旧式鎮守府物語   作:あおさ海苔

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ゆるふわ回です。安心してください。

なおお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、サブタイトルかゆるい回は? シリアス回は!で終わってます。

 


危機は続きます!

「ねぇねぇ富士さん?」

 

「どうした提督? 疲れたのか?」

 

「うん、なんかね、すっごい疲れちゃって……何かな。ちょっとだけ、ちょっとだけ肩貸してもらうね……」

 

「あぁいいさ、オヤスミ」

 

 

 

 

 

………今、仙台駐屯地から多賀城駐屯地を経由し野蒜鎮守府へ向かっている陸自護送車列の一つ、3 1/2tトラック(さんとんはん)の中に居る。

 

 

私は多賀城駐屯地司令、樋口一佐だ。

 

 

………黒塗りのセダンをあたかも守るフリをしながら実際の要警護対象を一般隊員が乗っているように偽装した3 1/2tトラックで私自らその要警護対象である山本提督を送っているところだ。

 

 

 

「あぁ……て、ていとく、ていとくぅ……はにゃぁ……か、かわい、も、かわ、かわ……にゃぁあぁ……」

 

「Zzz...」

 

 

 

自ら送っているとは言いながらも、実際は私と山本提督、艦娘富士が荷台に乗っており、運転はうちの隊員に任せている。

 

 

「提督……ぷに、ぷにぷにして、ほっ、ほっぺ……ふひっ、にゃぁ……」

 

「Zzz...」

 

 

 

……昨今の『観光客』の多さもあり、安全が保たれているのは実質鎮守府や各自衛隊施設に限る以上、しばらくは提督の自転車で走り回る趣味は控えてもらう必要がある。まぁ、息抜きであろう牡蠣小屋のバイトは『入れ食い』状態らしいので見逃してあげよう。

 

 

「起きないよな……? て、提督が悪いんだ。俺の気持ちも知らないで……そうやって信頼してますって、そう、やって……はぁ、はぁ……」

 

 

……そろそろ撃っていいだろうか?

 

 

 

『樋口一佐、経由地ですが所定の多賀城駐屯地を通り過ぎて松島のホテルにしますか? 雰囲気的に野蒜まで持たないと想定されます。我々の駐屯地でイチャコラされると男共が動揺しますので、できればその状態のまま駐屯地には経由したくないです』

 

『聞いててこっちがこっぱずかしいので無線切ってからお願いします。あんまり荷台揺らさないでくださいよ』

 

 

うちの部下たちはいつもこうしてズケズケと私に発言するが、まぁそこは可愛いものだ。

 

ちなみに荷台で何かあった時用に常時無線で運転席には荷台の音声が流れている。

 

つまり、先程から自分の世界に入って山本提督を襲おうとしているこの艦娘の声はきっちりばっちり運転席に流れている。

 

 

『樋口一佐も交ざられるのなら着替えは運転席側の箱に入ってます。消臭はなま○グッドとファブ○ーズで大丈夫ですか? 最近エイ○フォーが品薄で』

 

『これから砲弾跡など多発エリアを通りますからできればホテルまでおっぱじめるのは我慢していただきたいですなぁー』

 

 

 

 

 

……私にまで風評被害が出かねないのでまずはこのポンコツ艦娘をひっぱたく事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、無事艦娘富士への『説得』も終わり、何事もなく多賀城駐屯地に到着できた。

 

 

「ひっひゃ、ひひゃいれふ」

 

 

ここで私の服装をした背格好の似ている隊員が黒セダンから降りて、提督服を着た隊員が共に降車する。

 

私達の乗っている3 1/2tトラックにも通販サイトのダンボールを積み込み、あたかも野蒜鎮守府への定期補給便を装って移動する。

 

 

「ひっひゃ、ひひゃいれふ」

 

 

さて、見た目だけは補給車列のトラック達は一見護衛が居ないように見せてトラックの中身は先程載せた通販サイトのダンボールに入れておいた対戦車ロケットや重機関銃など、そして別なトラックには元々乗り込んでいた普通科一個小隊だ。

 

 

何事もなく出発した私達。車内に設置されたモニタによるライブ中継で映し出されたのは『職務質問』を駐屯地より少し手前の多賀城駅や付近のバス停エリアで受けている外国人達だ。

 

そう、『多賀城』に外国人がわざわざ来るようなところはない。ビール工場を含めて沿岸の施設は破壊されたままだし、なにより史跡はもっと北の国府多賀城駅付近だ。

 

つまり『道に迷っていそうな外国人旅行客』に声をかけた『優しいお巡りさん』の微笑ましい光景だ。

 

パトカーで送られる先は公安の管轄だ。まぁ、知らないが吉だろう。

 

 

「ひっひゃ、ひひゃいれふ」

 

 

 

うるさい、艦娘富士はちゃんと反省したか?

 

 

「ひゃい、はんひぇいひひゃひひゃ」

 

 

よろしい、ではほっぺひっぱりの刑はこれで終了とする。山本提督が起きぬよう姿勢はそのまま、提督へ手を出したらこのM2で割れた頭からメシを食うやり方を教えてやる。いいな?

 

 

「はい、艦娘富士は深く反省しています。英國淑女たる行動をします。はい、反省しています」

 

 

よろしい、ではまずその膝枕している提督の唇に触れようとする左手は消し飛ばしても構わんな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───その後野蒜鎮守府に到着した時、艦娘富士は五体満足であったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───野蒜鎮守府 山本提督

 

 

 

あ、あれ?

 

寝ちゃってたけど今どこ……?

 

 

「おはようございます提督、随分とお疲れだったようですね」

 

 

あーみかしゃしゃん、みかしゃしゃーん♪

 

 

「ひゃっ、て、提督!?」

 

 

みかしゃしゃーん、みーかーしゃーしゃーん♪

 

 

「なぁ、俺は今日死ぬのか?」

 

「艦娘富士、なんとかしろ。主題に入れんぞ」

 

「『ナニ』とかしろ!?」

 

「……もう一度『説教』が必要か?」

 

 

みかしゃしゃーん! だいしゅきー!

 

 

「あぅ………きゅぅ………」

 

 

 

「ハァ……ハァ……と、止めてくるな? 止めてくるだけだから」

 

「警務隊に連絡、二人ほど連れてこい」

 

 

んんー? 他に誰かいるの? んぅ〜………はっ、た、多賀城駐屯地司令!? あ、あわわわわわわわわ

 

 

「おはよう山本提督。自身の部下の膝枕と胸枕は快適だったか? 真面目な話があるから少し顔でも洗ってこい……入れ、よし、この二人とまずは行ってこい。そちらの艦娘は二人ともふやけて駄目そうだからな」

 

あぃ、お顔洗ってきます……警務隊の人ゴメンナイ

 

 

「いえいえ、これも任務のうちですから。提督、こちらへ」

 

「……」

 

 

すいません……

 

 

 

 

 

 

 

 

お手洗いで洗顔を済ませ、中庭に面した日当たりのいい廊下を歩いていると、お手洗いに来る時も感じたけど、今日はやけに鎮守府に人や妖精さんが居ない。中庭の花壇では妖精さんがよく遊んでいるし……船団護衛と襲撃訓練はやってるけどこんなに居なくなるものだっけ?

 

 

「今日はドックで火災訓練らしいですよ? 提督が指示されたのでは?」

 

 

あれ? 来週のはずだけど……?

 

 

「そうなんですか……? あら、提督、またハンカチ使わないで出てきましたね! ちゃんと手を洗ったらハンカチ使ってくださいね?」

 

 

えっと、そんなに手の水分取れてなかったかな。ごめん警務隊のお姉さん。ハンカチ借りますね。

 

 

そして警務隊のお姉さんが差し出すハンカチを手に取ろうとした瞬間、もう一人無口だった警務隊の人が素早く拳銃を引き抜くと、警務隊のお姉さんに向けて構えた。

 

 

「なっ、どういうつもりだ!」

 

「山田警務官、残念だ。とても残念だよ。そのハンカチを足元に落としてゆっくり山本提督から離れたまえ……これは警告だ、従わない場合容赦なく撃つぞ」

 

 

えっ、あれ? この声は高野さん? なんで警務隊の制服を着て?

 

 

「少し『ネズミ』がチョロチョロしていると聞きましてね。駆除しに来たんですよ。濡れてない手をダシにして睡眠薬を染み込ませたハンカチを使おうとする『ネズミ』とかね」

 

 

「話が違……くそっ」

 

 

えっ、えっ、お姉さんが? いったいどういう……

 

 

「動くな提督のいの───ダァン!

 

 

警務官のお姉さんが私に伸ばした手が吹き飛ぶ。

 

全身にお姉さんの血が降りかかる。

 

振り返れば中庭の向かいの窓から多賀城駐屯地司令が狙撃銃をこちらに構えていた。

 

 

「だから動くなと言っただろう? 山本提督、まずはこちらへ、3つ先の倉庫へ向かいましょう」

 

 

どうして? どうして? なんで?

 

 

ナンデ?

 

 

 

 

人間に連れられて倉庫に入ると艦娘一人と人間が二人。

 

ひきつった表情の車椅子に乗った艦娘、その視線の先には血に染まった手袋をはめた自分の手。

 

 

───オイシソウダロウ?

 

 

何かが囁く

 

 

 

───ナメテミロ、ウマイゾォ?

 

 

 

呼吸が速く、浅くなる。

 

手袋の血に目が釘付けになる。

 

 

 

 

 

 

あぁ、すごく美味しそ─「提督! 私を見て!!」あ、あれ? 三笠さん?

 

 

三笠さんに強く両手で顔を掴まれ、まっすぐ向き合わされる。三笠さんの目には恍惚の表情を浮かべる私が居た……いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ! こんなの『私』じゃない!!

 

「山本提督! 貴方は何だ! いったい誰だ! 貴方は私の提督で野蒜鎮守府に所属する艦娘の母だ! 違うか!」

 

 

うん、そう、そうだよ! 私は三笠さんの提督で鎮守府皆のお母さ……って違うよ! 流れで言わせようとしたでしょうもう!!

 

 

 

はっと気が付き、周りを見渡す。ホッとした表情の高野さんと、狙撃銃の安全装置をかける多賀城駐屯地司令が居て……あれ? 富士さんは?

 

 

「あの警務官を拘束しに行ったよ。なんといっても重要な証拠だからな。とりあえず手のひらを吹き飛ばした程度だ、死にはしない」

 

 

そう言うと多賀城駐屯地司令は狙撃銃を肩に担ぐとタバコを吸い始めた。す、すごい……すごいハードボイルド……イケメン……

 

 

「しかし樋口一佐もさすがですね、まさかアイアンサイトで狙うとは。ところで鎮守府は禁煙です」

 

「どうにもスコープというのが苦手でね、やはり慣れてるのが一番さ。まぁ電子タバコぐらい見逃してくれ高野一尉、一本だけだよ」

 

 

 

 

よくわからないけど、い、一旦終わったのかな?

 

 

「いいえ、まだ解決していません」

 

 

 

真剣な表情で私を見つめる三笠さん。

そっか、まだ状況はよくわからないけど……まだ油断できないんだね。

 

 

 

えっと、ところでさ、とりあえずもう一回お手洗い行っていい?

 

 

 

 

 

「「「駄目」」」

 

 

 

 

 

 








※提督はちゃんと我慢できた模様
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