旧式鎮守府物語   作:あおさ海苔

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抗え、最期まで






第2次野蒜沖海戦!

───野蒜鎮守府 練習特務艦「浅間」

 

 

 

「カタパルト準備よし!」

 

「ブースターパック点火OK!」

 

「対艦ミサイル第一波……発射確認!」

 

 

 

「よし、鳥になってこい!!」

 

 

 

───バシュン!!

 

 

 

 

 

一斉に発射される強襲班、発射直後腰の古傷に深い痛みがはしる。加速度で腰がどんどん仰け反る。痛い、でも、でも耐える。なんてったってこの鎮守府の中でも私がお姉さんだからネ!

 

 

 

「到着まであと30秒! みんな、いっくよー!!」

 

「全スロット全部ボフォースロケットとかくぅ〜ロマンだね、皆さんの提督わかってるぅ〜♪」

 

「ゆー魚雷戦準備よしですって!」

 

「雷撃なら駆逐艦の僕に任せろー!」

 

「真っ直ぐ殴って撤退、真っ直ぐ殴って撤退」

 

「見島教官……? 一撃加えたら撤退ですよ……?」

 

 

みんな準備万端! 予定射撃地点まであと5秒のタイミングで20発の対艦ミサイルが私達を追い越していく。

 

 

爆炎

 

 

敵の対空砲火はなかった。第一次野蒜沖の時と同じネ。射程外からの高速ミサイル攻撃にはまだ対応しきれてない!

 

 

艤装に取り付けた強襲用ブースターがカットオフされて艦艇時代も艦娘時代でも味わったことのない時速300km/hで滑るように着水する。

 

艤装が『水に接した』。これで撃てる。

 

 

 

「全艦Shoot! Shoot! Shoot!」

 

「Los! Los! Los!」

 

「ありったけもってけぇーーー!!!」

 

 

対艦ミサイルをもろに受けた戦艦は5隻、軒並み小〜中破している。水鬼は後方に控えていたのかダメージはない。ニヤニヤ嘲笑いやがってこのRight mingerめ。

 

こちらも全スロットに搭載したボフォース対潜ロケットを一斉に発射する。本来は対潜用で射程も短いが、この加速した状態で発射されエネルギーの乗った爆薬の塊をくらえばたとえ戦艦であっても損傷は免れない……はずヨ……

 

 

 

全弾打ち尽くすのに合わせて航空自衛隊から教わった速度を殺さずに大きく弧を描きターンするやり方で離脱する。

 

離脱……み、見島ーー!! なんで突っ込むヨーー!?

 

 

 

「ураaaaa!!」

 

 

あっ、駄目だ。血がのぼってるヨ。

 

 

先程斉射した攻撃の弾着に合わせて見島が右手艤装にある衝角で敵戦艦に格闘戦を挑む。速度が乗った突撃で突き刺さった戦艦1隻と随伴の巡洋艦2隻が吹き飛ばされる。

 

 

「石炭炊きを甘く見るなよ深海野郎」

 

 

フィグ・サインをキメ軽く強襲用ブースターに付いている補助ブースターを使って離脱機動を取ると、陸自の煙幕弾を伴った榴弾射撃に合わせて加速し合流してきた。

 

 

「ちょっと見島、作戦を守るネ!」

 

「すみません、つい敵戦艦群をみたらカッとなってしまい……」

 

「補助ブースターの燃焼時間足りないでしょうから、不知火と楢で引っ張ります!」

 

「おっけー! ぬぁー! 見島さん意外と重いぃ〜!「お、重くない! 戦艦より軽い!」だってーー!!」

 

 

後方では榴弾と煙幕弾がバカスカと撃ち込まれているケド、戦艦相手にどれだけ削れただろうか……

 

アレ? そういえば航空攻撃と多目的ミサイルの攻撃は無い?

 

……まぁ敵に3隻居るらしい敵空母の艦載機上昇限界よりはるか上空から偵察しているとかなんとかの、在日米軍U-2の情報待ちカナ……とりあえず第一回強襲は成功ネ!

 

 

 

 

 

 

 

 

U-2からの戦果報告

 

 

敵戦力

 

戦艦水鬼 1 空母 3 戦艦 19 軽巡洋艦 17 駆逐艦 20

 

 

 

撃沈確実

 

戦艦 2 空母 1 軽巡洋艦 5 駆逐艦 5

 

他損傷艦あり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───野蒜鎮守府 山本提督

 

 

一回目に続き、二回目もうまく行った。そして今三回目の強襲を行い戦果報告を待っていた。このままうまく削り続ければ……

 

 

「第3回強襲完了! 浅間損傷により戦闘不能!」

 

「対艦ミサイル、多目的ミサイル残弾なし! 普通科装備の対戦車誘導弾を除き誘導弾残弾なし!!」

 

「航空部隊通常爆弾残弾なし! 増槽に燃料や可燃物を満載してナパーム扱いで攻撃するとの事!」

 

 

えぇ!? 浅間さんの被害状況は!

 

 

「竜骨の古傷が傷んで腰が駄目との事。外傷はなしですが速力低下中」

 

「敵艦隊、外洋の自衛艦隊には見向きもせず突っ込んできます! まもなく当鎮守府も射程圏内!」

 

 

 

自衛艦隊の距離を保った攻撃はすべて無視ときたかぁ……この前の海戦の時と同じだね。完全に私狙いだ。

 

 

三笠さん、敵艦隊の戦力は?

 

 

「戦艦水鬼1 戦艦12 空母1 軽巡10 駆逐8です。水鬼が無傷ですし、もはや物資が……」

 

 

「強襲班、ブースターパックをパージして敵戦艦に直接撃ち込みました! 第3次強襲で看板です!」

 

 

となるとブースターパックなしで離脱しないといけないわけね……航空支援は間に合いそう?

 

んん? 基地からの応答がない?

 

 

「浅間が遅れています、至近弾多数、あぁ! 浅間と曳航を試みる不知火が被弾!」

 

「見島反転! 敵艦隊に突入を試みる模様!」

 

「夕張煙幕展開も効果薄いか!?」

 

 

砲撃! 煙幕弾の砲撃は!!

 

 

「砲撃陣地より敵機来襲損害多数!!」

 

「松島基地空襲を受けています!!」

 

「強襲班追いつかれました! このままではっ!」

 

 

空母が静かだったのはすでに発艦済みだったから!?

深海棲艦の艦載機は小さいからレーダーじゃどうしても限界があるってわかってたけど!!

 

まだだ、まだ考えろ、何か手はあるはずだ、何か……

 

 

「山本提督! 浅間と見島から通信です!!」

 

 

 

教えたくれた通信兵の人からヘッドセットを奪ってしまった。でもそんな事言ってる場合じゃない。浅間さん、浅間さん!

 

 

 

「Hi提督、ちょーっと腰やっちゃったネ……」

 

「駄目だ! 諦めるな浅間さん! いま手を考えるから!!」

 

「こちら見島、航空戦で劣勢、物資欠乏、戦況は最悪、状況は最高。これより敵艦隊に突入します。提督、どうか私と浅間の戦いを無駄にせぬよう」

 

「駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!! 何か手は! 誰か!!」

 

 

 

司令室を見渡す、誰も答えてはくれない。三笠さんは手に持っていた受話器を握りつぶしていた。

 

 

本当に、本当にどうしようもないの……

 

 

「浅間教官、見島教官、不知火も後から征きます。どうかご武運を……」

 

「他の皆は必ず連れて帰るよ……ご武運を……」

 

 

 

10隻以上の戦艦から放たれる砲撃でまたたく間に見島さんと浅間さんが見えなくなってゆく。

 

くそっ、くそくそくそちくしょう!! 誰か───「こちら護衛艦『しらね』! 敵艦隊に突入する!! 敵火砲は引きつけるから撤退してくれ!」

 

 

 

意味がわからなかった。だって機関故障でしらねは戦闘能力なんて……それにこの声は東郷一佐!? なんでそんなところに!

 

「一人の意気地なしと諦めの悪い年寄りが集まってな、お楽しみの所悪いが交ぜてもらうぞ」

 

 

でもそれじゃ『しらね』が! 東郷一佐が……いったい……意気地なしって

 

 

 

 

 

「山本提督、君のお父さんが艦長だった護衛艦『しらぬい』、その最後の生き残りとして言わせてくれ、君のご両親は立派な艦長と艦娘だった! 先に会いに行ってくるさ、 通信終わり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───海上自衛隊 第16護衛隊 DDH-143 しらね 東郷一佐

 

 

 

山本提督への通信を切ると同時に主砲を全力射撃する。誘導弾はランチャーごとすべて取り払った為に、故障した74式戦車や儀礼用の75mm砲などありとあらゆる装備を船に取付けており、ノロノロとではあるが敵艦隊の背後から突入していった。

 

奥松島の陰に居たため敵艦隊にみつかることもなかったし、出港してすぐ敵艦隊の至近だった。

 

 

 

「おお、敵さんこっちを狙うのぉ。やはり解るか」

 

「これだけの爆雷を積んでるんだ、敵戦艦であろうとも粉々だろうて」

 

「かーっ! 今の着弾で土井のやつ死んでもうたわ、まだはじまったばかりだっちゅうのにもったいないのう」

 

 

 

この『元』故障艦は、退役した65歳以上の高齢者による操艦で進んでいた。皆絶望的な戦いに挑む山本提督達を見ていてもたっても居られなくなったのだ。

 

数カ月かけても始動するのが精一杯だった機関を、数十分いじっただけで退役兵は低速ではあるが動かせるまで整備してしまった。

 

そしてまさにその退役兵が野蒜漁協組合の組合長だった。

 

 

「しかし漁協長すみません、私のワガママに付き合わせてしまい……」

 

「いいんだよ、孫もこの前の戦いで死んじまった。この老骨で一泡ふかせられるんなら価値はあるさ」

 

 

次々と砲弾が飛んでくる。主砲が吹き飛び、後部甲板にむりやり載せた退役戦車兵が動かす74式戦車も、接近してきた駆逐艦を一隻吹き飛ばすと同時に軽巡の砲撃で車体の上から吹き飛んだ。

 

双眼鏡をのぞけば艦娘部隊はなんとか全艦離脱できそうだ。今敵艦隊のヘイトはほぼこのしらねに集中している。

 

 

そうだ、もっとだ、もっと来い。

 

この船が1分1秒でも時間を稼げばそれだけこちらの勝率は上がる。首都に集結した艦隊や米海軍の突入まで持ちこたえればいいのだから。

 

 

艦橋手前に直撃弾、戦艦の副砲だろうか。大穴があいた。しかし速度は落ちない。行ける。

 

ふと手に温かい感触があり視線を向ける。色鮮やかな登山服に身を包んだ女の子が私の手を握り微笑んでいた。

 

 

『大丈夫だよ』

 

 

 

あぁ、そうだな。大丈夫だ。必ず想いは届く。そうだな『しらね』

 

 

 

「東郷! あの世でも、俺が先任としてこき使ってやるからな!」

 

「見てろよバケモノ共っ、ジジイの意地みせちゃるけぇ!」

 

 

艦首に敵戦艦がぶち当たる。別な戦艦が海上から飛び上がり、艦橋に取り付く。

 

 

敵戦艦の主砲がこちらを向く。しかしすでに本艦は敵艦隊に食い込んでいた。

 

敵戦艦と目が合う。

 

 

握りこぶしから親指を上げ、ゆっくりと手を逆さまにする。言葉もジェスチャーも通じるとは思っていない。だがそれでも一言言わずにはいられない。

 

 

 

 

「地獄に落ちろ、クソ野郎共」

 

『やっちゃえ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しらね』が、満載した爆雷を誘爆させながら敵艦隊とともに爆沈した音は遠く遠く、何処までも聞こえたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みんなバトルシップ見よう!
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