旧式鎮守府物語   作:あおさ海苔

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深海棲艦がなかなか出ない艦これSSとはいったい……








海の男達!

───野蒜鎮守府 練習特務艦『浅間』

 

 

 

『野蒜鎮守府所属艦艇! 野蒜鎮守府所属艦艇! こちらアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 フィッツジェラルド 至急来援を請う! 』

 

 

Why!? 漁船改造の徴用警戒艇を使った船団護衛練習中、突如として米軍駆逐艦からの来援要請が入った。

 

 

どうする……これも訓練? いや、全帯域通信ヨ、訓練でもやってはいけない。であればこれは深海棲艦の襲撃?

 

「浅間さん、どうする? まず鈴谷の瑞雲で偵察してみる?」

 

「事は一刻を争うようです。徴用警戒艇には引き返してもらい直行しますか?」

 

 

鈴谷の案なら確実ネ、状況把握はとても大事な事。しかし通信のただならぬ状況から不知火の言う事ももっとも。

 

 

提督は今『観光客』対策の為に動いてる、そして今米軍が慌てている。イニコは海上自衛隊の潜水艦と一緒に居る……、まさかネ、『こんな状況でも仲間割れしている』なんて事……いや、だからこそ疑え。今ここに居るのは『艦艇』じゃない。『ヒト』と同じく考えて行動できる『艦娘』の私だ。

 

 

「警戒艇は私が見ながら向かうヨ、二人は最大戦速で向かって! Hurry up!!」

 

 

「了解! 行くよ不知火!」

 

「承知しました、浅間教官もご安全に!」

 

 

 

二人は敬礼すると一気に10ノットから30ノットまで加速して米駆逐艦に向かって去っていった。hmm...やっぱり速力の差はいかんともし難いネ……私も腰(竜骨)を痛めてなければもう少し頑張れるケドまあ、お婆ちゃんだからね、頑張れ、後輩達……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───野蒜鎮守府 潜水艦 公称第2900号 通称『イニコ』

 

 

「撃たないでぇええええーーーーー!!!!」

 

 

 

心の底から、ただ願った。願っても願っても祖国は救えなかった。

 

──魚雷発射管がこちらを向く

 

祈る。でも、それでも、たとえ一撃だけでも

 

 

──魚雷発射管から魚雷が発射される

 

 

祈る。せめて、せめてこの人だけは!

 

 

 

『お嬢ちゃん! 後は任せろ!! 合衆国魂をあのファッキンクソ野郎共に見せてやる!! こちらアメリカ合衆国海軍第7艦隊所属 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド! これより海上自衛隊潜水艦と野蒜鎮守府艦娘を援護する!!』

 

 

 

祈りは届いた。

 

 

 

 

米駆逐艦から発射された魚雷はまもなくしてゆー達の後方で炸裂した。多分ゆーと潜水艦を狙った魚雷をやっつけたんだ。

 

 

『くっ……U-125……まだ生きてるかぁ……』

 

 

「艦長! 深町艦長!!」

 

 

『よし生きてるなぁ……おーけー、無線は聞いてた。こっちは沈没はなんとかしなそうだが浮かぶだけだ。そっちは自力航行できるなら駆逐艦へ、駄目なら本艦や何かに掴まって野蒜からの応援を待つんだ……ゴフッ、ゲフッ「艦長!! Scheisse!!」なーに生きてりゃめっけもんだ。聞いてるんだろうスプレイグ、後は頼んだぜ……』

 

『なんだ深町だったのか、やっぱりお前は死んでも死なない奴だな。OK、あとは任せろクソッタレなクソ野郎共のケツに短魚雷をしこたまブチ込んでファックしてやる!!』

 

 

えっと……よ、よくわからないけど米駆逐艦の艦長さんが完全にぷんすかしてるのはわかるかなって……ゆー達、助かるの?

 

 

 

『敵潜水艦コネチカット、魚雷とミサイル発射!!』

 

『全弾撃ち落とせ!! ミサイル駆逐艦の本領を見せつけてやれ!!』

 

 

───ドルルルルルルルル!!!

 

凄まじい速度で放たれる機関砲が海を突き破って放たれたミサイルを次々と撃ち落とす。

 

次々と発射される魚雷がこちらを狙う魚雷を次々と撃退する。これが……これが現代の艦艇……

 

 

『一発間に合いません!!』

 

『本艦を盾にして艦娘を守れ! 神よご加護を!!』

 

 

ハリネズミの様な弾幕をすり抜けて、一発のミサイルが飛び込んできた、さっきまで凄まじい勢いで弾をばらまいていた機関砲は弾切れだろうか沈黙してしまう。

 

だめだ、主砲も動き始めたけど向きが逆だから砲旋回が間に合わない!

 

 

 

男気溢れる米駆逐艦に突き刺さるはずだったミサイル、しかしそうはならなかった。突如空中で爆発したのだ。

 

いったい何が───「こちら野蒜鎮守府所属 特殊艤装試験巡洋艦『鈴谷』! レーダー射撃と職人芸の射撃見た? 見た?」

 

「調子に乗らないでください。同じく特殊艤装試験駆逐艦『不知火』貴艦らを援護します」

 

 

助けに来てくれたんだ! みんな!!

 

 

「イニコや自衛隊をよくもやったな! こんにゃろーーー!!!」

 

「頭にきました、不知火を怒らせたわね」

 

 

二人の艤装から真っ黒い黒煙を上げて次々と飛んでいく対潜水艦ロケット弾。

 

海面が次々と爆ぜる。これ程の火力を前にして生き残れる潜水艦なんているのかなって……

 

 

『潜水艦1隻緊急浮上中!』

 

『構わん! ブッ放せ!!『まてまてスプレイグ! 何か様子が変だそ?』ぐぬぅ……撃ち方まて! クソッタレ!』

 

 

海面を飛び出してきたのはとてもとても大きな潜水艦。200mは無いかもしれないけれど、それぐらい大きい……あんな潜水艦が居るなんて!

 

 

『こちらロシア連邦海軍潜水艦ユーリイ・ドルゴルーキイ こちらの聞いていた状況と違うため本官の権限により緊急浮上した。戦闘するつもりはない』

 

『魚雷撃ち込んで来ておいててめぇ『コネチカットの反応ロスト! 逃げられました!!』ファック!!』

 

 

ええと、ええと? ええとゆーはどうすれば……「イニコ! イニコ痛いよね、遅くなってごめんね、 ごめんね!!」あぅ、鈴谷さん、い、痛い……「鈴谷、イニコが痛がっています。まずはフィッツジェラルドに向かいましょう」

 

 

ええと、ええと、ゆー達は助かったの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 フィッツジェラルド艦内

 

 

「まずは確認させてほしい。全帯域通信から鑑みるに本艦は通常任務中の海上自衛隊の潜水艦を攻撃してしまったのだな?」

 

「おう、しかも日本領海内でな。しかも攻撃しておきながらこうやって艦長とお付き一人だけで乗り込んて来るたぁほんといい度胸だぜ」

 

「アメリカ軍の同盟国に手ぇ出したからにはわかってるんだよなぁ?」

 

 

フィッツジェラルドには今米軍と自衛隊、ロシア軍と鎮守府という本来であれば手を取り合って深海棲艦と戦わなければならないはずの者たちが集まっていた。

 

しかしながらつい先程までこの怪我をしているそうりゅう艦長深町ニ佐は目の前に居るロシア潜水艦によって攻撃され、大破している。

 

 

「では確認がとれたためお話しする。海の男として誓ってほしい。録音や盗聴の類はしていない事。また艦娘の皆さんは提督以外にこの事を伝えない事」

 

 

 

「いいよ、鈴谷はなんかこのオジサン悪い人には見えなそうだし」

 

「この艦は俺の艦だ。信じてほしい」

 

「ったーく、こりゃめんどくさい奴だな」

 

 

 

同意が得られたと見たロシア潜水艦艦長は一枚の命令書を差し出した。深町ニ佐とスプレイグ大佐はロシア語で書かれた命令書は読めなかったが、艦長自ら英語に訳して話し始めた。

 

 

「野蒜近海で活動中のドイツ潜水艦艦娘に対する海上自衛隊潜水艦と特殊コマンドによる誘拐作戦が行われる為、これを阻止すべし。可能であればドイツ潜水艦艦娘を保護しウラジオストクへ向かえ──以上だ」

 

「ゆーは昔ドイツ帝国海軍だったから間違ってない……?」

 

「俺らが誘拐だぁ?」

 

「EU・ロシア連合軍の一員として同盟国海軍の艦娘が危険にさらされていると判断し攻撃した。艦娘の背後から可能な限り無音航行で接近し、通信を始めたため攻撃した。本艦の特性上存在そのものも姿も本来見せてはいけないが……米軍同士で撃ち合ってるのを見て緊急浮上したわけだ」

 

 

 

「そうかいそうかい、ところでこれもオフレコなんだか、そっちのU-125じゃなかった、イニコの生まれについて何か聞いてるか?」

 

「知らん、俺はロリコンではない」

 

「ドイツ潜水艦娘としか聞いていない」

 

 

「なぁーるほどなぁ。なあ野蒜の艦娘さん、俺は今回色々と調べて聞いちゃってるわけだ。さて問題だ、この嬢ちゃんは提督が建造した艦娘のなかでも特別な艦娘だ、わかるな?」

 

 

すっと目を細めて話しかけてきた深町ニ佐に対して、提督の素性を調べに動いていた鈴谷はすぐに察することができた。

 

「『縁の物』……」

 

 

「そうだ、それがどーしても気になるやつが居た。それがアメリカ軍にも、ロシア軍にもな。そしてお互いお互いのせいにしてこの嬢ちゃんを拉致しようってしたわけだ」

 

 

その言葉にロシア潜水艦艦長は机を叩いて立ち上がりひとしきりロシア語で副官らしき付き人に話しかけると立ったまま話しかけてきた。

 

「我々は海の男だ。誇りある海軍軍人だ。国を守るため深海棲艦と戦う身だ。だがその崇高なる使命より優先する物があると考えているド阿呆共がお互い居るようだ。そのためこの脅威に対抗すべく、個人的に協力関係を模索したい」

 

 

ロシア潜水艦艦長は出されていたコーヒーカップについていたスプーンを小指に当てた。警護の米兵も艦娘達も反応できない早業だった。ロシアの最新鋭機密大型潜水艦を任されながらこの個人単独の戦闘力、居合わせた皆が驚いていた。

 

 

「とはいえ本艦による攻撃で深町ニ佐以下多くの怪我人が出ている。まずは日本式に『小指を詰める』事で信用して貰えないだろうか」

 

 

 

 

いち早く立ち直った不知火がスプーンを取り上げげんこつをお見舞いした。

 

 

 

 

 

 

 

 








次回はゆるゆる会だよ!
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