第三話です。
オーキド博士の口調が安定してません、すみませんorz
今のところ主人公がタケシに向ける感情は友情オンリーです。
距離感ちょっとおかしいのは主人公には双子の兄がいたから。
あと弟がいるから。
では今回も少しでも楽しんで頂けると幸いです。
オーキド博士がポケモンセンターを訪れた理由はまさにタケシくんだった。
「おお、おったおった! 久しぶりじゃのぉ、タケシ! ニビジムでジロウくんに聞いたら、先程帰ってきたと思ったらポケモンセンターに行くといってまた出ていったと聞いての。かなり急いでいたと言う話じゃったから何かあったのかと思っとったが、成る程ガールフレンドに会うためだったんじゃな?」
「ガール」
「フレンド?」
「ピカピカ?」
私達の側に寄ってきたオーキド博士の言葉の意味が分からず上から順にタケシくん、私、ピカチュウと言った感じで博士の言葉を反芻し共にきょとんとしていると、んん?と博士もまた首を傾げる。
「何じゃ違うのか? 手など繋いどるからてっきりそうなのかと思ったんじゃが。」
「……手? ひょあああああっ!!!? ご、ごめんタケシくん、つ、掴んだままだった!」
「ピカチュ、ピ」
「い、いや俺の方こそ……!」
さらにちょいちょいと指で軽く示されたタケシくんと私の間を見遣れば未だ彼の腕を握ったままだった事に気が付き、口から飛び出たよく分からない奇声と共にその腕を離した。
その際、折角また活気を取り戻したざわめきがまた途切れて幾人かの視線を感じたけど何て言うかそれどころじゃなくて、恥ずかしさやら何やらでかああああっと一気に熱くなる首から上を隠すため咄嗟に顔の高さで抱き上げたピカチュウの背中に顔を埋めると上体を捻ったピカチュウの手でぽんぽんと頭を撫でられるし、その背中越しにちらりと見上げた眉を下げてあはは、と笑いながら頬をかく彼の頬にも微かに朱が差していて何だかとてもいたたまれない気持ちになる。
あと地味にピカチュウの手で凄い頭かき回されてる気がするけどこれ大丈夫? 髪の毛ぐしゃぐしゃになってない?
まあ普段から跳ねッ毛のショートヘアだからあんま気にしないけど。
そんな事を考えながらぐりぐりとピカチュウの背中に顔を押し付けているとん、んん゛と場の空気を変えるようにタケシくんが一度咳払いをした。
「とりあえず。オーキド博士。彼女は自分のガ、ガールフレンドではなく、今日知り合った友達のリオです。空腹で目を回したピカチュウのためにポケモンセンターを探してるところを自分と出会ったんです。なあ、リオ。」
「あ、うん、そうなんです。私ニビシティ始めてで、ポケモンセンターって赤い屋根の建物って印象しかなかったからまさかこんな大きいビルみたいになってると思ってなくて見つけられなくて。困ってるところをタケシくんに助けてもらったんです。」
「成る程のう。それで、ピカチュウはもう大丈夫なのか?」
「ピカチュウ!」
「おお、そうかそうか。ふむなかなかいい目のピカチュウじゃの。リオ、と言ったな。そのピカチュウわしに少し見せてくれんか?」
「はい、勿論です。あ、ただピカチュウ今お腹はち切れないばかりに満腹なのでお腹にはあまり触らないであげて下さい。」
「ああ、ありがとう。」
そのまま話を変えるための話題を振ってくれたタケシくんに乗っかってピカチュウを胸元に抱え直して経緯を説明し、納得するように顎を撫でた博士に笑顔で答えたピカチュウを差し出す。
「……タケシくん、ありがとね。」
そのままピカチュウを抱き上げ観察しだしたオーキド博士を見ながら小声でお礼を言えば微笑んだ彼が同じくいや、と小さく首を振った。
「これくらいお安い御用さ。ところでオーキド博士。ニビジムに行かれたと言うことですが、自分に何か用でしたか?」
「おお、そうじゃった。実はタケシとカスミに是非渡したいものがあってのう。悪いが今からわしと一緒にマサラタウンの研究所に来てくれんか? 一昨日からは君のご両親も家に帰ってきておるから大丈夫だとジロウくんも言っておったしな。ただカスミは今日は都合が悪いとの事だったので明日渡すんじゃがな。」
「ジロウが……。そう言うことなら自分は構わないんですが、その……。」
「ああ。勿論リオも良かったら一緒にきてくれんかのう? お前さんのピカチュウをもう少し見せて欲しいし、何より右腕の怪我の手当てをしないとな?」
「え?」
オーキド博士の誘いにどこか歯切れが悪そうに答え私に視線を向ける彼にもしかしてポケモンセンターの場所すら分かってなかったニビシティ初心者丸出しの私に気を遣って遠慮してる?とピンと来て口を開く前に博士に言われた事に首を傾げる。
怪我、と言われて腕を見るも枝を折りながら落ちた際に着いた樹液の汁やなんやらで少し汚れてるくらいで傷なんて付いてないし、それ以外で怪我をした心当たりもない。
「ん? なんじゃリオお前さん自分で気が付いとらんのか? ほれ表じゃなくて腕の裏じゃ裏。」
「裏? 裏……あっ……!」
言われるがままに少し腕を捻ると腕の裏側――丁度上腕三頭筋のところの服が約十五センチ程裂けているだけでなくそこから見る腕にも同じくらいの傷が付き血が滲んでいるのが分かり眉を寄せる。
ちなみに今回は昼休みに購買部に行こうと財布と携帯端末だけ持って階段を降りてる最中に強制紐なしジャンプに参加させられたので私の服装って当たり前に高校の制服だし、我が海咲女子高の制服って袖と襟に紺のラインが一本入ってる白襟の白セーラーに紺のプリーツスカートと紺のスカーフなんだよね。
つまり……。
「あああ、嘘でしょ……。怪我すると目立つ顔や着地に使う足には気をつけてたのに。一ヶ月も経たずに破いたと知れたら何言われるか、てか服にも血付いてるし! 血の汚れは取れにくいのに――」
「――そこじゃないだろう!」
「ピカチュウ!!」
どう誤魔化そうと息を付きかけた瞬間、目の前のタケシくんと少し離れたピカチュウから明らかな怒声が飛んできた。
「へ? あ、いたたた! タケシく……!」
次いでガッと腕を掴まれ傷に触れないようにしながらも腕を捻る彼に慌てて声をかけようとしたところで、声音同様かなり怒ってるのが分かる程眉を吊り上げた険しい顔で傷口を見る彼が目に入りぴたっと口を紡ぐ。
……あれ?
私何かまずいこと言ったかな?
見れば博士の腕の中でピカチュウもめちゃくちゃに暴れてるしそれを抑えてるオーキド博士も渋い顔してるし。
「……あ、あの……。」
「血はもう止まってるみたいだけど念のため止血もしておいた方がいいな。リオ、痛みとかはあるか?」
それでもこの空気は居たたまれなさすぎてあげた声はタケシくんの固い声音によって打ち消されびくんと体を竦ませる。
「……ちょ、ちょっとピリピリするぐらい……です。」
さらに誤魔化しや嘘は許さないと雰囲気だけでびしばしと語る彼に圧されぼそぼそと答えると、小さく息を付いた彼が分かったと私の腕を掴んだままオーキド博士に向き直った。
「……オーキド博士、と言う訳でお待たせしました。行きましょう。」
「うむ、そうじゃなそろそろ行くとするか。」
「ピカ!!」
「へ? あの? えっ……、えええっ!?」
さらにそこからは三人で分かりあったように頷きあいピカチュウはオーキド博士にだっこされたまま、私は有無を言わせないタケシくんに引きずられるようにしてポケモンセンターを後にしたのだった。
***
そして現在。
「……――なるほどのぉ。ニビシティの手前にあってピカチュウが生息しとる森なら、トキワの森に違いないが。それにしたってあまり無茶はするものでないぞ、リオ。」
「博士の言う通りだ。それ以前に手持ちのポケモンが一匹もいない状態で森に入るなんて危険すぎるだろ、二度とするんじゃないぞ。勿論ピカチュウもだ。今回は二人とも無事だったから良かったものの、何かあってからじゃ遅いんだからな。」
「そうね。二人とももうそんな危険な事しちゃ駄目よ。特にリオちゃんは女の子なんだから、体に傷が残るような事はしないようにね。」
「バリバリ」
「…………はい、すみませんでした。」
「……ピカ。」
オーキド博士が運転するオープンカー車中。
マサラタウンに向かう道中はタケシくんとオーキド博士は勿論、実は博士と共にニビシティに来ていて博士がタケシくん呼びに行ってる間は車で待っていたこの世界の主人公――まあ名前言ってもいいか、マサラタウン出身でピカチュウを相棒にする十歳のポケモントレーナー・サトシの母親であるハナコさんとそのパートナーであるバリアーポケモン・バリヤードによって軽い自己紹介の後ピカチュウとの出会いを根掘り葉掘り聞かれた上でのお説教会場へと変化していた。
……とは言っても流石に自分の素性は晒せないし暈してるところもあるから、真実を知ってるピカチュウはどこか納得してないみたいだったけどそもそも無茶した点ではピカチュウだってわざの過度使用による空腹で目回したんだから一緒でしょ、と耳打ちしたらむすーっとして黙り込んだ。
うん、ごめん。
「――うん、これで大丈夫な筈よ。包帯きつくない? リオちゃん。」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます、ハナコさん。」
こちらに背を向けてしまったピカチュウに内心で謝りながらも腕の切り傷の手当てをしてくれた彼女にお礼を言う。
ちなみに車内の席順は運転席にオーキド博士で助手席にタケシくん。
後部座席にハナコさん、私、バリヤード。でピカチュウは私の膝の上と言う位置関係だ。
最初はタケシくんと私とピカチュウとバリヤードが後部座席で彼が私の手当てをするって話だったんだけど、傷の位置の関係上セーラー服の上を脱がないと手当て出来ないって話になりこうなった。
あと「え、でもこの下キャミソール着てるし、タケシくんにだったら見られても別にいいけど。」という私の意見は他の三人に秒で却下されたけど、タケシくんの好みって年上のお姉さんだから、そもそも同年代の私ってそういうのの対象外って事で問題なくない?
あと私の体っての凹凸に乏しいし。主に胸の部分が。
「じゃあマサラタウンに着いたらオちゃんのお洋服はお洗濯するからリオちゃんとピカちゃんは私とバリちゃんと一緒にうちに来てね。その間はリオちゃんでも着れそうな私の服貸すからね。」
「はい。」
何か自分で言ってて空しくなってきた事実を振り払い応えながら、そう言えば、とピカチュウのその黄色い後頭部を見下ろした。