旧式鎮守府物語   作:あおさ海苔

31 / 43
ハッピーエンドが好きなんですよ





第2次野蒜沖海戦その2!

「『しらね』爆沈! 敵艦複数を巻き込んだ模様……です……」

 

「強襲班離脱成功! しかし鈴谷が損傷大破!」

 

 

鎮守府の建物を大きく揺れ動かし、防音のはずの作戦室までその爆音を轟かせ『しらね』は沈んだ。

 

 

東郷一佐……皆さん……貴方達だけでは逝かせません。

先に待っていてください……

 

 

 

 

 

「強襲班帰還! 補給と入渠急がせます!」

 

「提督、もはや敵艦隊は至近です。当初より戦果が少ないですがこれ以上海上での戦闘は……」

 

「この爆発に紛れて我々も一度後退すべきだ。後は陸に任せろ」

 

 

わかってる、わかってるけど……このまま下がっても首都からの増援や、在日米軍艦隊の到着まで持ちこたえられない。

 

スプレイグ大佐、米軍艦隊の状況は?

 

 

『……今通信が入ったが、まずそちらの首都の艦隊は動かさんそうだ。よって、米海軍単独攻撃は戦力差から鑑み不可能なため、ミサイル攻撃のみでの……支援となる』

 

『ロシア海軍も同じくだ。私の潜水艦一隻だけでは……』

 

 

 

援軍が……こない? 私達だけで防ぎ切る?

 

 

 

もう一度戦力ボードを見る。

 

 

敵戦力

 

水鬼1 戦艦9 空母1  軽巡4 駆逐3

 

 

 

東北統合隊(戦闘続行可能)

 

重巡1 軽巡1 駆逐1 潜水1 ※陸上戦のみ戦艦1

 

 

護衛艦隊(残弾欠乏)

 

松島基地(損害多数・滑走路破損)

 

陸上戦力(砲兵陣地損害多数・誘導弾普通科装備のみ)

※制空権未確保のため対戦車ヘリ行動不能

 

 

在日米海軍(対艦ミサイル支援のみ 30発)

 

ロシア海軍(魚雷10発)

 

 

 

 

……無理だ、すべての火力を同時に叩きつけて、それでも水鬼を中破まで持っていければ大成功。あとは残りの戦艦になぶられて負ける。

 

 

勝てない。

 

 

勝てない。

 

 

 

みんな死ぬ

 

 

 

 

 

 

 

「後方の避難民をもっと内陸に後退させろ。川沿いに遡上されたら鹿島台もこのままでは危ない、小牛田か大崎までだ。民間に協力を要請しろ、いいからはやく!」

 

「鉄道はすべて避難輸送に回す、対空部隊は駅の防衛にまわれ! 小松の航空隊ぐらいせめて援護に回さんか!! なにが首都防衛だ!!」

 

「敵機、鳴瀬奥松島ICの砲兵陣地襲撃をやめ反転中! こちらに来ます!」

 

「制空権がない以上、このままでは石巻港のAH-1Sが使えません、火力が足りないっていうのにっ!!」

 

 

 

みんなが死んじゃう。

 

 

私のせいで

 

 

 

私の   せい   ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おかーさん……おとーさん……』

 

 

 

 

あの時……私がお父さんの船を見たいなんて言わなければ……

 

 

 

 

『海岸から逃げなさい、お母さんはお父さんを迎えに行ってくるからね』

 

 

『お母さんはもう引退したんでしょ! 戦えないんでしょ!? 行っちゃヤダ!!』

 

 

 

 

あの時……もっとお母さんに強く言えていたら……

 

 

 

 

『大丈夫、お母さんは艦娘だから。やっつけてくるね?』

 

 

 

 

あの時……私なんかの為に……

 

 

 

 

 

『標的艦摂津、征きますっ!』

 

 

 

 

 

慣れ親しんだお父さんの乗る船、その艦橋に砲弾が直撃する。

 

 

泣き叫びながらお母さんはお父さんを殺した戦艦に突撃する。

 

 

敵戦艦が嗤う。

 

私を嗤う。

 

 

私めがけて撃ち込まれた砲撃を、お母さんが左腕を伸ばし防ぐ。

 

 

怖くて走り出した、でも脚に何か当って倒れ込む。

 

激痛、力が入らない。

 

 

 

恐る恐る脚を見る。

 

 

そこには『お母さんの指輪がはまった腕』が──────

 

 

 

 

 

 

 

そっか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全 部 思 い 出 し た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督! 提督! 大丈夫ですか! 撤退します! はやく!!」

 

 

 

目の前がチカチカする。

 

あれ? なんで空が見えるの……?

 

 

 

「敵艦隊の砲撃です! はやく退避を!!」

 

「艦娘三笠! お前も行け! ここは我々が食い止める!!」

 

 

何かの破片が突き刺さり、右足が動かない。あの時みたいだなぁ……

 

 

あたりを見回すと、どうやら敵の砲撃が作戦室付近に着弾し、私達を建物から吹き飛ばしたみたい。その後多分三笠さんが近くの建造ドックの方まで引きずってきてくれたのかな。

 

ドックが先日の爆発により建物に穴が空いてたから、入りやすかったのかも……

 

 

「ぐぁっ! クソッ!」

 

「樋口一佐! 止血を!」

 

「衛生兵! 衛生兵!!」

 

 

 

また砲弾が近くで炸裂する。

 

一緒の作戦室に居た人達が傷ついている。護らなきゃ、私が、護らなきゃ! お父さんやお母さんの時みたいにさせない!

 

 

「………提督?」

 

 

 

三笠さん、ごめん、ごめんね……三笠さん、貴方達は絶対に護るから

 

 

 

 

 

 

「提督? 提督何をっ!?」

 

 

 

 

ここは建造ドック。海には建造液が流れ出て海の色を変えている。

 

 

ねぇ、私の血で建造できるんでしょう?

 

 

だったら応えてよ。ぜんぶ、私のぜんぶあげるから

 

 

 

 

「提督やめて!」

 

 

 

隣で怪我をしていた隊員が身につけていたコンバットナイフを引き抜き首にあてる。

 

 

 

「三笠さんを、みんなを、私が、みんなを護るから、だから、応えてよ!!!」

 

 

 

 

鋭い痛み、鮮血が噴き出す。

 

 

みんなを、まも───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───野蒜訓練鎮守府 記念艦三笠

 

 

敵戦艦部隊からの艦砲射撃、次々と失われてゆく命。

 

 

せめて提督だけでも護らなきゃと壊れかけた電動車いすで建造ドックまで連れてきたけれど、ここも砲撃を受け始めた。

 

もっと後退しないといけないのに電動車いすはもう動いてくれない。

 

どうして、どうして一番大事な時にこの脚は動いてくれないの!!

 

艤装に火を入れる事さえできればっ!!

 

 

 

 

 

ふと帽子越しに頭を撫でられる。

 

 

提督を見れば、提督は涙を流しながら私に微笑みかけていた。

 

 

提督? どうして泣いているのですか?

 

 

提督? どうしてナイフを持っているのですか?

 

 

 

「三笠さんを、みんなを、私がみんなを護るから、だから、応えてよ!!!」

 

 

 

そう言うと提督はナイフを使い首を深く深く切り裂いた。

 

 

 

血が噴き出る。何がおこったかわからない。

 

 

数秒して提督がことんと私に倒れてくる。

 

 

目にはもう光がない。

 

 

 

どうして? 

 

 

 

 

どうして? どうしてどうしてどうして!? やだ、やだやだやだ提督! 山本提督!! そんなやだ! 大好きなのに! まだ貴方と共に居たいのにどうして!

 

 

 

提督を抱きしめる。もう何も応えてはくれない。

 

提督、提督!

 

ゆすっても応えてはくれない。

 

 

すると建造ドックや海が突然光った。眩しくて、でも神々しくて。

 

 

光にのまれる。何故か不思議と暖かい。

 

 

すっと光が消えたと思えば、空には虹がかかり海上には……人? 違う、あれは艦娘?

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、今日の艦隊は何かおかしいんじゃないか? 建造されてすぐ状況がコレとは」

 

「なんの因果かそちと同じ艦隊に所属するとは……まぁ、標的艦よりかマシよの」

 

 

 

海外の艦娘? でも彼女達はいったい……「三笠ちゃん、遅くなってごめんね」

 

 

頭を撫でられる。視線を返せばそこには───

 

 

 

 

 

「後はお姉ちゃん達に任せなさい! 敷島型戦艦1番艦『敷島』! 家族と日ノ本に勝利を!」

 

 

「同じく『朝日』……妹を虐めたヤツは殺す」

 

 

同じ敷島型戦艦の姉達が。

 

 

 

 

「なんだなんだ、そういえば名乗りがまだだったな。リヴェンジ級超弩級戦艦『リヴェンジ』! 艦隊決戦なら任せろ!」

 

「同じく大英帝国海軍アイアン・デューク級超弩級戦艦『カナダ』 撃ち合いなら任せなさい」

 

「キング・ジョージ5世級戦艦『センチュリオン』。殴り合いは大好きよ」

 

 

 

大英帝国の超弩級戦艦達が

 

 

 

 

「栄えあるドイツ帝国海軍ドイッチュランド級戦艦、『シュレスヴィヒ・ホルシュタイン』 敵でもあり友でもある貴国の為助力させてもらう」

 

「……同じく『シュレジェン』 がんばる」

 

「英国艦と共に戦うとは本当になんの因果やら……ブラウンシュヴァイク級戦艦『ヘッセン』 我も助太刀いたそう」

 

 

ドイツ帝国海軍の前・準弩級戦艦達が

 

 

 

『野蒜鎮守府聞こえるか! こちらロシア連邦ハバロフスク航空団! 航空団長をぶん殴ってきた! ボレーニン艦長、今お助けしますぜ!!』

 

『同じくウラジオストク海軍航空隊、制空権の配達は必要ですかなボレーニン艦長』

 

『こちらは航空自衛隊小松基地航空隊なんだが、領空侵犯機を追いかけていたらルートを間違ってしまった。いやぁ困ったなぁ』

 

 

命令違反を承知で助けに来てくれる仲間が

 

 

 

 

 

………きっと、提督は私達に託してくれたんだ。

 

だから、だから提督。この戦い絶対に勝ちます。

 

 

徐々に冷たくなってゆく提督に別れのキスをして、提督の帽子をかぶり直す。

 

 

深く息を吸う。

 

提督のご遺志を継ごう、私が野蒜鎮守府の提督として、山本提督の代理として、全艦に命じよう。

 

 

 

「全艦! 皇国の興廃この一戦にあり!! 攻撃開始!! 攻撃開始!! 奴らを生かして帰すな!!」

 

 

 

さぁ、弔い合戦だ。

 

 

 

 

 

 

 

 





まだ終わらんよ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。