約1か月強ぶりの二十四話です((((;゚Д゚))))
次回はもうちょい早くうpしたい所存ですすみませんorzorz
大まかな説明回です。
そもそも何で彼らがカントー地方に来ているのかとかの説明は話の展開上次回になりますが、セージとツムギの立ち位置はこんな感じ。
一応メインの話やオリ主周辺に関わってくるオリキャラはこの二人だけの予定です。
(ゲストキャラとかでオリキャラ出るかもしれませんがorz)
では今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。
「…………ソラノ……って……。」
「……そうか、ソラノと言えばセージの……。ツムギ君、つまり君達とリオ君は親戚のような何かしらの関わりがあると言うことでいいのかな。」
「――……分かりません。博士も知ってるように父さんは天涯孤独の身、と言うか十八才以前の記憶がないので家族がいるかどうかさえも分かってません。……ただ、少なくても無関係じゃないと思います。」
「……記憶が、ない?」
ある種の爆弾発言に近いツムギくんのそれに辛うじてそう呟いたものの二の句が継げれなくなってる私を横目にサクラギ博士が口を開く。
顎に手を添えどこか納得納得したように頷く博士とツムギくんの会話に不穏なものを感じ思わず呟くとああ、とどこか苦味を含んだ声が耳朶を打ち、そちらを見遣ればレントラーの下で苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたセージさんと目が合った。
うん、というか本当にツムギくんの言う通り聞き耳立ててたんだ。
「記憶がないって、つまり記憶喪失って事よね?」
「…ああ。どういう事なんですか。」
「…………まあ、そうだな。こちらだけ都合良く情報を貰うってわけにもいかねぇか。」
さらにカスミとタケシくんからも続けて問われたセージさんが一つ息を吐く。
そのままその前足にぽんっと軽く触れると同時に少しだけ瞳を細めのっそりと立ち上がりサンキュ、と笑い体を起こした彼のすぐ横へと改めて座り直し向けられたレントラーの視線に少しだけ苦く笑い「へいへい」と呟いた彼が首に手をやった。
「……とは言っても、ツムギが言ったそのまんまだけどな。俺には生まれてから十八までの記憶がねえんだよ。分かってるのは手前の名が『ソラノセージ』と言う事だけ。正直な話年齢も身体な特徴やら能力やら見てそれくらいだろうってだけで本当のところは分からん。それに加えてどこで生まれたのかとか、家族や友人はいるのかとか。生まれてから十八までどうやって生きてきたのかだとか、そう言った本来だったら忘れちゃならねえ筈のものを含めた一切合切の記憶が俺の中にはねえんだよ。……まるで初めから、そんなものなかったっていうようにな。……だから、お前さんの名前にソラノがあった事にちぃっとばかり焦っちまってな。話を聞きたいがあまり当てずっぽうで脅すような真似したのは悪かった。ツムギとそう年の変わらねえ女の子供に大の男がやる事じゃなかったわな。」
「……当てずっぽうだったんですか?」
「おう。と言うか人払いする時の常套句みたいなもんだな。人間なんて誰でも秘密の一つや二つ抱えてるだろ。そこで『都合がいい』なんて言ってやれば此方が何も言わなくても相手が良いように解釈してボロを出してくれるって寸法だ。特にその抱えてる秘密が大きい奴程効果は抜群ってな。」
「…………成る程。」
あまり申し訳なさそうに見えない謝罪の後、あっけらかんと言い放った相手に軽く脱力感を覚えつつ息を付く。
横に立つルカリオの呆れたような表情が目に入り、少なくともその発言に嘘はないのだろうとげんなりしていると右肩に乗ったままだった大きな手に労うように肩を叩かれ、眉を下げそちらを見遣れば私と同じような表情を浮かべたタケシくんとカスミと目が合いますます体から力が抜けた。
……何だろう、何かどっと疲れた。
ただ、この世界では体質の事も家族の事ももう皆に話していたからああ返せたけど。
もしそうじゃなかったら勝手に動揺して自滅していたかもしれないって考えると、セージさんの常套句って言うのは例え当てずっぽうであっても私みたいな奴には効くのかもしれない。
「その……重ね重ね本当にごめん。父さんには後で言っておくから。それでさ、リオ。こんな事聞くのも何なんだけど何か心当たりとかないかな。リオの親戚とかで、具体的に言うと二十年くらい前から姿を見せないとか消息不明になってる、みたいな人。」
「……二十年前……。」
内心そう納得していると申し訳なさそうな表情を浮かべたツムギくんに尋ねられ口元に手を添える。
そうは言われても私の生い立ちやなんやかんやは前述した通りで、特に十才以降は自分の事で精一杯で他の話を聞いたり話してる余裕なんてなかったのが現状だ。
さらに実際問題として父方の親戚とかで消息不明になっている人がいるという話は多分聞いた事がないし、そもそもいくら同じ姓だと言っても少なくとも半月前までは異世界に住んでいた私や現在進行形であっちに住んでいる親戚達がこの世界の住人であるセージさんと何かしらの関係があるとは流石に考えづらいというか、まずあり得ない。
って事は多分偶然同じ姓の赤の他人ってのが筋の通った判断なんだろう。
ただそれだと気になるのが……――――。
「――ピィカ。」
止めどない思考の渦にのまれかけると同時に耳朶を打ったのは左肩に乗った相棒の勇ましくも可愛らしい声だった。
次いでぺちぺちと頬に触れた小さくて温かい手に無意識に伏せていた瞳を彼に向ければ、黒曜石の輝きの瞳と視線が絡み眉を下げる。
そのまま左手を伸ばしこの場において誰よりも私の事情を把握してるからこそ、恐らく私と同じ考えに辿り着いたのだろう真剣な眼差しの相棒の頬を軽く撫でた。
…………うん。
確かに私というイレギュラーな存在があり得る以上、その可能性がないとは言いきれない。
ただそれはあくまで可能性の話だし確証も何もない。
そんなあやふやな考えを告げるのは流石にどうかと躊躇し、ごめんと改めて口を開く。
「……その、私自身そういう話は聞いた事がなくて。ソラノは父方の名前だから、父さんや家を仕切っているひい祖母様なら何か知っていたかもしれないけど、二人とも既に鬼籍に入ってるんだ。えと、あと……。あの、こんな話初対面で言うことではないんだけど、私、所謂遺児ってやつでさ。事故で家族全員がいなくなった後私を支援してくれてたのがひい祖母様って事もあって他の親戚の連絡先なんかも知らないから連絡の取りようがないの。……力になれなくて、ごめん。」
なるべく重くならないようにさらりとそう告げると同時にまるで時間が止まったかのような沈黙がその場を包み込んだ。
当たり前だけど私の事を全く知らない目の前のツムギくんやサクラギ父娘やそのポケモン達は勿論、家族についてはともかくひい祖母様の事は伝えてなかったタケシくんとカスミ、ルカリオもまた息を飲み少しだけ力が籠った右肩の手と思い切り向けられた視線に苦笑するとそんな私を見遣り、がりがりと後頭部をかきながらあーー……と気まずそうにセージさんが声をあげる。
さらにスッと立ち上がり私の側に寄ってきた彼に何か言う前に伸びてきた彼の手がぽんっと頭に置かれ、がしがしと髪をかき混ぜられた。
「へっ!? あた、えっ、あ!?」
「…………そうか。悪かったな。言いづらい事、言わせちまって。」
結構遠慮ない力のそれに思わず声をあげれば頭上から降ってきたのは少しだけ苦味を帯びた、それでもとても温かい声で。
最後にぽんぽんと軽く頭を叩かれるとフッと口元に笑みを浮かべたセージさんがよし、と口を開いた。
「……まあ、何だ。ここらで一旦小休憩にするか。一服がてら全員分の飲み物でも買ってくるわ。サクラギ、来てくれ。」
「……ああ。コハルとワンパチも手伝ってくれるかい? ついでにポケモン達用にも何か買ってこよう。」
「う、うん。」
「ワパ!」
さらにその場の空気を切り替えるように一際明るい声を出した彼にハッと我に返り頷いたサクラギ博士がコハル達にも水を向け、私達が何か言うよりも早く少し待ってろよ、とひらりと手を振ったセージさんを先頭に流れるようにして部屋を出ていく彼らを見送った。
てか、これは……。
「……えーーっと、気を使われた、って事でいいのかな。」
「ピカチュ」
「……大分強引だったけど、そう言うことじゃない?」
あまりのスムーズさに半ば唖然として呟き、同意する相棒の声に眉を下げたところで横から伸びてきた少女然としたカスミの手がぽすりと頭に置かれた事に瞳を瞬かせる。
そのまま多分セージさんに乱されたであろう髪を直すように動くすらりとした指とそこから伝わってくる手の温もりが少しだけ擽ったくて思わず笑うとサッと顔に朱が走ったカスミに私の頭を撫でているのとは反対側の手でぐいっと頬をつねられた。
「ふぁっ!? か、かひゅみ?」
「~~だから!! あんたねぇ! 顔っ!!」
「…………凄い。今リオの回りに花が飛んだように見えた。もしかして、いつもああなるの?」
「ああ、そうだな。」
「ちょっとタケシ! ツムギ!! 言っとくけどタケシに撫でられた時の方がリオ凄いんだからね!」
そこまで痛みはないもののとりあえず声をあげればがなるカスミに加え、ぱちぱちと瞳を瞬かせるツムギくんと眉を下げて笑うタケシくんにもしかしてまた『ピカチュウが私に撫でられてる時の顔』してたかなぁと考えているとそうなんだ、と名指しで言われたツムギくんがタケシくんに改めて視線を向ける。
さらにカスミと私からも視線を受け小さく肩を揺らした後、諦めたように息を付いたタケシくんの私の右肩に乗っていた手が頭に乗せられそれが嬉しくて瞳を細めればツムギくんが小さく噴き出すのと同時に「ほら見なさい!」と鼻を鳴らすカスミの声が耳朶を打った。
「……リオ。顔、凄く緩んでるぞ。」
「うん。ひゃってうれしーかりゃね。」
眉を下げたままの彼にそう言われ、カスミに頬をつねられたままあっさり答えへらりと笑いかければ微かに息を詰めたタケシくんに彼にしては少し乱暴にくしゃりと髪を乱される。
僅かに私から顔を背ける彼の頬にもカスミ同様朱が差してるのを見てにんまりと笑えば少し渋い表情を浮かべ一つ嘆息した彼の手がするりと今度は頬に下ろされ軽く摘ままれた。
「リーーオーー? 俺達はリオがこういう奴だと知っているからいいが、頭を撫でられる度にそんな顔見せてたら勘違いする奴がそのうち確実に出てくるぞ?」
「ふぃ? ひゃんひひぁい? ひょもひょもタケヒヒュンひょカヒュミひがひ――タケシくんとカスミ以外にそんなぽんぽん頭撫でられる機会ってなくない? てか私がこうなるの二人にだけだし。」
「……何て言うか、リオってタケシとカスミ大好きなんだね。」
「うん。」
続けられた言葉に流石に心外だと両頬をつねられたまま口を開く。
明確な言葉にならないそれにさらに一つ息を付いた二人の手が頬を離れると同時にそう告げ、ツムギくんにあっさり答えたところでタケシくんとカスミが私から顔を背け片手で顔を覆ったのはもうお約束だろう。
ちょっとストレートに伝え過ぎた気もするけど、私側から見える耳まで真っ赤に染めてるの見ると少なくとも嫌な気持ちにはさせてないって事だよね、うん。
「あ。と言うかさ、少しツムギくんに聞きたい事あるんだけどいいかな?」
「ん? いいよ、何でも聞いて? おれが答えられるものなら答えるから。」
そう内心で結論付け尋ね、返ってきた快い返事にありがとうと笑い改めて口を開く。
「えと、さっきの話でセージさんに十八才以前の記憶がない事。それに付随して自分の……『ソラノセージ』という人間の手掛かりを探しているってのは分かったんだけど、そもそもセージさんが記憶をなくした原因とか経緯は何かあるのかなって思ってさ。記憶喪失って言ってもそう簡単になるものではないし、例えば事故とかそういうのがあったとか。」
「ああ、そっか。そこ話してなかったっけ。んと、結論から言うと記憶を失った原因とかも分かってないんだ。そもそも父さんって二十年前トキワの森で倒れていたところをたまたま森でフィールドワークしていたオーキド博士に発見・保護された身元不明者だから。父さん自身は気を失っていて目を覚ましたのはオーキド博士が連れ込んだポケモンセンターのベッドで、今まで見たことも聞いたこともない場所にいる上に何も覚えてないって事でかなりパニくったって言ってたよ。」
「…………そうだっんだ。」
説明された内容は思ったよりもずっとシンプルで、想定していたよりも深刻なものだった。
つまりセージさん側からしてみたらある日目を覚ましたら全く知らない場所にいただけでなく、自らの名前以外何一つ覚えてない覚えてない状況だったという事だ。
……それは、あまりにも……。
「ん? ちょっと待ってくれ。という事はつまり、セージさんはオーキド博士と面識があるという事か?」
「うん。その頃ってオーキド博士がマサラタウンに研究所を作るか作らないかの時期だったらしくて、名前以外は自分の家さえ覚えてなくて途方にくれていた父さんを博士は助手として雇ってくれて色々世話を焼いてくれたって聞いてるよ。オーキド博士の教え子であるサクラギ博士とも同じ時期に知り合って、当時のカントー地方のジムリーダーとも親交があったみたい。」
「そうだったのね……。じゃあセージさんがあたしとタケシをジムリーダーだって知ってたのは……」
「多分オーキド博士達やジムリーダー達から聞いてたんだと思う。あと母さんがトキワタウン出身だからそれもあったんじゃないかな?」
「……そっか。それ聞いて分かった。オーキド博士が言ってた『私に会わせたい古い知人』ってセージさんとツムギくんの事だったんだね。」
「ワウ。」
「「え!?」」
「ピカ!?」
口をつぐんだ私に代わるかのように疑問を口にしたタケシくんに一つ頷いたツムギくんがそう説明する。
さらに三人の会話を聞いているうちにはたと気が付き得心が言ったように頷けば、同意するルカリオと驚いたように声をあげるピカチュウやタケシくん達の視線が一斉に向けられ、あははと少し眉を下げた。
「だってさ、現状ポケモントレーナー歴半月の新人トレーナーである私にオーキド博士が時間取ってまで会わせたくて、そこにタケシくんとカスミもいた方がいいってなるのってどんな人なんだろうって考えた時にさセージさんの事なら辻褄が合うと思うんだよね。トキワの森で倒れていた『ソラノセージ』という人をオーキド博士は知っていて。その二十年後、再びトキワの森が出発点である『空野理生』という人間が博士の前に現れた。何か関係や共通点があるんじゃないかって考えるのは自然な事じゃないかな?」
「リオとセージさんの間に共通点? でもリオの親戚にセージさんらしき人はいないんでしょ?」
「いや、それは不測の事態でセージさん達と俺達が出会った事で得た情報だ。オーキド博士はそれを知る前にリオとセージさんを会わせようとしていた。それが関連性や共通点があると考えての事なら――――。」
カスミの問いに答えたのはタケシくんの方が早かった。
そう続け眉間にしわを寄せ腕組みをしてうんん、と唸っていた彼が何かに気が付いたようにハッと顔をあげる。
瞬間しっかりと絡んだ視線でタケシくんもまた私とピカチュウと同じ考えに至った事が分かり軽く肩を竦めた。
「……そうか。だからオーキド博士はリオや俺達に会わせたいと言ったのか。」
「うん。私みたいな奴が存在しているのが以上そういう事がないとは言い切れない証明になっただろうし、セージさんがポケモンセンターを『見たことも聞いたこともない場所だ』と博士に話してたならその可能性のが高いって踏んだんじゃないかな。記憶喪失だと言っても、世界の全てを忘れる事は出来ないだろうから。」
「ちょっと待って! それじゃあ……!」
私達の言わんとする事を理解したらしいカスミが口を開いたのと部屋の外からガッシャアアアン!と何かが割れたような音が響いたのは同時だった。
部屋の中にいる全員の視線が一斉に向けられたこの部屋の出入り口であるドアの向こう側が明らかに騒がしくなったのを感じ眉根を顰める。
……何だろう、今の。
「……何かあったのかしら。急に騒がしくなったわよね。」
「ああ、少し様子を見にいってみるか。リオ、ツムギ。二人はさっき倒れたばかりだからな。ここで少し待っててく」
「何言ってるの? 私も一緒に行くから。そりゃあ私は二人みたいにポケモンバトルも強くないし、トレーナーとしても半人前だけど。でも置いてかれるのなんて真っ平ごめんだからね。」
「おれも。外には父さんやサクラギ博士達もいるし、父さんの事だから絶対何かしら関わってるだろうしさ。」
そう真っ先にアイコンタクトを交わしたタケシくんとカスミが頷き合う。
続けられた言葉を食い気味に否定すれば、それに同意した頷いたツムギくんに続いたポケモン達もまた声をあげた。