「てーとく、てーとく、起きて」
むにゃむにゃ、もう食べられないよぅ
「てーとく、見て見て」
フヒヒ……みかしゃしゃーん……
「てーとく、てーとくの為に、ゆー頑張って帰って来たって」
んぅ〜あれ、イニコさん帰ってきてたの?
えっ、イ……ニコ……?
「腕も取れちゃったけど、首も折れちゃったけたど、ゆー帰って来たって。ねぇ、提督………一緒に『還ろう』?」
イニコ、う、腕が……首が……血が……嘘、そんな……や、やだ……『ゆーはそんな事言わないもん! がるるー!!』
えっ、イニコさんが二人?
『提督! 起きてって! ゆーが提督を護るって!』
どういう事? ねぇ、ねぇってば!!
「イニコ!!!」
「提督! 提督私が見えますか! 三笠です! わかりますか!」
あぅ、み、三笠さん? え、あ、ここって……私の部屋だ。
っそうだ! ねぇ、イニコは大丈夫!? そしたら浅間さん達もっ、みんな無事!?
「やはりなにか特別な何かが……こほん、提督、落ち着いてください。詳細は落ち着いてからご報告しますが、イニコは負傷し訓練は襲撃・護衛どちらも中止しました」
負傷!? 敵の攻撃!?
「いえ、提督が落ち着かない限りお伝えするわけにはいきません。まずは落ち着いて。大丈夫。もうすぐみんな帰ってきますよ」
でもっ……うん……わかった、ごめんね、少しだけ、ごめんね、もう少しだけ一緒に居てもらってもいい?
その、そして、手、握ってもらってもいい?
「もちろん。この三笠、提督と何時も共に」
ありがと……大好きだよ。
「えぇ、私もですよ提督」
───野蒜鎮守府警備室 多賀城駐屯地司令 樋口一佐
「さて、流石に監視カメラ見続けるのもヤボだからそろそろお開きにしよう。」
「待ってくれ、今良いところじゃないか」
「艦娘富士はもう少し欲望をコントロールするやり方を多賀城で学ぶ必要があるな?」
「イエ、艦娘富士は英國淑女かつ大和撫子たる行動をとりマス、ハイ」
「三笠さん? 三笠さん? 三笠さん?」
「艦娘見島は少し落ち着け」
警務官の襲撃後、精神的に不安定になって意識を失った山本提督を、初期艦である艦娘三笠と共に監視カメラを突貫で取り付けた提督の自室に連れて行った。
しばらく二人にさせていたが、うなされたり、飛び起きたりしたものの、あの時のように『深海化』の兆候は見られない。
見ていてこちらが恥ずかしくなる空気だが、まぁ監視の目は緩めてもいいだろう。
「しかし提督が一度ああなった以上、三笠さんと二人きりというのはいささか安全上問題があるのでは?」
「艦娘見島、感情を混ぜて考えるな」
我々は最寄りの奥松島に居た艦娘見島を戻し、護送トラックの部隊を展開させ念の為防衛態勢に入っていた。先程海上自衛隊から入った緊急連絡はなかなかに衝撃的だったからだ。
・艦娘『イニコ』の拉致作戦
・ロシア潜水艦と『米軍』潜水艦による攻撃で、海上自衛隊の潜水艦が大破
・証拠隠滅のため発生した、米軍の同士討ちとロシア海軍潜水艦の独断専行による情報共有
そう、それに合わせたように発生した山本提督の拉致未遂。
外部向けには完璧な偽装だったはずだ。しかも犯行は身内の警務官。明らかに日本国内の何者かによる意図がある。
まぁどれも艦娘を建造するのに必要な希少資源たる『縁の物』絡みだろう。
本来であれば、艦に係る遺品、遺物、遺構の破片などもはや数十年前の希少な物を使って艦娘は建造される。
しかし、山本提督は『艦娘』と『人』の子供であり、しかも自己の血液を『縁の物』として利用できる。
血液であれば自転車が趣味の山本提督だ、いたって健康的でありしっかりと食事をしていれば採血して無限に『縁の物』を増産できる。
しかも山本提督は『全盛期の帝政ロシア海軍』艦艇を艦娘として建造できる事がこの目の前に居る見島で世界が知ることになった。
艦娘戦力の不足に悩むロシア連邦海軍の事だ、山本提督を攫って『使い』、艦娘として旧式であっても
帝政ロシア海軍(日露戦争関係)
太平洋艦隊
戦艦7、巡洋艦8、水雷艇13、砲艦2
シベリア小艦隊
巡洋艦2、水雷巡洋艦2、水雷艇12、砲艦5
ウラジオストク小艦隊
巡洋艦4、水雷艇10
バルチック艦隊(第二太平洋艦隊)
戦艦8、海防戦艦3、装甲巡洋艦3、巡洋艦6、他全38
これだけの艦娘戦力を保持できるかもしれないという希望を与えてしまったのだ。
また、米軍については未だ山本提督以外発見されていない『提督素質をもち、また艦娘素質をもつ艦娘の子供』だから狙ったのだろう。
通常、提督や一般人と艦娘の子供や、提督・一般人と提督の子供は提督・艦娘としての特性を持っていないからだ。
だが山本提督の謎を解き明かせば、提督自ら海上で指揮しつつ艦娘として戦える。そう、今までの通信機器を利用して鎮守府から指揮をする戦闘方法が一気に覆るだろう。戦場での提督による陣頭指揮は、どれだけ有効的であっても同じ事をしようとすれば数千億円の艦艇と数百人の人命がいともたやすく失われる事を全世界の海軍は経験しているからだ。
……ふう、まったく、私はただの陸上自衛隊駐屯地司令だぞ? なんでここまで海の事や国際政治の事まで考えなければいけないんだ。
「まぁ今度飲みに行きましょう、期待されてるんですよ『樋口さん』」
「まだ勤務中だぞ『高野先輩』、階級をしっかり付けんか」
「これは失礼しました。樋口一佐を少しでもリラックスさせたく思いまして」
まったく、高野先輩はこうやって私が悩んでいたりするとすぐに察してこういじってくるのだ。もう私の方が偉いんだぞ!
「……自分は不倫現場を目撃してるんでしょうか」
「……高野一尉は提督ぐらいの子供がいる空挺レンジャーのナイスミドルだぞ、属性多すぎて俺にもまったく読めないな」
艦娘二人と高野先輩をこのあと一発ずつげんこつしておいた。
おかしい……本当はこのSSで旧式艦艇艦娘と提督のイチャイチャを書きたかった筈なのに……