少々お久しぶりな二十三話です。
やっと主人公とオリキャラが出会いました。
す、少し話が進んだって信じたいです、はいorz
では今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。
「~~~~! だから!!!! おれがこうなった事と彼女は何の関係もないってさっきから何度も言ってるだろ!? というかそれ言ったら彼女とピカチュウだって同じように気を失ってるんだから、向こうからしたらおれが彼女達に何かしたんじゃないかって疑われる立場だよね!?」
「ワウ! ワウワウ、ワウ!!」
「じゃあ何で倒れたかなんて言われたっておれにも良く分からないんだってば!!」
「ピチュ! ピチュ、ピチュチュピ!! ピチュピ!!」
「ワウ!!」
「ピチュッ!!?」
「ピチューにあたんな!! それやっていつも後で凹んでるのはお前だろ、ルカリオ!!」
その部屋に入った瞬間真っ先に目に飛び込んできたのは彼のルカリオと侃々諤々と言い争いをしているあのトレーナーの姿だった。
部屋の奥に置かれているベッドの上で上体を起こし自らの胸元を掴みあげるルカリオの鋼に覆われた手を引き剥がそうとしているのかその上から手を重ねながら、さっきの私とタケシくん同様下手したら鼻先が付くくらいの至近距離で睨み合う二人の間で気の毒になるくらいオロオロとしていたピチューがルカリオに怒鳴られびくっと体をすくませ、それにさらに声を荒げいつ取っ組み合いの喧嘩を初めてもおかしくないくらい険悪な雰囲気に発展していくトレーナーとぐるる……と唸り声をあげるルカリオから少し離れた位置では、耳と尻尾を垂らし呆れたような表情を浮かべたイーブイとイーブイ程ではないもののその特徴的な鋭く切れあがった金色の瞳に呆れの色を乗せた、少なくても気を失う前にはいなかった黒いふさふさとした鬣と青い体を持つライオンのようなポケモン――がんこうポケモン・レントラー。
そして頭痛でもするかのように片手で顔を覆い眉間に皺を寄せ嘆息しているカウンターにいた黒髪の男性とどうしたものかと眉を下げ困惑気味のサクラギ博士がそれぞれの表情を浮かべ立っている。
「…………えーっと……、これは……。」
「……ああ、なかなか凄まじいな。」
「……まあ、裏を返せばあれだけ喧嘩できてるって事はあのトレーナーも特に体とかには異常がなかったって事なんでしょうけどね、きっと。」
「ピカ。」
「ワウ。」
「……ええーー……。」
そんな感じで。
眼前で繰り広げられていぶっちゃけるとなかなかのカオスな状況に思わず口元をひきつらせて呟けば恐らく私同様困惑気味な二人と相棒達の声が耳朶を打ち、確かにカスミの言う通りなんだけど何か釈然としない心持ちになりながらも少し引いているようなコハルの声に眉を下げた。
ちなみに何で私達がこの部屋――あのトレーナーが運び込まれたというポケモンセンター内にある宿泊スペースの一室――にいるのかと言うとその理由は至極単純で。
あの後ワンパチの元へ駆け寄ってきた彼女に「あ、あの、すみません。お父さんに皆さんを呼んで来るよう言われて。その、一緒に来て頂けませんか!」と伝えられ、ここまで案内してきて貰ったというわけだ。
その際カウンターにいた黒髪の男性があのトレーナーの父親である事や彼らがイッシュ地方から来た事。
そして黒髪の男性とサクラギ博士が知己である事もコハルから教えてもらっていて、新無印においては勿論イッシュ地方と言えばベストウィッシュという事で朧気な記憶を辿ってみても彼らの外見や名前には心当たりがなくて、少なくともアニメやゲームの登場人物じゃないって事だけははっきりした。
ただ問題はむしろ私の事を何も知らないコハルが一緒にいた手前仕方ないとはいえ、私とピカチュウが体験した事を未だに皆に説明できてない事だと思う、うん。
「ああ、コハル、ワンパチ。」
「お父さん。」
「ワパ!」
まあ少なくてもルカリオには伝わってるだろうし、せめて『元の世界に関する事』ってだけでもタケシくんとカスミに伝えられたらいいんだけどこの状況で伝える方法が思いつかないんだよなあ、なんて考えている部屋のドアが開いた事に気が付いたのかサクラギ博士が私達へと振り返る。
瞬間人の良い笑みを浮かべた彼はまさにおおらかで穏やかといったアニメ越しに見ていた通りの風貌で、人に警戒心を抱かせない雰囲気を身に纏っている博士に知らず知らず強張っていた体から少しだけ力が抜ける気がした。
「呼んできてくれたようだね。ありがとう、コハル。」
「う、うん。それはいいんだけど……。」
さらにこちらに歩み寄ってきた博士にそう答えちらりとトレーナーの方へ視線を向けたコハルに彼がああ、と苦笑する。
「コハルとワンパチが部屋を出てすぐにツムギ君が目を覚ましてね。本人的には倒れた理由こそ分からないものの、身体的にはどこにも異常はないらしいんだが、それでルカリオが納得する筈もなくて。ああしてずっと言い争ってるんだ。」
「…………えぇーー……。」
「なァに、ツムギはともかくルカリオはただの八つ当たりだ。気が済むまで言い合えば収まるだろ。それよか悪かったなコハルちゃん、一人で使いにやっちまって。」
「いえっ、大丈夫です。」
父親の説明に二度目となるどこか引いたような反応を見せる彼女にそう言えばコハルって新無印初期はこんな感じだったっけと内心で考えていると、どこか仕方ないと呆れたような表情を浮かべ首に手を当てて此方に歩み寄ってきたサクラギ博士達のやりとりから見てツムギという名前らしいトレーナーの父親である黒髪の男性がそう一つ息をついた。
そのまま少し遠慮がちに答えたコハルに笑いかけ、さて、と改めて私へと向き直った男性のあのトレーナーと良く似た空色の瞳と視線がかち合った刹那彼の顔に一瞬よく知っている筈の誰かの面影が重なった気がして瞳を細める。
――――……この人……?
「よう。ツムギが起きたんでもしかしたらと思ってたんだが、お前さんとピカチュウも起きてたんだな。そいつは重畳。俺は今あそこでパートナーと口喧嘩してるトレーナー――ツムギの父親のセージ。んでこっちはポケモンの研究をしているサクラギ博士とその娘のコハルちゃんにワンパチな。で、お前さんは? 一人は元とは言え、ジムリーダーといるなんてなかなか珍しいトレーナーだよな。」
「…………私は、マサラタウンに住んでる空野理生といいます。この二匹は私の相棒のピカチュウとルカリオ。二人の事を御存じなら紹介は省きますが、タケシくんとカスミは私に付き合ってここにいてくれてるだけです。」
口調こそ朗らかではあるものの、全く笑ってないあからさま過ぎるほどな警戒と薄らと敵意さえ浮かべた瞳で話しかけてくる彼の視線を真っ正面から受け止めそう告げる。
正直こういう視線は主に超えた先の世界において初対面のキャラとかに否が応でも向けられるものだから特に気にしないけど、そのままちらりと私の背後に立つタケシくんとカスミに視線を向けた彼に良くないものを感じ咄嗟にそれを遮るように少し強めの口調で言い切ればすぃっと瞳を細めた彼がへぇ、と感嘆の声をあげると同時に横から私と彼の間に先を黒い鋼で覆われた青い腕が差し込まれハッと横を見れば私を庇うように一歩前に出たルカリオの赤い瞳としっかり視線が絡んだ。
「――ワウ。」
「……ルカリオ。」
下がってろ、とただそれだけ告げてくる相棒の名前を呟くのと同じタイミングでバチッと左肩の相棒の電気袋から弾けた電気に横目でそちらを見れば、私よりもよっぽど警戒心を顕にしたもう一匹の相棒の横顔が目に入り、何だかんだで過保護な相棒達に思わず口元に笑みを浮かべ小さく息を付く。
…………ああ、もう。本当に。
「……成る程? ルカリオにしろ、ピカチュウにしろお前さんによく懐いてるな。そりゃイーブイがああなるわけだ。……しかし、ソラノ。……ソラノと来たかあ。…………なあ、嬢ちゃん。ちぃっと俺とツムギとお前さんの三人だけで話さないか? お前さんには聞きたい事がいくつかあるし、何よりお前さんにとっても
「ッ、父さんっっ!!」
「セージ!」
さらに何故かは分からないけど、『空野』の名を聞いた瞬間明らかに顔色を変えた彼の言葉に含まれたあからさまにこちらの反応を窺うようなニュアンスに眉を寄せるのと非難めいた怒声と諌めるような声が彼の背後にあるベッドと彼の隣からそれぞれ響いたのはほぼ同時だった。
ピ、と明らかに不快感を込めた声をあげさらにバチバチと空中に放電するピカチュウと今にも飛び出しそうなルカリオに小さく眉を下げ右手でルカリオの鋼で覆われた手を握り、左手でピカチュウの背を撫でると落ち着いてと小さく告げてからセージさんの瞳を真っ直ぐ射抜くように見つめれば、彼が微かに肩を揺らす。
……先に言っておくなら私には視線だけで他人をどうこうできるような威厳も何もない。
けど。せめて今だけはほんの少しでもいいから目に力が込められてますようにと願いながらゆっくりと口を開いた。
「……――ありがとうございます。私も貴方に聞きたい事がいくつかあるので話をすのは構いません。ただ、それが気遣いであれ、脅しであれ人払いは無用です。私の友人と相棒達は、私の事情を全部知っていますから。」
「――ほう、全部話してるときたか。そりゃあ大胆な事で。しかしなかなか佳い目をするなお前さん。こりゃ少しばかり……――――」
「ピチュー!! イーブイ!! ≪でんこうせっか≫!」
「ピッチュ!!」
「イブッ!!」
「ぐおッ!!??」
明確な音になったのはそこまでだった。
そう楽しそうに彼がにぃ、と口元を三日月に吊り上げた刹那、凛として尚且つ鋭い声が指示を出すと同時にとてつもなく勇ましい声と共に真横からその脇腹目掛けて弾丸のように突っ込んできた二つの影に吹っ飛ばされ、壁に背中から激突しその場に倒れ付したセージさんと入れ替わるように先程まで彼が立っていた場所に着地し褒めてと言わんばかりにふんすふんすと私を見上げる二匹のポケモンと目が合い言葉に詰まる。
てか、ええええええっ…………と。
「……………す……凄い威力の≪でんこうせっか≫……だね。」
「ピチュ!」
「ブイ!!」
「……って、そこ褒めるところじゃないでしょ!?」
「……はは。確かに凄い威力だったけどな。」
「……ピカチュ」
「……ワウ」
咄嗟の事に半ば唖然としながらも何とかそれだけ伝え瞳を輝かせた二匹が得意満面そうに答えるのを眺めていると思い切りカスミに突っ込まれ、私をそうフォローするタケシくんの手が右肩に乗せられた。
さらに目の前の光景に毒気を抜かれたのかそれぞれに声をあげたルカリオとピカチュウが臨戦体勢を解いたのを見てホッと息を付き、肩に乗る手の温かさに知らず知らず強張っていた肩から力が抜けていく。
……うん。
自分で「プロポーズかよ」って突っ込んどいてなんだけど、やっぱ私、タケシくんの体温好きだなぁ。
何て言うか凄く優しくて安心するし、ある意味母性的なものを感じるというか……。
「……リオ。」
「ん、大丈夫。あの程度の脅しや挑発なら慣れてるから何でもないよ。むしろ今にも飛び出していきそうな相棒二匹を抑える方が大変だったけど、それもピチューとイーブイのお陰で何とかなったし。改めてありがとうね、ピチュー、イーブイ。」
「ピッチュ!」
「イブ!」
同年代の異性に対しては些かどうなのかと問われそうな感想を内心で抱きつつ、だから大丈夫とタケシくんとカスミに安心させるように笑いかけた。
最後にそう付け足し改めてお礼を言えば誇らしげに胸を張ったピチュー達にタケシくんと揃って嘆息し「慣れてんじゃないわよ」とぼやくカスミを見て眉を下げる。
「あはは……。あ、てか、えっと。だ……大丈夫ですか?」
「――うん。どうせ父さんの事だからピチューとイーブイの≪でんこうせっか≫の勢いをうまく受け流した上でわざと吹っ飛んでるし、倒れたふりして今も聞き耳立ててるから大丈夫。気にしないで良いよ。……だよね?」
次いでさすがに放っておくわけにもいかず少し躊躇してから声をかければベッドから立ち上がった……えっと……ツムギくん、にそう返され『だよね?』の部分で一オクターブは下がった彼の声にビクッと微かにセージさんの肩が跳ねたのが見えて思わず苦笑した。
ああ、そういう力関係なんだと内心で納得していると一つ息を付いたツムギくんが徐にレントラー、と呼び掛ければまさにやれやれと言った体で歩いてきたレントラーが俯せに倒れているセージさんに「伏せ」の体勢で思い切りのし掛かった。
瞬間聞こえたぐえ、という悲鳴はきっときのせいではないのだろう。
「……全く。レントラー、父さんの事暫く頼むね。」
「ガウ。」
任せろ、と言うように声をあげたレントラーに瞳を細めた彼が改めて私へと向き直る。
再びその良く晴れた日の空の色の瞳と真っ正面から目があっても今度は目の前に桜吹雪が舞う事はなく。
さっき初めて会った時はパッとみて『私に似ている』と感じた彼の姿もこうして改めて向き合ってマジマジと見てると、外見で言えば似てるって感じはしない。
…………うん、ただ。何と言うか――。
「……『似ている』っていうよりは『同類』って言った方が近い感じなのかな? 顔の造りとかの外見的なものじゃなくて、『在り方』が似た者同士なんだろうね、おれ達。」
「…………え。」
口を開いたのは彼の方が先だった。
内心で感じた事そのまんまを告げられ思わず目を見開くとツムギくんが少し困ったように眉を下げて微笑んだ。
「……えと、さっきは父さんが本当にごめん。もうあんな事は二度とさせないから安心して。あと改めてになるけど、初めまして。おれはイッシュ地方ライモンシティのツムギ。――ソラノ・ツムギ。……普段フルネームで名乗る事ないからちょっと変な感じだけど、気にせずにツムギって呼んでくれると嬉しいかな。よろしくね、リオ。」