新年一発目の投稿な第二十二話です。
今回は主人公達が謎空間にいた間にポケモンサイドで何が起こったかの説明回です。
……説明?(´・ω・)
そして話の展開が相変わらず蝸牛過ぎて本当にすみません。
次回ぐらいから話がいろいろ動くといいなって思ってますorzorz
では今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。
「……――オ! しっかりしろ!! リオッ……!ッッ頼む……起きてくれ、リオッ!!!!」
「……ッ…………、タケシ……くん?」
真っ白に染まった意識の中、耳朶を打ったのは聞き覚えのある落ち着いた響きの声だった。
必死に私を呼ぶそれに促されるようにまたしても無意識に閉じていた瞳を開ければ真っ先に飛び込んできた、下手したら鼻先が付くんじゃないかってくらい至近距離にあるタケシくんの顔にぱちりと瞳を瞬かせる。
背中と腰にしっかりと腕を回され、向き合って立つ彼の胸元に抱き止められている形になっている体勢に何でこうなったんだっけと、寝起き特有の思考が上手く定まらないふわふわとした頭で考えながら名前を呟くと私の顔を覗き込んだやっぱりこうして見ると造りが整ってるって分かる彼の顔の中にある糸みたいに細い目と視線が絡んだ。
「リオ!!良かった。気が付いたか。」
「……タケシくん。えと……、私どうしたんだっけ……?」
「それはこっちの台詞よ!」
切迫した表情から一転、眉を下げて心底安堵したような笑みを浮かべる彼に尋ねると同時に真横からかけられた声に未だ霞みがかったような頭と嫌に力が入らない体を不思議に思いながら視線を向けた先にはどこか夢現つのようにぼんやりとしているピカチュウとそんな彼を抱えて眉を吊り上げているカスミ、そして説明しろ、とありありと波導と視線を通して伝えてくるルカリオの姿がありさらに瞳を瞬かせる。
「……カスミ……ルカリオ……。」
「カスミ。良かった、ピカチュウも目を覚ましたのか。」
「ええ。ただまだ寝惚けてるみたいで反応が鈍いのよね。……見た感じそっちもそうみたいだけど。ほらリオ! さっさとしっかり起きてよね! ちゃんと説明して貰うんだから!」
「ワウ!」
「ちょ、ひゃっ、あいたたた!!? カスミ! ギブギブ!!」
「――――……ピカッ!?」
カスミにそう話しかけるタケシくんを見ながらピカチュウ「も」?と首を傾げたのも束の間、そのピカチュウをルカリオに渡したカスミの指で耳を掴まれ思い切り引っ張られる。
手加減も容赦もへったくれもないそれに反射的に叫びつつ内心タケシくんっていつもこんなのカスミから受けてたのかと妙なところで感心していると私の声に驚いたのかびくっと体を跳ねさせ慌てて周囲を見回すピカチュウの黒曜石の瞳と目が合った刹那、目の前に桜吹雪が舞った気がして、それで。
意識が完全に覚醒した。
「…………あれ? ――――ってタケシくん!!? ごめん! やじゃない、やじゃないけど流石に近い近い近い!! てか私何でタケシくんに抱き止められてるのかな!?」
「ピカ!? ピカ、ピカチュウ!?」
一気に思考がクリアになると同時に先ほどまで何とも思っていなかったいつもよりずっと近い距離にあるタケシくんの顔だとかそもそも密着してる胸とか背中と腰に回された腕とかから伝わってくるどうしようもなく安心する体温とかが妙に気恥ずかしくて、首から上が熱くなるのを感じながら咄嗟に彼の胸元に手を付き突っぱねるようにして体を離そうとするも全くびくともしない事にそう言えばタケシくんってシリーズによって多少の違いはあるけど基本的に腹筋六つに割れてるしガチガチの筋肉付いてる体の持ち主だった事を思い出す。
特にサン&ムーン時とか体バッキバキだったもんね、服着てるとあんまそんな感じしないけど。
そりゃあ私の力なんか屁でもないよね……じゃなくて!!
そんな感じで全く分からない状況に騒ぐ私達を見た三人がはぁぁぁ……と疲れたように大きく嘆息するのを見て本当このパターン多すぎない?!と内心で絶叫するのと同時にぽすりと私の左肩に自然な動作で顔を埋めるタケシくんに思わずぎしっと固まった。
「ふぁっ!? え、えとタケシくん!?」
予想外過ぎる展開に咄嗟に一歩後退りかけるもそれを阻止するように少しだけ力を込められた両腕によって抱き寄せられさらに体が密着する。
いくら何でもこれはまずいんじゃないかと声をあげかけたところで、私をしっかりと抱き締めている彼の手が小刻みに震えている事に漸く気が付き瞳を瞬かせた。
…………あ、違う。これって……。
瞬間、脳裏を過った可能性に瞳を伏せると彼の胸元に置いたままだった手を少しだけ躊躇してからその背中に回せば遮るものがなくなった事で服越しに彼の体温だけでなく鼓動までしっかりと伝わってくる事に少しだけ目の奥が熱くなって、それを誤魔化すように少しだけ腕に力を込めた。
「…………リオ。」
「――――タケシくん、ごめんね。私、と今回はピカチュウもか。正直状況は何も分からないけど私達皆に凄く心配かけるような事になってたんだよね。……私達側から見て、何があったかはちゃんと話すよ。だから、君達側から見て私達に何があったのか話してくれると嬉しいな。あと私とピカチュウがちゃんと起きることが出来たのは多分、皆がここにいてくれて。タケシくんがあんなに必死に私を呼んでくれたからだと思う。起こしてくれてありがとう。タケシくん、カスミ、ルカリオ。」
「ピカチュウ。」
多分そういう事なんだろうと察してしっかりタケシくんを抱き締めたまま三人に礼を告げればきっと私同様に色々と察したんだろうピカチュウがそれに続き声をあげる。
するりとルカリオの腕から抜け出しその肩へ飛び乗ると彼の頬に自らの赤い頬を擦り寄せるという行為をカスミ、タケシくんと続け最後に私の右肩に飛び乗ってチャアアと頬を擦り寄せてくる相棒に小さく笑うとまるで頭痛がするかのように片手で顔を覆ったカスミが再び大きく嘆息した。
「……やっぱりあんた達二人揃うと本当に質悪いわよね。いーい? 先に言っとくけどあたし達側から言える事なんてほとんどないわよ。あたし達だって何が何だかさっぱり分かってないんだから。と言うか、まずリオ達って目を覚ます前の事どこまで覚えてんのよ。」
「……どこまで。ん~~……ピチューとルカリオ連れたあのトレーナーにイーブイが駆け寄って行って、顔あげた彼と目があったところまでかな? 詳しいことは後で話すけど、あの瞬間目の前に桜吹雪が舞って、色々あって。で、こっちで目が覚めたらタケシくんに抱き止められてた。」
「ピカチュ。」
「…………桜吹雪?」
とりあえず私達がした体験の話は後でいいか、と判断しそう説明すれば同意するようにピカチュウが頷くのとタケシくんの訝しげな声が耳朶を打ったのはほぼ同時だった。
私の肩から顔をあげ眉を寄せる彼に何だか今日はタケシくんにそんな顔ばかりさせているような気がして、後で話すからと再度繰り返しつつ胸に沸いた罪悪感に眉を下げる。
……うん。
本音を言えば。
明後日にはガラル地方に向けて旅立つし、帰ってくる頃にはタケシくんはジョウト地方のポケモンドクター養成学校に戻っちゃってるからタケシくんとカスミと一緒に過ごせるのは今日と明日しかない。けど、明日は夜にパーティーもあるしポフレも作らなきゃだしでバタバタする事は間違いないだろうから今日は本当は皆と笑って過ごしかったのに。
本当ダメダメだなあ、私は。
「ピィカ?」
「ん、ごめん。何でもないよピカチュウ。」
そんな感じで内心で自嘲していると不思議そうな顔で私を見遣る相棒の黒曜石の瞳と視線が絡み、気持ちを切り替えるように首を軽く振る。
そのまま続きを促すようにカスミを見遣れば分かったわ、と頷いた彼女が再度口を開いた。
「つまり、ほぼ何も覚えてないって事ね。いいわ。……リオが立ち上がってあのトレーナーと向き合ってから五分くらい、あんた達ただずっと見つめあってたのよ。その間リオもピカチュウもあのトレーナーも何も話さないしむしろ微動だにしないから、少し変じゃないかってタケシが立ち上がったのと同じタイミングで多分あたし達と同じように考えたあっちのルカリオがトレーナーの肩に軽く触れたら彼の体が大きく揺らいで前方に向かって倒れ込んだの。それを咄嗟にルカリオが抱き止めて。肩から落ちかけたピチューと足元のイーブイがトレーナーに必死に呼び掛けても一切反応しなくて。……と言うよりあれ完全に気を失ってるみたいだったわね。」
「――ああ。それで辺りが一時騒然としたんだがカウンターでずっとジョーイさんと話してた二人組とリオが言っていた彼女がどうやらあのトレーナーの知り合いだったみたいでな。彼の介抱をし始めた彼らのうち黒髪の男性がリオを見て驚いたようにこっちに駆け寄りかけたんだが、それを見たそれまでトレーナーの側で不安げにしていたイーブイがリオを庇うように男性の前に立ち塞がったんだ。」
「イーブイが?」
【ああ。リオとピカチュウにちょっかいを出すなと言っていたな。……その時のやりとりから見てだが恐らくイーブイのトレーナーはあの少年ではなく男性の方だろうという事も分かった。そうしてるうちにとにかくトレーナーを寝かせた方がいいとジョーイが宿泊用の部屋を手配し、あの少女の父親だという小豆色の髪の男性に話を聞きたいから後で部屋まで来るように言われてな。それを承諾しトレーナーを抱えて連れていく彼らを見送っていたらピカチュウがリオの肩から落ちたんだ。】
「ピカッ!?」
「そうよ! いきなりぐらって体が揺れたかと思ったらそのまま前へ向かって落ちたの。それでルカリオが慌ててキャッチしたら今度はリオが倒れそうになって。そっちは駆け寄ったタケシが受け止めたってわけ! それであんた達二人も完全に気を失っててあたし達がいくら呼び掛けても全然起きないから、ジョーイさんがリオのためにも部屋を用意するって言ってくれて、今準備して貰ってる最中なの。ッッもう!! 本っ当に心配したんだからね!!!! 分かってんの!! 二人ともっっ!!」
「……っ、ご……、ごめんなさい……。」
「……ピカピカ……。」
三人から交互に説明された内容にだから目が覚めた時肩に乗ってた筈のピカチュウがいなかったのかと納得しているとズイッと身を乗り出すように私達に顔を近付けたカスミの剣幕に気圧されて咄嗟に謝るも、眉を吊り上げた彼女の眼差しがさらに鋭くなった事に眉を下げる。
……うん。まあ正直言えばさっきのあれは、はっきりした原因は分からないものの多分事故的なもので私達にだって予想外すぎて回避出来る筈もない。
だって、目が合った瞬間ああなってお互い倒れるなんて普通考えないだろう。
でも…………。
そこで一旦思考を区切り改めて皆の顔を見回せばカスミと同じような表情を浮かべたタケシくんとルカリオとも視線が絡み、それだけで私達が皆にどれほど心配かけたかなんて事は改めて容易に分かってしまい、多分私と同じ心境で耳と尻尾を垂らした相棒と顔を見合せ仕方ないな、と笑い合った。
「ちょっと! 何笑ってるのよ!!」
「や、ごめんごめん。……ただちょっと実感しちゃって。心配かけちゃった事は悪かったと思ってる、本当にごめん。でも。今こうやって真っ正直から叱ってくれて、心配したって伝えてくれる大切で大好きな人達やポケモンがいる私達は本当に幸せ者なんだなって。」
「ピカチュ。」
【………………っこの、能天気コンビめ】
「酷くない!?」
「ピカピカッ!?」
そんな私達を見てさらに声を荒げかけたカスミにごめんと繰り返しつつもそう答えてへらりと笑えば、ぐっと言葉に詰まる彼女に加え、片目を眇め完全に呆れ返った表情で言い捨てたルカリオにばっさりと切り捨てられ流石に声をあげる。
それと同時に大きく嘆息したタケシくんのそれまで背中と腰に回されていた腕がするりと解かれかと思ったら代わりにぽす、ぽすと私とピカチュウの頭に温かな掌が置かれ「リオ、ピカチュウ」と呼び掛けられた。
「――二人が俺達の事をそう思ってくれているのは素直に嬉しいよ。ありがとうな、二人とも。でもそれなら尚更、何があったのかきちんと話してくれ。二人と同じように、俺達にとってもリオとピカチュウは大切で、大好きな友達なんだ。お前達には俺達が付いてる。それを忘れないでくれ。」
「タケシくん……。」
「ピカチュ……。」
きょとんと首を傾げる私達に構わずふわっと柔らかく笑い、まるで言い聞かせるように話す彼の声はどこまでも温かくて、優しくて。
優しく頭を撫でる手の動きとかも相俟ってじわりと心に染みていくそれに、目が覚めてからも続いていた全く分からない状況に少しだけ力の入っていた体からふ、と力が抜けもう今日何度めか分からないけどぼろっと目尻から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「……ピィカ。」
「…………あれ。おかしいな、今日何だかんだで色々泣いたりしてるから涙腺が緩んでるのかな。大丈夫。これも、悲しいとか痛いの涙じゃないから。」
「ピカ。」
「ワパ!」
「…………ワパ?」
はらはらと零れ落ちるそれに苦笑し、タケシくんの背中に回していた腕をそっと下ろすと心配げな表情の相棒の背中を安心させるように撫でたところですぐ足元から聞こえた元気な鳴き声が耳朶を打ち、ハッとしてごしごしと目元を乱暴に拭いそちらへ視線を向ければ、ぶんぶんと尻尾を振るワンパチの綺麗な橄欖石の瞳と目が合い軽く首を傾げる。
「ワンパチ……?」
「ワンパチ? このポケモンの名前か?」
「初めて見るポケモンよね。ワンパチって言うんだ。てか何でリオが知ってるのよ。」
「ああうん。えっと、ワンパチはガラル地方に生息してるでんきタイプのポケモンなんだ。ガラルに行く事が決まった時にオーキド博士が私のポケモン図鑑をガラルでも使えるようにアップデートしてくれたから、どんなポケモンがいるのか少しでも知っておいたほうがいいかなって色々調べてた時に知ったの。」
思わずそう呟けば同じようにワンパチへと視線を向けたタケシくんとカスミに尋ねられそう説明しつつも、今この瞬間にここにいるワンパチなんてどう考えてもあの人達のワンパチにしか思えなくて。
「わ、ワンパチ!! 先に行かないで!!」
瞬間聞こえた声につられるようにそちらへ視線を投げ掛けるとやっぱというかなんと言うか。
少し気まずそうな表情を浮かべながらこちらに駆け寄ってきたコハルの姿があった。