈み夜の帳が降りきっているにも関わらず預けられている親戚の家にどうしても帰りたくなくて意味もなく入った駅前のコンビニで家族の葬儀以来疎遠になっていた父方の従兄に再会した日をきっかけに一変した生活環境に見事なまでに翻弄されながまくり、気が付いたら中学校も二年生へと進級し一週間程経っていたある春の日。
忙しいほどに目まぐるしく変わっていく日常にぶんぶんと振り回されつつ少しだけ周囲を見る余裕が出てきたこの頃、週末なのだし顔を見せにおいでと呼ばれた父方の実家で当時始めたばかりだった一人暮らしの話題を中心とした近況報告をしている最中、あの日のあの事故の事……強いては兄さんとあいつの事を事故後初めてひい祖母様に話す機会があり、その中でそういう流れになっただけの話だ。何も特別な事じゃない。
ただ、思い知っただけだ。
――私がお兄ちゃんとあいつとどれだけ似ていたのか。
どれだけ互いを大切に思っていたか。
……ただきっとそれだけの事だったのだ。
だからこれは、そんな単純な事にあの事故から三年も経たないと気が付かなかった間抜けな私の笑い話なんだ。
……とは言ってもこの時はまだ自分の中でうまく消化出来ない部分もあって、完全に折り合いが付いたのはこっからさらに二年後の話なんだけど。
うん、面倒くさい奴だとは我ながら思ってます、はい。
「…………さっき、ファミレスで言ったよね。『私の本当の願いは、皆の側で一緒に生きていく事』だって。……それこそが私にとっての『答え』だったんだよ、ピカチュウ。誰かや自分が犠牲になるとかそんなんじゃなくて、私はただお兄ちゃんとあいつや、父さんや母さんや妹と……大切な人達と一緒に生きていたかった。……それだけの事だったのに、何か随分遠回りしちゃってたなあ。」
「――ピカチュウ。」
そう感慨深く呟く私を真っ直ぐ見つめるピカチュウが一声あげた刹那、ぶわりとその場に桜吹雪が吹き荒れた。
……これは……。
「――いつか、貴方達が理生に会う日が来るかもしれない。その時は私の孫娘をどうか宜しくね。……だって、その子は――……。」
さらに桜吹雪の向こうからは未だ楽しそうに話しているひい祖母様の姿が見え隠れしていて。
その後の言葉を聞き取る間もなく意識が白にフェードアウトする瞬間、真っ直ぐに私を見つめたひい祖母様がとても満足そうに、それでいて悪戯っ子のように微笑んでいるのが見えた気がした。