……皆にはとても大事なお話があります。心して聞いてください。
野蒜訓練鎮守府の作戦室で、所属艦娘達と山本提督が向かい合い、先程の提督の発言により部屋の空気は凄まじい緊張感の中に包まれていた。
三笠、浅間、富士、見島、鈴谷、不知火はただ真剣に提督を見つめている。
みんな………
『ちんじゅふまつり! りとらい!!』けってーーーい!!!
「hooray!!」
「Woohoo!!!」
「Sweet!!」
「Ураааааааа! 」
「いやっほぉう!!」
「う、嬉しいのですが……皆さん母国語が出てますよ?」
やったね! 地元の漁協や役場の皆さんから『もう一度鎮守府で祭りをやろう! 戦った人々と艦娘に敬意を持って、そして亡くなった勇者達を笑顔でおくりたい』
との打診を受けた。特に漁協組合長のお孫さんが撃沈された巡視船「まつしま」の乗組員だったそうで……やるしかないよね、やっぱり祭りは楽しく終わらなくちゃ!
「そうは言ってもつい出ちゃうヨ?」
「こ、こほん。大和撫子かつ英國淑女としてすこしお見苦しいところを……」
「そんな三笠さんも素敵です」
「見島はぶれないなぁ……」
「鈴谷、樺太アイヌ語わかんないからごめんねー?」
「いえ、そういう意味で言ったわけでは……て、提督の地元言葉はいかなるものでしょうか!!」
露骨に振ってきたね不知火君。良いだろう、我がネイティブを受けるが良い。
「ろー」
「ろ? 呂号潜水艦ですか?」
「いや、時期も時期ですから三笠さんここはハロウィンコスプレをした提督が『ろーちゃんです、がるる〜』と言って富士さんを萌え殺す作戦では?」
「あぁ〜提督かわいいにゃぁ〜」
「富士さんがキャラブレイクしてマジウケるwww」
「三笠さんも見島教官も笑ってないで鈴谷と富士教官を止め「テイトクの……Cos...Sweeeeeet!!」浅間教官!?」
あ、あれ? 『ほれみろ〜』的な意味でつかったんだけど、三笠さんと見島さんはほっこりしてるみたいだし、富士さんはいつものイケメンぶりがどっかにすっ飛んででろんでろんに顔溶けてるし、鈴谷さんは笑い転げてる。浅間さんはやんややんや騒いでるし。うん、不知火さん、なんかごめん。
「もう! なぜ何時も不知火ばかりこうなるのですか!! 全部陽炎のせいです!!」
なんかどこからか『ちょっ! 私ぃ!?』って電波が届いたけどしーらなーい。
でもこんな雰囲気なのが一番『あずましい』かな?
「やっぱり大湊経験のある常磐呼んでこないとダメネ」
「しかし思うに津軽と大湊では余りにも……」
「自分の記憶が正しければ松島基地に大鰐出身の隊員が居ましたから、今度提督のたまに出てくる言葉を解析させましょう。すまほ? とやらの翻訳には限界があるようです。三笠さんの方はどうですか?」
「ええ、検索しても『標準語にしづらい感覚』らしくて……見島さん、直ちに先程の隊員を連れてこれないか打診するように」
えぇ……そんな真面目な顔してしょうもない事しないで……しないで……そ、それよりもはい注目!
まず最大の問題を解決する必要があります。各自液タブの資料を見てください。
鎮守府祭出店予定事前調査表
■自衛隊
陸上自衛隊
「多賀城駐屯地陸自カレー」
「神町駐屯地芋煮」(手書きで太字追記されている)
「仙台駐屯地芋煮」
「大和駐屯地利き酒体験会(宮城県酒造組合協賛)」
「子供わんぱくランド」
「防衛弘済会直販売店」
海上自衛隊
「『ひろせ』シーフードカレー」
「『しらね』カレーセット」
「八戸航空隊手焼き南部せんべい」
航空自衛隊
「空あげ」
「小松基地トマトカレー」
「秘蔵廃盤多数!ブルーインパルス売店」
■民間
「塩竈朝市出張販売」
「笹かまぼこ焼き体験会」
「ひょうたんあげ」
「復刻、朝市じゃがじゃがころっけ」
「山元町いちご直売」
「JA宮城道の駅『のびる』臨時店」
「ずんだシェイク」
とのことだから、とりあえずシーフードカレー以外承認し「戦争不可避ネ!!!」「いかん陸自内部で内戦だ! 2.26事件でもおきなかった皇軍が相撃つ事に!!」「ダメダメ! 味噌味の芋煮出す予定なのに無理に『山形風』の芋煮出したら大変なことになるよ!」「は?」「『山形風』? ほう、鈴谷、貴様……」「醤油味になにか落ち度でも『宮城風』?」「『宮城風』? 血を見たいようネ」
やめやめやめないか!!
(提督激おこぷんぷん丸中)
さて空気も温まってきたところで、本題に入りましょう。皆さんも既にご承知の通り、なにやら私は艦娘の娘らしいのです。
私自身さっぱり記憶がないのですが、まあそれは先日鈴谷さんに化けた深海棲艦の体液を浴びたけれど腐蝕しなかった所から確実なようです。
「金属は浸蝕されて奴らになっちゃうし、生身は腐っちゃうもんね」
「記録では確かに過去鎮守府が襲撃された際、提督や人、動物問わず被害が出たとありますから、やはり提督は艦娘に近い『なにか』なのでしょう」
「俺達艦娘は『名前』が心の奥底から湧き上がってくるんだが、提督は無いのか?」
うーん、三笠さんの言うとおり私は『なにか』なんだろうね。親から貰ったらしい『名前』にしっくりこない所もあるんだけど、かと言って違うってわけでもなく……
「すみません、不知火はこれまで通り山本提督、または提督呼びでもよろしいですか?」
「鈴谷もー」
「自分も提督呼びのままにしておきますね」
なんかみんな気を使わせちゃってるみたいでごめんね。今までどおり山本提督、提督呼びでいいよ。
まぁそして一つそれで仮説があるわけですよ。私が艦娘の血を受け継いでるのなら、『縁のある物』って私の血液とかでもオッケーなのかなって。
「確かに……提督のお母様に縁のある艦娘なら答えてくれそうですね」
と言う事で建造早速してみました! 妖精さん! どうでしたか!!
「できたよー」
「ぶらってぃーかんむすー」
「でもいいこー」
「おいでーていとくがよんでるよー」
妖精さんに呼ばれて、ゆっくりと作戦室のドアが開かれる。そして入ってきたのは───
「公称第2900号……です。で、できればゆーはイニコって呼んで欲しいって……」
どう見ても資料などで見た潜水艦に比べて背が20cmは小さいであろう小さな潜水艦艦娘だった。
結論から言うね?
ねぇ、イニコちゃん。
「は、はい! なんですって?」
抱っこしていい?(よだれ垂らしながら)
なお、その後三笠さんの軍刀が私の首に一時のひんやり感を与えてくれましたとさ。
2000文字ペースで許してくだせぇ……